概要
1966年10月23日放送。
脚本:佐々木守
監督:実相寺昭雄
特殊技術:高野宏一
二次元怪獣ガヴァドンを生み出した子供達を中心に描く。
予告
ヒカル君がウルトラマンタロウさんから聞いたっていう不思議な話。
え!落書きが怪獣になっちゃうんだって!?二次元怪獣ガヴァドン?
(列伝版次回予告)
あらすじ
ある日の小学校。授業で描いた怪獣や歴史上の人物の絵を自慢する子供達。
そんな中、白いオタマジャクシのような怪獣の絵が皆の注目を集めた。
それは、少年ムシバが描いた二次元怪獣ガヴァドンであった。
変な怪獣と笑われたムシバは、大きく描けば怖がるかもしれないと土管置場の土管に大きくガヴァドンを落書きするが、また友達にバカにされてしまう。
しかし、その日の夜…。
一方、科学特捜隊本部に東大宇宙線研究所から、地球に降り注ぐ宇宙線に奇妙な変動があったと連絡があった。
翌日。公園になにやら、白く巨大でイビキをかきながら眠る生物がいた。
多くの子供達が集まる中、それを見たムシバは大喜び。なんと怪獣ガヴァドンが実体化したのだ。
ムシバ達はガヴァドンを描いた土管を見に行くと、落書きが綺麗になくなっていた。
不思議な音を立て、牛のような声をあげながら、工業地帯をゆっくり移動するガヴァドンA。
出動したジェットビートルはガヴァドンを攻撃するが、反撃も暴れもせずただ昼寝するだけであった。
フジ隊員は「あんな怠け者の怪獣初めて」と呆れてしまう。
日が沈み、夕陽の中大きいイビキをかいて眠るカヴァドンを警戒する科特隊と防衛隊であったが、やがて目を覚ましたカヴァドンは夕陽へ進み、溶け込むかのように消えた…。夜の空に一番星が輝いていた。
本部に戻った科特隊にパリ本部から通信が入った。
昨夜降り注いだ宇宙線の変動は、スイスと南アフリカでも観測され、
その影響で宇宙線に含まれたある種の新元素を含有する放射線と太陽光線が融合する事により、二次元の物体が三次元化するという情報であった。
ガヴァドンの正体がムシバの描いた落書きと知った科特隊は、対処方法を話し合った結果、明日一日様子を見ることにした。
同じ頃、ムシバ達はガヴァドンをもっとかっこよくする為、凶暴な怪獣らしい絵を土管に大きく描いた。
翌日。遠足の日でもないのに珍しく早起きしたムシバ達が見守る中、再び宇宙線を浴びた絵から、二次元怪獣ガヴァドンBが蠢きながら誕生した。
ムシバ達の期待通り東京の街で暴れるのかと思いきや、またイビキをかきながら寝ているだけであった…。
しかしその大きなイビキのおかけで、街の人々から苦情が殺到し、日本の経済・生活も大混乱になった。
科特隊は多少の犠牲を払ってても、ガヴァドンの退治を決断する。
その日の夜。ムシバと友達は、土管のガヴァドンに応援の声をかけながら、絵を描き加える。
次の日。怪獣ガヴァドンはよみがえった。
相変わらず大きなイビキをかきながら眠るガヴァドンに、出動した防衛隊の戦車と火炎放車が集中攻撃する。
科特隊も応戦に向かうが、それを阻止しようとムシバ達が立ちふさがる。
ムシバ達を避難させようとするハヤタだったが、足を滑らせ河流に流されてしまう。
河に流されながらハヤタはベーターカプセルを掲げウルトラマンに変身した。
ウルトラマンとガヴァドンの戦いを眺めるムシバ達は、ウルトラマンを応援せず、「帰れ」「やめてくれ」「殺さないで」と非難の声をあげた。
それを聞き入れたのかやがてウルトラマンはガヴァドンを持ち上げ宇宙に飛んでいった。
こうして、二次元怪獣ガヴァドンは星になった。
ムシバ達が河原で夜空の星を見ていると、ウルトラマンが語りかける。
「泣くな子供達。毎年、七月七日の七夕の夜、きっとガヴァドンに会えるようにしよう。この星空の中に...」
