概要
体長1m前後、体重13~20kgのイヌ科の動物でオーストラリアとその周辺に棲息。
野生のディンゴは家族単位の群れを作って暮らし、夜間にウサギやネズミ、カンガルー等を捕食し、オーストラリアの生態系の頂点に君臨している。
東南アジアの在来犬と遺伝的に非常に近く、広義ではこれらもディンゴとされる。
日本犬などの原始的な犬によく似た外見だが、骨格がややタイリクオオカミ寄り、吠える性質を獲得していないなど、更に古いタイプである。
かつては、ジャッカルやコヨーテと同じように、オオカミとは別の独立した種であるという考えもあったが、現在の分類学では、イエイヌとは別のタイリクオオカミの一亜種と見なされている。
遺伝的に殆ど同じであるためヨーロッパ人等の連れてきた犬との交雑が進み、純粋なディンゴは絶滅の危機にある。
ディンゴは最終氷期以前、アボリジニの家畜として共にオーストラリアに渡って来たと考えられていた。
しかし現在では、アボリジニは犬を連れてきておらず(犬の家畜化がなされる前にオーストラリアに移ってきたため)、後の時代(4,000~5,000年前)にインドネシアかインドから船で交易にきたオーストロネシア人達の連れてきた犬が野生化したものと考えられるようになった。アボリジニの石器製作技術がこの頃突然に変化し、またそれまで無かったディンゴの化石記録が現れる。アボリジニも当然、ディンゴを飼い、特に寒い夜は抱いて寝ることで生きた暖房器具として重宝されていたようだ。
尚、現在はタスマニア島にしかいないタスマニアデビルや絶滅したフクロオオカミは、かつてはオーストラリア本土にもいたが、ディンゴが現れた事で生存競争に敗れ、絶滅してしまった。氷河期終結後以降は本土と海で隔てられたタスマニア島にディンゴが到達できなかった(交易船も流石にそこまでは行けなかった)事で彼等はそこでのみ生き残っていたが、それも長く続かず、結局は人為的な原因で20世紀にフクロオオカミは滅んでしまい、タスマニアデビルも絶滅の危機にある。