概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。初登場エピソードはTC11巻収録「もしもボックス」。
公衆電話ボックス型の道具で、中に入って受話器を掛け、「もしも○○が××だったら?」のように話してベルが鳴れば、その通りの世界になる。ドラえもん曰く「一種の実験室」とのこと。
作中では「もしも魔法の世界だったら?」、「もしも音のない世界だったら?」、「もしもお金が要らない世界だったら?」等のように、世界の法則ごと変えてしまう使い方が多い。変えた世界を元に戻したい時は「元に戻して」と受話器に話す必要がある。
また、下記の「物価がとんでもなく安い世界」で、のび太が「もしも物価が安い世界だったら。ただし僕が持っている1万円札はそのままで」と言っているように、例外を設ける等の細かい指定も可能。
ただし、効果の重ね掛け(一度何らかの世界を実現させた後、他の要素を追加する)が出来るかどうかは不明(下記の「昼夜が逆転した世界」では、のび太が「夜を明るくして昼を暗くし、その昼を夜と呼び、夜を昼と呼ぶことにする」と追加で入力した際、結果的に元の世界に戻ることになってしまった)。
一見万能な道具のようだが、思い通りの世界を実現しようとしても結果的にある程度の辻褄が合わされてしまうので、中々上手くいかないようだ。また、もしもボックスが故障してしまうと元の世界に戻すことが出来なくなってしまう。ただし元の世界に戻したい場合、必ずしも一度使用したもしもボックスでなければならないということはなく、他者(ドラミ等)が持っているもしもボックスでも元の世界に戻すことが可能。
設定及び解釈について
原作版では『魔界大冒険』の作中にて、ドラえもんとドラミが「もしもボックスで実現した世界を元に戻しても、一度実現した世界はパラレルワールドになり、消えることなく続いていく」と説明している。その一方、下記の「鏡のない世界」及び「のび助がアメリカに転勤になる世界」では、もしもボックスは現実世界を改変する道具として描写されている。
それだけでなく、上記の通り原作版では「この道具で実現した世界はパラレルワールドになる」と説明されているが、これは「最初から存在しているパラレルワールドを探し出して移動している」ということなのか、あるいは「使用者の望み通りのパラレルワールドを新しく生み出している」ということなのかは、作中で正確に説明されていない。その為、原作版以外の書籍及び派生作品では、もしもボックスについて解釈が分かれている。ここではその一例を記述する。
- 元から存在するパラレルワールドへ使用者を移動させる道具とする解釈
『ドラえもん道具カタログ』(1986年発売)、『映画ドラえ本 のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~ 公式ガイドブック』(2007年発売)、水田わさび版アニメオリジナルエピソード「魔法使いのび太」(2007年放送)、『ドラえもん のび太の空飛ぶ船』。特筆すべき点として「魔法使いのび太」及び『ドラえもん のび太の空飛ぶ船』は、原作版及び派生作品を含めて、ドラえもん達がパラレルワールドへ移動する(及びパラレルワールドのドラえもん達が現実世界へやって来る)様子を明確に描写した数少ない作品である(2021年12月時点)
- 新たなパラレルワールドを作り出す道具とする解釈
『ドラえもんひみつ全百科』(『てれびくん』1980年6月号の付録)、『ドラえもんのひみつ道具使い方事典1』(1990年発売)、『ドラえもん 宇宙大探検』(1992年発売)
- 現実世界を作り替える道具とする解釈
2010年版「大富豪のび太」、水田版アニメオリジナルエピソード「アリガトデスからの大脱走」(2012年放送)、『学習まんが ドラえもん ふしぎのサイエンス 月のサイエンス』(2019年発売)
また、上記の「魔法使いのび太」では、もしもボックスは「元から存在するパラレルワールドへ移動する」道具として描写されているが、上記の「アリガトデスからの大脱走」では、もしもボックスは「現実世界を作り替える」道具として描写されている。その為、水田版アニメでは原作版と同様に、エピソードによってもしもボックスの解釈が異なっている。
