キャラクターとしてのウルトラマンブレーザーはこちら。
概要
2023年7月8日から2024年1月20日まで放送されたウルトラシリーズ作品。
メイン監督は過去に『ウルトラマンX』、『ウルトラマンオーブ』、『ウルトラマンZ』を担当した田口清隆氏が、メインライターは同じく『Z』で軍事考証を担当した脚本家の小柳啓伍氏が務め、両氏がシリーズ構成も担当する。
「コミュニケーション」をテーマとし、人間とウルトラマン、人類と怪獣・宇宙人、戦場の戦士と会議室の司令官、親と子供など、それぞれの立場や思考の相違から生まれる対立を乗り越えて協調するための対話の大切さを描く。
また、これまで防衛チームを描いたシリーズは数あれど、本作は初めて「隊長が主人公」という新たな目線で物語が描かれる。
怪獣との戦いと並行して、(中盤以降は)組織の上層部による事実の隠蔽と、その秘密を探るべく奮闘する登場人物達の動向も大きな見所になっている。過去には『ウルトラマンネクサス』や『ULTRASEVEN X』で見られた謎解きやミステリーの要素と言え、謎が謎を呼ぶ展開に視聴者が考察を膨らませるなど、今までのシリーズ以上に濃いサスペンス性が強調されており、ファンの間ではこれまでの令和シリーズとはまた違った盛り上がりも見せる事となった。
それまでの新世代ヒーローズと異なり、登場する怪獣は完全新規の怪獣がメインとなり、新鮮な感覚で楽しめるのも大きな特徴。
田口監督は、「自分の中で4作目のシリーズで、『ギンガS』から始まって10年で培った全てを活かしつつ、円谷プロ側からは「今までやってこなかった事を自由にしていい」というオーダーを貰った」と語っている。
また、田口監督は雑誌『宇宙船』のインタビューによると、前作『ウルトラマンデッカー』と前々作『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』がそれぞれ『ウルトラマンダイナ』、『ウルトラマンティガ』の系譜を受け継ぐ作品だったため、次の作品は丁度25周年を迎える『ウルトラマンガイア』の系譜を継ぐ作品だと思っていたが、監督曰く「『ガイア』の作り込まれた作品と世界観を、今の制作状況でその系譜の作品をすると負け戦になるため適任ではない」という思いがあったとの事(実際、『ガイア』で主人公・高山我夢を演じた吉岡毅志氏も「ニュージェネガイアを作ってもそれはガイアの二番煎じになってしまうからその作品の主人公役の人には申し訳ない。」という思いがあったらしく、田口監督の考えに共感していた)。
さらに、大のウルトラマンオタクでもある佐野史郎氏との対談にて、「『ブレーザー』という名前はウルトラゾーンをやってた時10年前のニュージェネ第1号である『ウルトラマンギンガ』の企画が立ち上がった頃タイトルを決める時に原点に戻すべきと気をてらわない王道なウルトラマンという端的なプロットを提出したが、それ以上の内容が無かったため却下された経緯がある」と語っている。
それから数年後、田口監督がメインを務めたウルトラマンオーブの企画が上がった際にオーブのカラータイマーの輪っかの真ん中がなんにもないことからピッタリだと思いギンガの時のリベンジも兼ねてブレーザーの名前を提案するも諸々の事情で見送られたが、それから数年経ちSF的な思考も上がってきた今回の企画ではブレーザーの意味のヒアリングも兼ねてJAXAの方に話を聞いたりした上でブレーザーの名前を提案し、意外にも他のスタッフからブレーザー以外の候補が出なかった為、10年の時を経てブレーザーの名前が決まったという。
そんな中、円谷プロの永竹正幸社長から「次のウルトラマンのメイン監督をお願いしたい」とオファーを受けた際、社長から「今までのニュージェネシリーズとは別ベクトルのウルトラマンを作りたい」との要望が来たため、それならばと快く了承した。そのため「(一部の例外を除いて)今までの新世代ヒーローズ作品の過去怪獣の使い回しや歴代ウルトラマンの力でタイプチェンジやコレクションアイテムなど、平成中期以降のウルトラシリーズでしてきた事を撤廃して0から作り上げていった」と語っている。
なお、インタビューではTV本編に過去作のウルトラマンは登場しない事が示唆されていたが、その通りに客演回は一切無く、『ウルトラマンR/B』(ただし、回想シーンには登場した)のTV本編以来5年ぶりとなった。
