概要
1967年3月5日放送。実相寺昭雄監督によるウルトラマン第5回監督作品。
監督:実相寺昭雄
脚本:佐々木守
特殊技術:高野宏一
全39話の中で唯一のコメディ(というよりむしろギャグ)回。
悲哀に満ちた前作とはうって変わって、科学特捜隊の面々が意外な一面を見せたりと突っ込みどころ満載。あの伝説(?)のシーンが爆誕した回でもある。
間違っても『そらのおとしもの』とは異なるので注意。ラブコメ要素はありません。
STORY
地球上の空はいつどこで、何か降ってくるかわからない。
宇宙線、流れ星、隕石、雪、雨、ジェットビートルで届けられたこうもり傘、果ては飛び降り自殺する人などなど…。
東京の空は、たまに危険な物が降ってくる。これらは全て「空からの贈り物」である。
その夜。空から、東京の晴海埠頭に謎の火の玉が降ってきた。
翌朝。現場に向かった科学特捜隊が火の玉が落ちた付近を調査すると、穴の中から巨大怪獣が姿を現した。その怪獣はとんでもないほど重量があった。
科特隊はジェットビートルで攻撃するが、怪獣はものともせずに眠りについてしまった。
その夜、眠る怪獣はメガトン怪獣スカイドンと名づけられた。
スカイドンが歩くだけで東京に被害が出ると考えた科特隊は、翌日、宇宙に追放する作戦を決行した。
1.ワイヤーロック作戦!
ジェットビートル3機でスカイドンにワイヤーで吊るし、そのまま運ぶ作戦。
だが、スカイドンの圧倒な重さの前にワイヤーが外れ、ハヤタの乗るジェットビートルが墜落してしまう。
そこへ現れるウルトラマン。スカイドンにパンチやキックを見舞うが、全く効果はない。
ならばと背負い投げしようとするが、見事に
押し潰された…。
そうこうするうちにカラータイマーが点滅し始めた為、ウルトラマンはスカイドンが呑気に寝てしまった隙に飛び去ってしまった。
イデ隊員「見ろ!ウルトラマンもダメだ!」
フジ隊員「奴は重いのよ!呆れ返るほど重いのよ!」
2.オートジャイロ作戦!
イデ隊員が発案。まず麻酔弾(10分効果)でスカイドンを眠らせ、その間に巨大オートジャイロを装着させて、宇宙まで運ぶ作戦である。
無事に成功したと思った科特隊が、本部で乾杯しようとしたら…
ドーーーーーーーーーン!!!と地響き。
「無重力に入る前に、プロペラの推進力が弱ったのでは?」とはムラマツ隊長談。
多分、スカイドンの圧倒的な重さが原因だと思う…。
地面に落下し、暴れるスカイドン。
3.ロケット弾作戦!
フジ隊員が発案。かつてガマクジラ戦で実行したようにロケット弾を打ち込み、スカイドンを飛ばす作戦。
ロケットが尻尾に当たったが、圧倒的な重さが原因で、飛ぶところか科特隊に向かって軽やかに突進してきた。慌てて逃げる隊員達。
スカイドンの口の中に新型麻酔弾を炸裂させて、なんとか動きは止まったのであった…。
4.怪獣風船化作戦!
スカイドンの尻尾の先(しかも作中では尻の穴を狙うよう指示していた)に水素ガスを注入。するとスカイドンの巨体がみるみる風船のように膨らみ始め、空に飛んだ。宙に舞うスカイドンを見て歓喜する科学特捜隊。
しかし、安心するにはまだ早かった。そのことを全く知らない自衛隊が、空に浮くスカイドンを攻撃してしまった。
本部でカレーを食べていた科特隊に連絡が入り、急いで外に飛び出すハヤタ。
スプーンを手に……。(※)
おっと、すぐさま投げ捨ててベーターカプセルを手に取り、ウルトラマンに変身。
ウルトラマンは空を飛び、急降下するスカイドンに体当たり。
メカドン怪獣スカイドンは空中で爆発、粉砕された。
お茶を飲むイデの額に鶯のフンが落ちた。それを見て笑う科特隊。
着物姿のフジが桜を見て、「春ねぇ。もうすぐ…」と独り言。
「春ねぇ、もうすぐ…。フジ隊員は心の中で呟いた。そう、東京の春はもうすぐだ。
春になったら、もう嫌なモノは絶対に空から降ってほしくない。なぜって?だって春だもん。
そう、春は人の心を明るくさせる季節だからである。」(ナレーション)
※ なお、カレーを食べるのをやめて飛び出すハヤタをよく見ると、ちゃんとテーブルにスプーンを置いてから席を立っているのがわかる。だとすると、あの時ハヤタが持っていたスプーンはいったい…?