上記の2010年版「大富豪のび太」では、のび太がもしもボックスで元の世界へ戻した際、ドラえもんやミイちゃんの目の前に置かれていた大量のドラ焼き(下記の「物価がとんでもなく安い世界」を実現させた後、ドラえもんがのび太から貰った大金で購入したもの)が突然消失し、ドラえもんとミイちゃんが驚く様子が描かれている。
仮にもしもボックスが「パラレルワールドへ移動する」装置だった場合、ドラえもんとのび太が最初にこの道具を使用した時点で彼らの傍にいなかったミイちゃんは、現実世界ではなくパラレルワールドの住人ということになる。その為、ドラ焼きが消失した時点で現実世界からやって来たドラえもん(及びのび太)のみが元の世界へ戻ったことになる為、パラレルワールドの住人であるミイちゃんがドラ焼きの消失に驚く描写は矛盾が生じてしまう。
水田版アニメにおけるもしもボックスは、原作版及び大山のぶ代版アニメと比べてデザインがやや変更されている(上画像参照)。
上部には青色のメーターが取り付けられており、使用時には赤色に変化する。すなわち、メーターの色を見れば使用者がどちらの世界(現実世界もしくはパラレルワールド)に存在しているかを確認出来る仕組みになっている。
それだけでなく、電話機にはタイムパトロール及び故障時の連絡先が記載されており、ドアの内側には「立小便禁止」と記載された紙が貼られている。
『魔界大冒険』及び『新魔界大冒険』では、もしもボックスがママに捨てられてしまい、ドラえもんとのび太は元の世界に戻ることが出来なくなってしまった。その後、ドラえもんとのび太が「タイムマシン」に乗り込み、自分達がもしもボックスを使用する前の過去へ戻ろうとした際、魔法世界の魔界星から現実世界の地球へ帰還している。
- ただし学年誌の学習漫画ではもしもボックスを壊すと、急遽元の世界に投げ出されるという設定になっている。
このことから、タイムマシンを使用すればもしもボックスが無くとも別次元間を移動出来ることが分かる(仮にタイムマシンで純粋な時空間移動のみを行ったとすれば、もしもボックスが「元から存在するパラレルワールドへ移動する」装置だった場合、ドラえもん達は魔法世界の地球に到着することになり、もしもボックスが「新たなパラレルワールドを作り出す」装置だった場合、ドラえもん達は何も存在しない世界に到着することになってしまう)。
実現させた世界の一例
正月の定番の遊びが存在しない世界
TC11巻収録「もしもボックス」にて、凧揚げと羽根つきが下手なのび太から「今年の正月くらいはバカにされたくない」と言われたドラえもんが、のび太の為に実現させた世界。
凧揚げも羽根つきも誰一人経験したことないのだから、自分がこの世界でそれらの遊びを紹介すれば誰よりも上手に遊べて尊敬されるはず! と考えたのび太だったが、のび太が作ったへたくそ用ルールでは誰もまともに遊ぶことができず、恥ずかしくなったのび太は元の世界に帰ってしまった。
昼夜が逆転した世界
大全集18巻収録「もしもボックスで昼ふかし!?」(原題「もしもボックス」)にて、夜更かししたいと考えたのび太が実現させた世界。しかし人々の生活習慣が12時間逆転しただけであった。ちなみに、このエピソードはドラえもん文庫開設のきっかけとなった横山泰行教授が最後に入手した幻の作品(週刊分冊百科『ぼくドラえもん』21号付録に掲載されるまでは『てれびくん』別冊付録のみだった)の一つだった。また、大山アニメでは一度もアニメ化が実現していなかったが、水田アニメによってようやく日の目を見ることになった。
お金のいらない世界
TC13巻収録「お金のいらない世界」にて「お金という概念がなければ何でも手に入るのでは?」と考えたのび太が実現させた世界。
