曖昧さ回避
- ジャミラ・ブーパシャ:アルジェリア民族解放戦線の女性メンバー。1960年にフランス治安部隊による連行・拷問事件の被害者となる。この事件はアルジェリア独立運動のみならず当時の各国の学生運動に大きな影響を与えた。なお拷問は受けたが死んではおらず、2021年現在もご健在である。
- 1.の名に由来する、円谷プロ制作の特撮番組『ウルトラマン』第23話「故郷は地球」に登場する人物。その悲惨な死に方と後味の悪いストーリーは視聴者に強烈なインパクトを与えた。
本記事では2.について扱う。
DATA
別名 | 棲星怪獣(彗星怪人) |
---|---|
身長 | 50m |
体重 | 1万t |
概要
宇宙開発競争時代、不幸にもロケットの事故に遭い、水が全くなく、ただ炎が吹き荒れる灼熱の惑星(金星という説があるが、明確な出典はなく真相は不明)に墜落した地球人の宇宙飛行士・ジャミラが過酷な環境に適応して変貌を遂げた姿。よく見ないと分かりにくいが、顎鬚の名残が口元にうっすらと生えている。このためアラン・ビロッツという科学特捜隊のパリ本部の隊員が、その正体に気づく一因となった。
- 国際批判を恐れた母国が事件を隠蔽したため、その復讐のために宇宙船を修理・改造して地球へと帰還し、各国要人を乗せた飛行機を次々に撃墜、ついには国際平和会議の会場を襲撃した。
- 水が無く、火だけがある死の星の激甚な環境下で救助を待ちながら耐え続けた結果、口から火を吐き、皮膚は粘土状になっており火や高熱には滅法強くなったが、代償として求め続けた水が弱点の怪獣へと変貌を遂げた。
母国の隠蔽工作としての怪獣退治作戦・人工降雨弾には苦しみながらも耐えたが、ウルトラマンのウルトラ水流には耐えられず敗北。
泥まみれで這いつくばって赤ん坊の泣き声のような断末魔を発し、国際平和会議場の国旗を潰し続けながら絶命していった。
人間の時に求めてやまなかった「水」により絶命するという、その悲痛さあふれる死に方と、その後味の悪い結末は視聴者の多くにトラウマを残した。その悲痛極まりない死に方は涙を誘わずにはいられない。
最後は科特隊によって墓標が立てられ、ムラマツキャップからは、
「ジャミラ、許してくれ……だけどいいだろ? こうして、地球の土になれるんだから」
というせめてもの手向けの言葉が添えられたが、イデ隊員や皆の胸に去来したものは……。
「犠牲者はいつもこうだ。文句だけは美しいけれど…」
- (「為政者は~」「偽善者は~」など諸説あったが、HDリマスター版の字幕においては「犠牲者は~」と表記されている。)
- 解釈としては犠牲者は美しい文句(今回の場合帰りたかった故郷に帰還し、その故郷で死ねた)で飾られているが、そもそも犠牲となった者の一番の願いは(本人の意思で犠牲となることを選んだのでもない限り)「もっと生きていたかった」のはずであり、その想いを無視しておいてまるで報われたように扱っている事に対する憤りであろう。
- フランス語表記の墓碑銘からすると生没年は1960年–1993年(32歳か33歳)。あまりにも早過ぎた人生であった。
- なお、生没年が「メビウス」などの後年の作品と全く噛み合わないが、最初期のシリーズではよくある事なので、気にしてはいけない。一応、ジャミラの出来事は起こった扱いになっている。
行動原理
ジャミラが復讐しようとした理由は「国際批判を恐れた母国が事件を隠蔽した」こと。
ジャミラ自身がなんとか戻ってこれたように、あるいは作中で科学特捜隊が何度か宇宙に出ているように、母国側も助けに来るという選択肢はあったのにもかかわらず、面子のためだけに何の努力もせず見殺しにされたからこそジャミラは復讐のために戻ってきたのである。
能力
その悲劇性ばかりに目が行きがちだが、そこはウルトラ怪獣、インドぞう5000頭を持ち上げるほどの腕力の他、なんと100万度という凄まじい火力の火炎「サッチファイヤー」を口から吐くことができ、この火炎は体の裂け目からも出る。更に目からは高熱の光を発する事ができるという。また、環境の激変で頭脳が著しく発達したとされ、その証拠に改造されたロケットは透明化機能を備えているなど地球の科学を遥かに超えており、科学特捜隊がスペクトルα/β/Γ線を浴びせた事でようやく解除できたほどだった。
