概要
哺乳綱・有袋目・フクロネコ科・フクロオオカミ亜科・フクロオオカミ属に分類される絶滅動物の一種。別説では独自の「フクロオオカミ科」として分類されることもある。フクロオオカミという動物は一属一種とされているが、少なくとも7種の化石種がオーストラリア、クイーンズランド州北東部で見つかっている。さらに、フクロオオカミ科は中新世から鮮新世にかけて多様な属が繁栄していたことも化石から判明してきた。
タスマニア島に棲んでいたことからタスマニアオオカミ、背中に付いたトラのような横縞模様からタスマニアタイガーとも呼ばれた。その縞模様はトラのよりもピカチュウに近いのだが。しかし実際には縞模様以外はピカチュウに似てない。むしろクアッカワラビーのほうがピカチュウっぽいのだが。
またの名を「サイラシン」という。
体長1~1.3m、尾長50~65cm、体重15~35kg。
タスマニア島の開けた森林に生息していた肉食動物で、ワラビーなどの小動物や鳥などを捕食。主に小型哺乳類を捕食していたが時には大型動物も襲うこともあったようだ。夜行性で昼は森の中に休み、夜になると草原で狩りをしていた。
外見は犬に似ているが、長い尾と後ろ足で立ち上がることが出来た。オオカミと名前にあるがどこか猫っぽくもある。またオオカミやタイガーと名前についているが肉食獣としては性質はおとなしく、咳き込むように吠えたり唸り声をあげたりした。
人々がフクロオオカミの本当の姿を知ったのは、既にこの動物が絶滅しかけていた頃だった。
フクロオオカミは絶滅した後、タスマニア島のイメージキャラクターになるほどの人気を集めている。
たくさんいた頃は「家畜を狙う敵」として散々嫌われていたことを考えると、何とも皮肉な話である。
因みに家畜を襲っていたのは、殆どが野生の犬ディンゴである(まぁ、彼らも少し襲っていたが)。
絶滅
かつてフクロオオカミは、タスマニアデビルと共にオーストラリア大陸やニューギニア島などにも住んでいた。3万年前に人類が進出し、4000~5000年前に現れた野生の犬ディンゴとの獲物をめぐる競争に敗れた。現在オーストラリア本土では、天敵となるフクロオオカミがいなくなり、ディンゴの数も減ってきているのでカンガルーが大量発生して様々な問題を起こしている。これはニホンオオカミ絶滅後の日本でも二ホンジカによって同様のことが起きている。しかし大陸から240kmも離れたタスマニア島は、陸生動物の出入りが困難で、彼らはそこでのみ生き残ることができたのである。
だが、それも長くは続かなかった。
1803年、タスマニア島にイギリス人が上陸し、一部の者は脱走して森をさまよった。2年後の記録によると、その中の2人の男が「森の中でトラを見た」と証言している。それが初めての発見記録とされている。
その後、タスマニア島にヨーロッパ人が入植し、やがて農場の羊や鶏が襲われる事件が相次ぐと、「羊や鶏を殺したのは全てタスマニアタイガーだ」と勝手に決めつけられ(実際に彼らが殺した羊や鶏の数はそれほど多くなく、犬やタスマニアデビルも農場を襲っていた)、フクロオオカミは「家畜を狙う凶悪な敵」という理由で島の人々に嫌われ、次々と殺された。1888年から1909年までは懸賞金がかけられ、さらに「ハイエナ」と呼ばれ、その21年間で2184頭が殺された。その間の記録によれば毎年100頭ほどのフクロオオカミが捕獲されたらしい。ところがある年を境にその数が突然に減り、1909年にたった1頭だけが捕獲され、それ以降、姿を見かけることは稀になってしまった。理由としては、伝染病(例:ジステンパー)などが考えられている。
1930年に、病気で弱った1頭のメスが、鶏小屋を襲って射殺され、野生のフクロオオカミはそれが最後とされていた。
だが、3年後の1933年に、最後の個体とされる1頭が生け捕りにされ、しばらくホバートの動物園で飼われていた。この個体の生きた姿が撮影された当時のフィルムは、以下の動画のように今でも世界中の博物館やネットなどで公開されている。
このフクロオオカミは「ベン」と名付けられた。しかしその個体は実はオスではなくメスだったという信じられない事実があった。どんなに小さな事でも、最後の最後まで人に理解されないなんて、皮肉で哀しい話だ。
公式では、この時をもってフクロオオカミは地球上から完全に絶滅したとされる。
生存疑惑
ところが、その後も、この動物を見たという目撃情報が何度も寄せられており、一部では「まだフクロオオカミは細々とではあるがタスマニア島で生存しているのではないか?」という説も出されている。
しかし、今のところ決定的な証拠は見つかっておらず、絶滅したという認識は覆されてははいない。
そんな今でもこの動物を探す人は多い。たとえ、絶滅したと分かっている人でさえもだ。
そして2017年…
数ある目撃報告や物的資料などを加味してか、クイーンズランド付近での正式な生存調査が行われることが決定した(参照)。
もともと、クイーンズランドには「クイーンズランドタイガー」というUMAが伝わっていた。
また、比較的、多くの標本が残っているため、そこから遺伝子を取り出してクローン個体が作れないかという試みもあるが、未だ見通しはよくない様子である。
創作での扱い
- タスマニア物語:1990年に公開された東宝制作の日本映画で、主人公の石沢正一(演:多賀基史)の父・栄二(演:田中邦衛)は、タスマニアタイガーを探しにタスマニア州に移住していた。急遽企画された映画であったが当時はそこそこヒットし、タイアップとしてゲームボーイ用アクションゲームも発売されている。
- クラッシュバンディクー:コルテックスの部下である脳筋・タイニー・タイガーが登場。
- けものフレンズ:フクロオオカミ(けものフレンズ)・タスマニアタイガー(けものフレンズ)が登場。
- サンサーラ・ナーガ2:常に複数で出現し、こちらを袋叩きにしてくるという不良偏差値が高い狼モンスター。
- ポケットモンスター:犬のような容姿、背中の縞模様、長い尻尾から第2世代の『金銀』で登場したヘルガーのモチーフの1つと言われている。実際のモデルは伝説上の魔物であるヘルハウンドだとされるが、進化前のデルビルのモチーフの1つがタスマニアデビルであることを考えると、有袋類の肉食獣繫がりでこのフクロオオカミもモチーフになっている可能性がある。また、初代の『赤緑青』より登場するガーディ、ウインディもオレンジ色の体毛にトラのような縞模様がある点、イヌのような容姿、ネコ科のような特徴を持つ点からこのフクロオオカミに似ている。さらに、『金銀』で登場したライコウはβ版の段階ではイヌやフクロオオカミにかなり近いデザインをしていた。これとライコウが虎モチーフであることを踏まえると、ライやフクロオオカミの持つ「イヌのような容姿だがネコ科的な特徴も持つ」要素は、ライコウの「三犬」要素として引き継がれた可能性もある。
- ふしぎな島のフローネ:第12話『おかあさんの活躍』に登場したフローネ達を襲ったオオカミの群れはフクロオオカミである(襲撃事件の夜明けに判明)。「襲ってきた」というのはフローネたちの視点であったため、実際にフクロオオカミがフローネ達を襲おうとしていたのかは何とも言えない。興味をもって近づいていただけの可能性もある。「そもそも創作なので」と言えば、それまでだが。
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彼らの本音