ウルトラマンとガヴァドンの星座が浮かんだ。
ムシバは「七夕の夜、雨が降ったら、どうなるんだよ?」と呟く。
ガヴァドン星座の目から、星が一つ落ちるように流れた。涙のように…。
後日。科学特捜隊が公園で目にしたのは、楽しそうに地面いっぱい落書きする子供達の姿だった。
「このたくさんの落書きに、いつまた特殊放射線を含む宇宙線が当たらないとも限らない。
だが、しかし自分の好きなものを絵に描く自由は子供たちの物である。
ムラマツ隊長は、この絵を見ながら心が真っ暗になったのである・・・。」〈ナレーション〉
ムラマツ隊長「おい、君たち...なんだこれは...」
関連イラスト
ガヴァドンAはかわいい容姿のため、ウルトラマンがデレデレになったり、他作品のキャラと競演するイラストが多い。
余談
ゲスト出演
落書きをしたムシバ達を怒鳴りつける髭親父役の原保美氏は、後に『怪奇大作戦』でSRIの的矢所長としてレギュラー出演する。
ムシバ役の川田勝明氏は第26話でオサムの友人・弘役、第33話でサトル役で出演している。
ゼロ戦役の金子吉延氏は『仮面の忍者赤影』の青影役で一躍人気子役となった。
「恐怖」の宇宙線
実相寺昭雄監督はサブタイトルの「恐怖の宇宙線」について、「ガヴァドン(A)は少年の純真無垢な発想から生まれたが、宇宙線によって人々に知られるようになってからは『もっとカッコよくしよう』とするあまりに『怪獣らしさ』『うまさ』『あるべき姿』に囚われたガヴァドン(B)になってしまった」と解釈している。
幻のシーン
公園で巨大化したガヴァドン(A)を、『ウルトラマン前夜祭』に出演したナンセンストリオが演じる清掃業者が回収しようとするが失敗するというシーンが撮影されたが全てカットされてしまった。
ナンセンストリオのメンバーだった岸野猛氏によると、完成作品では遠景でわずかに映るだけのガヴァドン(A)の尻尾と格闘するなど丸一日かけて撮影したようである。
完成作品ではイデの「夜の間にガヴァドンの落書きを消しに行く」という提案は却下されてしまっているが、台本上ではイデとフジが落書きを消しに行くが髭親父に見つかって子供たちと間違えられて襲撃されたことから退散するという描写があった。
このほかにカットされてしまったシーンにガヴァドンの出現で生活が大混乱に陥る描写として、人々がインスタントラーメンを買いあさるという場面があったという。
ゲストの役名
ムシバ達(ムシバ、タカシ、ゼロ戦、オバケ、サスケ、チャコ)の名前は脚本の佐々木守氏が考案していた劇の登場人物に由来する。同じく佐々木氏が脚本を書いたドリフ映画『ドリフターズですよ!全員突撃』では仲本工事氏が「ムシバ」、加藤茶氏が「ゼロ戦」、荒井注氏が「オバケ」、いかりや長介氏が「サスケ」という役名で出演している(高木ブー氏の役名は「フロク」でこちらも同じ劇の登場人物に由来)。
星空
桜井浩子氏によるとラストシーンの星空は円谷英二監督が自身が構想していたが実現しなかった『竹取物語』を想起させるとして実相寺監督を褒めていたという。
後の作品
2023年10月21日に放送された『ウルトラマンブレーザー』第15話『朝と夜の間に』に、本エピソードから実に58年ぶりにガヴァドンがウルトラシリーズに登場。
第一発見者の内野タカシを演じた男性は、57年前の本エピソードで少年の1人タカシくんを演じた内野惣次郎氏であり、サプライズ出演を果たした。
タカハシヒョウリ氏のX(旧Twitter)によれば、内野氏は実相寺監督直筆サインが書かれたフィギュアや徳利を保管する等、今もガヴァドンのことをとても大事にしているようで、
「ガヴァドンに再会できたんだ。最高に粋な配役をした。」と賞賛している。