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「"空想科学特撮シリーズ・ウルトラマンマックス"…」

「ヒヒヒヒヒヒヒヒ‥‥」

「ハハハハハハハハハハハ‥‥」

次回『ウルトラマンマックス・胡蝶の夢』。


概要編集

脚本:小林雄次 監督:実相寺昭雄


入れ替わる夢と現実の人物、登場人物の会話の中の「胡蝶の夢」の寓話、夢・現実のシーンを問わず挿入されるスロットマシンのような音や童謡「蝶々」に合わせて踊る玩具のの演出など、変化球のエピソードを得意とする実相寺昭雄監督の担当回でも屈指の幻想的な雰囲気を漂わせる傑作である。


登場怪獣編集

あらすじ編集

ちょうちょう ちょうちょう 菜の葉にとまれ

菜の葉に飽いたら桜にとまれ


特撮番組『ウルトラマンマックス』の脚本家、蓮沼はふと目を覚ますと自分の部屋がDASHの指令室と繋がっていることに気付き、驚愕する。

指令室のモンスタースキャナーが微弱な怪獣反応をキャッチしていたが、誤作動の可能性があるとしてトウマ・カイトが調査に向かった。だがカイトは指令室が見知らぬ部屋と繋がっている事に気が付く。そこには一人の男が眠っていた。

不気味な小屋へと近づくカイト。


蓮沼はこのところ、怪獣を作る女とウルトラマンマックスの主人公であるトウマ・カイトと一体化するという奇妙な夢に悩まされており、その夢の中に現れる謎の女の正体を突き止めようとしていた。

蓮沼は円谷プロでの打ち合わせで、監督から「このカイトには覇気が感じられない」と指摘を受けるが、怪獣が現れるための事件が思いつかないと返す。それに監督は「単純でいい。宇宙人でも怪獣でもいきなりやってくる」という。

監督に自分の夢の事を話す蓮沼は、この世界は自分の夢の産物なのではないかと不安を訴えるが、監督は言う。


「シナリオが夢の産物でも一向にかまわんよ。締め切りを守って女を追って、夢の続きを早く届けてくれ」


蓮沼=カイトは怪獣を作る女に付近で怪獣の反応が出たと警告するが、その女は不気味な微笑みを浮かべて言った。


「怪獣ならいますよ、私の頭の中に」


テレビ用の怪獣を作っているという女は、立ち去ろうとするカイトに怪獣退治の専門家の意見を聞かせてほしい。貴方なら素晴らしい怪獣を生み出せると言った。

カイトは怪獣の名前を尋ねる。


「名前から発想しますか、天才・金城哲夫的ですね…デウス・エクス・マキナをもじって、魔デウスにしましょうか」


目を覚ました蓮沼はすぐさま魔デウスの事を書きとめる。夢の出来事を基にして執筆した脚本は監督から好評を受けた。だが蓮沼は女を追う事を辞めなかった。

デウス・エクス・マキナとは何かと尋ねる蓮沼に、監督はギリシア神話の機械仕掛けの神の事を話す。


de-us

ex

ma-chi-na


物語の内容が錯綜し、解決が困難な問題が発生したときに突然現れ、絶対的な力で収束させてしまう神。


機械仕掛けの神


それを聞いた蓮沼は、夢の怪獣こそが物語を締めくくる機械仕掛けの神なのではないかと考える。


女はカイトに、「毎週毎週出てきては倒されてしまう怪獣に、一度でいいから世界を征服させたい」と語る。無機質で掴み所のない、感情移入が出来ない、冷たい光、人類の様々な夢を餌にして成長するオブジェ。それこそが魔デウスのフォルムであった。

女の手の中には、球体状に煉られた粘土があった。


蓮沼は怪獣を完成させ、無機質な球体と戦うマックスのイメージをする。

バーで酒を飲んでいた蓮沼は、隣の女が夢の女にそっくりなことに気付く。夢の事を教え、いぶかしんだ彼女に、蓮沼はこのところ仕事が上手くいかない事を相談する。すると女は荘子が見たという胡蝶の夢について語り出す。

全てを語った女は、あの不気味な微笑みを浮かべていた。


再び夢で女に逢った蓮沼。もうすでに怪獣は完成しており、やがて世界は滅ぼされると女は言った。

目を覚ます蓮沼。パソコンのモニターには、先ほどのやり取りが脚本として残っていた。

鏡を覗く蓮沼。そこには蓮沼と、もう一人、トウマ・カイトが写っていた。蓮沼は再び夢の中へ落ちていく。

カイトはミズキに自分が脚本家となって、この世界は脚本家が書いた物語。男は続きが書けずに悩んでいるというリアルな夢の話をする。ミズキはまるで胡蝶の夢だと話す。

だが次の瞬間、ミズキの姿は夢の女へと変わった。目を覚ましたカイトは自分あの部屋にいて、脚本家になっていることに気付く。あの部屋と指令室は繋がっている。だが指令室にいる隊員たちは微動だにしなかった。

