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マウンテンピーナッツ

まうんてんぴーなっつ

『ウルトラマンギンガS』の外伝小説、およびその劇中に登場する過激環境保護団体。
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小説の概要編集

『S-Fマガジン2015年1月号』に収録された短編小説。著者:小林泰三。挿絵:鷲尾直広

円谷プロ早川書房の公式コラボレーションアンソロジー企画TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSEの一環で執筆された作品であり、発表当時の最新シリーズ『ウルトラマンギンガS』の前日談にあたるエピソード。

後に同アンソロジー企画の短編小説が収録された単行本『多々良島ふたたび』に再録された。


先述の通り『ウルトラマンギンガ』から『ウルトラマンギンガS』の間を描いた作品なのだが、TV本編の世界観が「ウルトラマンや怪獣が初めて現れた世界」として描写されていたのに対し、本作では「過去に現れたウルトラマンや異星人の技術を流用した超技術『メテオール』の存在」やジャミラの正体が一部又は公に認知されている他、「自衛隊が怪獣に対して攻撃可能か、数年前から議論されていた」と語られるシーンがあるなど、本来の設定とは大きく矛盾する描写がいくつかある。


著者の小林氏は『ギンガS』第12話の放映当時に「マウンテンピーナッツの事件を経た千草がアイドルデビューした後の物語です」と発言している為、著者自身としては『ギンガS』本編に繋がる前日談として描いていたようだが、レベル3マルチバース相当のパラレルワールドと解釈されることが多い。


また、基本的には牧歌的な雰囲気のTV本編に対し、本作は著者がホラーを得意とする作家である為か、人間の愚かさを強調した陰惨な雰囲気で描かれているうえ、多数の人間が殺害されるなどのショッキングな描写も多く、上述の設定面の矛盾もあって評価は賛否両論である。


ただし、同アンソロジー企画では現行作品(新世代ヒーローズ)や平成シリーズを扱った唯一の作品である点や、比較的マイナーな怪獣が活躍する点、「人類に寄り添い、多種多様な価値観を尊重しようとするウルトラマンの正義」を描いた点など、見どころも多い。


あらすじ編集

ウルトラマンギンガが地球を去ってから一年後。

多発する怪獣被害に備えてUPGの基地が建設され始めた降星町では、怪獣の保護を訴える環境保護団体『マウンテンピーナッツ』のデモ活動が過激化しつつあった。


一方、かつて礼堂ヒカルと共に戦った少女、久野千草は人々が危機に瀕した時に召喚されるギンガライトスパークの力でウルトラマンに変身する能力を再び得ており、降星町を襲ったデットンを撃退しようとするが、「人間よりも怪獣の命の方が尊い」という異常な価値観を持ったマウンテンピーナッツはウルトラマンを敵視、超絶科学メテオールを悪用した兵器群を駆使してウルトラマンへの妨害工作を仕掛けてきた。


果たして千草は怪獣たちとマウンテンピーナッツの魔の手から日本を守り抜くことが出来るのか。そして、事件の背後で怪獣を操っている黒幕は誰なのか……?


登場人物編集

本作の主人公。


時系列は番外編の後と思われるので光の国に帰還しているはずだが、本作ではスパークドールズとして千草に所有されている。何故かタロウと同様に言葉を話す事ができ、マウンテンピーナッツへの怒りに駆られる千草と「ウルトラマンとしての正義」を守る信条から意見が衝突することもあった。


(恐らく)黒幕。今回の事件を起こした目的は全くの謎である。


登場怪獣編集

全てSDであると推測される。

この他にもスパークドールズとして玩具修理者黄衣の王が登場している。


組織の概要編集

環境保護NGOの『イエローピーナッツ』と、辺境の盗賊団が前身の超過激環境保護団体『マウンテンコリー』が合併して誕生した組織。


ウルトラマンコスモスに登場する防衛組織『SRC』や『TEAM EYES』が怪獣と人との共存共栄を目指していたのに対し、こちらは人間を自然の一部として見なしていない。環境破壊やそれに類する行為を見つけると、環境保護を大義名分に行き過ぎた報復行為に及ぶ、所謂エコテロリスト

国際世論を味方につけている団体であるため厳密には非合法組織やテロリストではないらしいが、超過激的な思想を掲げる環境保護団体『マウンテンコリー』を取り込んだ時点で何かが狂ってしまっており、法的にはともかく実態は犯罪組織そのものである。


一般会員はデモ活動中に軽度の暴行事件を起こす程度だが、戦闘訓練を受けた組織の実働部隊(通称:戦闘員)の行動はより過激であり、動物の皮で作られた製品を身に付けている人々や虫取りをしている子供を見つけると酪酸(バターなどから生成される強酸性の液体、当然人体には有害)入りの瓶を投げつけるなど暴力行為に及ぶ。さらに環境保護活動を邪魔する者をアサルトライフルで射殺することもあり、外圧の力で日本国内へスペシウム弾頭弾などのメテオール兵器を装備したビートル型戦闘機を持ち込んで平然と使用するなど、もはや並のテロリストや怪獣よりも危険な存在と化している。