実際はこの世界では貨幣が負債の単位として扱われており、物を購入する際は金を受け取らされ、スリは自分が持っている札束を他人の懐にねじ込み、給料日には労働者が封筒に紙幣を詰めて職場に持って行き、街角では乞食がダンボール箱いっぱいの紙幣を「一枚でもいいから持ってって」と泣き付くという状況であり、結局は現実世界を更に厄介にしただけの世界で終わってしまった。ちなみにこの世界では金を遺棄しようとする人間が後を絶たないため、貨幣及び紙幣を捨てた者は10倍の罰金を貰わされることになる。もうややこしくて仕方がない。「お金のいらない世界」は、金が「いらないもの=邪魔なもの」として扱われる逆転世界だったのだ。
あやとり世界
TC15巻収録「あやとり世界」にてのび太が実現させた世界であり、あやとりが大人気スポーツになっている。
唯一、のび太の思い通りに進んだ世界であり、のび太がプロあや(あやとり世界にて存在しているスポーツ)の選手として史上最年少デビューを果たすかまで漕ぎ着ける。このようにのび太にとっては、何一つ問題が起きない唯一の理想的な世界だったのだが、あやとりができず仲間外れにされていたある身近な人物の手によって、この世界も終わりを告げることになる。
音のない世界
TC16巻収録「音のない世界」にて、ジャイアンリサイタルを恐れるあまり、ドラえもんとのび太が実現させた世界。
結果、この世界では音が存在しない為、ありとあらゆることに筆談が必要となり、あらゆる情報を目と鼻だけで感知しなければならない(背後から車が来ても気が付かない等)という厄介な世界でしかなかった。しかも、ジャイアンの歌は何故か彼が書いた字を見ているだけで気分が悪くなってしまい、眼鏡を外すとジャイアンの怒りを買った為、結局何の意味もなかったのである。
上記のようにもしもボックスはパラレルワールドへ移動する時はもちろん、元の世界へ戻る時も声で操作する必要がある。しかし今回、ドラえもんとのび太は「音が存在しない世界」を実現させてしまった為か、このエピソードだけ元の世界へ戻る描写がない。また、このエピソードは大山版及び水田版アニメにおいて一度も映像化されていない(一度は見てみたいと思っているファンも少なくはないが…)。
鏡のない世界
TC27巻収録「かがみのない世界」にて、全員が他人に指摘されるまで自分の顔が一切分からないという世界。落語「松山鏡」のパロディ的展開。
この世界は鏡が存在しないだけでなく、ガラスに自分の姿が映らなくなっている。交通問題が多発し、化粧もロクに出来ず、結果としてナルシストが各地で誕生した。結局、この世界も何の意味もないということで元の世界へ戻った。
このエピソードでは、鏡を見たことをない人間が初めて鏡を見るとどんな反応をするかという実験で「箱入りかがみ」(ドラえもんが用意したごく普通の鏡)が登場。ジャイアンは「ゴリラみたいなひどい顔」と言った後自分から怒って鏡を殴り、スネ夫は「ゴリラというよりキツネ」、しずちゃんは「かわいい女の子」と言ったため、口論に発展。その間に鏡を見た通りすがりの一般人は「10年前に家出した双子の兄」と勘違いして鏡を交番まで運び、警察官が鏡に向かって銃を乱射したのだが、ドラえもんが元の世界に戻した後も割れた鏡はそのままであり、警察官は先程まで銃を乱射していたことを覚えており、一般人も鏡を持ってきたことを覚えていた。その為、このエピソードでは「現実世界の改変」という形でのび太の望みを実現させている。
物価がとんでもなく安い世界
TC32巻収録「大富豪のび太」にて、上記の「お金のいらない世界」で懲りたのび太が、お年玉で貰った1万円札が現実世界(1981年)の日本における10億円分の価値を持つ、物価がとてつもなく安い世界なら大富豪になれると考えて実現させた世界(ただし上記の通り、のび太が「僕が持っている1万円札はそのまま」と指定したことで、1万円札の価値が下がってしまうことを回避している)。
しかし、小学生が10億円もの大金を持ち歩いていれば周囲から狙われないはずがなく、のび太は誘拐犯同士で取り合いになってしまう。何とかその場から逃げ出したのび太は元の世界へ戻るのだが、途中で1円を落としてしまい、必死に探しながら「1円という大金を落としたんだぞ!諦められるか!」と言い放つほどのドケチになってしまった。
