ウルトラマン。それは正義を愛し悪と闘う、この地球を守る唯一無二の存在。
絶望の中、人々の祈りの声が聞こえる。
求めている。負けても尚立ち上がる完全無欠のヒーローを。
「その存在こそ私、愛染マコトだ。全世界待望!ウルトラマン伝説が、幕を開けるのだ~!!!」
データ
別名 | 憑依生命体 |
---|---|
身長 | 不明 |
体重 | 不明 |
出身地 | 宇宙のどこか |
演:深水元基
CV:大谷美紀(幼体)
概要
『ウルトラマンR/B』第8話にて存在が発覚した地球外生命体。
紫色のガスのような姿をしている。これが本来の姿なのかは当初わかっていなかったが、第16話でガス状の寄生型知的生命体だったことが明確に判明した。
本編開始より15年前に愛染マコトに憑依して肉体の主導権を奪い、AZジャイロと怪獣クリスタルによって怪獣達を召喚し暴れさせていた、一連の事件の真の黒幕 で、16話の退場まで器として利用していたマコトの体に閉じ込められていたらしい(ウルトラシリーズにおけるある種の王道ではある)。
その目的は光の力を我が物とする為に、妖奇星(あやかほし)が落下し、力を消耗したロッソとブルがルーブクリスタルとなって散らばった地球にて、ウルトラマンオーブの力を手に入れること。そして、その力を使って自分がヒーローとなることである。
ただしヒーローになるといっても、表面上のかっこよさに拘るだけで正義感や使命感はほぼ持っておらず、そのためなら自作自演も平然と行ったり、周囲にどれだけの被害が出ようと気にも留めない。カツミは「街はお前の実験場じゃない」と非難したが、やっていることは「実験」よりもタチの悪い、街全体を巻き込んだ「ごっこ遊び」である(詳細は後述)。
故に守りたいもの等は一切持っておらず、そのことについて湊イサミから「哀れだな」と吐き捨てられても尚「(そう言っておきながら負けた)君達こそ哀れだ」と開き直っていた。
また、自分がヒーローになるための「AZ計画」なる物も目論んでいた。
目的やそのやり方だけを見れば、力を悪用しようとする悪者と断じてもよさそうなものだが、敵であっても約束は守ろうとしたり、市民税はちゃんと払っていたり、湊兄弟に対してウルトラマン失格だとした一方でわざわざ再就職先を見つけてきて斡旋しようとする等、妙に律儀な部分もある(ただし、湊兄弟に役割を与えて邪魔が入らないよう遠ざけようとしたとも捉えられる)。
ウルトラマンとはどうあるべきかという事にも並々ならぬ拘りを持っており、その言動からは理想のヒーロー像を仕事人間や孤高の風来坊のように捉えている節が見られる(惑星O-50の現状を踏まえると、あながち間違っているとも言えないのが恐ろしい)。
その一方で怪獣に正攻法で挑もうとしない等、自分の想定やコントロールが及ばない状態をなるべく避けようとする臆病な面も覗かせており、この点では手探り状態であってもウルトラマンとして多くの強敵怪獣に挑んでいった湊兄弟に遅れを取っている。
一方、湊ウシオが作った珍妙なTシャツを大量購入し、本気で気に入って着用したり、勢いで物に八つ当たりしてもすぐに後悔して大慌てする等、コミカルな部分もある(愛染の記事を参照)。
根っからの悪人ではない…というよりは精神年齢が子供っぽく、社長室でこっそりオーブになり切ってヒーローごっこに興じることもあった(ちなみに声真似は異様に上手い)。
少なくとも目的は侵略でないことは確実だ(その分ある意味侵略以上にタチが悪いが)。
そして第14話の回想シーンにて、幼少期にどこかの惑星でオーブ本人と邂逅していたことが判明。彼がこれ程までにウルトラマンに憧れるのは、オーブの勇姿を目の当たりにした事で、将来は自分もウルトラマンになると誓った事が理由だったのだ。