海外に自分たちがスポンサーを務める情報番組を持っており、映像をCGで加工し、その捏造された映像をメディアで放送して自分たちがさもヒーロー活動を行っているかのように装い、国際世論を味方に付けている為、死者でも出ない限りは警察も動くことができず、たとえ起訴できても裁判にまで持ち込めるのも稀で、仮に有罪になっても執行猶予が限界らしい。

そればかりか、世界的な宣伝工作によって日本を環境破壊国としてのイメージを根付かせており、日本人が行う昆虫採集や魚釣り、狩猟は特に悪質で残虐なものであるとしていることから日本人の大半からは快く思われていない様子である


劇中では怪獣が多発するようになった降星町の周辺に一般会員たちが現れ、基地を建造しようとするUPGの活動を妨害。更にウルトラマンとデットンが戦闘を始めると、「罪の無い野生動物(怪獣)を殺傷しようとした」ウルトラマンに対してミサイル攻撃を仕掛け、彼が自衛のためにミサイルを破壊したことを名目に「ウルトラマンは我々の装備を破壊した。これは人類に対する敵対行為である」と主張。メテオール兵器を使用してウルトラマンを殲滅しようと企んだ。


また、デットンが都市部で暴れ始めると武装した戦闘員たちが出現。デットンの足止めを試みた機動隊を自動小銃で負傷させて撃退、更にデットンへのミサイル攻撃を仕掛けた自衛隊の戦闘機をビートル型戦闘機で撃墜した。その後、民間人たちが猟銃や火炎瓶に加え自家製の銃器や爆弾などを持ち寄って結成した大規模な自警団が現れると、戦闘に不慣れな彼らを嘲笑いながら虐殺した。


最早悪の組織の所業だが、その教義に感化された狂信的信者が集まり総勢一万人もの会員がいるらしい。国際条約に基づいて活動しているようで(※)、UPGや自衛隊には反撃が許されず、人類の生命や自由意志を尊重するウルトラ戦士も手出しを加えることのできない存在であるため、結果的に怪獣が野放しになり、無数の人々が虐殺される羽目になった。


※国際機密条約によって厳重に規制されている筈のメテオールを使用しているため、あくまで当人達の主張に過ぎない。


マウンテンピーナッツや原動が掲げていた価値観は、結果的に怪獣たちを操っていたと思わしき黒幕に利用されてしまっていたため、被害者であり加害者でもある。


恐らく元ネタは過激派自然保護団体として有名な『グリーンピース』(グリーンピース同様に色+食物の組み合わせが『イエローピーナッツ』の由来)や『シーシェパード』(『マウンテンコリー』の元ネタ。シー(海)の対義語であるマウンテン(山)とシェパードと同じ牧羊犬のコリーを組み合わせたネーミング)。


メンバー編集

原動 隆一郎

“マウンテンピーナッツ”日本支部総司令官。

自然環境を守ろうとする余り、“人間の命よりも怪獣の命の方が尊い”という価値観を持つ男。ウルトラ戦士の存在を「自然の産物である怪獣を殺す存在」として憎悪しており、更に続いて出現したジャミラの事を「開発の名の下に宇宙を汚染し、逆恨みで地球環境まで破壊しようとする愚かな人間」「お前に生きる価値はない」と評し、情け容赦なく殺害するなど独善的な正義感をも併せ持っている(ただし、先制してジャミラは街を火炎で焼き払っていた為、この件に限っては一概にマウンテンピーナッツが悪いとは言い切れない)。


原動の思想は環境保護精神から来る純粋なものであり、組織を私利私欲のために悪用しているわけではないのだが、彼が傷ついたノスフェル(SD)の首に飛び付いて号泣する姿を見た千草は「怪獣保護を自らの野望の隠れ蓑にしているのならまだ安心できた」「そのような正義の怪人をどう扱えばいいのだろう」とかえって絶望する羽目になった。案の定、ノスフェルの額に原動は埋め込まれてしまい、脳に直接送り込まれる強い苦痛に襲われウルトラマンに助けを乞う醜態を晒した。直後、人間の姿をしたものを撃つことには抵抗のない部下の戦闘員たちはノスフェルの額を集中攻撃、そしてスペシウム弾道弾を直撃させる。彼は苦しみから解放されたのであった。


これによって日本支部のマウンテンピーナッツは事実上壊滅したと思われるものの、その凶行とそれによって発生した被害は、一連の事件で無力だったUPG内部にタカ派を生む結果になったとも考えられ、それが人類の手に余る超兵器の開発を推進し、最強最大の敵を降臨させる遠因になった可能性もある。


関連項目編集

ウルトラマンギンガS 小林泰三 ウルトラマンF


グリーンピースシーシェパード:恐らくモデルとなった組織。

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