余談
一般に、ファンからは「人間の身勝手さに振り回された被害者」という印象の強いジャミラではあるが、某国への復讐を目的としていたはずが、国際平和会議出席者もろとも無関係な人々の命を奪い、通りすがりの小さな山村をも火の海に変えるなど復讐に狂うあまり、逆に彼自身も加害者になってしまったこともまた事実である。
- しかし、イデ隊員の「ジャミラてめぇ!人間らしい心はもう無くなっちまったのかよー!」という叫びに反応し、一瞬我に返って呆然とするなど、人間の心を完全には失っていなかったのは確かである。いずれにせよ、国家のエゴに踏みにじられた人間がその置かれた環境から正気を失い、今度は無辜の人間を攻撃してしまったのである。被害者が加害者へと転じてしまう悲しいサイクルには、やりきれないとしか言いようのない話である。
- 前記のように「人間らしい心は無くなってしまったのか」とイデは嘆いていたが、そもそもジャミラを突き動かしていた「怒り」や「恨み」、「復讐心」もまた人間らしい心でもあり、それを考えれば何ともやるせない場面でもある。
- 作中、円盤を撃墜され巨大な姿で逃走する際には、イデ隊員(まだ真実を知らされていない)からマルス133を撃たれている。命中したかどうかは定かではないものの、命中して尚耐え抜いたのであれば、その耐久力は相当なものである。
- 準備稿ではウルトラマンとの戦闘中でもつれ合い、海中に落ちるという展開だった。
- ジャミラに関する記録は残されているものの、後の『ウルトラマンメビウス』に登場した地球防衛組織GUYSの保管する記録の中では最も機密レベルの高い「ドキュメント・フォビドゥン」に収められ、隊長レベルの権限が無いと閲覧することはできない扱いになっている。
- 本来なら守るべき地球人の命を奪ってしまった事はウルトラマンにとって癒える事の無い心の傷兼忘れてはならない戒めとなっておりウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟にて『我々ウルトラマンは、決して神ではない。どんなに頑張ろうと救えない命もあれば、届かない想いもある。』と後輩であるメビウスに説いている。
- 劇中でジャミラの目から光が消えるシーンは断線による想定外のアクシデントだったが、特技監督の高野宏一は「この方がジャミラの悲しみをより表現できる」と瞬時に判断し、撮影を続行したため、結果的にこの演出は大成功となった。
その後の作品での登場
ウルトラマンタロウ
第25話において、エンペラ星人が率いていた怪獣軍団の一体としてジャミラの姿が確認できる。
過去にも彼と似たような境遇で怪獣と化したヒューマノイドの異星人がいたのか、はたまたエンペラ星人自らが改造を施してこのような姿にしたのかは不明。
ウルトラマンパワード
「その子を…離せぇぇぇぇっ!」
別名 | 棲星怪獣 |
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身長 | 1.8~60m |
体重 | 80kg~18000t |
第6話「宇宙からの帰還」に登場
初代のリメイクにあたる『ウルトラマンパワード』に登場した際はシルエットこそ同じであるが、宇宙服を着たまま怪獣化したようなデザインとなっており大きく印象が異なる。
「宇宙飛行士が変異した怪獣」という初代のジャミラを踏襲した設定だが、怪獣化の原因は「青く光る謎の宇宙生命体との融合」であり、後のシリーズに登場するビースト・ザ・ワンの先駆けの様な存在である。
詳しい項目はパワードジャミラを参照。
新世紀ウルトラマン伝説 THE KING'S JUBILEE
観客として登場。
大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE
ベリュドラの首を構成する怪獣の一体として登場。
ウルトラゾーン