出会った時期は不明。回想にてオーブオリジンの姿でオーブスプリームカリバーを放っていたのを考えると、エレメントの回収は終了しており、オーブリングを手に入れている可能性が高い。更にその直後に見せたオーブごっこのシーンが当時の再現だとすると、スペシウムゼペリオンへの変身、オーブカリバーの召喚も行っているため、TV本編後のオーブの可能性もある。
その後、成長につれて憧れが歪んだ方向へ向かってしまったことで現在の人格が形成されたと思われる。
その結果、カツミとイサミの反面教師となり、二人にウルトラマンとしての使命と自覚が強まっていったのは何とも皮肉である。
劇中での活躍
第1話~第7話
偶然力を手に入れたにも拘らずヒーローとして世間から称賛されているカツミとイサミ兄弟が気に入らず、これを排除すべく怪獣クリスタルで召喚した怪獣たちを2人に差し向ける一方で、様々なお約束シチュエーションを演出して彼らが本当にウルトラ戦士(ヒーロー)に相応しいか試していた。
第8話「世界中がオレを待っている」
自身の理想のウルトラマン像とかけ離れていた2人に堪忍袋の緒が切れ、それまでに拉致していたある人物と雰囲気や風貌の似た人々の脳波エネルギーを、独自の装置を使って吸い取り、オーブオリジンクリスタルを覚醒させる。
なお、集められた人々の安否は不明。直前にダーリンが「これ以上出力を上げると被験者が危険」という旨の発言をしていたため、死亡ないし何らかの後遺症が残った可能性が高い。
その後、シャツの納品という名目でカツミとイサミを誘き出し、いきなり兄弟のヒーローとしての行動を細かく採点したウルトラ通信簿を渡した上で、「君たちはウルトラマンとして落第点」「ウルトラマンとして相応しくない」と罵倒してウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツへと変身。
今までの怒りを晴らすように、「最近のウルトラマンはべらべら喋りすぎだ、神秘性がなくなる」とメタ発言気味な暴言を吐き散らしながら自身は兄弟の欠点を戦闘中にまくし立てたり、コマ姐を巻き込んだことを非難されても無視して半ば押し付けのような主張を続け、2人を徹底的に痛めつけた。
第9話「ウルトラマンの名のもとに」
墜落しそうだった飛行機を助けたり、飛んで行ってしまった風船を取ってあげたりなど、突如ヒーロー活動にいそしむようになったが、全ては自作自演、自身をヒーローと認識させる為のマッチポンプであり、しかもそのことを「皆が欲しているヒーローを演じただけ」と開き直って全く悪びれる様子を見せなかった為、湊兄弟の逆鱗に触れ、新たな力を得た彼らとのリベンジマッチに敗北。オーブリングNEOを奪われてしまった。
見下していた彼らに手ひどくやられて激怒するチェレーザであったが、偶然ホロボロスのクリスタルを見つけると、不穏な薄ら笑いを浮かべたところで締めくくられた。
第10話「湊家の休日」
最終試験と称し、ホロボロスを兄弟に差し向けた。そしてバトル中に彼らの行動を逐一採点。しかし相変わらずその内容は「いきなり必殺技を使ってはならない」「必殺技の後も油断してはならない」というメタ要素ともとれる押し付けで、「家族を守って負けるのは本末転倒」と上辺だけに拘ってヒーローの本質を無視した独善的なものばかりだった。
そして戦いの末に彼らが敗北するとオーブリングNEOを奪還し、オーブダークに変身。ホロボロスの前に立ち塞がる。
奪還から変身までの間には逃げ惑う人々とは逆方向に歩く姿が映し出され、さらには彼の心の声がモノローグの如く字幕として表示されるという演出がなされた。
また、満身創痍の兄弟に対し、去り際に「あばよ!」と言ったり、カーテンの中に隠れて変身したりする等、『オーブ』のパロディをこれでもかとぶっこんでいた。
第11話「アイゼン狂騒曲」
