データ
別名 | 誘拐怪人 |
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英表記 | Abduction Phantom KEMUR |
身長 | 1.9~30m |
体重 | 40kg~1万5000t |
出身地 | ケムール星 |
概要
初出は『ウルトラQ』(1966年)第19話「2020年の挑戦」。
謎多きヒューマノイド型の怪人で、一説には地球人の未来の姿とも言われる。
人型に近い形状だが縦に長く目は左右の位置がズレた異形の頭部を持ち、個別に動かし違う方向を向く事ができるほか、後頭部左側にも第三の目がある。首から下は地球人に近いが、手の指は植物の蔓のように捻くれている。
口に相当する部位は見当たらないが、後年の作品『ウルトラゾーン』のとあるエピソードでは酒を飲んでいたり、『X』に登場した個体は人間の食べ物(カツ丼)を食べた事を示唆する描写があるため、地球人の食べ物を摂取すること自体は可能な模様。
作中ケムール人と交信した人物は存在していたが、劇中では言語を発することはなく奇怪な電子音(某三ツ首龍の鳴き声の流用)や「フォッフォッフォ」という不気味な笑い声(東宝特撮映画の『マタンゴ』の流用で、後のバルタン星人の声とほぼ同一)を放つのが特徴。
能力
- 消去エネルギー源
頭には先端がラッパ状に広がった突起が付いており、ここから触れたものを瞬時に別の場所へテレポートさせる「消去エネルギー源」と呼ばれる液体を分泌する。この液体はケムール人の意思に従って運動させることが可能とされ、遠隔地や狭小地等の自身の手の及ばない場所に送り込み、人体を電送することで誘拐する。またこの粘体は火に対しては可燃性を示す。
後年の作品『ウルトラゾーン』では、これを応用して突起から光弾状に固めて発射し、落下してきた看板を消滅させ、下にいた人が下敷きになるのを防いでいる。『Z』では、液体からはイルカの超音波に似た波長の電波が発せられているという特性が設定されており、その電波の影響で地底で眠るパゴスが覚醒する一幕がある。
- 巨大化
巨大化できるが、ドロドロに溶けてから巨大な相似形になるなど、これもまた不気味。
作品によって演出には違いがあり、『X』に登場した個体はスパークと共に巨大化している。
- 擬態能力
人間への擬態能力も持ち、劇中では万城目淳に化けて江戸川由利子を招き寄せている。だが催眠術のようなもののようで第三者には通じないのか、離れた位置からその様子を見ていた宇田川刑事には正体を見破られた。
- 身体能力
『Q』に登場した個体は、一応肉体が衰えているという設定だったらしいが、徹底した改造手術などにより身体能力は人間とは比べ物にならないほど高く、劇中では自動車と同等以上のスピードで走行できる高性能ぶりを発揮。だが「Xチャンネル光波」なる電波には脆弱性があり、これを受けるや昏倒してしまう。
スローモーションのような不思議な動きで、夜道でパトカーと追走劇を繰り広げるシーンはあまりにも有名。わざわざスローモーション撮影で不気味さを演出したのに、リアルタイムの衝撃を知らない世代から「どう見てもゆっくり走っているようにしか見えないと言うのは禁句だぞ!」等と言われてしまう事も。
観覧車を引っこ抜いてぶん投げるというインパクトのある絵面も見せており、こちらもファンからは人気の高いシーンの一つに挙げられる事が多い。
- 宇宙船?
