概要
1966年10月16日放送。
監督:実相寺昭雄
脚本:佐々木守
特殊技術:高野宏一
実相寺昭雄監督による『ウルトラマン』第1回監督作品。
科学特捜隊の紅一点、フジアキコ隊員の主役回である。
当時の次回予告ではサブタイトルが「真珠貝防衛作戦」と誤って読み上げられていたとされる。
STORY
科学特捜隊の月給日。一ヶ月分の給料をもらったフジ隊員は、お供のイデ隊員と銀座へショッピングへ出掛けた。
だが、とても手が出せないほど真珠が値上がりしていたのだ。
宝石店の店主に聞くと、今年に入って海流と気候は例年と同じなのに、養殖真珠が全滅に近い打撃を受けたからだという。
これを聞いたフジ隊員は原因究明のため、イデ隊員と科特隊本部に戻るのであった。
今年に入って、英虞湾・五ヶ所湾で養殖真珠に欠かせない真珠貝がほとんど死亡する事件が発生していた。
無事な真珠貝を日本海へ運ぶトラックを蛙と鯨を混ぜたような巨大怪獣が襲った。
怪獣は、横転したトラックから投げ出された真珠貝を長い舌で吸い取っていく。
すべては、潮吹き怪獣ガマクジラの仕業であった。
この一報を受けた科特隊は出動態勢に入る中、フジ隊員の目は執念と怒りで血走っていた。
現場へ急行したジェットビートルはすぐさまガマクジラを攻撃するが、頭から噴出す熱線水流を浴びて墜落しそうになるも、なんとか着陸に成功した。
その夜。岩場にくつろぐガマクジラを監視する中、ガマクジラの体内から真珠を消化する不気味な音が響いた。
それを聞いたフジ隊員は思わずガマクジラに、「真珠の光を奪わないで!」と叫ぶ。その顔は怒りのあまり鬼の形相になっていた。
翌朝。ガマクジラはさらなる真珠を求め、大都会へ進撃しようとしていた。それを阻止するため、科特隊はジェットビートルに搭載した四色の風船爆弾と電子網の空中放電でガマクジラを攻撃する。
しかしガマクジラが大暴れした勢いで、ハヤタの乗る小型ビートルが墜落炎上してしまう。
電子網から抜け出したガマクジラは、近くの海岸で遊ぶ女性達を襲い、彼女達が付けていた真珠のアクセサリーを狙い始めた。
「真珠の光を欲しがるなんて」とフジ隊員の言葉をヒントにアラシ隊員は、ムラマツ隊長に真珠爆弾作戦を提案する。
ジェットビートルはガマクジラに向けて真珠爆弾を投下。爆発で悶絶するガマクジラだったが、頭から受けた攻撃と同じ元素を吐き出し、自分の体質を強化してしまった。
腕を負傷しながらも無事だったハヤタは、合流したフジに本部から小型ジェット噴射機を送らせるように指示した。
ジェットビートルは、ガマクジラの尻尾に小型ジェット弾を打ち込む。それを見たハヤタはウルトラマンに変身し、宙を舞うガマクジラを追って、空へ飛んだ。
空中で慌てふためくガマクジラに、ウルトラマンは頭から体当たり。激突された潮吹き怪獣ガマクジラは爆死した。
ガマクジラが死んだ後、真珠は前よりも増して採れるようになり、フジ隊員の給料でも十分に買えるようになった。
真珠をたくさん着飾る満足顔のフジ隊員を見てイデ隊員は、
「いい加減にしてくださいよ。フジ隊員。馬子にも衣装ちゅうけど、これまるで豚に真珠ですね。
そんなに真珠をたくさんつけちゃって。まるで自分の方がガマクジラみたい。」と失言。
銀座でショッピングを楽しむフジ隊員に、山ほどの荷物を持たされてしまったイデ隊員であった…。
余談
Bタイプへ
今回の話から、ウルトラマンはAタイプからBタイプへチェンジする。
Aタイプのウルトラマンとガマクジラの戦闘シーンが撮影されたが、カットされてしまった(理由は不明)。
この際にウルトラマンがガマクジラに右腕を噛まれるが、後にハヤタが同じ場所を怪我していることをムラマツが訝しむという描写があったとされる。
このほかに体質変化したガマクジラがあたりの岩をかみ砕き、鉄橋をへし折るというパワーアップを視覚化した描写もあった。
本話を最後にプール撮影は行われなくなり、怪獣との水上戦が繰り広げられることはなくなった(唯一海中が描写されている第24話は疑似水中)。
実相寺昭雄は完成したガマクジラのスーツの出来栄えが不満で特撮シーンを減らしたと語っていたが、これが戦闘シーンのカットに影響していたかは不明である。
桜井氏と実相寺監督
フジ隊員役の桜井浩子氏はとある本のインタビューによると、真珠と宝石は興味なく、実相寺監督のことを「ジッソーさん」の愛称で呼んでいた。
ラストの真珠で着飾った姿は「指輪が見えるように」とだけ指示されて自由にやらせてもらえたが、桜井氏は前日忙しくてシャンプーできなかったことが不満だったと語っている。
ちなみに真珠で着飾ったフジ隊員に対してイデ隊員が失言を漏らす描写は台本上にはない。
ゲスト出演
後に実相寺作品の常連となった役者寺田農氏は、この回でトラック運転手の助手という端役で出演していた。独特の演出や演技指導などについては、最初はあまり良い印象は持っていなかったという。
トラック運転手役は寺田氏と共に岡本喜八監督作品に多く出演していた樋浦勉氏、宝石店の店主役は『新幹線大爆破』のパニックに陥る乗客役で知られる矢野宣氏。