概要
ヒトや動物の腸、土、水中など、自然界に幅広く分布する細菌。嫌気性菌であり、空気や酸素を嫌う。
この菌は熱に強く、100℃程度で加熱しても死なない。そのため、食品を大きな釜などで大量に加熱調理すると、他の細菌やウイルスは死滅してもウェルシュ菌だけは生き残ったりする。また、食品の中心部は酸素の少ない状態となるため、ウェルシュ菌の増殖に最適な環境となってしまう。
学校給食での発生が多く、カレー・シチュー・スープなど、食べる日の前日に大量に調理され、大きな器のまま室温で放冷された食品が原因となることが多い。そのためこの菌による食中毒は「給食病」の異名を持つ。
また、この菌は食中毒だけでなく、傷口から侵入してガス壊疽(筋肉が壊死する病気。死に至ることもある。)の原因となることもある。
ウェルシュ菌が引き起こす病気
食中毒
主な症状は腹痛と下痢だが、軽症であることが多く、通常は1~2日で回復する。
予防のためには「前日調理を避け、加熱調理したものはなるべく早く食べること」「やむを得ず保管する場合は、小分けしてから急速に冷却すること」を心がけよう。
ガス壊疽
怪我ややけどなどの際、細菌が傷口から侵入して毒素を出すことにより、筋肉が壊死を起こす危険な病気。メタンや二酸化炭素などのガスをつくりながら感染が広がることが特徴。
原因となる細菌にはウェルシュ菌以外にも大腸菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)などもあるが、特にウェルシュ菌によるガス壊疽が有名。糖尿病患者や高齢者などでリスクが高いと言われる。
症状としては、まず傷の痛みが強くなり、傷が赤くなる。時間が経つと今度は傷が黒く変色し、壊死により腐敗したようなにおいを発するようになる。
進行すると多量の毒素が血液に流入することにより、貧血、血尿、黄疸などの症状が現れ、敗血症、多臓器不全になり、死亡する。
治療は入院して手術を行うのが原則。手足を切断しなければならない場合もある。