宇宙船らしき乗り物を使用しているが詳細な機能等は不明。透明化機能はあるらしいがレーダー波への欺瞞は不完全なようで、劇中の冒頭では自衛隊基地のレーダー網に補足された。バリヤーか光線のようなもので哨戒に出た自衛隊の航空機2機を撃墜している。
活躍
母星の発達した医療技術と改造技術により、500年もの長命を手に入れたがその保持には限界を迎えたとされ、代替に地球人の若い肉体を充てるべく誘拐活動を行った。またこれと並行し、自身の目的に勘付いた人間を何らかの手段で感知し、口封じも兼ねた誘拐も行っている。
音も無く忍び寄り、人間を一瞬で消してしまう液体は多くの視聴者にトラウマを与えた(消えるシーンの演出がまた怖い)。
宇宙船らしき乗り物に搭乗していたと見られ、航空自衛隊の防空レーダーにその存在を捉えられた際、宇宙船からのものと思われる閃光で哨戒機2機を撃墜。自衛隊上層部が指揮官であった天野二等空佐の話を『おとぎ話』と断じたことにより露見を免れ日本国内へ潜入を果たす。
江戸川由利子の誘拐を阻止せんと動く警視庁の警官隊と激しい追走劇を繰り広げ、最後は遊園地で巨大化して暴れまわるが、東京タワーから発振された弱点であるXチャンネル光波を照射され倒された。この敗因によりウルトラ怪獣で唯一、東京タワーに敗北した宇宙人と評されることも。
この時死亡したとされることが多いが、死の間際には消去エネルギー源を自身の身体に浴びせ、溶解したとも電送されたとも見える描写のためしばしばこの点は解釈が別れることがある。
余談
- 本作のキーパーソンとなる電子工学の権威である神田博士はXチャンネル光波の実験中にケムール人のテレパシーをキャッチしてしまい、著書『2020年の挑戦』にケムール人の襲来を予期した文章を纏めたが、悲しいかな親友の宇田川刑事からは作り話だとバッサリ切り捨てられ、精神病院に入れられた挙句ケムール人によって粛清されてしまった。
- しかし、K・ミニオードの試作品は完成しており、これが事件解決のカギとなる。ケムール人の襲来に際し、宇田川刑事も考えを改めて事件解決に協力することになった。
- スーツアクターは古谷敏。古谷はこの出演がきっかけで後に初代ウルトラマンのスーツアクターを務めることになる。なお古谷氏曰く、実際に着たスーツは頭部だけで4キロはあったらしい。
- 「東京大津波(パゴス対ケムール人対ガラモン)」という、パゴスやガラモンと戦う予定だった没シナリオが存在する。
- ゼットン星人に似ているのは「ゼットン星人のマスクはケムール人のマスクをやや右にずらして被ったもの」だからである。書籍によっては同一視されることもある。(詳細はゼットン星人の記事を参照)。
- 『Z』のボイスドラマ第18回では、ゼットが訓練校の「宇宙人に関する知識」の小テストで赤点を取り、その中でもケムール人とゼットン星人が並べられて出題された事に対し、「 似すぎでしょ!引っかけ問題ですよね!? 」とゼロに愚痴っていた。当のゼロも「 どっちがどっちだっけ? 」と困惑させた。しかし、流石に一問だけのミスで赤点になるのはおかしいとゼロに詰られ、ほかにも色々間違えた事を白状する羽目になった。
- デザインを担当した成田亨氏は、高速で走るので一度に前後左右を見る事ができるんじゃないかと考えた為、我々がよく知るあの頭に仕上がった。エジプト壁画の人物像の顔が横を向いているのに目は前を向いているという「シンクロナイゼーション技法」を取り入れたデザインは会心の出来だったと語っている。
- その不思議なデザインが裏目に出て、当時の雑誌などに掲載された他の絵師によるイラストでは、前の目が水平だったり、後ろの目が無かったり、口があったりと正確に描いてもらえない事が多かった。
- 胴体は『快獣ブースカ』(1966年)に登場した原始人に流用された。
