ドリフ映画
どりふえいが
「ドリフ映画」とは、コミックバンド「ザ・ドリフターズ」が主役となった喜劇映画の総称。
東宝が製作した「ドリフターズですよ!」シリーズと松竹が製作した「全員集合!」シリーズの2つに大別される。
映画評論ではクレージー映画より低く見られがちだが、当時は人気喜劇映画であり、特に「全員集合!」シリーズの後期は『男はつらいよ』の同時上映だったこともあって邦画興行成績トップを収めていた。
2社にわたって制作されたがメイン監督が同一人物であることもあってか作風はほぼ同じであり、ワンマンリーダーのいかりや長介と彼にいじめられる若手の加藤茶の確執、マドンナ(ヒロイン)を巡っての激突、悪役の登場を経てメンバーが一丸となって悪役と戦う。
サラリーマンが主人公で最後は商談成立のハッピーエンドになることが多かったクレージー映画とは対照的に、ヤクザや指名手配犯などのアウトローが主人公で報われることなく終わる作風であったが、ドリフならではのコントでコミカルな雰囲気に仕上がっていた。
マドンナにすでに恋人がいていかりや(あるいは加藤)の失恋で終わるという結末は『男はつらいよ』とも共通する。
またクレージー映画でも全員出演するクレージー作戦シリーズでは後期になると大作志向が強くなっていった結果「シナリオが大味になっている」と批判を浴びた一方、全員出演しながらも筋の通ったシナリオが評価されていたという。
いかりやと加藤以外のメンバーが脇役に回る作品も多かった。
初期はブラックな作風が主流だったがシリーズ後期はほのぼのとしたホームコメディ路線にシフトしていき、いかりやは哀愁漂う中間管理職、加藤は小憎らしい若手という役柄に変化していった。
1967年から1975年まで松竹が制作したシリーズ。ちなみに『8時だヨ!全員集合』の放送開始は1969年10月であり「全員集合」を題したドリフの出演作品はこちらの方が先。
第1作の『なにはなくとも全員集合!!』はクレジットこそザ・ドリフターズ主演となっているが、実際は三木のり平扮する駅長が主人公のホームコメディであり、ドリフメンバーはライバル会社である西武バスの社員だった。
以後の作品でも三木は脇役として出演している。
また先輩グループであるクレージーキャッツも東宝で主演映画があった植木等を除く全員がゲスト出演している。
第3作『いい湯だな全員集合!!』から第7作『ツンツン節だよ全員集合!!』までは主題歌のタイトルが作品名に含まれていた。
第4作『ミヨちゃんのためなら全員集合!!』から『ツンツン節だよ全員集合!!』まではコント55号の喜劇映画、第8作『春だドリフだ全員集合!!』からは『男はつらいよ』の同時上映だった。
第12作『大事件だよ全員集合!!』を最後に荒井注が脱退、同作から志村けんが出演している。
第15作『ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!!』からはそれまで監督を務めていた渡辺祐介が『にっぽん美女物語・女の中の女』の制作に取り掛かったため瀬川昌治に交代。同作ではいかりやが刑事を演じており、晩年の『踊る大捜査線』を連想するとの声も。
最終作『正義だ!味方だ!全員集合!!』は石ノ森章太郎デザインの戦隊ヒーロー「ゴリレンジャー」が登場するというまさかの他社パロディを行っている。
メンバーの役名は芸名をもじったものだが、加藤茶の役名のみ一貫して本名をもじった「ヒデオ」だった。
過去にVHSが発売されたことはあるがDVD・BD化はされていない。ただし志村けんの没後は追悼特集として出演作品がWOWOWで放送されたことがある。
タイトル | 公開日 | 監督 | 脚本 | ドリフメンバーの主な役柄 |
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なにはなくとも全員集合!! | 1967年8月5日 | 渡辺祐介 | 石松愛弘、渡辺祐介 | 西武バス社員 |
やればやれるぜ全員集合!! | 1968年1月3日 | 渡辺祐介 | 森崎東、渡辺祐介 | 東北の寒村の鼻つまみ者たち |
いい湯だな全員集合!! | 1969年7月23日 | 渡辺祐介 | 森崎東、渡辺祐介 | 強盗容疑がかけられた脱獄囚 |
ミヨちゃんのためなら全員集合!! | 1969年12月31日 | 渡辺祐介 | 渡辺祐介、田坂啓 | 漢方薬工場の職員 |
ズンドコズンドコ全員集合!! | 1970年8月8日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 千葉の漁村の鼻つまみ者たち |
誰かさんと誰かさんが全員集合!! | 1970年12月30日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 武道の塾長と塾生 |
ツンツン節だよ全員集合!! | 1971年8月7日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 手配師と連れられた労働者 |
春だドリフだ全員集合!! | 1971年12月29日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 落語家 |
祭りだお化けだ全員集合!! | 1972年8月5日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 料亭の板前 |
舞妓はんだよ全員集合!! | 1972年12月29日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 自称幕末志士の子孫 |
チョットだけヨ全員集合!! | 1973年8月4日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 医療従事者 |
大事件だよ全員集合!! | 1973年12月26日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、森崎東、渡辺祐介 | 探偵 |
超能力だよ全員集合!! | 1974年8月3日 | 渡辺祐介 | 田坂啓、渡辺祐介 | 易者、詩人、不動産屋 |
ザ・ドリフターズの極楽はどこだ!! | 1974年12月28日 | 渡辺祐介 | 下飯坂菊馬、渡辺祐介 | 花環屋の社員とその息子 |
ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!! | 1975年8月2日 | 瀬川昌治 | 加瀬高之、下飯坂菊馬、瀬川昌治 | 刑事とチンピラ |
正義だ!味方だ!全員集合!! | 1975年12月27日 | 瀬川昌治 | 加瀬高之、瀬川昌治 | チンドン屋 |
1967年から1969年まで東宝・渡辺プロが制作したシリーズ。「全員集合!」シリーズに先駆けてドリフがチームコントをする場面がある。
第1作『ドリフターズですよ!前進前進また前進』はドリフ映画でも珍しいハッピーエンドを迎える作品。
第3作『ドリフターズですよ!冒険冒険また冒険』と第4作『ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓』では志村けんが本名の志村康徳名義で出演している。
最終作『ドリフターズですよ!全員突撃』はドリフ映画唯一の海外(ハワイ)ロケ作品。劇中で三億円事件の真似をして現金強奪を図る場面があるが、同時上映の『クレージーの大爆発』では植木等扮する主人公がこの三億円事件の犯人という設定だった。
こちらはソフト化には恵まれていないものの、過去に衛星放送で放送されたほか、不定期に上映会が開催されることがある。