概要
『無人島の大怪物』とは藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品「ドラえもん」のエピソードの一つ。
「小学四年生」誌1981年9月号に『変身リングとカード』のサブタイトルで掲載されたのが初出で、TC第41巻及び藤子・F・不二雄大全集11巻に収録。
本誌掲載当時は戸塚ヨットスクールのスパルタ教育による生徒の死亡事故が話題になっていた時期であり、スパルタコーチというそのまんまなひみつ道具が登場する。
ストーリー
ある夏の日、のび太の家にジャイアン・スネ夫・しずかの3人が訪ねてきて、「プールや海に泳ぎに行きたいが、どこも混んでるからドラえもんの力でみんなで静かな海へ遊びに行こう」と誘ってきたが、泳ぎが苦手なのび太は咄嗟に「あいにくだけど、ドラえもん留守なんだ」と嘘をついて断ろうとする。が、そこにちょうどドラえもんが「僕に用?」と玄関から顔を出してきて、のび太は「どこでもドアは今壊れてるんだよね」とドラえもんに意味深な目配せをして行きたくない意思を伝えようとするも、ドラえもんはそんなのび太の思いなどつゆ知らず「みんなで海へ?いいね、行こう!どうせなら誰もいない無人島へ行こう」と乗り気になってしまう。
結局5人でどこでもドアを使って無人島へ行き、さっそくジャイアン・スネ夫・しずかは水着に着替えて泳ぎ始めるが、そこで全く着替える様子がないのび太に気づき、「そうか!泳げないんだっけ!」「誘って悪いことしちゃった」と笑いながら海に入っていった。「だから嫌だったんだ!」と悔し泣きするのび太にドラえもんは変身リングとカードを出すが、すぐに「これは簡単すぎる」と投げ捨て、代わりに「こっちがいい」と出したのがスパルタコーチだった。
のび太はこのひみつ道具のスパルタぶりに猛抗議するが、ドラえもんは「これぐらいのことしないと、君は永久に泳げないぞ!」「かわいそうだが君のためなんだ」と言って、のび太を放って自分も泳ぎに行ってしまう。かくして何度も海に沈められては引っ張り上げられ辟易したのび太はなんとかスパルタコーチのベルトを外そうとするが簡単には外れず、手近にあった大きな石を本体にぶつけて壊すことでやっと外すことに成功。その後で先ほど捨てられた変身リングとカードを探し出すと説明書に従って全裸になり、魚のカードを使い下半身だけ魚の人魚に変身して海に潜る。そしてバカにされた仕返しとして泳いでいたジャイアンやスネ夫の足を引っ張ったりしてイタズラをするが、そうこうするうちに時間切れで変身が解けて溺れかかり、ドラえもんに助けられたばかりかみんなに全裸を見られる羽目になってしまう。
それでのび太が勝手に変身リングを使ったことを悟ったドラえもんは恥ずかしがって逃げるのび太を追いかけていくが、のび太はネズミのカードで変身してドラえもんを気絶させると、変身リングの力でジャイアンとスネ夫にたっぷり仕返ししてやろうと画策する。
一方何も知らない3人は空腹を覚えたので、ジャイアンとスネ夫が木の実か何か食べられる物を探そうと海岸を離れて森の中へ向かい、「猛獣でもいるんじゃないかしら」と不安なしずかは海岸で待つことになった。その様子をこっそり見ていたのび太は、変身リングでまずライオンに変身するとスネ夫の前に現れ、前足の爪でスネ夫の水着を引きちぎってしまう。驚いて逃げるスネ夫は「ラ、ラ、ライオ、ライオン…」とと叫びつつ全裸の状態でしずかの所へすっ飛んでいき、しずかもそれに悲鳴を上げて逃げ回る。続いてその悲鳴に気づき立ち止まったジャイアンの前に、のび太は今度は大蛇に変身して現れるとやはりジャイアンの水着を食いちぎる。仰天したジャイアンは「だ、だ、だ、大蛇!」と叫びつつやはり全裸の状態でしずかの所へすっ飛んでいき、友達の男子の局部を何度も見せられる羽目になったしずかは「もう嫌!」「こんな島嫌よ。帰りましょ!」と言い出してどこでもドアの置き場所へ向かう。
それでもまだのび太の復讐心は収まらず、コンドルに変身してどこでもドアの置き場所へ先回りすると「僕をバカにした罰だ」とどこでもドアを隠し、「帰れなくなった!」とパニックになる3人をよそにこっそり帰宅。自宅でおやつの梨をもらうと、1つ自分で食べた後残りを「食べな。野生の梨を見つけたんだ」と3人の所へ持っていき、「ドラえもんに頼らないと何もできないのか !? 情けない奴らだな!」「ピンチの時にこそ一人一人の本当の姿が現れるものさ。どんな時も勇気を持って進めば、必ず道は開けるのだ!」とヒーローぶり始める(完全なマッチポンプである)。