- 「ウェットスーツで造形する宇宙人」というアイディアは、後のウルトラマンの造形につながっている。
- ちばあきおの漫画『ふしぎトーボくん』に登場する宇宙人「ピリピリ人」の姿に影響が見られる。
- 『全力坂』のパロディ映像『全力ケムール坂』が制作されたこともある(公式)。
- 詳細な活動時期は不明だが、1993年発行の『ウルトラマンベストブック』(竹書房/監修:円谷プロ)では岩本博士のレポート上でゼットン星人とケムール人を同一の存在と仮定し、「1930年から40年間地球を狙っていたのだ」と述べている。
みんなのトラウマ
グロテスクな容姿、野太く不気味な笑い声、回避不能の誘拐能力、各種演出等々、見る者に強烈なインパクトとトラウマを与えるエピソードである。
誘拐された人々が戻ってきてハッピーエンド、と見せかけたエピローグがまた……。
たぶんコメディリリーフなんだろうけど……。
ただし、作品によっては誘拐された人々がそのまま戻ってこなかったと解釈するケースもある(『ウルトラマンZ』、小説『ウルトラマンF』など。『F』についてはM78スペースと世界観が繋がっているため、言及した人物が単に被害者全員が無事だった事実を知らなかっただけかもしれないが)。
パトカーとケムール
先述したようにパトカーとの追跡劇があまりにも有名すぎるため、度々商品化や公式切り抜き(ばっちしVアルファの「~ウルトラマン誕生35周年感謝祭ビデオ~ウルトラマン・ヒストリー」など)の題材にされることが多い。
- AC「大怪獣バトル」では技カードとして第1弾にてケムール人がカード化(032)。イラストは勿論、パトカーとの追跡劇。
- 「墓場の画廊」では「U.S.TOYS」シリーズとして極彩色に彩られたケムール人のソフビとパトカーのミニチュアが「ケムール人&パトカー 追跡セット」として販売された。
- 江崎グリコから販売されたキャラメルのおまけとして「タイムスリップグリコ」が存在していた。そこにはケムール人を追いかけたパトカーと同じ車種がミニチュア化されており、解説書でもケムール人とセットで遊ぶことが推奨されている。
悪夢は終わらない
現在の日本の少子高齢化事情を考えると、ケムール人の一件は決して他人事ではない。
2020年頃には日本の高齢者世帯は30%を超えると予測されており、何だかリアルに聞こえる。
しかも、一説によればケムール人は異星人ではなく人類の未来の姿とも言われており……。
ケムール人の悪夢は終わってはいないのだ。
そんなこんなで地球リセットの年やネオフロンティアの時代も超えて、地球の滅亡も宇宙開発も来ないままとうとう2020年が訪れた。
そして、2020年に放送された作品で、再びこのケムール人事件を取り上げたエピソードが描かれる運びとなり…
ウルトラマン
身長 | 55m |
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体重 | 1万6000t |
第33話「禁じられた言葉」にて、メフィラス星人配下の宇宙人として東京丸の内のビル街にバルタン星人、ザラブ星人と共に出現するが、何もせずにすぐに姿を消してしまう。
- この時ムラマツキャップが「我々が倒したはずだ」と発言しているが、番組中で遭遇したのは初めてであり、矛盾しているように見える(一応「我々=人間」とすればおかしくはない) 。しかしこれは後述のゲーム作品において解消されている。
- なお、スーツは胴体のみ新造されたもので、最初の個体とは異なり体に白いギザギザ模様が走っている。この着ぐるみは後に『ウルトラセブン』のキュラソ星人に改造された。
- 書籍によってはメフィラス星人が投影した幻影という説が提唱されることもある。
- 楳図かずおの漫画版では、これにダダも加えた四人で東京の街を破壊しつくし、ウルトラマンと拳を交えた。
