――優、孤門、俺は俺の光を走りきる!――
演:内山眞人
概要
1992年2月26日生まれ。
姫矢准から光を受け継ぎ、デュナミストとなった17歳の少年。出身はアメリカ・ダラスで、現在は日本の遊園地に住み込みでアルバイトしている。
TLT北米本部配下の極秘組織「アカデミー」の「プロメテウス・プロジェクト」によって、優秀な遺伝子の優秀な部分だけを組み合わせて造られた遺伝子から誕生したハイブリッド新生児(所謂「デザイナーベビー」)「プロメテの子」達の一人で、TLT-Jの作戦参謀、イラストレーターこと吉良沢優とはアカデミー時代のルームメイトだった。
以下憐編後半〜最終話までのネタバレ注意
将来の希望は海洋学者だったが、寿命を決める遺伝子に致命的なディフェクトを持っていた為、16歳から17歳を境に一気に全身の細胞がアポトーシスを起こして死ぬという運命にある。これは「ラファエル」という特効薬がなければ直らず、寿命はもう僅かしか残されていない。
しかし、どれだけ待とうとも進歩しない治療のためにスタッフといった他人の命を巻き込んで消えていくだけの自分の命を無価値だと悲観するようになり、せめて誰も知らない場所でしたいことをしながら死のうと考え施設から脱走した。
性格は明るく人懐っこく、孤門やメモリーポリスから派遣された監視役である野々宮瑞生とも心を通わせる。ちゃっかりしており、孤門には自分の事を秘密にしてほしいと約束させておきながら、瑞生にはまた会いに来てほしいから自分の事を全て報告していいと告げている。
「天使は、ラファエルは来ない。だから俺、どうせ短い時間なら、誰も俺が死ぬってことを知らない所へ行こうと思った」
「そしたら、何でか解んねえけど、俺みたいな失敗作のところに光が降ってきて……」
「迷わなかった……自分にもまだ、できることがあるんだと思ったら、すっげえ嬉しかった」
「遊園地でずっと見てた、子供たちや親やたくさんの人たち。ああいう人たちを自分は守れるって、そう思ったら、本当、嬉しかったんだ」
「孤門、俺はまだ戦える。戦ってれば、死ぬことなんて忘れていられる」
姫矢から光を受け継ぎ、ウルトラマンとなってからは自分の命に最後の価値を与えてくれたウルトラマンに感謝しながらも
「どうせ死んでしまうのだからいつ死んでも構わない」
「必死で戦っている間は自分の運命を忘れていられる」
といった考え方から、スペースビーストの攻撃を避けない、予備動作の長い攻撃に対し正面から突っ込むなど投げやりかつなりふり構わない捨て身の戦法が目立った。こういった無茶な戦い方、もうすぐ尽きる寿命、さらに松永管理官主導の人体実験の影響もあって、最初に登場した時には自転車を軽快に乗りこなしていたのに、10話もしないうちに肩を借りて立つのがやっとの状態にまで衰弱してしまった。
「あなたはこれまで、死んでもいいと思って戦ってきた。だからダメージを一切顧みようとしなかった」
「死ぬ気で戦う事と、死んでもいいと思って戦う事は、全く違うことよ」
「生きるために戦いなさい、たとえ明日がなくとも」
Episode.35にて、人体実験から逃げ出した直後にもかかわらずビーストを倒しに行こうとしたところ、西条凪に「これまでの闘い方では勝てない」「生きること」について目を向けるよう諭される。このことで「生きるための戦い」を見出し、バリア等の防御技を使用するなど自分を案ずる戦い方へと戦法を変えた。
またこの時に彼女を次のデュナミストに選んでいる。
この頃から彼を取り巻く状況が大きく変化する。
瑞生から「もうすぐ死ぬとしても、それまでの時間と思い出は確かに残る大切なもの」と教えられたこと、さらに孤門から姫矢の事と「光は受け継がれていく希望」という言葉を教えられたことにより、たとえ自分に明日がなくとも、自分は絆の力を受け継ぎ、受け渡す流れの中にいることに気付き、「生きる」ことを決意する。