エリーに話しかけるカイト、だが次の瞬間エリーは笑い始め、あの女へと変わった。


「この世界、それは一人の作家が夢見る一本の綿密なシナリオだ。お前たちは与えられた役割を演じ、与えられた台詞を喋っているチェスの駒に過ぎない」

「バカな、じゃあ本当の俺は誰なんだ!?」

「お前はお前であり、お前ではない!」


夢から覚めた蓮沼は、洗面所で顔を洗うと鏡に自分ではなくカイトが写っていることに気付いた。怖気づいたカイトは空から降ってきた金ダライが脳天に直撃し、再び夢の中に落ちた。

女と対峙する蓮沼。女は蓮沼とカイトは胡蝶の夢のように入れ替わり、童謡「ちょうちょう」のように遊ぶことができるという。

スポットライトが当たる夜の街に、魔デウスが出現する。

そのころカイトは蓮沼の部屋で、『21世紀空想科学特撮シリーズ ウルトラマンマックス』と書かれた脚本を手に取る。


『圧倒的な強さで街を蹂躙する魔デウス。ダッシュマザーが飛来、ダッシュバード1と2が出撃して攻撃を加える。しかしその攻撃を魔デウスがかわし変形して蝶の様に飛び回る。ダッシュバード1も2も撃墜され、不時着』


街では脚本通りの戦いが繰り広げられていた。自分の夢が世界を滅ぼすことに気付いた蓮沼。

カイトは脚本に文字を打ち込み、藤沼と連絡を取り合う。自分の夢であると取り合わなかったが、マックスが勝利する脚本を書くと鼓舞するカイト。


『蓮沼、恐る恐るマックススパークを腕にーーウルトラマンマックスに変身!スパーク!ウルトラマンマックス出現。』


ちょうちょう ちょうちょう 菜の葉にとまれ

菜の葉に飽いたら桜にとまれ

桜の花のさかゆるみよに

止まれよ遊べ、遊べよ止まれ


蓮沼が変身したマックスは魔デウスに立ち向かうが、マクシムカノンは吸収され、球体に変形した魔デウスの攻撃に苦戦。ついには二つに割れた魔デウスの中から出現した触手に取り込まれてしまった。

魔デウスの体内で苦しむマックスだが、最後の力を振り絞って高速回転技・パワードトルネードを発動。魔デウスは内側から爆散した。

そして脚本にはENDの文字が刻まれた。


蓮沼が円谷プロに持ち込んだ脚本は大好評。その打ち合わせ中に居眠りをしてしまう蓮沼。

再び魔デウスが出現し、円谷プロは大きな揺れに襲われた。

監督は思わず叫ぶ。


「おい!こいつに怪獣の夢を見させちゃヤバいんだ!蓮沼!起きろ!蓮沼起きてくれ!おい!怪獣の夢を見るな!蓮沼!起きろー!」


蓮沼が目覚めると魔デウスは消滅し、揺れもおさまるが、蓮沼は上の空で呟く。


「ちょうちょう…」


直後、円谷プロに台本を取に来た女は、何と夢に出て来たあの女にそっくりだった。

驚愕する蓮沼に、女はあの不気味な微笑みを浮かべたのだった。



余談編集

この話は我々の世界の『ウルトラマンマックス』の脚本家(小林雄次氏)が空想世界である『ウルトラマンマックス』の脚本家(蓮沼)の物語を書き、そのまた空想世界の住人であり、蓮沼に入れ替わったカイト(=マックス)が『ウルトラマンマックス』の脚本を書くという無数のレイヤー構造になっている。

想像主たる小林雄次氏本人は直接画面に現れることはないが、台詞で存在が示唆されている。


神の名を持つ怪獣を倒せたのはまさしく脚本家という「神」の存在あってこそなのだが、そこで完結させず、「我々の信じる「神」すらも神話の登場人物に過ぎない。脚本家ですら「現実」または「空想」という物語の登場人物に過ぎないのではないか」という疑問を描いている点がこの回の異質さを加速させていると言える。


なお小林氏の脚本段階では蓮沼は新人の脚本家で先輩からいびられているという設定だったが、実相寺監督は「石橋蓮司さんのようなベテランの脚本家がいい」と提案。ベテランの脚本家という設定に変更され配役も石橋氏に決まった。


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ウルトラマンマックス 入れ替わり メタフィクション

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