この意向はTVシリーズの本編のみならず、例年夏や年末年始に行われる『ウルトラヒーローズEXPO』の『サマーフェスティバル』や『ニューイヤーフェスティバル』のバトルステージでも実行されており、前半と後半ともにステージの内容を二部構成にする等でブレーザーが歴代ウルトラマンと共演させない工夫が施されている(上述の『R/B』でさえも、『ウルトラマンフェスティバル2018』や『ウルトラヒーローズEXPO2019 ニューイヤーフェスティバル』のバトルステージでは、例外として本編より一足早く歴代ウルトラマンと共演していた)。
ブレーザー最終回の後日談をかいたSTAGE4「未来へ...」ではトリガー時空が部分的に絡むもブレーザーとの共闘や顔合わせはせず最終決戦では二面同時作戦という形を取っている。
そして、本編終了後の次回作『ウルトラマンアーク』にて初めて他のウルトラマンとの共演が実現する。
早期から撮影が行われていたらしく、制作発表会の時点で特撮パート含め全撮影が終わった事を報告している。
マイナビニュースでの田口監督のインタビューによると、企画自体は『トリガー』が放送された2021年の夏から始まっており、『デッカー』の企画進行も同時進行で進んでいたようである。
放送開始となる2023年は円谷プロ創設60周年を迎えた名誉ある年でもあるため、そういった意味でも記念すべき作品になる事が予想される。
評価
第1話「ファースト・ウェイブ」は、YouTubeの公式チャンネルで1週間足らずで500万回再生を突破するという驚異の記録を叩き出した。そのためファンからは「『Z』より人気が出るのではないか」という声も挙がり、「『Z』以来星雲賞を獲れるんじゃないか」という声も挙がっている。そして、最終回終了後に『Z』と同様 「最高の最終回」がトレンド入りし、最終回放送の2日後にはこれまた同じく「#ウルトラマンブレーザー全50話」がSNSでトレンド入りした。ちなみに、田口監督も「始まってたのか。」とポストしていた。
一方で、アースガロンのキルスコアの低さなど賛否両論な点やお粗末に終わってしまった部分もあるとの指摘も少なくなく、「悪い作品ではないがこれといった決定打に欠ける」というような評価も目立つ。近年は復活した防衛チームの活躍が目立っていただけに、(批判の多い『ウルトラマントリガー』は防衛チームの活躍という面で見れば非常に活躍していたことを(否定的なファンからも)高く評価されていた)その落差に失望したファンも少なくない。伏線の展開・回収やキャラクターの掘り下げが25話の範囲では十分に行えたとは言い難いことも問題視される。上記のタグも、そういった不満点から生まれたものでもある。
これらの作品と同様「商業要素を控えたりニュージェネレーション(一部を除いた)以前のような作品、過去作要素の薄い作品が必ずしも良作になるとは限らない」(本作は問題作と言うほどではないが)「販促と作品の出来はノットイコール、どちらかがもう片方を食い潰すことでしか重視できないわけではない」ということがわかる作品とも言える。多くのジャンルで蔑視されがちな商業主義だが、それを軽視すれば過去の失敗を繰り返しかねない。
とはいえ、賛否両論ある部分もあるものの、ブレーザーの今までに無かったキャラクター性やSKaRDメンバーの好感等の人気のある部分もしっかりと有り、過去作に寄せつつも新しさもある、温故知新を大切にした作品とも言える。
あらすじ
世界的な怪獣災害の発生を受けて、世界各国は、地球の内外から攻めてくる怪獣や地球外生命体に対処するべく、1966年に地球防衛隊「GGF(Global Guardian Force)」を設立していた。
自然破壊や温暖化が急激に進む現在。ある夜、宇宙甲殻怪獣バザンガが出現。地球防衛隊の掃討作戦は難航し、ヒルマ・ゲントが率いる特殊部隊が絶体絶命の危機に陥る。その時、眩い光とともに謎の巨人が降臨。何十年も前から宇宙飛行士たちの間で噂されていた未確認大型宇宙人、コードネーム「ウルトラマン」だ。
その後、司令部に呼び出されたゲントは突如、ある任務を言い渡される。それは、密かに組織されていた、特殊怪獣対応分遣隊「SKaRD(Special Kaiju Reaction Detachment)」の隊長就任。怪獣型の主力巨大メカ「アースガロン」を駆り怪獣災害に立ち向かう特殊部隊の指揮。それと同時に、バザンガの戦いで出現した「ウルトラマン」が排除すべき敵なのかを調べる任も命ぜられたゲントの脳裏に、遥か遠くの銀河…ブレーザーの眩い光の記憶が煌めく。
「俺が行く。」
ウルトラマンブレーザーの光に包まれたゲント隊長は今、組織されたばかりの「SKaRD」に配属された個性豊かな隊員たちとともに、確かな勇気と揺るがぬ正義をポケットに忍ばせ、怪獣たちとの新たな戦いの日々へと身を投じる!
