概要
第8話予告
「今まで何とも無かった人が、突然訳もなく暴れだして他人を傷つけるという不審な事件が次々に起こります。
しかも、これはある街に限っての出来事なのです。宇宙人の恐ろしい魔の手は街中の人間を恐怖の中に投げ込みました。
では来週のこの時間、「狙われた街」をぜひご期待ください。」<別冊映画秘宝「ウルトラセブン研究読本」より引用>
STORY
日本各地で多発するタクシー暴走、飛行機墜落、列車衝突、タンカー爆発、人身事故。それらの事件は全て北川町の住民達により引き起こされていた。
友里家葬式場
ウルトラ警備隊隊員友里アンヌの叔父で、日本民間航空のパイロット友里政二郎の葬儀がしめやかに執り行われた。130人の乗客を巻き込む墜落事故を起こしてしまったのである。
弔問に訪れる大勢の人々の中に、モロボシ・ダンの姿があった。
北川町駅前
パトロール中のフルハシ隊員とソガ隊員は、駅前の自動販売機で煙草を購入。
煙草を一服しょうとする二人の耳に銃声が響き渡る。
フルハシとソガがポインター号で現場に駆けつけると、銃を持ち無差別に乱射するライフル魔の姿があった。
ライフル魔に突進するフルハシだが、銃弾を受けて負傷してしまう。
ソガはウルトラガンで銃を撃ち落とし、警官達と共にライフル魔を取り押さえる。
逮捕されても、暴れ狂うように激しく抵抗するライフル魔。しかし突然、失神するかのようにその場に倒れこんだ。
地球防衛軍極東基地
メディカルセンターでアンヌがフルハシの治療をするなか、先ほどのライフル乱射事件について語り合う隊員たち。
犯人のライフル魔は北川町の平凡なサラリーマンで、おとなしい青年だった。
現場から100m離れた銃砲店で煙草を吸いながら店員と銃の話をしている途中、突然狂ったかのように陳列棚のライフルと弾を奪って逃走したという。
何か怪しいと睨んだダンは、ライフル魔が留置されている第4分署へ向かった。
第4分署
署に連行され、取調べを受けるライフル魔の犯人は、自分がライフルで無差別に乱射していたことを全く覚えていなかった。
朝食にトースト2枚とミルクを食べ、日曜なので映画を見に行く途中、駅の売店で新聞と煙草を買って、時間があったので行きつけの銃砲店に寄り道したと刑事に供述する犯人。
ポインターを運転するダンの前に、割り込んできたダンプカーが大量の砂利を撒き散らし妨害する。
停車したダンはダンプカーの運転席に駆け寄るが、誰もいなかった。
そこへ声が流れる。
「モロボシ・ダン、いやウルトラセブン。我々の邪魔をするな!これは命令だ。今すぐに手を引け!
我々にとって君を倒すことは問題ではない。だが、同じ宇宙人同士で傷つけあうのは愚かなことだ。
もう一度忠告しておく。北川町に近よるな、ウルトラセブン」
ダンの思った通り、地球侵略を企む宇宙人の仕業であった。しかし、一体何の目的で…。
地球防衛軍極東基地作戦室
その後、作戦室へやって来たフルハシは、駅の自動販売機で購入した煙草を一服。
すると突如として異変が起こった。赤い光に照らされて、凶暴な目つきに変貌するフルハシ。コーヒーを入れたダンに襲い掛かり、気が狂ったように作戦室内で暴れ始める。
狂乱する怪力のフルハシをキリヤマ隊長、アマギ隊員達が必死に取り押さえる。急に失神し、メディカルセンターへ運ばれるフルハシ。
さらに数分後、ソガも煙草に火をつけた途端、同様に狂乱を起こし失神。
ダンはフルハシとソガが吸った煙草をもみほぐし、中から赤い結晶体を取り出す。キリヤマはその結晶体を科学班にまわした。
メディカルセンターで眠るフルハシ、ソガに煙草の入手先を聞こうとするダン。しかし、昏睡状態のため聞くことはできなかった。
友里家
友里家を訪れたダンとアンヌは、伯母の友里愛子に叔父・政二郎がいつ煙草を買ったか尋ねると、甥の弘が事故当日、散歩の途中に駅前の自動販売機で買ったと証言。
