概要
脚本:川崎高(※)・上原正三
監督:実相寺昭雄
特殊技術:高野宏一
とある下町の円盤騒動を描く。
※実相寺昭雄の変名。本来は「川崎高氏」とするはずが誤って「氏」が外れてしまったという。
STORY
星空が輝く夜の下町。アマチュア天文家のフクシン三郎青年は、隣に住むゲンさんの嫌がらせ騒音がおさまった頃、自宅の物干し台から望遠鏡で天体観測を楽しんでいた。
その寝不足が原因で、昼間の街工場の仕事に集中できず社長に怒られる始末。
自転車で仕事から帰る途中、川原に寝転がって空を見上げるフクシンは、お弁当箱を拾ってくれた少年と出会う。
帰り道、その少年に自分の愚痴をこぼし、自分の持つ夢を語った。
その日の夜。いつものように望遠鏡で星を眺めていると、そこに写ったのは円盤群だった。
フクシンは慌ててゲンさんの家へ急行。ゲンさん宅の電話を借りようとするが、全く相手にされなかったためやむを得ず、公衆電話でウルトラ警備隊に通報した。
早速、ダンとソガはウルトラホーク1号で調査するが、全然異常はなかった。ただ、ダンは星が多いことを不思議に思っていた。
翌日。団地の空き地で寝転がっていたフクシンは、野球をしていた不思議な少年と再び出会う。
「円盤見つけたことを知らせたけど、錯覚だった」とぼやくフクシンに
少年は、「東の空に、今日こそ円盤が見られるよ」と言って野球する友達の方へ戻った。
その後、シゲさんが経営する蕎麦屋の増田屋へ寄り道した後、昨日の件でご立腹のゲンさんの妨害騒音を無視して、望遠鏡を覗くと……。
再び円盤群を目撃。怒って乗り込んで来たゲンさんにも望遠鏡を覗かせ、再度ウルトラ警備隊に通報。
しかし、証拠に撮ったフィルムがあるにもかかわらず、何の異常も観測されなかったため、ただの見間違いと判断されてしまった。更に同様のアマチュア天文観測家からの通報が相次いでいたため、以降はこのような通報は本部ではなく広報班に回される運びになってしまった。
だが、写真を見たダンとソガは引っかかるものがあった。先日のパトロールの時と同じように
「星が多いな」
次の日。川原の道でダンプカーとすれ違い、自転車から転んでしまったフクシンは、またもや不思議な少年と出会った。
川原で座り込むフクシンは少年に、「星の世界へ住んでみたい」と話す。
その夢を聞いた少年は「きれいな星に連れてってあげる」と望遠鏡を売っている自分の家へ案内した。
野球中継のラジオが流れる中、フクシンが夢中になって望遠鏡を覗くとまたしても円盤群が!
さらに少年が「大きく見せてあげる」と押入れを開けると、中に入っていたテレビの画面にも円盤群が写っていた。
不思議な少年の正体は、ペガッサ星雲第68番ペロリンガ星からやってきた、地球侵略を企むサイケ宇宙人ペロリンガ星人だった。
「君ガ見タモノハ正シカッタノサ。ウルトラ警備隊ヤ天文台ガ信用シナカッタノハ無理モナイ。
私達ハ円盤ヲ星ニカモフラージュシタンダカラネ。君ノ素晴ラシイ直感デ円盤ト見エタモノモ専門家ニハ星トシカ見エナイ。
コレデ専門家ヲ油断サセルノガ、私達ノ狙イサ。ツマリ、ウルトラ警備隊ヤ、ウルトラセブンヲネ。
私達ハナルダケ穏ヤカニ事ヲ運ビタイノサ。『狼ガ来タァッー!』幾度モ言ッテイルウチニ誰モ振リ向キモシナクナル。
本当ノ狼ハ、ソノ隙ニヤッテ来ル!コンナ地球ノ童話ヲ私達モ知ッテイルヨ」
そう言って ペロリンガ星人は唖然とするフクシンに黒電話を差し出す。
「普通ノ地球ノ電話器サ。試シテゴラン。『私は今、宇宙人のペロリンガ星人と話をしている』ト言ッテ」
フクシンはウルトラ警備隊に再三電話を掛けるが、全く相手をされず呆然とした。
「ホゥラ、モウ本当ノコトヲ信ジチャクレナイシ、本部ノ誰ニモ取リ次イデモクレナイダロウ?
