概要
ドラえもんシリーズの映画である『のび太と雲の王国』にて、天上界が実行に移そうとしていた計画。
環境汚染の続いている地球にて、自分達の生活圏を存続させようとした天上連邦側が、地上世界に世界規模の大雨を降らせる事で、洪水を生じさせ浄化するのが目的となっている。地上人達も一時的に天上界に避難させる予定となっているが、計画の終了後は地上に戻され、全てを失った地上人の生活レベルは原始時代に戻ってしまうとされる。
環境保全の為とは言え、かなり非道な手段だが、天上界では議会も賛成派が大多数となっており、「地上人の自業自得」と辛辣な考えを露わにしている。
その為の下準備として地上の動植物を天上界に避難させ、その中には地上では既に絶滅した種も多い。地上では絶滅した動物も、天上世界では何種類か飼育されている。中にはマンモスなどの様に氷河時代の生物やネス湖のネッシーといったUMAもいる。
ここにいる動物たちの中にはアフリカゾウやオランウータンのように人間をよく思わないものもいる中、ドードーやモアなどは過去にのび太たちに助けられた為に恩義を感じている。
一方、動植物保護の為の吸引行為の名目で無人島の植物を傷つける等、明らかに天上人の側も環境破壊をやっていたりする。
その上、その吸引行為の際にはギリギリになって「船を作ってすぐ出て行きなさい」と無人島にいた漂流民に警告を促すだけで、特に救済措置を用意していない等、自分達の「環境保護」を名目とした行動によって生じる二次的な被害に関しては一切意に返していない(と言うより想定出来ていないと言う方が正しい)模様。
仮に無人島ごと吸引されたとしても、絶滅動物保護州に強制収容されるという飼い殺しも同然の有様となっており、結果的に収容されていた地上人の一人であるタガロが脱走する事態を招いたが、発信機付きの指輪を付けられている事で天上界へ強制送還されている。
作中では、のび太のママがどこでもドアのダイヤルを勝手にいじったせいで、ドラえもんとのび太の二人が、ノア計画が実行された時代の世界に出てしまっている。
弊害
天上界側は、ノア計画が実行されれば「地球の環境は守られる」と確信しているが、実際にノア計画が実行されれば以下の事が起こると考えられる(参考:『アニヲタwiki』より)。
- 大洪水の影響で地上のゴミや放射性物質が大量流出し、海洋・土壌汚染が拡大する。
- 文明を洗い流すレベルの大雨を降らせる為、海水が増水する上に、陸地では水没や塩害に土砂崩れが起こる。
- 雨雲で日光が遮られて土壌が浸水する為、地上に残った植物はまともに育たず、酸素も供給されにくくなる。恐竜の絶滅もこのようなことが起こり、食物連鎖が成り立たなくなったという説が唱えられている。
- 地球に酸素の20%を供給すると言われる大アマゾンがこれで大打撃を受けた場合、天上界側にも確実に影響が出る事になる。
- そもそも、60億人以上の地上人全員を、決して広大では無い天上界へ収容するのは実質的に不可能で、数や時間の事情で保護しきれずに地上に残される人間や生物が多数出てくるであろう事が容易に予想でき、行き着く先が大量殺戮とそう変わらない(この点はスネ夫達にも指摘された)。
- 大洪水によって何もかも破壊されてしまうため、僅かな食料や資源を巡った紛争の勃発や大洪水の影響で生じた汚染が原因による疫病の蔓延によって、地上世界側の人間では更なる多大な犠牲者が出てしまう可能性が非常に高い。
- 地上が滅ぼされれば、そこでの生活を強要された人々は天上界を激しく憎むのは当然で、長い時を経た末に、地上世界側による天上界への報復戦争が起こる可能性が高い(それを防ぎたければ、天上人はノア計画のようなことを結局、延々とやり続けなければいけなくなる)。作中の天上人は祖先を追いやったとして地上人を憎んでいる傾向が強いが、地上人は天上人の存在を全く知らなかったため、いわば一人相撲であった。しかし、ノア計画が実行されれば、地上と天上は憎悪と報復の連鎖の悪循環に陥るのは必至である。
- キー坊が大使として着任している以上、自分達の都合の為だけに地上世界を滅ぼせば、植物星との関係が悪化する可能性もあり得る。少なくともキー坊が植物星に向かった時点で植物星本星政府は地球への干渉は暫定的に中断することを決定している(天上人に無断で地球に干渉しようとしたとは思えないため、恐らく、この後になって植物星が天上人の存在を知り、接触と国交樹立があったと思われる)。
