概要
監督:飯島敏宏
特技監督:有川貞昌
人間の未来の姿といわれるケムール人との攻防を描く。
STORY
発端
航空自衛隊のレーダーが、正体不明の飛行物体を捕捉した。スクランブル発進した戦闘機は『何か』に衝突、爆散してしまう。だが幕僚たちは天野二佐の報告と「何者かが存在する」との訴えを「おとぎ話」として取り合わず、その場で解任を言い渡してしまった。
ナレーター「しかし皆さん、皆さんは彼を信じるでしょう。レーダーには確かに妙な飛行物体が捉えられていたし、現にジェット機が見えない"何か"に衝突したのをご覧になったわけですから……」
同時刻。江戸川由利子と同僚の友田は訪れた避暑地で奇怪な事件に遭遇していた。ゴーカートの操縦者が二人の目の前で忽然と姿を消したのだった。
星川航空に訪れた由利子、天野らと情報を擦り合わせた一平は一連の事件は神田という科学者が執筆した小説「2020年の挑戦」との符号に思い当たるが、「小説の話」と一笑に付されてしまう。
万城目淳は天野とともにセスナで飛行物体が捕捉された場所へと飛んだが、何も発見できなかった。万城目の座席の背後に這い擦る奇怪な粘液が付着していた。天野が気付いたころにはもう万城目は消失していた。
発見
会社へと戻った由利子。同僚カメラマンの渡辺が写真の現像に割り込むが、暗室に潜んでいた謎の液体に触れ、渡辺は彼女の目の前で消滅してしまったのだった。
消滅の瞬間をとった写真に液体が移りこんでいることを確認した由利子は、一連の事件の犯人がこの液体であると確信する。
『液体』の狙いが由利子であると発覚し、関デスクは宇田川という冴えない風采の老刑事を彼女の護衛として呼び寄せる。「ヨボヨボのお爺さん刑事」と評して失望を隠せない由利子だったが…。
『液体』の正体は著書・『2020年の挑戦』の中に著されたケムール人と呼ばれる存在が自らの意思で操作可能な、消失の作用を媒介する物体であった。折しもそのことを一平から聞かされていた由利子が入った電話ボックスに液体が迫る。だが宇田川は見た目にそぐわぬ有能さを発揮。間一髪れた由利子を救う。液体は宇田川が投げつけたタバコの火に引火し焼失した。
するとどこからともなく奇怪な電子音と笑い声が響く。由利子の前に異形の怪人が現れる。崩れた相貌、異常な細身の体型のその怪人こそがまぎれもないケムール人だった。
走り出すケムール人。宇田川が呼び寄せたパトカー数台を超人的な脚力で振り切り姿を眩ませてしまう。
終結
「2020年の挑戦」の著者である神田は宇田川の親友で、「2020年の挑戦」はフィクションではなく2020年という時間を持つケムール星と神田との間に交わされた交信を記録したものだった。ケムール人は発達した医療技術によって長寿を実現したがその保持に限界をきたし、地球人の若い肉体を確保すべく『消去エネルギー源』を操作し人間を集めていた。
囮を申し出る由利子を宥め家に帰るよう促す宇田川だったが気を抜いて視線をそらした瞬間、由利子は消えてしまった。
一方、一平と天野は神田の研究所へ向かったが時すでに遅し、神田はすでにケムール人に消されてしまっていた。しかし神田はケムール人の弱点である「Xチャンネル光波」の情報を残していた。
郵送されていた『Kミニオード』試作品を得た一平と天野はXチャンネル光波発射のため東京タワーへと向かう。
そのころ、由利子は夜の遊園地で目を覚ました。彼女の目の前に万城目が現れる。喜ぶ由利子を宇田川が制止する。その万城目はケムール人が化けた姿だった。
正体を現したケムール人。駆け付け警官隊の一斉射撃に遭いケムール人は観覧車へよじ登り逃走をはかる。宇田川がまたしても有能さを発揮。銃撃でケムール人を撃ち落とす。
地面に叩きつけられるケムール人。これで決着かと思われた。しかしその肉体はゲル状に変化し、30mもの巨体に変貌を遂げるのだった。
施設を破壊し暴れまわるケムール人。しかし一平と天野が東京タワーからXチャンネル光波を発射。ケムール人はなすすべもなく倒され消滅したのだった。
ケムール人の死により、消された人間たちは無事帰ってきた。
ようやく戻ってきた万城目と再会を果たす由利子だったが、またケムール人が化けた偽物が出たのかと悲鳴を上げて逃げ出し、困惑した様子で追いかける万城目。
その様子を微笑ましく見つつ、これにて一件落着と安心する宇田川だったが、ふと足元にあの謎の液体が目に留まる。
「もう大丈夫だろう」と高をくくり、液体を踏みつける宇田川。
だが、液体の効果はまだ残存していた。宇田川は足から徐々に消えていく。
「うわっ、消える!あっ、ない!?助けてくれーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
悲鳴を残して消えた宇田川。彼の行方は誰も知らない……。
その後…
時を経てケムール人はある時を境に再び出現し、ウルトラ戦士と交戦することもあった。
そしてあの挑戦から54年後・・・再びケムール人が現れ、2020年の再挑戦が始まるのだった。
余談
- 本エピソードでは、天野二等空佐役を後にムラマツキャップを演じる小林昭二が演じ、ケムール人のスーツアクターは後にウルトラマンのスーツアクターを務める古谷敏が務めている。
- 冒頭で登場する航空自衛隊機はF-104だが、ウルトラシリーズでF-104が登場する作品は本作と『ULTRAMAN』のみである。
- ただしウルトラホーク1号など一部防衛チームの戦闘機のエンジン音として実機のエンジン音が流用されている。
- 万城目と天野二佐が乗っていたセスナ機は普段使用しているセスナ172(機体番号JA3137)ではなくセスナ175A(機体番号JA3136)。
- ちなみにこの機体は1974年に地上滑走中に建物と接触し中破している。
- 由利子の後輩(?)記者の友田を演じた土屋靖雄(クレジットは「土屋靖男」)は『帰ってきたウルトラマン』にも出演。本人は桜井浩子より年上で芸歴も長かったとか。
- 宇田川刑事を演じた柳谷寛は「あけてくれ!」の沢村も演じている。消失先から異次元列車を介して帰ってきた……わけではないだろう。
関連項目
制作順
放送順