北川町駅前の自動販売機が怪しいと睨んだダンとアンヌは、駅前の喫茶店で張り込みを開始。
地球防衛軍極東基地作戦室
科学班の分析によって赤い結晶体の正体が判明した。この結晶体を吸い込むと周りの人が敵に見えて、理性と感情のない殺意をもった人間と化してしまう恐るべき宇宙ケシの実であった。
北川町駅前
喫茶店で張り込みを続けるダンとアンヌ。すると、タバコ自動販売機の前に一台のワゴン車が現れた。
ワゴン車から降りた黒服の男が煙草を補充すると、再び乗ってその場を走り去った。
ダンとアンヌはタクシーに乗り込み、ワゴン車の後を尾行する。
日が沈みかけた頃、怪しいワゴン車は下町の古いアパートへ入っていく。
ダンはアンヌを外に待機させ、一人でアパートに乗り込む。
ラジオの野球中継が聞こえるなか、心配そうに見守るアンヌ。
古いアパート
アパートの薄暗い廊下を歩くダン。一番奥の部屋まで進むと部屋の扉が急に開いた。
部屋の中に連れ込まれたダンの目の前に、紳士的な態度の宇宙人の姿が。
この宇宙人こそ今回の事件の黒幕、幻覚宇宙人メトロン星人である。
ちゃぶ台を挟むダンとメトロン星人。あぐらをかいて座るメトロン星人は今回の地球侵略計画を告げた。
会話の文字起こし
以下はその二人が対話した内容である。
「」:ダン
『』:メトロン星人
『ようこそウルトラセブン。我々は君の来るのを待っていたのだ』
「なに!?」
『歓迎するぞ。なんなら、アンヌ隊員も呼んだらどうだい?』
「君たちの計画は全て暴露された。おとなしく降伏しろ」
『ハッハッハッ、我々の実験は十分成功したのさ』
「実験?」
『そうだ。赤い結晶体が人類の頭脳を狂わせるのに、十分効力があることが分かったんだ。教えてやろう。我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きていることに目をつけたのだ。地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく。どうだ?いい考えだろう。』
「そうはさせん、地球にはウルトラ警備隊がいるんだ。」
『ウルトラ警備隊?恐いのはウルトラセブン、君だけだ。
だから、君には宇宙へ帰ってもらう。邪魔だからな。ハッハッハッ』
〈会話終了〉
対話の最後に、メトロン星人は邪魔者のモロボシ・ダン…いや、ウルトラセブンを自身の円盤で宇宙ヘ追放しょうと企む。
潜伏先の古いアパートからメトロン星人の円盤が出現。地球防衛軍極東基地に連絡するアンヌの要請を受け、夕陽に飛び立つウルトラホーク1号。
夕陽の北川町
メトロン円盤を迎え撃つウルトラホーク1号。円盤は分離して攻撃するが、ウルトラホーク1号のミサイル攻撃でダンとメトロン星人が乗った片方の円盤が撃墜された。
ダンはウルトラアイを取り出し、ウルトラセブンに変身。
円盤が爆発すると同時に巨大化するメトロン星人。
夕焼けの北川町を舞台に、ウルトラセブンとメトロン星人の戦いが始まった。
ウルトラホーク1号の活躍により、残り一機のメトロン円盤も撃墜。
追い詰められたメトロン星人は逃亡を図るが、セブンのアイスラッガーによって身体を切り裂かれ、止めのエメリウム光線を受け爆発。
人間同士の信頼感を利用とした幻覚宇宙人メトロン星人の地球侵略計画は粉砕された。
戦いに勝利し、夕陽に染まった下町に立つウルトラセブン。
そして最後に、セブンの勝利を称えつつも痛烈な皮肉が混じった珠玉のナレーションが流れて物語は幕を閉じる。
ナレーション「メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。
人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。
でもご安心下さい、このお話は遠い遠い未来の物語なのです…。
え?何故ですって?