「互角からの劣勢、そこからの必殺技でトドメ」というお約束の元にホロボロスと戦い討伐する(といっても自作自演である)。兄弟が倒せなかった怪獣を倒したことで市民からの支持を確たるものとした。
後日、ノリノリで台本(ご丁寧にも本家のタイトルロゴをパクったそれが描かれている)まで用意し、今度は第三話と称してベゼルブを召喚し倒そうとするが、乱入した兄弟に横取り(?)される形で撃破されて激昂し、彼らをニセウルトラマン呼ばわりして倒そうとするが、美剣サキに召喚された強化ホロボロスの登場に驚かされる事となる(普段クリスタル回収担当のダーリンをホロボロスとの戦闘では中継する係にまわしていたため、回収し忘れたと思われる)。当然兄弟に汚いと批判されたが、本当に召喚したわけではないので素直に否定し、兄弟もそれをすんなり受け入れた。
第12話「俺たちの守るべきもの」
意気揚々とホロボロスに向かっていくが、あっさり倒されてしまった(しかもインナースペース内にて両目と口から光を放つという物凄い表情になった)上、その拍子にオーブリングNEOを紛失してしまう。その後、社長椅子の上で全身を包帯でぐるぐる巻きになった情けない姿(かなりの重傷だったらしくほとんど動けなかった)となるが全く懲りておらず、兄弟を「もどき」呼ばわりしてまたも活躍を取られた事を悔しがっていた所で、看護師に扮したサキと接触する。自分が最終試験で差し向けたものよりも強いホロボロスを倒しているにもかかわらず未練タラッタラである。
第14話「お前は誰だ」
ケガが回復し、グビラを召喚して暴れさせるが、ジャイロがホロボロス戦で故障してしまった為に途中で勝手にクリスタルに戻ってしまう。頼みの綱を失っても何とかしてオーブリングNEOを奪い返そうと考えるが、そこをサキに付け込まれ、不審がりながらも彼女が使用する「本物のジャイロ」を借りてグルジオキングに変身。湧き上がる力に興奮しつつ、圧倒的なパワーで兄弟に勝利。しかし、ジャイロの効果で強大な力に飲み込まれて暴走してしまい、ロッソとブルの力を試すために利用された。しかもこの戦いの裏でダーリンはサキに奪われ、ほぼ唯一の味方すら失ってしまっている。
第15話「まとうは極」
アイゼンテックの対怪獣拘束システムで一度沈黙するが、程なくして活動を再開。最初こそ兄弟を圧倒するが、彼らが土壇場で手に入れた新たな姿と力の前に敗北。それ以降、行方不明となる。
第16話「この瞬間が絆」
冒頭にてボロボロの姿でサキの元を訪れる。そこでようやく彼女に利用されていることを悟るが時すでに遅し。彼女の手によって念力で愛染の肉体から切り離されると「これで終わりかぁ~!俺のAZ計画が無駄になるぅ~!」と無念の言葉を遺して空気清浄機に吸い込まれ、何処かの異世界へ飛ばされた。なお、この時、分離された直後だったからなのか理由は不明だが愛染にも若干チェレーザの意思が残っていたのか、上記の台詞も分離後の愛染が言っている。
残された本物の愛染はチェレーザに憑依されていた間の記憶を一部のみ受け継いでいたようだが、アイゼンテックの社長を辞任して綾香市から姿を消した。
歪んだ手段で憧れのウルトラマンになろうとするも、倒されるべき怪獣の力に呑まれた末に敗北、そして始末されるというのは皮肉な末路である。
これを機にOP映像にも姿が見られなくなった。
第17話以降は…
第19話では「AZ計画」の一環として地球防衛軍を創設しようとし、この過程でキングジョーを建造していた事が判明する。
しかしそのキングジョーはサキ暗殺を目的に解き放たれ、暴走してしまう事になる。
サキやミオによると、彼もまた地球に接近しつつあるルーゴサイトの脅威に感づいていたらしく、美剣と同じくレイラインのエネルギーを使った迎撃作戦の準備を進めており、これこそが先の「AZ計画」の真相であったことが語られた。少なからず平和を願う心も残っていたと思われる。
