概要
1967年1月8日、1月15日に放送されたウルトラシリーズ初の前後編。
監督:円谷一
特殊技術:高野宏一
後に人気怪獣の一体となるゴモラのデビュー回でもある。
永い眠りから目を覚ました古代怪獣ゴモラが人間によって振り回されることで起きた事件と「怪獣殿下」というあだ名を持つ怪獣オタクのオサム少年の視点から見るエピソードとなっている。
STORY
前篇
※ 記事内のイラストはイメージであり劇中の描写と異なる場合があります。
大阪に怪獣オタクの少年で「怪獣殿下」というあだ名のオサムがいた。オサムは怪獣の存在を信じていたが、友達に怪獣なんていないと馬鹿にされていた。
※ この描写については「余談」の項参照。
一方、南太平洋にあるジョンスン島のジャングルでは阪神大学の中谷教授率いる学術調査隊が泊まり込みで調査を行っていた。科学特捜隊のアラシ隊員は射撃の腕前を見込まれて調査隊に同行していた。
調査隊が島に入って4日目の夜、中谷教授とアラシ隊員は1億5千万年前に存在していた古代生物・ゴモラサウルスの話をする。
翌日、調査隊が島を調査しているとゴモラザウルスが出現した。
アラシ隊員はスパイダーを構えるが、中谷教授は攻撃しないようにと制止する。
中谷教授はゴモラを生け捕りにして万国博に生きた状態で展示したいと考えていたのだ。
翌朝、日本でも毎日新聞の一面に「ゴモラは生きていた」という記事が出た。呆気にとられる父親を尻目にオサムはそれを切り抜き得意げに学校へと持って行く。
怪獣なんているわけないと馬鹿にしていたオサムの友達も記事を見て一転、オサムを見直す。
その頃、科学特捜隊では万博へゴモラを展示するために空輸を依頼され、その作戦が練られていた。
協議の結果ゴモラはワシントン大学のスミス博士が発明したUNG麻酔弾で眠らせて運ぶことがになった。
UNG麻酔弾の効力は6時間。科学特捜隊は迅速に任務を遂行すべくジョンスン島へと渡る。
そして科学特捜隊ニューヨーク支部もF-4戦闘機でUNG麻酔弾を空輸、空中投下でジョンスン島へ送り込んだ。
届けられたUNG麻酔弾をゴモラに打ち込むアラシ隊員。
麻酔弾を撃ち込まれたゴモラは横になって眠った。科学特捜隊は3機のジェットビートルでゴモラの空輸を試みる。
ムラマツ「イデ、ハヤタ、予定通り空輸作戦開始!」
輸送ルートの途中にある六甲山では万一に備え非常線が張られていた。
オサムは友達3人を連れてゴモラを一目見ようと六甲山までやって来た。警備員に止められてしまったが、フジ隊員が警備員と話している間に隙を突いて侵入する。
中谷教授「上手くいった。もうすぐ研究所に到着だ。」
ところが空輸されていたゴモラは、大阪を目前に突然目を覚まし、ネットの中で暴れ始めてしまう。
気温の変化で麻酔の効果が弱まってしまったようだ。
ゴモラ「ギャウォー!」
ムラマツ「非常事態だ!このままではビートルが危険なんでゴモラを切り離すことにした。ハヤタ、イデ、いいか!スリー、ツー、ワン、ゼロ!」
このままではビートルごと墜落する。ムラマツキャップはやむなくゴモラを六甲山中に落下させる決断を下した。
ちょうどそのころ六甲山にはオサムたちがゴモラの様子を見に来ていた。
ゴモラが落下したのを見届けた友達のひとりはゴモラは死んでしまったと話すが、オサムは大怪獣のゴモラが空から落ちたくらいでは死なないと反論。
おっかないから帰ると引き返した友達ふたりに「弱虫!」と吐き捨てたオサムは残った友達とふたりでゴモラの様子を見る。
一方科学特捜隊も中谷教授と共に落下地点を確かめる。
そこには無傷のゴモラが狂暴化して動き出していた。
ムラマツ「どうします?」
中谷教授「万国博は剥製で我慢します。お任せします。」
