ペスト菌(細菌学者の北里柴三郎が発見)が人体に感染して引き起こされる病気。別名「黒死病」。元々はネズミが罹る病気で、ペストに罹ったネズミの血を吸ったノミに人間が刺されて発症する。
漢字1文字で 癙と表記される。
ペストは古くから発生しており、記録が残っている世界最古のペストは西暦543年にエジプトで発生したもので、この時は北アフリカ、ヨーロッパ、南アジア、中央アジアで人口の50%〜60%が死亡したとされる。また1346年に発生したペストでは、当時のヨーロッパの人口の3分の1が死亡し、人々を恐怖に陥れた。日本では、感染症法により一類感染症に指定されていて、1930年以降発生していない。しかし日本人がペスト発生国に出かけ、感染する例は報告されている。また、近年はバイオテロの手段の1つとして使われている。
メインイラストのカラスを模したガスマスクのような覆面は、元々ペスト患者を診る医師の為のマスクであり、17世紀頃に考案・実際に着用されており、クチバシの様な部分にハーブや香料などが詰まっていた。
当時は「悪性の瘴気や悪霊が病を引き起こす」と考えられていた為に、それを防ぐ意図で作成されたのである。
詳細はペストマスクにて。
上記の通り、度々多大な人口減を引き起こしており、歴史への影響も非常に大きい。
社会構造の変化や、王族貴族が罹患し死亡し急な王位継承等で、未曾有の混乱が引き起こされる時代もあった。
身分や貧富の差に関係無く襲い来る死は14世紀に『死の舞踏』と呼ばれる集団パニックを引き起こし、後にそれは美術の題材や寓話となり、後に『メメント・モリ』の思想が誕生した。
日本の感染症法では最も危険な一類感染症とされており、患者は強制的に隔離入院させられる。これはエボラ出血熱や天然痘などと同等の措置である。ちなみにペスト以外の一流感染症は全てウイルス性疾患である為、ペストは細菌性疾患としては唯一の一類感染症となっている。
感染の仕方によって異なる
圧倒的な致死性による甚大な被害を生んだ背景から、ペストに関わる〈病魔〉は世界各地で発生し伝承された。
- 死の乙女(スラブ、ドイツ)
- ペストの天使(ローマを主にヨーロッパ全域)
- チューマ(ブルガリア)
- クーガ(クロアチア、セルビア、旧ユーゴスラビア)
また、人から人の感染も起こりうる為、人々は恐怖から遠方からの見知らぬ商人や旅人を〈病魔〉と見なし、ビビやククージィと呼ばれる怪異をも産み出した。
上記で触れた『死の舞踏』から絵画の世界では、道化師じみた悪魔や死神を〈マカーブル〉と呼称するようになり、何時しか独立した怪異と認知されるようになった。
太平洋戦争中、キスカ島にて日本軍が撤退した際に軍医がいたずらで「こちらペスト患者収容所」との立札を残していったが、これを見た米兵がパニックを起こして、本国にペスト用のワクチンを大量発注する羽目になった。
尚、この立札を訳した通訳官は後年に日本に帰化している。
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