そして最終回まで登場することはなく、その消息は明かされぬままとなった。
前半の黒幕ポジションでありながら物語の中核に関わるキャラクターではなく、退場もあっさりしており、「半ば同類だったサキに利用された挙げ句、肉体どころか会社まで奪われてしまう」「ルーゴサイトは湊家の力で倒される」「劇場版では悪のウルトラマンと新たなウルトラ戦士との戦いが繰り広げられた」など、面目丸潰れな展開が続いていった。
自業自得の悪党ではあるが、オーブに憧れる過去が判明した矢先の出来事だったこともあり、視聴者からは同情の声や再登場、そして改心を望む声も多く上がっていた。
ところが……
ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル
正史ではないとはいえ第19話・第20話にて愛染マコトとしてまさかの登場を果たす。
ブースカとペガが『R/B』を鑑賞していたところにいきなりスクリーンの中から現れ、見たいものがあると言って自身が似たようなシチュエーションを作り出した回である『オーブ』15話「ネバー・セイ・ネバー」を上映させた。
前編の上映後は「ここで止めちゃダメだ!」「これじゃオーブが負け犬みたいじゃないか!」とうろたえ、続きの上映を催促しブースカとペガになだめられた。
続く後編の上映後はオーブがゼッパンドンとの戦いで闇の力を克服しオーブオリジンの力を取り戻したことを、自らのオーブごっこで再現しながら説明した。相変わらずだが、オーブ=クレナイ・ガイの声真似が妙に上手い。
今回登場したのは、2人が19話で視聴していた映像から察するに『R/B』3話時点の彼と思われる。そのためか「ちょっとうざったいオーブファン」として描かれており、作中の悪事やオーブダークについては触れられなかった。
とはいえ、どうやって映画館に現れたのか、それもなぜ過去から未来へとやってきたのか、そもそも本当に愛染に憑依したチェレーザ本人なのかは不明である。また、宇宙の果てに飛ばされた現在の彼がどうなったかは明かされなかった。
何らかの機会に語られるのか、それとも今後ひょっこり帰ってくるのか、果たして……?
格言
正体判明以降に使った格言をこちらに列記する(太字は短冊に書いたもの)。
話数 | 格言 | 意味 |
---|---|---|
第8話 | 塵も積もればヤバくなる | その程度の実力では自分には勝てない |
第10話 | 負け犬の歯ぎしり | ヒーローは遅れてやってくる |
第11話 | 一男蹴って また次男 | ロッソとブルに続けて蹴っ飛ばされる |
第16話 | 残念無念、柿八年 | 積年の夢を打ち砕かれて悔しい |
ジェネクロ第19話 | 映画から出たマコト | ブースカ劇場のスクリーンから登場 |
ジェネクロ第19話 | 善は急げ、愛染は急げ | 続きを早く見せろ |
ジェネクロ第20話 | 石の上にも三年、椅子の上には愛染 | 椅子に座る愛染 |
言動について
「新参者に難癖をつける」「上辺だけで全てを知ったように語る」「気に入れば過大評価し、気に入らなければ良い所も拒絶する」「主張を通すために相手を悪者にして周囲への迷惑も省みない」などの暴走した迷惑ファンのような様から、視聴者から「老害」「懐古厨」「イキリオタク」「一周してにわか」「視聴者にとっても反面教師」などと呼ばれる事もあり、公式からの苦言そのものと考察する視聴者もいる。
神奈川新聞にて「その自作自演の行動には、大衆の評価を過大視するネット時代の価値観が反映されている」という評論が書かれた事も。
ちなみに、彼の指摘は近年どころか昭和も含むほぼ全員に該当する。以下はその例。
- 最近のウルトラマンはべらべら喋り過ぎだ、神秘性がなくなる→
など、昭和シリーズの時点でウルトラマンは結構喋る。