(公式サイトより抜粋)
登場キャラクター
GGF
SKaRD
特戦獣
その他
ウルトラ戦士
- ウルトラマンブレーザー(CV:岩田栄慶)
スタッフ
監修: | 塚越隆行 |
---|---|
制作統括: | 永竹正行 |
音楽: | TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND |
地学監修: | 芝原暁彦 |
防衛隊監修: | 越康広 |
防衛隊指導: | 松田じゅん、長谷部浩幸 |
天文用語指導: | 磯部直樹 |
シリーズ構成: | 小柳啓伍、田口清隆 |
脚本: | 小柳啓伍、継田淳、山崎太基、植竹須美男、足木淳一郎、中野貴雄、根元歳三 |
監督: | 田口清隆、辻本貴則、中川和博、越知靖、武居正能、宮崎龍太 |
楽曲
主題歌
「僕らのスペクトラ」
作詞:シト/作曲・編曲:尾澤拓実(from ReReGRAPHICS)
歌:きただにひろし
エンディングテーマ
作詞:SACHIKO/作曲・編曲:小山寿
歌:MindaRyn
作詞・作曲・編曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
歌:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat. MindaRyn
挿入歌
「IGNITION」(第18話)
作詞:シト(from ReReGRAPHICS) /作曲:きただにひろし/編曲:尾澤拓実(from ReReGRAPHICS)
歌:きただにひろし
「Strong Ray」(第25話)
作曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
各話リスト
※その他媒体のまとめはブレーザー怪獣にて。
太字は新怪獣。斜字は映像・画像の流用のみ。
※1:『ブレーザー』第1~7・9・10話、『ギンガS』第2話、『X』第2・4話、『Z』第2・25話、『トリガー』第3話、『デッカー』第12話、『ウルトラファイトオーブ』の映像を使用した放送直前特番。『ブレーザー』のストーリーや登場キャラクター・アイテムを、過去作に登場した防衛チームの映像を交えながら紹介している。
※2:『ブレーザー』第1~5話の映像を使用した特別総集編。ブレーザー&アースガロンと怪獣の戦いを、テレビ局スタッフら一般人の視点で振り返る。
※3: 『ブレーザー』第1〜12話の映像を交えつつ、SKaRDメンバーがこれまでの戦いの記録を振り返る総集編。
※4:『ブレーザー』第1~16話の映像を使用した特別総集編。ブレーザーやこれまでに登場した怪獣を、電脳世界でアニメのキャラクターと共に振り返る。
※5:『ブレーザー』第1~4・8〜10・12・14〜23話の映像を使用した特別総集編。ブレーザーやアースガロンのこれまでの戦いを、電脳世界でアニメのキャラクターと共に振り返る。また、劇中では『Z』〜『デッカー』のティザーPVの映像や、『ウルトラマン列伝』/『新ウルトラマン列伝』の映像が使用されている場面もある。
ご覧の通り、本作に登場する怪獣・宇宙人のほとんどが、派生種やリメイクではない完全オリジナルの新規怪獣と、再登場が数十年ぶりとなる怪獣・宇宙人で占められており、本作最大の売りにもなっている。
詳しくはこちらを参照。
サブタイトルに前編・後編と付くのは、ウルトラマンが登場する作品では『ウルトラマンマックス』以来17年ぶりである。
また、次回予告で劇中の登場人物がナレーションを担当しないのも『マックス』以来となる。
劇場版
2024年2月23日に、『ウルトラマンブレーザー THEMOVIE 大怪獣首都激突』が公開。
コミカライズ版
『てれびくんSUPER HERO COMICS』にて連載されているシリーズ。
作画は『コロコロコミック』で『デュエルジャック』や『ポケモンDP物語』を手がけた伊原しげかつ先生。協力として、『てれびくん』編集部と大石真司氏がクレジットされている。
ウルトラシリーズのコミカライズは『戦え!セブンガー』以来2年半ぶり、本編のコミカライズは椎名高志先生が手がけた漫画版『ウルトラマンネクサス』以来、実に18年ぶりとなる。
第1話はTV版の純粋なコミカライズとなっているが、それ以降のエピソードはTV版にない完全オリジナルのストーリーが展開されており、オリジナル怪獣やアースガロンの新装備も登場。