キリエロイドⅡと共に『ジェネレーションギャップス』という漫才コンビを結成したほか、波打ち際で女性と戯れているアイキャッチが登場した。
漫才ではツッコミ役を担当し、相方の真面目さに振り回されており、フォルムが怪獣らしくないと評したり、横文字ばかりの設定についていけなくなったりしていたが、やがて怪獣とはなんたるかを突っ込む事をナンセンスに思うようになったが…。
漫画
ウルトラマン THE FIRST
国際宇宙ステーションのクルーとして登場する。怪獣墓場を調査中超巨大怪獣を製造しているバルタン星人の宇宙船団を発見。本部へ報告しようとするがバルタン配下の怪獣ブルトンに囚われた上、怪獣に改造され地球に尖兵として送り込まれる。地球に降り立ったジャミラは暴れることなくウルトラマンにバルタンの脅威を伝えるも、事情を知らないイデ隊員によってマルス133で射殺されてしまった。
その後に彼の墓が立てられるが、彼が怪獣化したことや遭難したことは原作と同様の理由で隠蔽された。後からジャミラの正体を知ったイデ隊員は自分が彼を殺してしまったことに強い罪悪感を覚え、「武力では何も解決できない」という無力感を覚えると同時に迷走を始めてしまう。
設定は改変されているが、理不尽に使い捨てられた犠牲者という点では原作に近いと言える。
ウルトラ忍法帖
アラビアの「ガラダマ王国」の国王ガラモン三世の使いとして初代ジャミラが登場したほか、侵略軍団の一人「雷鬼ジャミラ」としてパワードジャミラが登場した。
ちなみにCRぱちんこウルトラマンの図柄はジャミラの場合4となっているが、CRウルトラセブンのギエロン星獣の図柄も4である。意図したのかは不明。
かがやけ ウルトラの星
内山まもるによる漫画作品。
何を考えたのか悪の宇宙人軍団に操られるモブキャラ怪獣兵士として登場し、あろうことか海を渡ってやって来た。改造手術でも受けさせられたのだろうか。
酩酊!怪獣酒場
あの体系で人間の衣服を着ている姿が笑いを誘うが、彼はあまりにも運が悪く、割り箸を割れば中々上手い形に整わず、気づけば割り箸の残骸の山を築いていたり、注文しようと思った品が売り切れであったりする。
レシートで合計777円支払ったにもかかわらず、666人目の来店者である事が判明したり、推しアイドルが駅前に来ていると知り、早速駅へ向かおうとするが外は大雨だったりと運が向いていると思いきや、結局ツいてないパターンも多いという中々の苦労人。今作でも水は苦手で、それは食べ物に対しても適用されるらしく、乾燥物しか食せないという弱点がある…彼に救いが訪れる日は来るのだろうか。
なお、ここでも経歴はほぼ原作通りであるが、第44話では月日が経つうちに人間を客観視できるようになり、全ての人間を憎んでいるわけではない事が明らかになった。雨が止むまで飲みに付き合ってくれる後輩がいるなど全くの不幸体質というわけでもないようだ。
ゲーム
大怪獣バトル
NEO第7弾から参戦。
必殺技はお馴染みのサッチファイヤーに加え、連続攻撃の「バイオレンススマッシュ」。
すごい高熱属性に耐性がある反面、水属性に弱いという原作再現が成されている。
GL第3弾ではサッチファイヤーからのスクリュードライバーという流れの「メギドフレイム」なるかっこいい名前の必殺技を与えられるが、同じ技名を持つメギドラモンとは多分関係はない。
『大怪獣バトル ウルトラモンスターズNEO コンプリートバインダー4』のイラストではウルトラマンアグルと戦っている(恐らく、水に弱いという事で地球の海から生まれたアグルが選ばれたのだろう)。
怪獣バスターズ・怪獣バスターズPowered
怪獣バスターズの世界観では、地球時代にジャミラが怪獣化した事例は記録に残っていない様子。
記録が(原作どおり)抹消されたのか、そもそも発生しなかったのかは不明。
惑星アペヌイで特定の七つのミッションをすべてクリアしてハカセに話しかけるとイベント開始。調査隊員のジャミラが遭難した旨を聞き、ミッション『アペヌイからのSOS』をクリアする。巨大怪獣は出現しないが、倒れているジャミラの姿が地面と見分けがつきにくいので地味に難易度が高い。