- JR西日本制作の「さわやかマナー」ではこちらのデザインで登場。昇降口脇に待機し開幕ダッシュで電車に乗ろうとする悪質な客として登場し、スペシウム光線で制裁を受け昏倒。その後は改心したのか列の後尾付近、アストロモンスの横に整然と並んでいる。
ウルトラゾーン
CV:関智一
「ウルトラゾーンチャンネル」のケムール人パートに登場。
ムーンウォークやパントマイムなど芸能の才能があり(少なくともお笑い芸人には向いていない)、日本語も少しだけなら話せるが、周囲にあまり怪獣とは認識されていない。
「工作員1003号」として地球人調達の為に飛来し、数十年もの間職を転々としながら地球で暗躍していたが、人々から嫌われていく様に嫌気が差していた所、地球人の少女と心を通わせる。やがて母星から人類滅亡爆弾で地球を救おうと目論む「地球救い隊」を称する同族が送り込まれてこれと対決し、何とか撃退する。叛逆罪でケムール人裁判官により死刑を言い渡されそうになるが、少女の懇願により情状酌量が認められ、「地球への流刑」という判決が下されて地球に留まる事となった。
なお、先ほど「嫌われ者」と述べたが、実際は女子高生やモデルにスカウトしたカメラマンやボクサーのトレーナーなど、彼を好意的に見てくれる人物も少なくはなかった。
新世代ヒーローズ
ウルトラマンギンガ
第2話「夏の夜の夢」にて、スパークドールズとして登場。また、シリーズで初めてウルトラ戦士との対決が実現した。こちらではギザギザ模様が無く、初代と同じ黒い体を持つ。
ストーキング癖のある変態暴走族・矢神がバルキー星人から渡されたスパークドールズをダークダミースパークでダークライブし、美鈴を追いかけ回す。
邪魔をするヒカルを痛めつけるが、美鈴にモップのヘッドで股間を強打されて猛烈に痛がり、巨大化して再び二人を襲う。ヒカルがウルトライブしたサンダーダランビアと対決し、素早いフットワークと消去エネルギー源で手こずらせるが、ヒカルがギンガに変身した途端に劣勢になり、大気圏外まで投げ飛ばされた挙句、自分が逆にギンガに追跡される恐怖を味わう羽目になり、ギンガファイヤーボールで丸焼きにされて敗北。矢神も反省した。
スパークドールズはヒカルに回収され、後に空間転移液で自らをテレポートさせるという彼ならではの柔軟な発想に基づいた使い方をされる。
第3話の画コンテでは、ギンガとケムール人が高速移動で対決するという描写があったがカットされた。カットされた理由について特撮カットの配分のほか、実現性の難しさがあったものと推測している。
スーツは『ウルトラゾーン』の物の流用。
ウルトラマンX
第9話「われら星雲!」
CV:外島孝一
ババルウ星人率いる暗黒星団チームの一員として登場し、闇のエージェントたちとラグビー対決を繰り広げ、得意の高速移動でトライを決めるなどして活躍した。
試合の後、他の仲間と共に巨大化して暴れるが、ゴモラアーマーを装着したエックスの「ゴモラ振動波」を喰らって空の彼方までぶっ飛ばされた。
スパークドールズではない本物のケムール人がTVシリーズに登場したのは実に49年ぶり。
ちなみにこのエピソードで何かと間違われやすいゼットン星人と初の共演を果たしている。
第16話「激撮!Xio密着24時」
別個体がダダやセミ女と共に登場。
ダダとセミ女と結託して誘拐事件を引き起こしていた。この個体は人間に化ける能力を持っており、逃亡に利用していたが、言動が不審であった為に職質中に正体が露呈し、逃亡を図るがXioに確保された。
その後は黙秘を貫いたが「ホトケの神木」こと神木隊長に完オチさせられ、容疑を認めた。動機は故郷の母と長らく連絡が取れておらず、苦労の末に金に困ってダダ達に協力していたという。
劇場版ウルトラマンジードつなぐぜ!願い!!