最初はなんとなく信じていた3人だが、次第に「よくよく考えるとこんな島に大蛇やライオンがいるのはおかしい」「空腹で幻覚を見たのでは?」と考え始め、それを見たのび太は「もう一度脅かしてやろう」と考えて「恐竜(ティラノサウルス)を繰り出してそれを自分が撃退し、みんなを守るヒーローになる」シナリオを思いつく。そして変身リングを使うべく一旦場を外して全裸になるが、当然ながらこのシナリオは自分一人ではできないことに気づき、ドラえもんを恐竜に変身させて八百長に協力させようと考える。
だが気絶していたはずのドラえもんの姿はそこにはなく、代わりに恐竜が現れ、続いて「勝手なことするな」と出てきたドラえもん。ということは、この恐竜は本物 !? 仰天して逃げ出すドラえもんとのび太だが、突然恐竜の姿が消えたと思ったらそこには小さなトカゲがいた。どうやらこのトカゲが、のび太が用意した変身リングを偶然くぐっていたらしい。そして全裸の状態でぶっ倒れて気絶しているのび太を見つけて「見ろよ、小さなトカゲ見てひっくり返ってる」と笑うジャイアンとスネ夫、呆れるドラえもん、それに「も~、いやいやいやっ」と辟易するしずかだった。
アニメ版における相違点
のぶドラ版(1989年8月11日放送)
- サブタイトルが『変身リングとカード』になっている。
- みんながのび太が泳げないことに気づいた際、しずかが誘ってしまったことに「悪いことをした」と思っているシーンがある。
- しずかの水着のデザインは原作とわさドラ版ではビキニ型だったが、こちらではスク水に近いワンピース型になっている。
- のび太がスパルタコーチで泳ぎの練習をしているのをジャイアンとスネ夫がバカにしている中、ドラえもんとしずかが「そんなこと言っちゃ悪いわ」「そうだよ、のび太くんだって一生懸命やってるんだぞ!」とフォローするシーンがある。
- 食べられる物を探しに森へ行ったジャイアンとスネ夫は、最初は「この島に猛獣はいないだろう」と予想していた。
- ライオンと大蛇に変身したのび太に水着を破かれたジャイアンとスネ夫は、大きな木の葉を越中褌のようにして股間を隠していた。
- のび太が自宅から持ってきた梨をみんなが食べるシーンがない。
- トカゲが変身した恐竜は、のび太を踏みつぶそうとした所で時間切れで元の姿に戻った。
わさドラ版(2006年3月10日放送)
- サブタイトルが『生き残るのはダレだ !? 無人島の大怪物』になっている。
- みんなが水着に着替える際は、原作とのぶドラ版では普通に着替えていたが、こちらではきせかえカメラを使用した。
- 人魚に変身したのび太がイルカと戯れるシーンがある。また、時間切れで人魚の姿から元に戻る前に、のび太が「泳ぐってこんなに楽しいんだ!」と喜びに浸っていた。
- こちらでも食べられる物を探しに森へ行ったジャイアンとスネ夫は、最初は「動物がいたとしてもせいぜい鳥やリス、蛇くらいだろう」と予想していた。
- ライオンと大蛇に変身したのび太に水着を破かれたジャイアンとスネ夫は、葉が茂った木の枝を腰に巻いて下半身を隠していた。
- のび太が大蛇に変身して脅かした際、ジャイアンは木の実を拾い集めていた。
- のび太がおやつを食べに一旦自宅へ帰った際、原作とのぶドラ版ではちゃんと元の服装に着替えてから帰宅したが、こちらでは水着姿のままだった(着替えにきせかえカメラを使っているため)。さらにおやつの内容も梨からバナナに変更されている。
- コンプライアンスへの配慮からか、全裸になった時の局部をあの手この手で映らないように隠している。
- 海岸でドラえもんとのび太を待っていたジャイアン・スネ夫・しずかは、原作とのぶドラ版では元の服装に着替えていたが、こちらでは着替えておらず水着姿(ジャイアンとスネ夫は木の枝を腰に巻いた姿)のまま(やはり着替えにきせかえカメラを使っているため)。そしてジャイアンが、スネ夫としずかに「海賊団が島に財宝を隠した」という怪談的な噂を語ったり、説明くさいセリフと迫真の演技を交えて「のび太が大蛇に食われたのでは?」と語るシーンがある。
- スネ夫が「生息地域的にライオンや大蛇がいるのはおかしい」と語るシーンがある。
- トカゲが変身した恐竜が、ドラえもんとのび太を崖っぷちまで追いつめるシーンが追加されている。