眠れば眠るほど偉い世界
TC30巻収録「ねむりの天才のび太」にて「昼寝で皆からチヤホヤされたい」と考えたのび太が実現させた世界。
確かにこの世界では、のび太は狙い通り皆から尊敬されることになった。しかし「眠ることが最も重要」とされるこの世界では、政治家は国会でいつも眠って政治は混乱、経営者も労働者も眠り続けて経済活動は停滞し、子を持つ親は家事も育児も無視して昼寝ばかりでネグレクトが横行するという破滅的な世界で、挙句の果てには居眠り運転で野比家の壁にトラックが突っ込んで来た。結局、のび太は大慌てで元の世界へ戻った。
のび助がアメリカに転勤になる世界
TC31巻収録「ためしにさようなら」にて、本当に自分が周囲から信頼されているのかが気になったのび太が「試しに僕がパパの転勤でこの街からいなくなったら皆はどう反応するか」という実験のために実現させた世界。
ジャイアンは泣きながら別れを告げる、スネ夫は自分のおもちゃをプレゼントする、先生は英会話のテープをプレゼントするなど、今までに比べて格段にまともな世界だが、こういう時に限ってもしもボックスが故障してしまい、本当にアメリカに行かなければならなくなってしまう。
その後、ドラえもんがもしもボックスを修理して元の世界に戻すと、帰宅したのび助の口から会社側の「2月馬鹿」(4月馬鹿=エイプリルフールの2月版)だったと語られる。のび太はちょうどその時、ジャイアンから「これまでお前を虐めたお詫びとして俺をボコボコにしてくれ」と頼まれ、のび太は気が進まないながらもジャイアンを殴ったのだが、元の世界に戻した際はジャイアンの怪我はそのままであり、彼は先程自分がのび太に対し言ったことを忘れ「何で俺を殴った!」と怒り出してしまった。
ドラえもんやのび太以外の人物の中でも改変中に起こった出来事を記憶している者(のび助や玉子、会社の人々)もいれば、元の世界へ戻した後にそれまでの記憶を失っている者(ジャイアン)もいる。それでいて改変中に起こった出来事は元の世界に戻した後も引き継がれている。その為、このエピソードでは「現実世界の改変」という形でのび太の望みを実現させているが、結果としてのび助の上司達に嘘をつかせることに留まっている。
魔法世界
『魔界大冒険』で実現した世界。
「魔法が使えれば何も苦労せず生活できる」と考えたドラえもんとのび太が実現させた世界だったが、勿論タダで魔法が使える訳ではなく、体系的な知識と技術の学習が必要。その経験がないのび太は、この世界では幼稚園児でも使えるような初歩的な魔法さえ使えないということで余計に馬鹿にされる羽目になってしまった(作中にてドラえもんは「魔法を使えるようになる道具はない」と発言しているが、実際には彼が持つひみつ道具の中に、あらゆる魔法を自由に生み出すことが出来る「魔法事典」という道具が存在している)。
特筆すべきはこの魔法世界は「科学が迷信として廃れ、魔法が発達した世界」という設定となっていること。そして現実世界からやって来たドラえもんが取り出すひみつ道具は魔法世界の住人にとっては「迷信であったはずのもの」になってしまい、畏れられ感嘆されるのである。
この世界観は当時としては非常にエキセントリックなものであり、後の世代でも『魔法先生ネギま!』や『魔法少女リリカルなのは』、『劇場版仮面ライダーウィザードinマジックランド』等で「科学世界の裏に魔法が発達した別の世界があったら?」という発想が描かれた。
作中では、危機的状況に陥ったドラえもんとのび太が、もしもボックスの使用を阻止しようとタイムマシンに乗り過去の自分達の元へと向かう。しかし、魔王の刺客であるメジューサに追跡され、過去の世界で魔法により石に変えられてしまう。この場面から、上記の通りタイムマシンを使えばもしもボックス無しでもパラレルワールドから次元を超えて現実世界へ帰還出来ることが分かる。また、元の世界(魔法が存在しない現実世界)に移動したにもかかわらず、のび太がホーキングを行えたり、メジューサが魔法を使うことが出来る。この描写から分かる通り、移動後のパラレルワールドにおける法則は、移動前の現実世界でも通用する。また、魔法世界ではドラえもんが純粋な科学技術で作られたひみつ道具を使用している。この描写から分かる通り、移動前の現実世界から持ち出した物は、移動後のパラレルワールドでも問題なく使用可能。