太字は本作オリジナル怪獣。
余談
- 本作より、ウルトラシリーズでは初となる解説放送を導入(TXN同時ネット局のみ)。
- 第1話のロケ地になった池袋サンシャインシティだが、ウルトラシリーズのファンにとっては例年夏に開催される『ウルトラマンフェスティバル』や『ウルトラヒーローズEXPO サマーフェスティバル』の会場として馴染み深い。
- 本作には坂本浩一監督は本編には参加していないが、当初田口監督が撮影したと話題になった『ブレーザー』のプロモ映像は彼の撮影との事。坂本監督が参加しないのは『ウルトラマンタイガ』以来4年ぶりである。恐らく撮影時期が『仮面ライダーギーツ』関連のスピンオフや本編の担当回と被っていたからだと思われる。
- ぱっと見は田口監督が影響を受けた川北監督の逆光演出だが、腕の動きはよく見ると坂本監督の演舞風の演出である。
- キャストが揃って筋肉質な肉体美をしている、アースガロンの活躍が地味だったため、視聴者の中には「坂本監督にアクションを撮って欲しかった」という声もあった。
- 前々作、前作と違い『ガイア』をモチーフとした作品をやらなかった事に関しては、主に『ガイア』世代のファンからは賛否両論となったが、制作陣が『ガイア』やファンを疎かにした訳ではない事は留意すべし。事実Youtubeでも、ウルトラ情報発信部にて『ガイア』を度々取り上げており、むしろ『ガイア』という作品の完成度の高さ故にリスペクトした結果である。
- そもそも『ガイア』は『ティガ』『ダイナ』の直後に放送されただけで作品としては前2作とは全く無関係であることと、また『デッカー』も『トリガー』の続編ではあってもダイナ要素は後から取り入れた、要するに最初からダイナの系譜の予定ではなかったため、過度に一纏めにしがちなファンの意見が勝手に一人走りしただけである。これまでひとまとめにしていたファンは、これを機に『ガイア』は本来、『ティガ』、『ダイナ』とは全く異なるものであることを理解する必要がある。
- 前述の通り我夢役の吉岡氏もニュージェネガイアについては否定的な意見を述べており、過去作要素をほとんど使わなかった『ブレーザー』を大絶賛し、X(旧Twitter)でこういう新しいウルトラマンを見たかったと評価している。また『ガイア』自体も別の形でアニバーサリーが披露された。
- ただし、偶然か意図したものかは不明だが、「SF性が強い作風」「リアリティ重視の防衛チーム」「第1話で池袋に襲来する宇宙怪獣」「宇宙怪獣を送り込んでくる敵勢力の詳細が最後まで不明瞭」「最終決戦で地球怪獣との共闘状態が生じる」など、『ブレーザー』には『ガイア』との共通項も多い。
- また、『ブレーザー』第18話では、シーガルファントップやノーマルファイターといった『ガイア』のライドメカのミニチュアが、装いも新たに再登場している。
- 最終的に『X』以来となる、メインキャストにレギュラーの悪役を演じる人物が存在しない作品となった。最終回放送前までは、前作のように途中から黒幕である事実が判明するパターンや、事情により敵対してしまうパターンの可能性もあり、現に作中ではある人物が得体の知れない行動をしていたが、結局はいずれも杞憂に終わった。
- Blu-rayBOX特典映像として、BOXⅠにはゲント役の蕨野氏とブレーザー役の岩田氏、メイン監督の田口監督との対談映像が収録。BOXⅡには田口監督とガヴァドン回の脚本を担当した中野貴雄氏のタッグによる、アンリ・ヤスノブ・テルアキの3人がメインの『SKaRD休憩室』という5本のショートドラマが収録されており、田口監督は「ブレーザーの世界観は壊さないながらもかなりいっちゃってます」とコメントしている。
- 『マックス』以降、変身にバンクシーンが導入されたが、本作では全話通してバンクシーンを作らず各話新規で撮影していた。これは『ネクサス』以来19年振り、番外作品を含めれば『SEVEN X』以来16年振りである。
- ドバシ・ユウを演じた寺田農氏は、最終回放送のおよそ2ヶ月後の3月14日に死去しており、本作が生前最後の出演作となった。
関連映像
関連項目
ウルトラマンデッカー (→ ウルトラマンニュージェネレーションスターズ) → 今作 (→ ウルトラマンニュージェネレーションスターズ) → ウルトラマンアーク