流石の中谷教授も生け捕りを断念。科学特捜隊は自衛隊と共に一斉攻撃を始める。
アラシ「チクショウ!奴の体はまるで鋼鉄だぜ!」
怯む様子を見せないゴモラの様子に悔しがるアラシ。
中谷教授は暴れるゴモラを見て、落下の衝撃で本来の生活力を取り戻し恐るべき怪獣へと変貌したと話す。
一方地上の様子を確認しに来たハヤタはオサムたちを発見。ふたりに家に帰るように促す。
科学特捜隊による集中攻撃を浴びるゴモラ。しかしいつの間にかゴモラが姿を消してしまった。
どうやら穴を掘って地中に逃げてしまったようだ。
いつまたどこからゴモラが現れるか見通しのつかない大阪の街は恐怖で静まりかえっていた。そして大阪タワーにゴモラ対策本部が置かれ、科学特捜隊と中谷教授は大阪タワーに陣取る。
オサムと友達が団地の空き地で怪獣ごっこをしていると、そこにゴモラが出現する。
オサムは友達に科学特捜隊に通報するよう告げ、自分は「見張り」と称してその場に残る。
オサムは大空に向かって叫ぶ。
オサム「ウルトラマーン!」
オサムの声に答えるかのようにウルトラマンが登場。ゴモラに立ち向かう。
しかし、ゴモラの強力な尻尾で連打されたウルトラマンはダメージを受け、動けなくなってしまう。
さらにウルトラマンからオサムの手元に何かが転がり落ちてきた。
ウルトラマンから転がり落ちてきたものを拾うオサム。それはなんとベーターカプセルだった。
ふらつきながらも立ち上がったウルトラマンはスペシウム光線を放とうとするが、ゴモラは再び穴を掘って地中へ逃げてしまった。
ウルトラマンもエネルギーは残り僅か。追撃を諦め退散を余儀なくされた。
あとにはベーターカプセルを持ってウルトラマンを呼び止めようとするオサムだけが残された。
後篇
アラシ隊員とイデ隊員が空き地に駆け付けたときにはすでにゴモラはいなくなっていた。
科学特捜隊はゴモラ対策本部のある大阪タワーへと集結、そこでムラマツ隊長から次の作戦が指示された。
フジ隊員は再度ニューヨーク科学特捜隊支部にUNG麻酔弾を発注。ハヤタは本部へとマルス133と小型発信機を取りに向かい、アラシ隊員は府警を通じて緊急避難命令を発令、そしてイデ隊員はビーコンを製作することとなった。
その頃大阪一帯に緊急避難命令が発令され、オサムの家ではオサムの母が急いで荷物を整理し避難しようとするが、オサムの父はどこへ出るのかわからないのに逃げても同じだと全く動じず、部屋で釣り竿の手入れをしていた。
オサムの父は一度出た場所にはもう出ないと豪語し、さらにウルトラマンが来て今度こそ倒してくれると呑気に気構えていた。
それからゴモラが出現することなく4時間が経過。ハヤタは本部から装備品を持って帰還、イデのビーコンも無事完成した。
作戦の準備が着々と進む中、いよいよ大阪市街にゴモラが出現する。
科学特捜隊はスパイダーとマルス133でゴモラを集中攻撃する。そしてハヤタが放ったマルス133がゴモラ最大の武器である尻尾を撃ち抜き切断することに成功する。もがくゴモラは地中へと逃げようとする。そこへイデが開発したビーコンをアラシがゴモラに撃ち込んだ。
ゴモラに打ち込んだビーコンは見事反応。反応は大阪城へと向かっていた。
ハヤタ、アラシ隊員、イデ隊員も大阪城方面へと急行する。
その頃ラジオでゴモラの行方を知ったオサムの母は家族に避難を促すが、相変わらずオサムの父は自分たちの住んでいる場所には関係ないと他人事だった。
オサムも机からベーターカプセルを取り出すと、ウルトラマンに届けなければと両親の目を盗んで家から出て行ってしまう。
ゴモラ対策本部ではニューヨーク科学特捜隊支部から電話が入る。
応答するムラマツキャップ。なんとUNG麻酔弾は在庫切れで手配できないという回答だった。
ゴモラは予想通り大阪城近くへと出現する。