また、作中ではのび太のママがもしもボックスをゴミとして廃棄してしまった。その為、原作版におけるこれ以降のエピソード(短編・大長編)では、もしもボックスは登場していない。
使用者が一番ハンサムに見える世界
『続ドラえもん全百科』に登場。
作中では、名前が設定されていないモブの少年がもしもボックスを使用し、「自分が一番かっこよく見える世界」を実現させた。その際、モブの少年は周囲の女の子達に言い寄られ、元の世界ではハンサムと評価されそうな少年が「いいなあ、あんなにモテて…」と羨ましがっていた。
地球に巨大隕石が衝突した世界
『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』に登場。
のび太がもしもボックスに「もしも地球に巨大隕石が衝突したら」と入力した瞬間、ドラえもんとのび太が立っていた場所に隕石が激突し、吹き飛ばされたドラえもんは「馬鹿なこと言うなー!」と叫んでいた。
学校の授業があやとりと射撃しか存在しない世界
『決定版ドラえもん大事典』に登場。
のび太の特技を活かせるようにしてあげようと考えたドラえもんが実現させた。その世界でのび太は抜群の成績を叩き出すのだが、先生から「君にはもう教えることがないから卒業しなさい」と言われてしまい、しずか達に卒業を祝われ学校から送り出されたのび太は「こんなの嫌だ!」と泣き出してしまった。
環境汚染が激化した世界
『ドラえもん学習ゲームブック 地底大魔王の謎』に登場。『竜の騎士』に登場した地底国出身の恐竜人間・カール(地底大魔王)が、昼寝中のドラえもんの「四次元ポケット」から盗み出したもしもボックスで実現させた。
「熱帯雨林に雨が降らなかったら」「フロンガスの濃度が上昇したら」「全世界の排気ガスが南極上空に集まったら」という三つの破滅のシナリオで人類を全滅させようとしたが、実はもしもボックスはレンタル品であり、カールが賃貸料金を支払ってなかったせいで計画は水の泡になることになった。
宇宙が生まれる前の世界
学習漫画『ドラえもん 宇宙大探検』に登場。宇宙がどうして生まれたのかをのび太達に教える為、ドラえもんが実現させた世界。
特筆すべきは上記及び下記のように「パラレルワールドへ移動する」ことが目的ではなく「宇宙が生まれる前=全てが一切存在していない世界へ移動する」ことを目的として使用された点である。
実際にドラえもんが「もしも今の宇宙が出来る前に戻ったら」と言いながらもしもボックスを使用すると、ドラえもん達の周囲が文字通り無の世界となり、その後はビッグバンが発生し、最終的には地球や太陽系が出来上がった(実際に長い年月が経過した訳ではなく、この場面はドラえもん達が宇宙誕生の瞬間から地球誕生までをダイジェストで眺めているような描写となっている)。
その為、この作品におけるもしもボックスは宇宙を含めた全てが一切存在していない世界(宇宙が生まれる前の世界)さえ作り出している(作中ではドラえもんがもしもボックスを取り出した際、「もしもこんなことがあったら…と頼むと、その通りの世界が作れるんだ」と説明している)。
太陽の光が半分になった世界
『ドラえもん ふしぎのサイエンス 3』に登場。夏の暑さに参ったのび太から「太陽の光を半分にして!」と頼まれ、彼に太陽の大切さを教えようと考えたドラえもんが実現させた世界。
ドラえもんがこの道具を使用した直後、気温が下がり雪が降り始めたのだが、世界中の海が凍ってしまい、窓や庭まで氷で覆われるという恐ろしい事態に陥ってしまった。
月が存在しない世界
『学習まんが ドラえもん ふしぎのサイエンス 月のサイエンス』に登場。のび太とジャイアンから「月が存在しない世界で暮らしてみたい」と頼まれたドラえもんが、彼らに月の大切さを教える為に実現させた世界。