なお、このイベントとほぼ同時にブラックキングが出現し、無印では調査隊が襲われ脱出不能になる。ジャミラは元々この調査隊に所属していた可能性がある。
ジャミラの容姿は原作と同様だが、救助が早かったためかサイズは人間大のままで、MITTドライバーの翻訳機能により普通に会話もできる。
最初は自身の肉体に起きた変異に戸惑うものの、カネゴンに「新しいお友達」と呼ばれたことで状況を前向きに受け入れ、以降はデータルームの管理者としてS4に参加することとなる。
アペヌイでのミッションクリア回数が20回以上でジャミラに話しかけると、アクセサリ『しゃくねつのもんよう』がもらえる。
レッドキングのデータポイントが250以上でジャミラに話しかけると、『RKレッド防具』『RKレッド防具Ⅱ』のレシピが解放される(Poweredのみ。無印ではパスワード入力で解放)。
ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ
力属性のユニットとして登場。弱点は水属性の技。
固有スキルは攻撃した相手を中確率で火傷にする「灼熱地獄」、必殺技はサッチファイヤー。
アニメ
かいじゅうステップワンダバダ
デフォルメされた「ジャミちゃん」として第2シーズンより登場。
ニヒルな性格を装っているが、実際には情に厚く抜けている部分もある。
CVを務めた田中は大のウルトラシリーズファンとして知られ、相方の太田光と共にウルフェスの司会を務めた経験もある。
派生作品
マウンテンピーナッツ
『ギンガS』の外伝小説『マウンテンピーナッツ』にて登場。
久野千草がウルトライブしたウルトラマンによってデットンが倒されて暫くしてから市街地に出現。火炎を吐いて暴れ出したが、かつてタロウからその哀しき出自を聞かされていたから千草は倒すことを躊躇いながらもウルトラマンとなって対峙しようとする。
その時、怪獣保護を謳う環境保護団体『マウンテンピーナッツ』はジャミラを怪獣であっても地球の環境を破壊する元人間であると判断して、保有していたビートルから水爆弾型のミサイルを放ったりメテオールを活用した人工降雨を使用したりして徹底攻撃を与える。追い詰められたジャミラは自らの内臓で出来た泥濘の中で悶え苦しみ続け、ウルトラマンは溶解して泥となっていくその手を握りその最期を看取ることしか出来なかった。そして、全身が泥と化して朽ち果ててもジャミラの泣き声だけが鳴り響いき続けていたのであった――。
このジャミラは物語の結末にて一連の破壊活動の元凶であるアンドロイド・ワンゼロがスパークドールズを用いてモンスライブした姿であった事が示唆されている。しかし、なぜか作中で千草以外の他の人物達にジャミラの正体が知られていたことや余りにも残酷で壮絶な死に様であったことから、ギンガの世界におけるオリジナルのジャミラであったか、チブル星人エクセラーが送り込んだ他の配下がモンスライブした可能性もある。
CM・バラエティ番組
ウルトラ怪獣散歩
「今の一言効いたわ…もう人間には本当に戻れないんだなって実感しちゃいましたよ。」
第3話「ウルトラ怪獣散歩西へ 京都・前編」、第4話「ウルトラ怪獣散歩西へ 京都・後編」、第5話「ウルトラ怪獣散歩西へ 大阪編」にラゴンと共にゲストとして登場。CVは飯塚悟志(東京03)が担当。
本作では自身の来歴や水が弱点であることをネタにいじられたり、撮影許可が下りなかったりしてそのたびに苦言を呈していた。
二年坂を歩いている際、外国からの観光客に手を振っている中MCのメフィラス星人が「ムッシュ・アランさんっぽい人もいたような気も」という発言に対し「アランだとしたら個人的に話したい」と発言したり、伏見稲荷大社を訪れた際に「人間に戻れますように」とお願いしたりと原典のネタがかなり盛り込まれている。
基本的にはツッコミ役だが、ラゴンへの寝起きドッキリにはノリノリで応じたりした。
ちなみに今回「サラサラの水分は駄目だがとろみをつければ大丈夫」ということが判明した。(泥は土の内だからだろうか?)
GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶CM
イベント・ライブステージ
ウルトラヒーローズEXPO2021ニューイヤーフェスティバル
『ウルトラマンZ』の後日談である本作ではウルトラダークキラーに召喚された怪獣として登場。
「人間の成れの果て」である怪獣という理由から選出され、ハルキのトラウマを刺激する事でゼットを一度は敗北に追い込んだ。
子供達の思いが歌に乗ってゼットに流れ込んだ事でゼットが復活。ベリアロクに何を切りたいかと問われたハルキは「俺は心の闇を切る!」と答え、皆の笑顔を守る為にジャミラを切る覚悟を固めたデルタライズクローのデスシウムスラッシュで切り裂かれて消滅した。
この戦いはハルキの中に深く刻まれる出来事の一つとなった。
余談
『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』の主人公のレイを演じた俳優、南翔太はこの悲劇的な生い立ちのジャミラに対し「もし今後大怪獣バトルの新作があるならジャミラをパートナー怪獣にして更生させたい」「もしペンドラゴンのクルーがいなかったらレイもあのまま暴走し続け、ジャミラと同じ怪獣になっていたかもしれない」と語っていた。この要望はクリスマスに行われたヒーローショーの『ウルトラマンとすごそう!クリスマス☆パーティー2010』で叶えられ、カオスヘッダー・イブリースの手先として暴れさせられるジャミラを救うためにレイとウルトラ戦士たちが奮闘し、バトルナイザーで体の傷をいやすというシナリオで実現された。
ウルトラマンFではアジア某国の天才児躁躁と鬱鬱が手に入れたオリジナルのジャミラ細胞を、自分たちを利用していた元帥と呼ばれる人物に投与したことで誕生した。
自動プログラムの水流噴出装置によって二人の支配下に置かれており、巨人兵士Fとウルティノイドとの戦いのさなか、ダークメフィストとなった躁躁に余興として市街地に送られたが、イデ隊員のマルス133で倒された。
ジャミラはどのようにして怪獣になったのか?
ジャミラは「水のない灼熱の星に不時着し、そこでの環境に適応を遂げたことで怪獣になった」という設定だが、並の人間ならば死んでしまうような環境の星でどのように生き延びたのか、どういったプロセスを経て体を変化させて怪獣になっていったのかなどについては、今現在も詳しいことは一切明らかになっていない。そのため、ジャミラが怪獣になるまでの過程を想像するファンも少なくない。
灼熱の惑星で生き延びた方法
風上旬氏の『feat. POP Comic oode』23話の冒頭では、ジャミラが過酷な環境下でどのようにして生き延びたのかが断片的にではあるが描かれている。
それによると、ジャミラの不時着した惑星は、地表面こそ凄まじい高温だが、上空には地球に似た成分の大気の層が存在しており、観測用の気球を大気の層まで打ち上げ、そこへ自身と食料を移し替えて食いつなぐことで何とか生き延びていたようである(しかし、水は持ち合わせがなかったため、やがて脱水症状に陥って苦しむ様子も描かれている)。
怪獣と化したプロセス
『ウルトラマンF』では、人間のジャミラ化は水のない環境に行くだけでは足りず、条件がそろわないと叶わないとされている(そうでないと砂漠で遭難した人間が全員ジャミラになってしまうため)。
同じく円谷プロダクションの作品である『ファイヤーマン』では、超重力の星からやって来た温和な怪獣が地球の低重力環境下で巨大化してしまった話があり、このことから推測するとジャミラがたどり着いた星は重力が異常に小さかったのではないかという推測もある。
『ウルトラマンタロウ』にてエンペラ星人の配下としてジャミラの姿があったことから、何らかの原因でエンペラ星人と接触して改造を受けたのではないかという説もある。