ムラマツ「三度目の正直。ゴモラを運んだのは我々だ。科特隊の名誉挽回のためにも、大阪城をゴモラから守ってくれ!」
自衛隊が集結し戦車やロケット砲で猛攻を加えるが、それに動じずゴモラは大阪城へまっすぐ向かっていく。
街では大阪府警が警備体制を敷いていたが、そこにベーターカプセルを持ったオサムが現れる。
警察官にベーターカプセルを見せて大事なものを届けたいと頼み込むオサム。
子どもの直感を信じた警察官はオサムをパトカーに乗せ大阪城へと向かう。
大阪城では自衛隊や科学特捜隊の攻撃を退けたゴモラが大阪城を破壊する。
ハヤタは単身ゴモラへと挑む。そこにオサムがやって来た。
ウルトラマンの大切な物だとベーターカプセルを託すハヤタ。
ハヤタはウルトラマンもきっと喜ぶとそれを受け取った。
オサムを安全な場所に避難させると、ハヤタはベーターカプセルを掲げウルトラマンに変身した。
一度はウルトラマンをエネルギー切れ寸前にまで追い詰めたゴモラ。しかし最大の武器である尻尾を切断された今は本来の力を発揮できない。
ウルトラマンにいとも簡単に投げ飛ばされ、角の片方をへし折られてしまう。
弱ったゴモラは地中に逃げ込もうとするがもはやその力もなく、スペシウム光線でとどめを刺された。
イデ、アラシと共にウルトラマンの勝利を見届けるオサム。
オサムは戻って来たハヤタからベーターカプセルを届けてくれたお礼として流星バッジをプレゼントされた。
大阪城の石垣で語り合うイデ、アラシ、中谷教授。ゴモラのいた時代は大阪城ができるよりはるか昔だ。流石にかわいそうなことをしたと亡骸を剥製にして万博会場に飾ることを提案する。
帰還の途に就くビートルの機内でハヤタはオサムに連絡を取る。オサムは「勉強している」と答えるが、その実は勉強机に向かって怪獣の絵を描いていた。
余談
地方ロケ
この回まで東京近郊が舞台というイメージが多かったウルトラマンだが、この回は大阪ABC朝日放送から要請を受け大阪ロケが実現したという経緯がある。
当時はABC朝日放送はTBS系列だったが、その後1975年春の腸捻転解消を目的にテレビ朝日系列に移行している。このときに割を食ったのが『仮面ライダーアマゾン』。
ちなみにオサムの団地は調布市の多摩川住宅、後編でオサムがパトカーに乗せてもらう場面は東京丸の内で撮影しているなど、全編が大阪ロケというわけではない。
メタフィクション
オサムの友人たちが「怪獣なんて本当にいるわけがないだろう」と話している場面から始まる本話。
「あれだけ怪獣災害が頻発しているのに何を言っているんだ」と思う視聴者も多いかもしれないが、実は本話は普段のテレビシリーズとは異なる怪獣の存在しないはずの世界が舞台になっている。
普段「防衛隊」あるいは「防衛軍」として登場している戦車隊が「自衛隊」として登場しているなど普段と異なる世界観を演出している。
ちなみに自衛隊のロケット砲を牽引する牽引車は第23話に登場した高射砲の牽引車と同型である。
ゲスト出演
オサム役の稲吉千春は後の『ウルトラセブン』第16話「闇に光る目」でもメインの子役であるヒロシを演じている。
オサムの両親役は父・三平役が宮田洋容、母・リエ子役が布地由起江。ふたりは音曲漫才コンビとして活動していた。
オサムの友人・武役は加藤勉。途中で帰ってしまう友達のひとりは第15話のムシバ役や第33話のサトル役でおなじみ川田勝明。
ちなみに「おっかないから帰るよ」と帰ってしまった友達を演じた子役が後にミュージシャンに転向し、ラジオで「子役時代にウルトラマンに出て『おっかないから帰るよ』って言った覚えがある」と発言していたという証言があるが詳細は不明。
中谷教授役は冨田浩太郎。