宇宙人街の住人の一人として登場。リクやライハ達と乱闘騒ぎを起こした。
ウルトラマンZ
「オ前、人間ジャナイナ。半分ハ人間、半分ハウルトラマン。私ト同類ダ。私ハケムール人。我々ノ来訪ハ、コレガ二度目ダ」
身長 | 1.9〜55m |
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体重 | 40kg〜1万6000t |
CV | 辻本貴則(第18話監督、自身のTwitterで公言) |
第18話「2020年の再挑戦」に登場。
『ギンガ』以来7年振りのメイン怪獣としての登板である。
『Q』で登場した個体の同族とされるが、ゼットのいる地球はM78スペースとは別物であるため、前の個体はM78スペースと同じ事件が起きた世界線の同一人物で別人という事になる。
54年前に地球に派遣された個体が誘拐したカオリ(演:宇田川かをり)と言う女性の肉体を移植して地球に舞い戻り、再びかつての計画を実行しようとする。
初代が倒された遊園地にある現在は使われていない観覧車に消去エネルギー源を大量に内蔵した爆弾を仕込んでおり、起動させた観覧車の頂上でそれを爆発させる事で転送液を雨雲に混ぜ、広範囲の人間を一気に誘拐しようと目論んでいた。
一方、地球に戻った途端にカオリの意思が覚醒し、度々肉体の主導権を奪われるというアクシデントに見舞われたが、ケムール本人は「地球人の姿になれるから昔よりスムーズに地球人を誘拐できる」と歯牙にもかけていない。
自身が操られている事実に気付いたカオリは、これ以上被害者を増やさないよう幾度となく自殺を試みており、調査任務で接触してきたハルキに殺害を懇願し彼の銃を奪って自らに突き付けたりもしたが、悉くケムール人の意思に阻まれている。
素の戦闘力は過去の個体と同じく決して高くはないが、怪獣をも問答無用で消し去る液体と、一体化しているカオリが実質的な人質となっていて迂闊に手が出せないのを良い事に、金の嵐のゼットをてこずらせる。
しかし、最終的にカオリの抵抗で動けなくなった所をベリアロクによってケムール人とカオリの肉体は分離させられ(分離されたカオリは衰弱したものの命に別状はなかった)、ケムール人は消滅。爆弾もベリアロクの作り出した異次元空間に送り込まれた直後に爆発し、そのまま処分された。
同時に転送液によって消された人々や物、怪獣パゴスも元に戻り、転送液のパルスで暴れていたパゴスは大人しく地中に帰っていった。
ケムール人は医術の真髄を究めた種族だったためか、分離されたカオリは若い姿のままであった。大抵、この手のエピソードでは経過した分の時間が一斉に襲ってきて死亡したり、経過した時間とのギャップに苦しむといった絶望的なラストを迎えるのが鉄板だが、本作では失った分の時間をこれからの思い出で埋めていこうと決心するという希望あるラストを迎えている。
なお、カオリは「一部の記憶を失った」と述懐していたが、あくまでも彼女がそう語っただけであり、その後ハルキの背中を見つめて「ありがとう、ウルトラマン 」と呟いており、ハルキがウルトラマンゼットであるという記憶が残っていると思われる描写がある。もし、記憶が残っているとすれば、おそらく自分を最後まで救おうとしたハルキのために、(ハルキがウルトラマンだと)覚えていないフリをして安心させようとしたものと思われる。
ゼットとハルキの関係性を同類と見做していたが、奇しくも初代ウルトラマンとケムール人のスーツアクターは同じ古谷敏氏である。
ちなみに本作では『Q』で語られていた「2020年のケムール星から来訪した」という点には触れられていない。
また、同作でスーツアクターを担当した石川真之介氏は、『きたぞ!われらのウルトラマン』で初代ウルトラマンのスーツアクターを担当した事がある。
本話は「2020年の挑戦」の続編的立ち位置にあるストーリーであり、劇中では54年前に「2020年の挑戦」と思わしき出来事が起きたことがストレイジのデータベースに記録されており、書籍『2020年の挑戦』も再登場している。