ドラえもんがこの道具に「もしも月がなくなって、地球が月のなかった時代のように回っていたら」と入力した瞬間、地球の自転が速くなった影響で暴風が巻き起こり、瞬く間に夜が訪れ、月明かりがないせいで周囲が全く見えないほどの暗闇になるというとんでもない状況に陥ってしまった。
作中では、のび太がもしもボックスについて「電話で話した通りに世界が変わる」と言っており、ドラえもんも「他の人を巻き込まないようにしよう」と言いながら、この道具に上記の内容を入力する際に「(地球が)僕らしかいない惑星だとしたら」と付け加えている。その為、この作品におけるもしもボックスは「現実世界の改変」という形でドラえもんの望みを実現させている。
恐竜が絶滅しなかった世界
『学習まんが ドラえもん ふしぎのサイエンス 恐竜のサイエンス』に登場。恐竜が絶滅していなかったらどんな世界になっていたかを疑問に思ったのび太達が、ドラえもんからもしもボックスを出してもらって実現させた世界。
もしもボックスを使用したドラえもん達が家の外へ出ると、『竜の騎士』に登場したバンホーのような恐竜人達(ドラえもん曰く「恐竜型人間」)が人間と同様の暮らしを送っていた。その後、ドラえもん達は元の世界へ戻ったが、しずかは恐竜型人間を「6700万年経過する間に、恐竜が(人間のような知能や外見へ)進化を遂げた」と分析している。
ビー玉・枯葉が通貨の世界
『ドラえもん ひみつ道具百科 もしもボックスのまき』に登場。ロボットの玩具を購入したいのび太だったがお金がなく、彼がビー玉を沢山持っている様子を見たドラえもんが実現させた世界。
しかし手持ちのビー玉だけでは玩具を購入出来なかったのだが、のび太は大量の枯葉に目をつけ、今度は枯葉が通貨になった世界を実現させた。
野球とサッカーが融合した世界
スピンオフ作品『ドラベース』にて、プロサッカー選手・ロナえもんが草野球チーム・江戸川ドラーズと闘うために無理矢理実現させた世界。
基本的なルールは野球と同じが、「打者はバットを使わずに足でボールを蹴ってもよい(守備についている選手もボールを蹴ってパスしていい)」「反則を起こした選手にはカードが出る」「外野席奥のゴールにボールが入ったら無条件でホームラン」等、サッカーのルールも取り入れたカオスなスポーツになっている。キックベースで良くないかな…。
のび太が3歳児の世界
大山版アニメオリジナルエピソード「のび太3さい!?」にてのび太が実現させた世界。詳細は項目を参照。
のび太が女の子の世界
大山版アニメオリジナルエピソード「わたしのび子よ」にてのび太が実現させた世界。
のび太が「女の子だったら皆から優しくされるのかな?」と考え、もしもボックスで実現させたのだが、何故かドラえもんも女の子になってしまった。
のび太の狙い通り皆から優しくされたが、しずかとジャイアンでとある問題が発生してしまい…。
スネ夫の家が無一文の世界
水田版アニメオリジナルエピソード「豪華!スネ夫の貧乏バースデー」にてスネ夫が実現させた世界。
スネ夫の誕生日を祝おうとプレゼントを持ってきたのび太達三人を、彼がいつものように金持ち自慢で怒らせてしまう。そこでスネ夫が「庶民の暮らしを味わってみたい」と考え、ドラえもんに頼み込みもしもボックスを使わせてもらう。
スネ夫の父親の会社が倒産し、家財一式が差し押さえられ、骨川家は裏山でホームレス生活を余儀なくされる。しかしスネ夫は裏山での自給自足生活を満喫し、自力でからくり仕掛けの木製貯金箱、無添加食材で作ったクッキー、手作りの高級和紙を作ってしまうほど。
結果的に数少ない、使用者にとって都合がいい世界となり、スネ夫が反省することはなかった。
昼寝が競技化した世界
水田版アニメオリジナルエピソード「ひるね王選手権」にてのび太が実現させた世界。
上記の「眠れば眠るほど偉い世界」と同様に、のび太は昼寝の競技で世界記録保持者になったが、その睡眠技術を利用しようとする悪の組織に狙われてしまった為、結局は元の世界に帰ることになった。
叱っちゃいけない世界
水田版アニメオリジナルエピソード「アリガトデスからの大脱走」にてのび太が実現させた世界。
