小説の玩具修理者
小林泰三の短編小説。同時収録に「酔歩する男」がある。角川ホラー短編賞受賞作品だけあり、二つとも衝撃的な結末を迎える事で有名。特に前者は吐きそうになる汁気たっぷりのグロテスク表現から始まり、背筋を凍らす「一行の文」で締めくくられる、極めて完成度が高い作品として知られている。
クトゥルフ神話に登場する邪神の名がいくつか登場するが、一般的なコズミックホラー作品とは異なり、恐ろしくもどこか郷愁を誘う独自の世界観を持った作品である。
後に発表された同作者の長編「AΩ 超空想科学怪奇譚」にも、セルフオマージュとして「玩具修理者」の名を持つ存在が登場している。更に同作者が執筆したウルトラマンギンガSの外伝小説「マウンテンピーナッツ」にも玩具修理者と思われるスパークドールズが登場した。ということは、玩具修理者はダークスパークウォーズに参戦し、ダークスパークの闇の力によって人形にされてしまったことになるが……
実写映画化もされており、玩具修理者の声は美輪明宏が演じている。
内容
玩具修理者
喫茶店で一組の男女が会話していた。男性は相手の女性が常にサングラスをしている事が気になり、その理由を尋ねる。はぐらかそうとする女性だが、男性が強く「教えろ」と言い放つと、彼女は子供の頃に起こった出来事について話し始めた。
かつて、女性が住んでいた町には「ようぐそうとほうとふ」、「くとひゅーるひゅー」など、様々な名前で呼ばれる玩具修理者が住んでいた。玩具修理者は水鉄砲からゲームソフトまで、あらゆる壊れた玩具を元通り修理する能力を持っていたが、両親の厳しい教育方針のせいで玩具を持つことすら許されない女性にとっては無関係な存在だった。
ある夏の日、女性は弟の道雄を背負ってお使いに向かう途中、死んだ猫を連れた少女と出会う。彼女は自ら殺してしまった猫を玩具修理者に「修理」してもらうのだという。
少女と別れた後、女性は歩道橋を渡ろうとしたが、足を踏み外して階段から転落してしまう。地面に叩きつけられた女性は重傷を負い、道雄は死んだ。道雄の死が露見すれば両親から叱られる……パニックに陥った彼女は玩具修理者に自身と弟を「修理」させようとするが……
酔歩する男
主人公の血沼は、飲み屋で会社の同僚と「年のせいかお互いの認識にズレが生じている」という与太話をしていたが、そこに「血沼の親友」を名乗る小竹田という男が現れた。血沼は彼の事を全く知らなかったが、どういうわけか小竹田は血沼のことを詳しく知っているようだ。混乱した血沼は、小竹田の語る話を聞くことにした。
かつて血沼と小竹田は同じ大学院に通っており、手児奈という女性を巡って激しい奪い合いを繰り広げていた。二人は手児奈にどちらの方が好きなのか問い詰めようとしたが、彼女は答えを言わずに電車へ飛び込んで自殺してしまった。手児奈の事を諦めきれない二人は、彼女を蘇らせる方法を模索し始める。
30年後、小竹田は「時間逆行によって手児奈」を救う策を思いつく。彼の仮説によると「時間の流れとは、人間の意識が観測することで決定されるもの」であり、脳に存在する「時間の流れを認識する器官」を破壊すれば、時間移動が可能になるはずだという。血沼は小竹田の提案に乗り、粒子線癌治療装置で器官に処置を施した。
その結果、二人は「時間」の正体を目の当たりにし、永久に終わらない生き地獄を味わう事になる……
「菟原手児奈」の名前は、ともに「二人の男による奪い合いの果てに自ら命を絶った少女」の伝説である、「菟原処女」(兵庫県)と「真間手児奈」(千葉県)をつなげたもの。
関連タグ
漫画『HUNTER×HUNTER』の念能力の玩具修理者
漫画『HUNTER×HUNTER』の念能力→詳しくはネフェルピトーの記事を参照 。
元ネタはどう考えても上記の小説「玩具修理者」。ただこっちは「生命を生き返らせる」こともできなければ「全てを要求された通りに元通りにする」事もない。そのかわり「一旦修理対象を完璧にバラバラにする」ことはない。
関連イラスト
関連タグ
HUNTER×HUNTER ネフェルピトー 念能力 ドクターブライス
『デモンベイン』の玩具修理者
『デモンベインシリーズ』に登場する補修用の機械で、作中では「トイ・リアニメイター」と呼ばれ、自己修復機能を持たないデモンベインを整備格納庫で修復を行う。
デモンベインの作品内で登場するものはクトゥルフ神話を用いた様々な作品から引用されて名付けられており、玩具修理者もその一つ。