その際に出現したケムール人は「民間人と警官隊の協力によって撃退された」とされている。これについてストレイジ隊長のヘビクラはウルトラマンの力を借りずに侵略者を撃退した彼らを「勇敢なる先人達」と述べ、讃えている。
スーツは劇場版『ジード』までに使われていたものではなく、東京国際映画祭のイベントで新造されたもので、本編第13話に登場したカネゴンも同じ。
なお、作中で車に追われるシーンこそ無かったが、Qでケムール人を追ったパトカーと同じ車種のパトカーがミニチュアとして登場している。
ケムール人の声を演じた辻本監督は前作『ウルトラマンタイガ』では、ゴロサンダーの声を演じている。ちなみに当初はケムール人の声は本来別の声優が担当する予定だったが、声優側の予定変更により出演が出来なくなったため、辻本氏が声を代理で担当する事になった。
当初はカオリが自分を犠牲にしてゼットに勝機をもたらした後に命を落とす展開になる予定だったが、本作品のスローガンが「明るく楽しい作品」という事だったため、切り替えられた。照明部と撮影部が作った夜の特撮は本当に暗かったが、ケムール人が夜の街に出たらどう見えるかをスタッフが考案したため、監督の辻本も同話の作風にマッチしていて満足のいく仕上がりになったという。
なお、『Z』にて再登場した際、放送年がケムールが来た未来と同じ年の2020年であるが故に応援配信でも初登場話の『Q』の配信がファン内で希望されていたが、それ以前の『Q』が初出のペギラの時は同話に登場したゼッパンドンの初出及びジャグラーが活躍する『オーブ』第17話が配信、カネゴンの際はカネゴンをモチーフとしたカネちゃんが登場する『かいじゅうステップワンダバダ』の第24話の配信が行われていた為、Twitter上のファン内では「円谷は何らかの事情でウルトラQが配信できないのではないか?」というちょっとした物議を醸した。
実際白黒映像で年代的に古く(次作『ウルトラマン』でも選択肢が少ない怪獣はともかく、ゴモラやレッドキングが初代初出の怪獣のメイン回は、同話に登場したギガスなど別の話やギーストロンなど別のシリーズの怪獣が選ばれている)、そもそもウルトラ戦士を応援する企画なのにウルトラマンが出ない話を選ぶのは問題があるという理由からか『Q』の配信が避けられていたと思われるが、『Z』での登場時にはパラレル的に『Q』のエピソードを含んでいるための都合か、無事に『Q』の初登場回が配信される事になった。
漫画・小説
ウルトラマン超闘士激伝
メフィラス大魔王が登場した際も、上記の漫画版の4人で「鋼魔四天王」を名乗ってメフィラスに仕えていた。
スペシウム反射板のように光線を弾くゴテゴテした装甲で上半身を覆ったパワーファイターで、パンチ一発で数kmに渡り地割れを起こすほどの馬鹿力を持つ。また、掌部分からはパワーグライドというエネルギー波を放つ。
他の四天王と共に光の国で破壊の限りを尽くし、タロウにトドメを刺そうとするが、駆けつけた闘士ウルトラマンに殴り飛ばされ、メフィラス大魔王の母艦にめり込んでしまった。
その後は改心して悪事から足を洗ったのか、第2回銀河最強武闘会では観客に交じっていた。
コダラーとシラリーが復活した際は、他の鋼魔四天王と共にウルトラ戦士の救護に駆け付け、パワーグライドでバリアーを作る新技を見せた。
ウルトラ忍法帖
怪獣忍軍朧党の構成員・怪夢瑠十人衆として登場。それぞれ一郎、二郎、三郎、四郎、五郎、六郎、七郎、八郎、九郎、十郎という名前があるが、外見はみんな同じで首領の冥府羅州以外に見分けられる者はいない。四郎と八郎(こんな名前だが実は女性)は夫婦で子供(朧党少年忍者隊の怪夢瑠Jr.)もいる。
ちなみに原典のケムール人は二代目がウル忍と同様にメフィラス星人の配下だが、上記の通り登場する時はいつも単独で、2人以上の複数で登場したことはない。
酩酊!怪獣酒場