ジャミラは透明化能力を持つ宇宙船を使用していたが、当時の地球の科学力だけで、しかも遭難時に宇宙船を改造できるほどの技術、部品を備えていたか疑問である。ジャミラが漂流した惑星にはすでに滅亡してしまった宇宙人の遺跡が残されており、ジャミラはそこで修理、改造に使える部品を使用していたという説もある。
ちなみに、『feat. POP Comic code』の作者である風上旬氏は、「ジャミラがどのようにして怪獣になったのか、自分の中では既にストーリーが決まっている」ととあるイベントで語っていたが、同時に「円谷プロが難色を示している部分もあるため、すべて漫画の中で描けるかどうかはわからない」とも話している。
作中では遭難したジャミラが謎の文明の遺跡に辿り着く場面が描かれているものの、その後どのようにして怪獣化したかは結局明かされないまま終わっている。
また、『21世紀ウルトラマン宣言』では、ジャミラの豹変についての仮説がなされている。それによると、頭部と肩が一体化したのは、肩にラクダのような脂肪の瘤を作ったからではないかとされ、眼球の窪みは日差しや砂嵐から目を守るためだと推測されている。
ネタ要員として
悲劇的なドラマで有名な怪獣だが、首がなくなり頭と肩がつながった独特の外見は、衣服の首の部分を頭までかぶることで容易にまねることができるため、当時の多くの少年たちが脱ぎかけのシャツを頭に引っ掛けてお腹を丸出しにしてしきりに物真似をしたという微笑ましい影響を世間に与えたことでも有名。
例えば、直木賞を受賞した推理小説作家の東野圭吾(放送時8歳)のエッセイ「あの頃ぼくらはアホでした」では『「ペギラごっこ」と「ジャミラやぞー」』という章でその頃のジャミラネタのスマッシュヒットぶりが描写されている。
「ジャミラ」で検索すると、大多数のイラストはこのモノマネを描いたものである。
もっとも着ぐるみの構造やデザインなどを考査するとジャミラは下段イラストのように持ち上げた服の胸元で顔が隠れてしまい(実物の着ぐるみも胸元に覗き穴が開いている)、一般的な顔を出すタイプはザラブ星人に近い(この点は『ウルトラマンX』や『ウルトラマンオーブ』でメイン監督を務めており、インタビューなどではジャミラが一番好きな怪獣と答えている田口清隆監督も言及している)。
そういう意味では「手をハサミにしてフォッフォッフォッと言っておけば良いバルタン星人」と対を為す存在とも言えるだろう
なお山海経には『形天(けいてん)』あるいは『刑天』、大プリニウスの博物誌には『ブレムミュアエ(Blemmyae)』という『首がなく、胴体に顔がある人型のもの』が記載されている。さらに古いヘロドトスの著書にも『アケパロイ(Akephaloi)』という首なし族(無頭人)の記述がある。
日本には『胴面(どうのつら)』という妖怪がいる。
その他
- ちなみにジャミラという名前はアラブ系だが、描写からするにアラブ系フランス人若しくはフランス系アラブ人なのかもしれない。また本来は女性名であり、曖昧さ回避の項目にも書かれているように、アルジェリア独立戦争の際フランス警察の凄惨な拷問を受けたジャミラ=ブーパシャという独立運動家に由来する。
- 曖昧さ回避の項にあるようにジャミラ=ブーパシャが殺害されたと誤解されることも多いが、これは佐々木守がインタビューで「アルジェリアの少女から取った」と言及しており佐々木の誤認識または記憶違いが独り歩きしてしまった可能性が考えられる。
- 「ジャミラ」をペルシア語に置き換えると「ジャミーレ」。そして、実はこの名を持つ有名人が存在している。その名は「橋本ジャミーレ芽生(めい)」────────そう、世間では「May.J」として知られるあの人である。水に運命を捻じ曲げられたジャミラは、自身の名が雪の歌姫と由来を同じくすると知ったらどう思うのであろうか…?