常時喋る、あるいは戦闘中に喋ると言う意味であれば多少絞られるがそれでも少なくない。モロボシ・ダンやおゝとりゲン、ヒビノ・ミライの様に地球人の姿に変身して活動していた場合、彼らの言葉=ウルトラマンの言葉と言える。
実際の所、変身後にほとんど話さなかったのはゼアスやティガくらいであり、むしろ少数派と言える。また、平成初期のウルトラマンは喋らないイメージを持たれがちだが、ガイアやコスモスは昭和のウルトラマンほどではないが結構喋っており、後者は一体化した人間以外の人間との会話も存在する。
また、後年の例だがゼットの様に日本語訳しようとして言葉遣いが変になる例から、喋っている様に見えるのは脳内会話やテレパシーによるもので、地球人には聞こえていない可能性がある。でなければ、互いの名前を呼びあっているのに一般人の誰も彼らの正体を知らないのは説明が付かない。
ウルトラマン達は元々無口ではなく、故郷の光の国では普通に喋って会話する。変身者以外で彼らの言葉が地球人に伝わるのは、ウルトラマンから何か伝えようとしている時か、地球人の体を介して言葉を伝える時である。彼らの言葉を理解できるチェレーザだからこそ「喋りすぎ」という感想が出たのかもしれない。
また、昭和には戦闘中に笑い、闘牛のような動きで相手を翻弄したり、オフ時とはいえ腹が減ったために1人省いてバーベキューを始める等、人間臭いシーンも多い。
そもそも喋らないことで神秘性が出ると仮定した場合、ニュージェネウルトラマンは設定的なものもあってむしろ昭和以上に神秘性が全体的に高く、神秘性皆無な最近の人もいるが、ギンガやビクトリーは一体化した人間が喋っているだけで、ギンガはほぼ、ビクトリーは一切喋らず、ウルトラマン自身の神秘性は歴代でもトップクラスである。
また、ロッソとブルもその力を受け継いだカツミとイサミがコミカルなだけであり、ウルトラマン自体は謎も多くかなり神秘性が高い。
そして更に近年、戦闘中掛け声すら発しないが、あるものを探すために女性の臭いを至近距離で嗅いだシン・ウルトラマンや、喋らなければ神秘性ができることを真っ向から否定する戦闘スタイルを披露したウルトラマンブレーザーなどの例外が現れた。
「喋らないから神秘性がある」とは限らないのだ。
- 一流のヒーローは悩まない、己の未熟さを世間に押し付けない→
・初期の頃は負け続きで、過酷過ぎるとはいえ特訓に弱音を吐いた人など
- 出動に遅れない→
というか、「諸事情で変身したくてもできない」エピソードはウルトラシリーズのあるあるであり、三作目のセブンはしょっちゅうウルトラアイを盗まれていた。それもそれだけならまだしも、単に落としたり置き忘れたりすることもあった。
初代ウルトラマンも第2話早々にベータカプセルを落としてしまったことを皮切りに、間違えてスプーンを掲げてしまったり、ザラブ星人に拘束されていたり、メフィラス星人に動きを止められていたりなどなどで出動に遅れたこともあった。
- ちょっといい話なんかいらない→
もれなく全員。そしてほとんどが彼女持ち(死別した人もいるが)。
また、学校の先生として生徒と向き合っていた人もいる。
- 二週間もグズグズ悩みやがって→
悩むとまではいかずともジャックとレオの前後編に及ぶエピソードはおおよそ該当する。
- 家族を守って負けるのは本末転倒
全員(悪の戦士は除く)。たとえ窮地に陥ってでも己の身を挺して家族はもちろん友人や仲間、知人も見ず知らずの人の命も守る。実際に守る事を優先して負けてしまった事はあるが、ウルトラ戦士だけでなくヒーローにとって誰かを守る事は最大の定義であり、ただ単に勝つ事よりも最重要である。もっとも、それが家族だけであり他の人間が犠牲になってしまった場合もそれはそれで問題なのだが。
平成でも20時間のインターバルのせいで再変身したくてもできなかった人や2週間以上にわたって苦悩に苛まれた人など、該当する者は多い。