怪獣酒場江幸田店の店長を務めており、ナックル星人の集団をまとめて撃破するほど戦闘力が高い。頭から吹き出す液体で対象を転送する能力も健在である。
怪獣達からの信頼も厚く、来店する怪獣達の悩みを聞いて人生経験に基づく助言を与えたり、怪獣酒場世界の地球に亡命してきた闇の魔神を雇うなど懐が深い。一方でユーモラスな面やブラックジョークを吐く怪獣…もといケムール人らしさが垣間見える事も…
なお、本部からの調査員であるカネゴンによれば、江幸田店の店長はケムールではなく、ゴーストロンらしく……。
ウルトラ怪獣擬人化計画 feat.POPComiccode
第30話で、東京・丸の内を訪れた際に妙な既視感に襲われたメフィラスの前に、バルタン星人・ザラブ星人と共に突如出現し、彼女を精神的に追い詰めるが、気を失うと同時に姿を消してしまう。おそらく彼女の見た幻である可能性が高いが……。
なお、このシーンは『ウルトラマン』第33話へのオマージュだが、ケムール人もちゃんと新造された二代目仕様で描かれている。
第62話にて擬人化された姿で登場。原作の頭の造形を表現してか、常に左右の眉の形が違っている。原作通り頭の突起から消去エネルギー源を吐き、興奮するとめちゃくちゃに撒き散らす。
腐女子沼にどっぷりハマッており、少女たち(元怪獣)の絡みを観察しては妄想を膨らませ百合小説を書いている。鳴き声は「腐乙腐乙腐乙(ふぉっふぉっふぉっ)」。ダメだこいつ早く何とかしないと
ちなみにパトカーから走って逃げるシーンも再現されている。
姿がわかっても、元いた時代と交信したり自在に行き来することが可能で、そのことが終盤で大きな役割を果たすことになる。
元々地球には侵略へと訪れた彼女が、人間の文化に触れ、人間に近い姿へ生まれ変わったことで次第に地球に愛着を抱くようになっており、現在ではもう地球を侵略しようという意思は持っていない旨をジャミラに打ち明けている。
ウルトラマンF
アジア某国の天才少年・躁躁が作り出したクローン個体が登場したが、彼に頭部の突起を抜き取られ、試験管で生きたまま薬品漬けにされて拘束されていた。
躁躁は消去エネルギー源で消滅させた物体は宇宙船に転送されており、主を失った今、宇宙船は機能を停止し内部の生命体は死亡しているだろうと推測している。
アニメ
怪獣酒場カンパーイ!
第1話にて客としてシルエットで登場。
かいじゅうステップワンダバダ
ケムちゃんとして登場。
CVはウルトラマンジャスティスやペガッサ星人ペガなどを演じた潘めぐみ。
ラジオドラマ
ウルトラQ倶楽部
第8話「2025年からの使者(前編)」、第9話「2025年からの使者(後編)」、第11話「諸人こぞりて(続・2025年からの使者)」、スペシャル「恐怖の2020年ケムール人再び来たる」と4回にわたって登場。
第8話と第9話では「たなごころ」を2025年の由利子に届ける為に由利子の子孫であるハルマ青年の乗るタイムトラベラーでタイムトラベルをしていた所、磁気嵐に巻き込まれて2020年に不時着した淳(2003年時点)たちを襲撃して来た。
本作では本当に未来の地球人の成れの果てという設定で、長寿になった反面、お互いを信用できなくなったために頭の後ろにも目を付けたという。この為、2020年の世界は文化が衰退した戦乱の世界となってしまっていた。
淳たちはなんとかケムール人を振り切り、2025年の由利子に「たなごころ」を届ける事に成功した。
後日談となる第11話では、2003年12月(ラジオドラマの放送当時)の世界に銅鐸型のタイムトラベラー(ワームホール航法を採用した古い型)に乗ってやって来た。
その不思議な形状から野次馬の注目を集める。警官の制止を効かずに入り込んだ一平と由利子は宇宙船の中に閉じ込められてしまい、どこかへ消失、別個体が各地で誘拐事件を引き起こす。
これに危機感を覚えた淳は政府に通報するも、まともに取り合わなかった為、知己である万世橋博士にハルマ青年から聞かされた時世コントロールシステム(野辺山天文台、マウナケア天文台、キットピーク天文台から強力電磁波を放って星型に結ばせ、SOS信号を未来世界に届けさせるというもの)を作動させるよう話を付けた。