- 劇中でも墓碑銘に描かれているのはフランスだったり、このエピソードに直々に絡んでくるのがパリ本部のアラン隊員だったりとフランス人である事を示唆する描写はかなりある。アンデレスホリゾントでもアランが真相を究明しようとしたところフランス当局に逮捕されるという目にあっている。ただし、某国とフランスは別表記になっていると言うことには留意されたい。
- また、当時本格的に宇宙開発競争に参入していた大国がソ連とアメリカであった事から、某国とはアメリカではないかとする説も十分に考えられる。(当時日本ではアポロ計画が記憶に新しかった時期である。)多民族国家であるアメリカならば、ジャミラの墓碑銘がフランス語であったり、死の間際にアメリカ国旗に縋ろうとした点も納得が行く(何の因果か、パワードではアメリカ人の宇宙飛行士がジャミラになるというエピソードだったが)。
- 日本で2016年には火星に一人取り残された宇宙飛行士を描いた映画が公開され、公式ツイッターが「(´-`).。oO(日本の皆さんが、しきりとぼくに「ジャミラにならないようにね」とか「これは完全にジャミラになるパターン」といった感じのメッセージを送ってくるのだけど、アメリカ人のぼくにはチンプンカンプンだよ)」と反応するなど話題となった。
- ジャミラが焼き尽くしていた村の中では少年が家で飼っていた鳩を助け出そうとするシーンが描かれた。鳩は平和の象徴であるとされるが、宇宙開発競争の犠牲になったジャミラが平和を壊す立場になった事を考えると色々と皮肉である。なお、少年が助け出そうとしていた鳩は何羽か逃げている(逃したとも取れるが)。羽ばたく鳩が指し示すのは、より平和が遠ざかってしまったという事であろうか?それとも平和な未来に羽ばたこうとする人々の願いだろうか?飼われている鳩=伝書鳩だとすればこの作品を通して視聴者にメッセージを伝えようとする製作者の意図であろうか…?
- フジテレビのバラエティ番組『ゲームセンターCX』第4シーズン1回目(通算21回目)でスーパーファミコン版『ウルトラマン』(アーケード版の省略移植)が挑戦用ゲームとなった際、有野課長は第3ステージに登場したジャミラに散々苦戦を強いられた。それと言うのも、ジャミラ以前のステージに登場する怪獣よりも俊敏、且つ的確な立ち回りや火炎放射の最後に発射される射程距離無限大の直進火炎弾、何よりも勝利条件であるスペシウム光線を軽やかにかわす「避け動作」がここで初めて発動して有野課長を含む参加スタッフ一同を唖然とさせたからである。この後もブルトンやバルタン星人といった一癖ある怪獣に勝てず最初からやり直しをさせられてはジャミラと戦い、時には戦法と操作が上手く噛み合わずにあっさりと負けてしまう事態に直面しながらも完全攻略のために何度も何度も立ち向かったが、挑戦自体は失敗に終わった。
- PSY・Sの「銀河より愛をこめて/From The Planet With Love」はジャミラを描いた歌だという。
- 悲しき悪役、悲劇性が強い怪獣のイメージが強いジャミラだが、1967年に発刊された(2014年に復刊)「怪獣大全集5」の「怪獣大学入門」の怪獣の生活編で描かれている怪獣の病気の項でジャミラが乾燥室で体を乾かして回復しようとしているなんともユーモラスな描写があった。
珍事件
2020年6月27日『ツイステッドワンダーランド』の登場人物ジャミル・バイパーの撮影があったが、一部の人が間違ってジャミラと間違えて宣伝してしまった。これにノリでジャミラとジャミルを兼用して撮影した人も出た。
関連イラスト
ネタ系
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バルタン星人の真似:(モノマネつながりとして)
ギエロン星獣:ウルトラセブンに登場した哀しき悪役。ゲーム版で勝利後独自の演出がされるのも同じ。
ツチケラ:ジャミラのリメイクである。
カネゴン:ある意味ジャミラなどの人間怪獣化の先駆けである
九条レント:ジャミラの後輩と言えるウルトラシリーズの宇宙飛行士。
マザリュース、蔦怪獣バサラ:後のウルトラシリーズにおける、赤ん坊のような鳴き声を発する怪獣繋。
リガトロン:ジャミラ同様、宇宙飛行士の成れの果てとも言うべき怪獣
ネコジャラミ:上記のようにTシャツでジャミラの真似をしている。
メガール将軍(似た者同士)
真実の口(怪獣酒場の入り口には、ジャミラの顔面を模した「真実の口」が設置されている。ジャミラの正体が、「隠蔽された真実(=嘘)」であるという酷い皮肉である)
ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃(ゴジラの対戦相手として、カマキラスの後に考えられたのが「宇宙飛行士が怪獣化した存在」であった)
キッチン戦隊クックルン:2019年度のラスボスがジャミラに近い存在
ヴェイガン:彼らの正体が地球側に見捨てられた地球人の子孫で言えばジャミラに類似する。
空想法律読本:ジャミラをウルトラ水流で倒したウルトラマンに犯罪が成立するかを検討している。