そんでもって、尊敬し理想としているオーブことクレナイ・ガイはどうかというと、
- わりと戦闘中も喋る。
- 「ちょっといい話」がある。
- 変身したくても出来ない状況に陥っている。
- 2週間どころか100年以上も悩み、もといトラウマを引きづっており、それが少なからず影響して暴走状態に陥った。その結果誤って親しい人を傷つけてしまい、同じ過ちを繰り返した結果自責の念に駆られている。
- 腐れ縁の敵が自身と親しい人達を始末しようとした時は彼らを守る為、満身創痍にもかかわらず自分の体を盾に攻撃を受け続けて一度は地に伏してしまう(だが「誰かを守りたい心」で再び立ち上がり、逆転勝利を収めた)。
など、彼の主義に反した箇所が歴代ウルトラマンの中でも特に多い。
他にも、「闇を抱いて僻みとなれ」「僻みを超えて闇を斬れ」「(歌舞伎風に)紅に燃えてしまえ」と明らかにガイの決め台詞を真似ている様子は上辺だけの模倣にも見える。
一応フォローできる点をあげると、彼が変身時に口にする「絆の力、おかりします!」という台詞に関しては、一見オリジナルの口上を流用しただけのものに聞こえるが、「絆」という字には、昨今用いられる「人と人との強い結びつき」という意味以外にも、「犬や馬などの動物をつなぎとめる綱」という意味もあり、この言葉にもある種の説得力はある。
また第14話のオーブごっこでは「初手スペリオン→効かない」というオリジンサーガ時代からのある種の悪癖まで完コピしていたため、オーブだけ贔屓目に見ている可能性が高い。
総括
彼は、長い下準備を経て遊び道具を自力で作り出したものの成果を外に向けず、自分の都合の良い世界に浸り続ける為に使う『ヒーロー好きの子供』だったと言える。
新たな野望であったAZ計画は地球防衛軍の設立や別宇宙に乗り出す等のプランが想定されていたが、立案者のチェレーザが本編の調子のまま推し進めれば彼の都合の良い世界を広げるだけに留まり、犠牲になる者も多く生まれる可能性があった。
しかしそんなガキ大将じみた思惑は当然通用せず、自分から喧嘩を売った湊兄弟の奮闘と協力者と信じたサキの暗躍によって、作り上げたものを全て取り上げられ、丸裸の状態で殆どの人物に知られる事の無いまま物語から退場させられるという末路を辿った。
しかし、このような自分勝手な言動が目立つ一方、小さな町工場をたった15年で巨大企業にまで育て上げた上に拠点を置いた町そのものをも大きく発展させ、上っ面だけとはいえ市民にも愛されたことは紛れもない事実であり、経営者・研究者としての卓越した手腕や商才を評価する声もある。実際、自らの手で育ててきた愛染鉄工に多少なりとも愛着はあったらしく、社内にはまだ町工場だった頃の会社の写真が飾られている。また第9話ではイサミから「確かにあんたは天才だ」と素直に認められている。さらには上記の通り高い市民税やTシャツの料金も滞納することなくちゃんと払っていた。怪獣によって滅ぼされた星を自らの力で復興させるなどすれば、形は違えど本物のヒーローになれていたかもしれない。
さらに、憎んだのはあくまでカツミとイサミだけであり、その家族には恨みなどで攻撃をしたりすることもなく、上記のTシャツもきちんと評価しており、湊家全員が被害を被ることもなかった。
ほぼ自力のみで変身能力を得て実力も申し分なく発揮している、人前に現れた際も感情的にならない限りは主張通りに私語は慎む、少なくとも宇宙の脅威であるルーゴサイトは本気で討伐する気でいたなど、自身の理想のヒーローになるための努力と心構えも垣間見える。方向性を間違えなければ本物のウルトラマンになれる素質はあったのではなかろうか。