おまけ
カットシーン
脚本上では存在したがカットされてしまったシーンがいくつか存在する。
- 工事現場で遊んでいた子供がスカイドンと遭遇し、アラシ隊員に助けられる。
- スカイドンを宇宙に放り出すために科学特捜隊が以下の作戦を立案する。
- スカイドンの体にロープを巻き付け、高速回転させて宇宙に打ち上げるアイアンキック作戦。
- 東京じゅうの酒を集めてスカイドンに飲ませて酔って眠らせる作戦(作戦名不明)。
浜松ロケ
誤ってスカイドンを撃墜してしまう航空自衛隊の描写は浜松基地で撮影された。スケジュールや予算の都合で俳優を連れて行けず、操縦席の描写は展示されている機体の操縦席に照明部チーフの大石弘一が座って撮影している。
なお脚本上では航空自衛隊ではなく在日米軍がベトナムから飛来した風船爆弾と誤認して撃墜するという描写だったとされる。
サブタイをさがせ!
『ウルトラマンオーブ』第14話では、地球に現れたギャラクトロンを目にした松戸シンが、「空の贈り物…?」とつぶやくシーンがある(同エピソードの「サブタイをさがせ!」の答えにもなっている)。
スプーン変身
ハヤタがベーターカプセルと間違えてスプーンを掲げるシーンは円谷プロ内で大問題となったらしく、当時の現場を描いた実録風ドラマ『ウルトラマンをつくった男たち』ではその騒動の顛末が(脚色も含まれているが)再現されている。
作中では飯島敏宏監督がこの演出に激昂したかのように描写されているが、飯島本人は後年「そんなに怒ってない」と発言している。
元黒澤組助監督のベテランである野長瀬三摩地監督がこの演出を問題視し噛みついたが、金城哲夫から「円谷(英二)さんが『テレビだからいいんじゃないか』と言っていた」と抑えられたという逸話が残されている。
劇中で科学特捜隊の隊員達が食べていたカレーは、ハヤタ役の黒部進監修のもと、
バンダイの公式ショッピング「プレミアムバンダイ」でネット販売された。(現在は終了)
ベーターカプセルと間違えてスプーンを掲げてしまう有名なシーンは、後の作品でも度々オマージュされている。以下はその例。
- ウルトラシリーズ
- 『ウルトラマンマックス』:第16話にてカレーを食べている最中だったトミオカ長官(演じるのはハヤタ隊員を演じた黒部進)が、いろいろあった末「アチョー!」と叫びながらカレー皿をかかげた。
- 『ウルトラマンオーブ』:第4話にてクレナイ・ガイが変身しようとした際、直前にアイスを食べようとしていたため右手にアイスの棒を持ったままオーブリングを構えそうになった。アイスの棒はゴミ箱に投げ込んで改めて変身。
- 『ウルトラマンR/B』:第17話にて湊カツミと湊イサミがダブル変身しようとした際、イサミがルーブジャイロではなく調査に使っていたバイブス波測定装置を構えた。装置は草むらに投げ捨てて改めてダブル変身した。
- 『ウルトラマンタイガ』:第23話にてカップラーメンを食べている途中で飛び出した工藤ヒロユキが変身しようとした際、タイガスパークを装着した手にウルトラタイガアクセサリーではなくフォークを握っていた。フォークをポケットに仕舞ってから変身した。
- ウルトラシリーズ以外
- 『深海獣レイゴー』:黒部進が演じる山神長官が唐突にスプーンを掲げるシーンにオマージュが見受けられる。
- 『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』:第45話にて、夜野魁利と陽川咲也がサモーン・シャケキスタンチンに鮭をばら撒かれて口に咥えさせられた後、咲也がパトレン2号に変身しようとしてトリガーマシン2号と間違えて鮭をVSチェンジャーに装着していた。
また、このシーンのハヤタのフィギュアがバンダイのHGシリーズから立体化されて発売されている。
シン・ウルトラマンの主役・神永新二を演じた斎藤工は、変身シーンの練習にスプーンを使ったとのことである。公式Twitterでもスプーンで目を覆ってふざけている斎藤を映したショットが公開されている。