一方で、由利子たちはケムール人の2003年から送られてきた地球人たちを一人一人精査していくが、お眼鏡に叶わず、落胆する姿を見かけるが、勘付いたケムール人がタイムトラベラー内で巨大化、2003年の世界でケムール人の対処に奔走する淳も囮作戦に使う予定であったケムール人を引き寄せるフェロモンの瓶をうっかり割ってしまい、両者ともに絶体絶命の危機に陥る。
前者は消去液を防ぐシェルターシートをハルマ青年が二人に寄越した事で危機を免れ、後者は淳が「たなごころ」の儀式を行い、溢れ出した希望のエネルギーのケムール人に与えた。すると、ケムール人はこれが欲しかったとばかりに天を仰いで泣くような仕草を取り始める。
彼らは地球人の若い肉体そのものが欲しかったのではなく、かつての人類が心に抱いていた「希望」や「夢」が欲しかったのである。しかし、2003年の人々からはそれが全く見つからず、解決の為に2025年の由利子達が動く事になったのだ。彼らは誘拐した人々を返還し、荒廃した世界を再興すべく2020年の未来へと帰っていった。
なお、上記の設定はあくまで、この作品における解釈であり、後に放送された『ウルトラマンZ』などの解釈とは異なる。
ゲーム作品
ウルトラ作戦 科特隊出動せよ!
1992年にバンプレストから発売された『Q』と『ウルトラマン』を繋ぐエピソードであるPCゲームソフト。
科特隊ロシア支部の隊長に就任予定のミハエル隊員に化け、本部へと侵入し、隊員という身分を隠れ蓑にして暗躍(この辺の行動はそっくりさんに似ている)。母星から招きよせたバイオ怪獣イオゴンを使役し、同胞が果たせなかった地球人誘拐の任務を遂行しようとする。
岩本博士と神田博士、ムラマツキャップやアラシ隊員以外の科特隊のメンバーを全員異次元に閉じ込め、さらにはキャップの恋人である祈子も捕虜とし、ムラマツを精神的に追い詰めるが、最後は異次元空間内で神田博士らが製作し、現実世界に転送した小型K・ミニオードからムラマツが放ったXチャンネル光波を浴びせられ、絶命した。
大怪獣バトル
AC版の無印1弾で技カードとして初収録。効果は「バトル終了までスピード値が100上がる」というもの。
『RR』にてついにプレイアブル化され、ダッシュして相手を撥ね飛ばす「ケムールアタック」、消去エネルギー源を高圧で噴きつける「誘拐光線」、そしてなんと観覧車をブン投げる「ミスティックシュート」が必殺技に設定されている。『RR』ではパワー(HP)と必殺技威力以外のパラメータと属性ソートが廃止されている為、各属性に対する耐性やアタック・ディフェンス・スピードの値は設定されていない。
ロストヒーローズ2
SD体が登場しているが、変身者はいない。
マウンテン・キューブを徘徊しており、ボルジャーノン隊を消去液で消滅させ、逃走しても回り込む執念深さを見せたが、タロウのウルトラ念力でなんとか逃げ果せる(本作では消去液は即死技となっている)。
その後、ギンガを加えたヒーロー達に敗れ、スパークドールズはギンガが回収、消されたボルジャーノン隊も戻って来た。
その他
1995年に放映されたサントリーのアイスジンのCMでは、森高千里による「ソーダとGINでケムール人」の歌に合わせ出演した。
2019年放送のテレビドラマ『新しい王様』では、主人公・秋葉新がたびたびケムール人を話題に出しており、ケムール人のフィギュアも登場している。
ただし、作中では『ウルトラQ』ではなく「『2020年の挑戦』という本に登場した」と説明されている。この『2020年の挑戦』の著者が神田博士だとすると、同作の世界においてもケムール人が実在する可能性があることになるが……。
関連イラスト
関連項目
ワイルド星人:同じく延命のために地球人の若者を狙っていた宇宙人。
ゼットン星人:そっくりさん。
ダダ:人体コレクション人これ仲間。