結論で言ってしまえば、こんな環境下で原始時代の生活を送れと言うのは無茶苦茶である(おまけに生物達も地上に戻そうと考えている始末で、人間と他の生物達同士による対立・競争や喰い合い等も発生する可能性が高い。人間は作中でも言われるように原始時代に戻る=野生生物を食べるしかなくなる上、環境が激変した中で野生生物の多くも生きていけるかはかなり怪しい。つまり多くの野生生物を助けるどころか絶滅においやる可能性も高い)。言うならば天上人の独善的な「優生主義」のエゴが強いと思われる。
もはや「地上人の自業自得」で済まされるレベルを完全に超えているどころが、地球上の生物の大半にとっての大惨事になる計画の為、余りにも問題点が多すぎる計画であると言えよう。
ただ、のび太と竜の騎士ほどではないにせよ、天上世界の技術で何らかの救済策を計画していた可能性はあるが……
言ってしまえば先述の通り、環境破壊によって天上人達が最終的には首を絞める行為となる。つまり「独善的思考」と「本末転倒」とはこの事である。
- どちらにせよ6600万年ぶりの大惨事になりかねないので、地球上の生物全てが大きな被害を受ける可能性が高い。
しかし、別の観点から見据えた場合、この計画による地上人の粛清を、天上人は直接手を下さずに、「環境不適応の淘汰の一環」として捉え、天上人の多くは手を汚さず責任を意識しづらい方法を採っていると言える。
もう一つの指摘として、天上人たちはこの計画に対して「自然的な方法で行った、地球を汚さないクリーンな方法」と解釈しており、過剰に自然を賛美、崇拝しているので逆に自然に負担が掛かる事に思考が向いてない節がある。
地上を離れた世界で生きる以上、人工物に囲まれている為に自然の限界値が見えておらず、ただその雄大さを過信し、自分達の小さい力で傷付く様なものでもなく、まして方法が自然的だから大丈夫だろうと、天上人からして地上人の憎しみで色々と目が曇っているのだ。
現に、天上連邦議会の人間達の殆どは、地上世界の各国を動かす権力者等に一切接触をせず、動物を傷つける密猟者や国を動かすどころか政治的知識すらない小学生の子供達を、地上世界の代表として(事前に殆ど準備や説明もさせずに)議会に招集し糾弾を行い、ノア計画の正当性と即時実行を主張(もっとも、大長編は「日常に帰る」ラストなので、地球の危機でも大統領や総理大臣などを出せないシチュエーションなのは『鉄人兵団』などでも同様なのは留意すべきであろう)し、地上人が今の状況を憂慮して環境保護活動を始めていると言う意見も嘘だと糾弾して検証もしない始末。
公平性など欠片も無い魔女裁判同然のやり方に出ており(その場に出席し地上世界側の人間に不信感を抱いていたパルパルでさえ、見るに見かねて異議を唱えた程)、「自分達の環境と生活を守る」という主張を、「私怨」や「復讐」の建前にしているとしか言えない様子であった。
劇中の天上人では大統領のみがこの計画の恐ろしさを理解しており、しかもそのことを表明した相手がキー坊であった事から、大人の事情で描かれなかっただけで、「実は元々は地上人絶滅の計画だったのを、どうにか妥協案でノア計画に落ち着かせた。この時話していた相手は外国の大使なのでそんな裏事情は語らなかった」という推測や、「計画を推進している過激派の中には、ノア計画後にさらなる手を打って、本当に人類を絶滅させて禍根を永遠に断つ計画を持つ者もいたのでは?」という説もある。
天上界を守る為ならば多少の犠牲は仕方がないといった所であろうが、皮肉にも、それは自分たちの生活を守る為に自然を犠牲にする地上人達の姿そのものであった。
更に皮肉だが、上記のことから天上人を邪悪扱いするネットでの意見も多いが、その姿勢もまた「地上人を悪と扱う天上人」の姿勢とも大差はない。
最終的にはのび太たちが救ってきた絶滅動物やドンジャラ村の人々の証言、そしてキー坊の演説により地上人が僅かずつではあるが前進していることを公表されたことで、満場一致で計画の中止が決定された。
これは、「ドラえもん達が身を挺して密猟者達の暴挙を止めたのも影響した」のかもしれないが、「密漁者達が砲撃した『雲もどしガス』によって天上界のエネルギーを製造する為のエネルギー州が壊滅状態に陥った結果、深刻なエネルギー不足の状況となり、莫大なエネルギーが必要になると思われるノア計画を実行に移したくても延期せざるを得なかった」という説もある。
関連タグ
ノアの方舟:ノア計画のモデルとなったと思われる概念。
における同種の計画を独断で行ったスパコン。
キング・オブ・モンスターズ:これの怪獣版。