人間ナンテソンナ動物サ。専門家ハ常ニアマチュアヨリ正シイト思ッテイルノサ。
ソコヲ突ケバ、油断シテイル隙ニ苦モナク地球ヘ大円盤群ヲ着陸サセラレル。
ハハッ、約束ヲ果タシテアゲヨウ。私ハ地球ニ飽キ飽キシタ君ヲ星ヘ連レテ行ッテアゲルヨ。
モウ随分大勢ノ地球人ヲ私ハ星ヘ連レテ行ッテアゲタンダ。ホラ、アル日突然蒸発シテイナクナッタ人達ガ、君ノ身ノ周リニモイルダロウ?」
ペロリンガ星人の優しく魅力的な言葉に、思わず耳を傾けてしまうフクシンであった。
一方。地球防衛軍極東支部では、アンヌ隊員の分析により、フクシンの撮影した「星の写真」に写っていたものがカモフラージュされた円盤群であることが発覚。
ただの星が一般人のフィルムにキレイに写ることはない。星が多いように見えた被写体の正体は異常発光物体、すなわち円盤だったのだ。
さらにダンの報告で、先ほどの電話の録音テープにペロリンガ星人の声が混ざっていることもわかった。キリヤマ隊長は、ダンとソガに宇宙パトロール出動を命じた。
宇宙へ飛び立ったウルトラホーク1号に襲いかかるペロリンガ星侵略部隊。飛来するペロリンガ星人。
そこへ我らのウルトラセブンも駆けつけ、ペロリンガ星人と激しい空中戦を展開する。
ウルトラセブンとウルトラ警備隊の総攻撃により、サイケ宇宙人ペロリンガ星人は爆発。侵略部隊も全滅した。
事件解決後。フクシンはウルトラ警備隊からウルトラ勲章を授かった。ゲンさん、シゲさんを始め近所の人々に賞賛されるのだが、どこか残念そうな表情のフクシンは自宅の物干し台から夜空を見上げた。
そして、自転車で職場へと向かう、いつもと変わらない普通の生活に戻るのであった。
余談
ゲスト関係
- メインゲストのフクシンは脚本上では「福新三郎」と表記されている。
- オープニングに田辺和歌子がクレジットされているが実際には出演していない。一説には登場シーンがカットされてしまった工場長の妻役で出演していたとされている。
- このほか終盤のシーンでわずかに登場するだけの警官(和久井節緒)も本来はもっと登場シーンがあったといわれている。
- ペロリンガ星人の声を担当したのは、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『ミラーマン』『ジャンボーグA』のナレーターでお馴染み浦野光氏(声を早回し)
- ペロリンガ星人が変身した不思議な少年役の高野浩幸氏は、東映特撮『超人バロム・1』の主人公の一人・白鳥健太郎を演じる。
氏はウルトラシリーズでは『帰ってきたウルトラマン』第15話の小田切史郎少年のほか、『ウルトラマンティガ』のキリエル人(イタハシ・ミツオ)などを演じている。
カットシーン
今回も脚本上では存在するがカットされてしまったシーンが存在する。スチール写真などに名残があり、撮影はされたものの尺の都合でカットされてしまった模様。
- 円盤襲来の一報を受けたウルトラ警備隊員がパジャマ姿のまま作戦室に出てくる場面でアンヌが最後に入ってくる。
- アンヌがネグリジェ姿でポーズを取っているスチール写真が現存する。
- 仕事に集中できないフクシンにとうとう工場長がクビを告げる。
- 前述の工場長の妻が登場するはずだったシーン。
- フクシンとゲンさんが円盤のフィルムを持ち、アンヌがフィルムを受け取る。
- 墜落したペロリンガ星人の円盤からフクシンを救出するダンとソガ。
本話と実相寺監督
- 脚本のタイトルは「夜毎の円盤」。上原正三と共作扱いになっているが実際は川崎=実相寺がほとんど一人で書いたとされている。
- 実相寺は本話の16mmフィルムを私蔵して自宅で鑑賞していたといわれている。
- 『ウルトラセブン』における実相寺監督作品と言えば「狙われた街」におけるメトロン星人とちゃぶ台が有名だが、当時TBSは海外輸出を見越していたのに対し、日本を思わせる物を全面的に押し出したことから放送後プロデューサーからクレームが出た上にしばらく『ウルトラセブン』から外されてしまったという。
- 製作費のひっ迫から呼び戻されたものの、本話においても懲りずに日本の下町風景を前面に押し出したことからクレームを出されてしまった。
後日談
- 『ウルトラマンタイガ』第6話「円盤が来ない」は、このエピソードの続編とも言える内容になっている。
- ただし、セブンやウルトラ警備隊によって倒されたはずのペロリンガ星人が生きている等、直接つながっていると考えると矛盾する点もある。もっとも、戦いで生き残った個体と考えることもできる(過去には『マックス』においても似たようなエピソードがあった)。
ペロリンガ星人を演じた高野氏は同エピソードでも出演。詳細は同項目を参照。