そして、プロメテの子たちがラファエルを遂に完成させたという報告を吉良沢から受けて、また一つ人間同士の絆の力を目の当たりにしたが、同時に最強のスペースビースト「イズマエル」が出現する。ウルトラマンに変身して戦えば死んでしまうことを吉良沢に告げられるが、死ぬ覚悟ではなく必ず戻る覚悟を決めた憐はラファエル投与を待たずに最後の戦いに突入した。しかし今まで殆ど撃墜されることのなかったクロムチェスターをいとも簡単に落とすイズマエルの前に苦戦し、ウルトラマンは倒れてしまう。
「憐……憐、聞こえるか?憐……光を信じろ!」
「……光?」
「光は、人に受け継がれる希望……俺は戦う!俺は生きる!生きて、この光を繋ぐ!」
吉良沢のテレパシーを感じ取った憐は渾身の力で再び立ち上がり、大技「オーバーアローレイ・シュトローム」を神速で叩き込みイズマエルを撃破。精神世界でネクサスに感謝の言葉を告げて分離すると、自分の乗ったストレッチャーにしがみついていた瑞生に無事を告げ、孤門にはピースサインを贈り、救急車でラファエルの待つ病院へ運ばれていった。
「負けるな孤門!俺も孤門のおかげで最後まで戦えた。ウルトラマンとして!」
ラファエル投与が間に合ったため無事生還し、最終回でダークザギと戦う孤門を激励し、孤門の変身するウルトラマンがジュネッスブルーへと変身する奇跡を起こすきっかけとなった。
1年後には自転車に乗れるほどに回復していた。
後日談小説『再臨-ドリームス-』では瑞生と婚約し、レストランを開くことになったという。
ハートフル太田愛
憐が登場してからネクサスと分離するまでのチャプター、所謂「憐編」のメインライターは、シリーズ構成の長谷川圭一ではなく、平成ウルトラシリーズにて数々の「心温まる話」を書いてきた脚本家太田愛である。
長谷川氏は元々第三クールで姫矢編の陰鬱な雰囲気をガラッと変えることを予定しており、太田氏は長谷川氏の熱望を受けて憐というキャラクターを描き切ると共に、涙なしには語れない物語をまた一つ描き切った。
余談
完全な裏設定ではあるが、姫矢から憐に光が渡ったことに関しても一応きちんとした理由付けがされている。
姫矢が世界の放浪の旅に出ていた頃、アメリカである少年を見つけた。その少年の雰囲気に自分と同様の孤独を感じ取った姫矢はカメラを向ける。この一期一会の繋がりが、光の流れを決定づけることとなった。
――そしてその少年は、アカデミーから脱走して間もない頃の憐であった。
千樹憐を務めた内山は放送当時18歳で、『ウルトラマンガイア』で高山我夢役を演じた吉岡毅志の19歳の記録を更新。8年後、『ウルトラマンギンガ』で礼堂ヒカル役で主演を務めた根岸拓哉が17歳で更新するまで歴代最年少記録を保っていた。
一番好きなウルトラマンはアストラと語っていたが、後に『尊哉の部屋』のゲスト出演した際に、実は兄のレオが好きだと語った。曰く「他とは違う自分」を演出するために「盛った」とか…
劇場版『ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』ではX本編で客演したウルトラマンマックス、ウルトラマンゼロ、ウルトラマンギンガ、ウルトラマンビクトリー、そしてネクサスがそれぞれジュネーブ、上海、ダラス、ブエノスアイレス、カイロに出現したツルギデマーガと交戦する。憐の出身地は上述の通りダラスなのでそれに絡めた演出があるかと期待されたが、結局ダラスにはギンガが来て、ネクサスは遺跡ネタでカイロに来ることになった。
当初、憐役を演じた内山は吉良沢役のオーディションを受けていたが落選した。
劇中で憐が働いていた遊園地のロケ地となったのは東武動物公園。姫矢編でもたびたび使われていた。
関連項目
朝倉リク:彼もまたデザインベイビー(こちらはM78星人の模造品)であるが、自身の出生を最初から知らないまま育っていた。
ラビットオルフェノク 影山瞬:演者繋がり
ショウ/ウルトラマンビクトリー:同じく演者が元ライダー怪人だったウルトラマンの変身者