納豆菌
なっとうきん
納豆の製造に利用される細菌。枯草菌の一種で、日本では稲藁や麦藁などのイネ科植物の枯れ草に普通に付着している。
納豆菌の芽胞は高熱に強いので煮沸消毒する事で雑菌が死に、納豆菌だけを繁殖させる事ができる。納豆菌はカビの増殖を抑制するので農薬にも使われる。
納豆菌は数ある微生物の中でも最強と言われており、シャーレに何種類もの菌株を入れて一晩置いておいたら、納豆菌だけが生き残って繁殖していたという蠱毒めいた逸話もある。
この納豆菌の強さ故に、日本酒醸造に関わる杜氏には、仕込み時期の納豆の喫食が禁忌とされている。 チーズ工房でも、納豆菌が乳酸菌と競合して増殖してチーズの醸造作用を阻害するため、納豆を食した後は三日ほど工房の出入りを禁じられる。
もっとも、納豆菌は「無敵」というわけではなく、条件によっては乳酸菌の方が優勢になる場合もある。ただし、納豆菌と乳酸菌は競争相手というより共生関係にあると言われており、納豆菌と乳酸菌がタッグを組んで悪玉菌の増殖を抑え、また納豆菌の産生する物質や、納豆菌自体(あるいはその死骸)が乳酸菌の餌になることで腸内環境の改善に役立つという。
きちんと準備をすれば、その辺の田圃の稲藁どころか、イネ科の雑草でも納豆を作る事もできる。
※ただし「きちんと準備をすれば」の「きちんと」の基準はかなり厳しく、通常の藁を使った納豆でさえ「美味しんぼ」の藁苞納豆を作るエピソードのやり方ではほぼ無理であり、「現代では『納豆の名産地』のイメージが有る水戸でも納豆生産が始まった当初は、どうやってもちゃんとした納豆が作れず、とうとう仙台から職人を呼んできて、ようやく成功した」「TVのバラエティ番組で『昔ながらの藁苞納豆づくり』の映像を撮影しようとしたが、何度やっても巧くいかず、とうとう撮影期日に間に合わせる為に、どう言い訳しても捏造以外の何物でもない方法で巧く出来たように見せ掛けるしか手段が無くなった」というエピソードも有る。
納豆菌の強さを物語る逸話として、大学の実験室の細菌研究所に納豆菌持ち込み厳禁の規約を知っていたにもかかわらず、納豆巻きを持ち込んだ生徒に謹慎処分が下された事例もある。
ところが何と、韓国のテジャン(韓国味噌)や韓国醤油は、納豆菌またはその近縁種の菌で大豆を発酵させる→乾燥→乳酸菌や麹菌で発酵させる、という上記の日本の常識からすると無茶苦茶な工程で作るのが一般的である。なので、日本の調味料だけしかない場合に韓国料理を作る際のコツとして「挽き割り納豆を隠し味に使う」というものがある。
ただし、これは日本の韓国の醤油・味噌の製法の違い(日本の醤油・味噌は麹を混ぜる前に大豆を蒸すが、この時の温度・湿度が納豆菌の繁殖に適したものなので、大豆を蒸す際に納豆菌が混ってしまうと、麹を混ぜる時点で、かなりの納豆菌が繁殖してしまっている事態になる)によるものと思われる。