我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから…」
余談とおまけ
本編
脚本上では存在したがカットされてしまったシーンがいくつか存在する。
- 冒頭、友里アンヌの叔父の飛行機が墜落。葬式場所は教会。
- 放送当時日本周辺で旅客機の墜落事故が相次いだことに配慮してカットされた可能性がある。
- 墜落原因が機長の異常行動との報告に反論するアンヌ。
- 本編の最後に流れるシニカルなナレーションは脚本には書かれておらず、実相寺昭雄監督が加えた。
- 実相寺の依頼で佐々木守が書いたとする資料もある。
- 脚本決定稿第2稿ではアンヌが「これで北川町もやれやれね」と呟き、墜落した円盤の残骸が燃え、夕陽とシンクロして終了。
- 赤い結晶体について科学班カネダ隊員は「ワイ星探検で発見された宇宙ケシの実に似ている」と証言しているが、没シナリオ「認識票No.3」でワイ星探検を発端とする事件が描かれている。
- 劇中のクラシック音楽は全て冬木透が書いたオリジナル。ちゃぶ台シーンで流れる音楽の曲名は「SEVEN'S CHAMBER MUSIC」。同監督の「円盤が来た」でも使用されている。
- ライフル魔を尋問する刑事は「積木くずし」で知られる穂積隆信。
- 友里政二郎の葬儀の弔問客として特撮ファンにはゴジラシリーズのモブ役でおなじみの橘正晃や吉頂寺晃、坪野鎌之が出演している。
- 夕陽に包まれる高度成長期の下町という日本人の叙情感を刺激する風景に、宇宙よりやってきた異質な巨大生物同士が戦うというミスマッチめいた戦闘シーンは、時を経るほどにセンス・オブ・ワンダーが感じられるものとして評価を高めていき、今ではちゃぶ台と同様にメトロン星人の象徴となっている。
- アパートへ調査に赴いたダンは私服だが、変身シーンはバンクであるためウルトラ警備隊の制服になっている。
- 「ダンが中にいる」と報告を受けながらキリヤマ隊長がメトロン円盤を撃墜しているが気にしてはいけない。
メトロン星人
本編のちゃぶ台シーン
pixiv内では、別作品のキャラとメトロン星人がちゃぶ台を挟んで対話するイラストが多い。
ペガッサ星人と)
(メトロン星人Jr.
ギロチン王子…、じゃなくてウルトラマンAのギロチン技の一つ、バーチカルギロチンで臓物をぶち撒けながら真っ二つになる凄絶な最期は今尚語り草となっている。
ウルトラ怪獣擬人化計画 feat.POPComiccode
往年のウルトラシリーズのネタが度々パロディされていることでおなじみの本作だが、やはりというというか当然というか、この「狙われた街」のパロディも見られる。
特にメトロン星人は登場するたびに何かとこの回を意識した行動や言い回しをすることが多い。
実相寺氏の独特のカメラアングルをメフィラスやアントラーがツッコんだこともある。
北川町の再登場
印象的なエピソードであったためか、後年のシリーズでも、物語の舞台となった北川町が設定を変えた上で再登場してくることが多い。
ウルトラマンマックス
第24話「狙われない街」はこの回のオマージュになっており、この回に登場したメトロン星人と同一人物が登場する。
ネオ・ウルトラQ
ヴァルカヌス星人の潜伏先として北川町が登場。
ウルトラマンオーブ
本作に登場する私設の怪奇現象追跡チーム「SSP」の本拠地は北川町に置かれているという設定。
また同作には初代とは別個体だが、メトロン星人の同族も登場しており、「幻覚タバコ作戦」なる侵略計画を進めようとしていたことが語られている。
「狙われた街」の放送日と同じ11月19日には、やはりメトロン星人に関わるエピソードが放送されている。
ウルトラマントリガー
第13話の回想シーンにおいて、「北川人情放浪劇」というドラマの存在が語られる。毎週木曜日に放送されているとのこと。
マルゥルとタツミ隊長はこのドラマのファンらしく、互いに共通の趣味があることを知り意気投合、マルゥルはそれまで乗り気でなかったTPUへの配属を了承することになる。
このエピソードではマルゥルがちゃぶ台を挟んでメンバーから事情聴取を行ったり、謎のケシの実に纏わる事件について書かれた新聞記事が出てきたり(それと同一のものは不明だが、部屋に置かれた灰皿にケシの実のようなものが置かれていた。イグニスによると「臭い」とのことだが)と、他にも「狙われた街」へのオマージュと思われる演出があった。またマルゥルのキャラクターソング「メトロン・サンセット」の歌詞に「狙われた街」と言うワードがある。
ウルトラマンアーク
第21話「夢咲き鳥」にて、物語の舞台となる星元市に“北川町”という地区があることが判明。
夏目リンの旧友である作家の芝アオイが勤務する編集プロダクションがあり、さらには原因不明の怪電波が観測されるという事態が起きていた。