- 差別することなく、価値観が異なる相手と共に生きること。
- 異なる生物が利害の一致により同一の生活圏で暮らすこと。
1.も大事ではあるが、ここでは2.の意味について記述する。
生物学的な意味の共生
二種類以上の生物が関係を持って生活圏を共有する現象。
かつては特殊な事例であると考えられていたが、現代では共生はむしろ自然界にありふれたものであるということが明らかになっている。
また、下記のような分類がされてはいるものの、実際は「この生物はこの生物と相利共生」と言った風にきっぱり区分できるものばかりでなく「この二種はある状況では相利だがある状況では片方にとって有害になる」ということも少なくない。
相利共生
双方に生きていくうえで利がある共生。所謂WIN-WINの関係である。
しかしながら時と場合によっては片利や寄生に変化することもある。
具体例
- アリとアブラムシ:アブラムシはアリに天敵(虻の幼虫やてんとう虫)から守ってもらい、その代わりに植物の蜜をアリに与える。農家からしたらたまったものではない。
- アリとシジミチョウ:同じくシジミチョウの体液は甘く、アリはシジミチョウの幼虫を見つけると好んで巣に持ち帰り丁重に育てる。チョウは成虫になったら勝手に出ていく。
- ホンソメワケベラと大型の魚:ホンソメワケベラは魚のエラや口の中のゴミや寄生虫を好んで捕食し、魚は掃除してもらうことで清潔に保つ。
- テッポウエビとハゼ:テッポウエビは目が全く見えないため、視力の良いハゼの巣穴に居候する。ハゼは弱いため、テッポウエビを用心棒兼給仕長として利用する。
- クマノミとイソギンチャク:クマノミの捕食者はイソギンチャクが追い払い、イソギンチャクの捕食者はクマノミが追い払う。餌を分け合うこともある。
- ヤドカリとイソギンチャク:殻にイソギンチャクを付けることでヤドカリは外敵から身を護り、歩けないイソギンチャクは移動手段としてヤドカリを利用する。
- キンチャクガニとイソギンチャク:鋏にイソギンチャクを付けることで以下略。ハサミにくっついた餌をイソギンチャクに与えるかわりに、イソギンチャクを口元に持って行って一緒に餌を食べる。
- 地衣類:菌類と藻類の共生。菌は乾燥から藻を護り、藻は光合成をして菌に栄養を与える。
- ラーテルおよびヒトとノドグロミツオシエ:まずミツオシエが野生のハチの巣のありかを教え、ラーテルや人間は蜂の巣を壊して蜂蜜を得る。そしてミツオシエは蜂の巣のかけらを食べる。(参照:ナショナルジオグラフィック)
- コバンザメ→マンタやジンベエザメなどの大型海洋生物:コバンザメは大型生物に張り付くことで外敵から守られ、また大型生物の食べ残しや寄生虫を餌にできる。大型生物はコバンザメによって体表面が掃除される。
- ウシツツキ→カバやバッファローなどの草食動物:皮膚に湧いた虫などを食べる。一見すると下記ドクターフィッシュのようだが、ぶっちゃけカバたちからしてみたら突かれすぎて痛いしちょっとジャマだったりする。過ぎたるは猶及ばざるが如し。
- ドクターフィッシュとヒト:上記ホンソメワケベラと同様に、皮膚の角質などを食べる。
- ニキビダニとヒトや哺乳類:過剰発生時の悪症状が取り上げられることが多いが、適量のニキビダニは角質等を除去することで肌を健康に保つ手助けをする。
- 益虫、益獣とヒト:益虫、益獣はヒトにとっての害虫、害獣を捕殺したり、ミツや繭を出したりする。ヒトは食事や住処を提供する。
片利共生
どちらかにしか利が無いケース。寄生とは異なり、宿主に害はない。
しかしながら、生活圏を共有しておきながら害も利益もない、というのは稀である。くっつかれるだけでも、その重量分余計に移動エネルギー必要になるには違いない。
「厳密な意味での片利共生など存在せず、寄生か相利共生であるのを見逃しているに過ぎない」とする意見もある。
具体例
- カクレウオ→ナマコ:カクレウオがナマコに隠れ潜む。ナマコ側には利益が全くない。ナマコの内臓がつまみ食いされている疑惑がある。そうでないにしても、内臓器官に巨大な異物が入り込んで全く悪影響がないわけはない。
- フジツボ→ウミガメやクジラなど:フジツボは他の生物に付着し、生息場所としてだけでなく、種が広範囲に分布するための手助け二もしている。付着される側は水の抵抗の増加、感染症のリスク等デメリットがあるが、メリットはほぼない。一部クジラが頭突きを強力にするのに役立てているという話はある。
- アリドリ→グンタイアリ:グンタイアリが通ると虫たちが逃げ惑うため、そこを襲って餌を得る。グンタイアリの側にはメリットはない。
- 害虫、害獣→ヒト:説明するまでもない。
片害共生
片方が一方的に害をこうむり、もう片方が損も得もしていない状況。
害される側は害を被っている以上追い出さない理由はないし、もう一方も利益がないのに居座る意味はない。片利共生以上に珍しい関係性。
日本語版ウィキペディアだと、他の植物の上で成長する着生植物が例に上がっているが、日光を得るための足場とするため他の生物に寄り掛かっている辺りは寄生であるとも考えられる(一応、根を刺して直接栄養を奪い取らない点でヤドリギのような寄生植物とは区別される)。
寄生
片利であるばかりか一方に明白な実害がある状況。寄生される側を宿主と呼ぶ。
しかしながら、寄生とされる形態の中にも宿主に利益をもたらすものは多く存在し、相利共生or寄生で議論になることもある。
詳細は該当記事を参照。