夏休みの宿題を終えないまま始業式の朝を迎えてしまい、先生に叱られることを恐れたのび太は咄嗟にもしもボックスで上記の世界を実現させてしまう。
その結果、22世紀では子供や若者が平気で犯罪を犯し、それどころか法律により人を叱った場合は罰則を与えられることになってしまい、叱った者が逮捕されるという世紀末の状態に。更にドラえもんは「叱り現行犯」によりロボット収容所・アリガトデスへ連行され、もしもボックスは収容所の所長・マジメーによって没収されてしまい…。
このエピソードでは、叱ってはいけない世界がもしもボックスにより実現したことを知ったマジメーが、タイムマシンで21世紀へ向かい、のび太の部屋に置かれていたもしもボックスを回収している。それだけでなく、このエピソードでは22世紀の世界及びドラミももしもボックスの影響を受けており、『魔界大冒険』及び『新魔界大冒険』における描写(作中ではドラミはもしもボックス使用後の世界における未来から駆け付けたのだが、彼女はパラレルワールドではなく現実世界の住人である。また『新魔界大冒険』では、ドラミはもしもボックス使用前に起こった出来事を覚えていた)と一致しない。
仮にもしもボックスが上記の「パラレルワールドへ移動する装置」だった場合、ドラえもんやのび太が元の世界へ戻った後も叱ってはいけない世界は存続することになるが、実際にはマジメーがもしもボックスを回収している。その為、このエピソードにおけるもしもボックスは「現実世界の改変」という形でのび太の願いを実現させている。
毎日が母の日の世界
水田版アニメオリジナルエピソード「母の日は終わらない」にてのび太が実現させた世界。
「毎日が母の日だったらママに叱られずに済む」と考えたのび太がドラえもんに頼み込み、この道具を使わせて貰う。最初はドラえもんはこの世界に反対して元に戻そうとするが、ネズミが受話器のコードを噛み千切ったせいでもしもボックスが故障してしまい、ドラえもん達はしばらくこの世界で過ごすことになってしまう。
その結果、カーネーションが入荷未定になったり、運動会では母親の肩たたき競技をやることになったり、のび太の誕生日ケーキが母の日仕様になる等、厄介な事態に陥ってしまった。それだけでなく、ドラえもんがもしもボックスを修理に出そうと未来へ向かった際、22世紀の世界でも毎日が母の日の状況が続いており、その影響でもしもボックスの修理が大幅に遅れてしまった。
また、このエピソードでは上記の「叱っちゃいけない世界」と同様に、22世紀の世界ももしもボックスの影響を受けており、『魔界大冒険』及び『新魔界大冒険』における描写と一致しない。
空飛ぶ船が存在する世界
『グランブルーファンタジー』とのコラボイベント『ドラえもん のび太の空飛ぶ船』にてのび太が実現させた世界。スネ夫のクルーザーに乗せてもらえないことを不満に思ったのび太から頼み込まれたドラえもんがこの道具を取り出すも、のび太は「空飛ぶ船が存在する世界を実現させただけでは、しずか達から船が空を飛ぶのは当たり前だと言われてしまうのでは?」と疑問を抱く。そこでドラえもんは「しずか達を部屋に連れて来て、自分達と一緒にパラレルワールドへ行く」ことを提案し、しずか達を部屋に招いた後、のび太が「もしも空飛ぶ船が存在する世界に行くことが出来たら」と告げたところ、ドラえもん達はグランブルーファンタジーの世界へ移動することになった。
のび太とジャイ子が結婚している世界
トヨタ「ノア」のCM、TOYOTOWN NOAH「のび太とジャイ子の娘」編より。
ミニバンを買ったのび太(妻夫木聡)を見たジャイ子(前田敦子)が実現させた世界。ジャイ子と同じ格好をした我儘娘がおり、彼女とドライブに行こうとしたが「月かアマゾン(に行きたい)」と無茶を言ったり、車内で「やっぱり南極がよかったな」と愚痴をこぼしていた。
関連タグ
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創世セット:一部の書籍で「新たな世界を作り出す」と説明されているタイプの「もしもボックス」と同様に、こちらも新たな宇宙を作り出すことが出来る。