近所の主婦役は江島和子。『ゴジラ』に避難民役で出演している東宝の専属俳優のひとりだが台詞のないモブ役が多く、本話のようにクレジットされることが貴重とまでいわれている。
オサムをパトカーに乗せる巡査・吉村役は緒方燐作、相棒の警官は川又由希夫。
幻の二大巨頭激突
この後ゴモラは、37話「小さな英雄」にレッドキングと共に再登場する予定だったがスーツを前話に登場するザラガスに改造してしまったため、変更されることになった。
両者が共演するのは約41年後であるウルトラギャラクシー大怪獣バトルまで持ち越しとなる。
※ 特殊なパターンとして『ウルトラマンメビウス』でガディバがレッドキングを素体にゴモラに変身するというものがある。
初の強敵
前後編に渡って繰り広げたこともあって、ウルトラマンが初の敗北を喫した相手ともいえるのがこのゴモラである。
そのためか他の怪獣と比べ物にならないほど徹底的に痛めつけられているかのような描写がみられる。
以後のエピソードでここまで苦戦を強いられた怪獣は最終回のゼットンはもちろんのことキーラくらいだろうか。
オーソドックスな怪獣で人気があったこともあってか第35話「怪獣墓場」では尻尾を焼き切られたシーンが回想シーンとして流されたほか、怪獣供養の遺影としても登場している。
幻の大坂城決戦
ウルトラマンとゴモラが大阪城の前で戦っているスチール写真があるが、実際にはゴモラが大坂城を破壊してからウルトラマンと戦っている。
ジョンスン島
ジョンスン島で平穏に暮らしていたところを連れて来られた挙句、紆余曲折を経て倒されてしまったゴモラ。
劇中でも中谷教授や科学特捜隊の面々が「かわいそうなことをした」と触れているが、ジョンスン島にいたゴモラはあれが最後の1体ではなかったようで、『ウルトラマンメビウス』第42話「旧友の来訪」で別個体がジョンスン島に生息している描写がある。
脚本との相違
準備稿段階でのタイトルは「怪獣空輸作戦」。準備稿段階ではオサム少年はそこまでメインの扱いではなく、探検隊がゴモラを祀る古代遺跡を発見するなどジョンスン島の描写が完成作品より長かった。また大阪出身の若槻が執筆したこともあってオサムたちが大阪弁で話す。
UNG麻酔弾も登場せず、ゴモラの好物であるダンダラ芥子でゴモラを眠らせる描写があった。
ゴモラが目を覚ました理由は有馬温泉から生じるガスと説明されている。
このほか後編では以下の描写があった。
- ゴモラはウルトラマンを退けた後、地中に戻らずまっすぐ大阪城に向かう。
- 千里丘陵にダンダラ芥子に似た芥子が生えており、ゴモラはそれを狙って大阪城に進む。
- ヘリコプターから油を撒いてゴモラを転ばせ、巨大注射器でゴモラの血液を抜いて活動を止めようとする。
- 科学特捜隊が千里丘陵で芥子を採集、芥子爆弾を作ってゴモラへの攻撃を試みる。
- オサムの母が病院に入院しており、負傷したハヤタが同じ病室に担ぎ込まれる。
- お見舞いに来たオサムがベーターカプセルを持っているのに気づいたハヤタが返してもらう。
- 病院の近くにゴモラが現れ、病院を守るためにハヤタが変身。
- 科学特捜隊の芥子爆弾作戦と共同してゴモラを撃破。
オマージュ
『ウルトラマンパワード』でもパワードゴモラはパワードと戦った末、WINRによって剥製にされているが、その経緯は本話とは大幅に異なる。
『ウルトラマンダイナ』の第35話・36話「滅びの微笑」は、前後編であること、アスカがリーフラッシャーを落とすなど本話を彷彿とさせるものとなっている。
対決映像
※若干編集されたもの
関連画像
関連タグ
ウルトラマンパワード:本作のリメイク回が存在する。
ジェロニモン:後の回で共演する予定だった怪獣。
ウルトラマンメビウス:42話で別個体が初代と同じ島で登場している。