本編における、「選ばれたことへの自覚が持てないヒーロー」と「形ばかりに拘る偽物」という構図も見逃せない。そもそも湊兄弟も戦闘経験の無さはまだしも、自分の正体がバレればどうなるかという事にも考えが至らない甘すぎる自己認識、戦いをどこか遊びと捉えている感のある責任感の低さなど、その動機はともかくとして実際にチェレーザが指摘していた通りの問題が数多くあり、それはカツミも認めている。反面教師として彼のおかげで一人前のウルトラマンに成れたというのも事実であり、成長物語を描く上でのライバルキャラとしては貢献していたと言えるだろう。
本作の登場人物の多くが身近な人を思いやる気持ちから戦いへの覚悟を決めていった事や、近年のウルトラシリーズにおいて「生まれや存在ではなく、愛と平和の為に戦う意志があれば誰だってヒーローになれる」というメッセージが多く見られることを考えると、子供達に向けて「ヒーローはなぜ戦うのか、なぜ人々から求められるのか」という問い掛けを行い、それに負の側面から答えを出したキャラクター、それがチェレーザだったのかもしれない。
いずれにせよ、今昔の特撮作品の中でも非常にインパクトの強い独特なキャラクターであったことは疑いようがない。
余談
- チェレーザ(CERESA)という名前は英語でのシェリー、フランス語でのセレスに相当するイタリアの人名で、イタリアのブランドとしても存在する。
- 非常に変わったスタンスの敵キャラであることから、「(レイバトスよりも)オーブの敵っぽい」という声もある。
- 15年も憑依して成りすましてきたせいか、自分以外誰もいない所でも愛染を名乗っており、故に周り(作中、視聴者を問わない)からも本来の「チェレーザ」ではなく「愛染マコト」として認識されてしまっており、本物の愛染がとんだ風評被害を被っている。実際チェレーザの本性を知って以降、湊兄弟の愛染へのイメージは大きく下がってしまった。
- と言うか、オーブダークになる以前から愛染の姿で召喚した怪獣を使って多くの綾香市民の命と生活を脅かしているので、それがバレたら愛染が風評被害どころではない地獄に突き落とされるのは想像に難くない(表向きは町の名士として慕われていたので落差も凄まじい)。もしチェレーザが退場せずに自分の野望を進めていたとしたらもっとややこしい事態になっていただろう。
- オーブに対してある種異常とも言えるほどの拘りを見せているチェレーザであるが、演じる深水氏自身も『オーブ』はリアルタイムで視聴していたことや、劇中でオマージュや物真似を多く演じたことなどもあってか「とても思い入れがある」、「機会があれば是非オーブやその変身者であるクレナイ・ガイと共演してみたい」と語っている。なお、その声真似は非常に再現度の高いものなのである意味必見である。
- 少年時代のチェレーザの声を担当した大谷美紀は、以前『ゼロファイト』および『ギンガ』でウルトラの母の声を担当していた。さらに、次回作であるウルトラマンタイガでは外伝ボイスドラマにて星間連盟のお偉いさんの役で出演した。
関連タグ
マサキ・ケイゴ:ウルトラマンの力を悪用して変身した者繋がり。ただしこちらの目的は人類を導く神となる事であり、最後には力を制御できずに暴走してしまった。
ゴンドウ・キハチ、ユウキ・マイ:ウルトラマンに対して歪んだ羨望の念を抱き、その力を誤った形でものにしようとした者繋がり。こちらはいずれも『人造ウルトラマン』を造り、それを兵器として利用しようとしたが、どちらも敵の手に落ちて最終的に怪獣に変貌させられてしまった。
チャリジャ:侵略目的ではなく、ウルトラマンに執着している所が共通している。
コミカルな性格付けとメタ的な要素の他、名前の語感も割と似ている。
ガディバ:ウルトラマンメビウスに登場するガス状生物。こちらも憑依能力を持つ。
ババルウ星人ババリュー:「オーブの偽物の変身者」という意味では先輩にあたる。ただし振る舞いや劇中での扱いは全く違い、彼の方がよっぽどウルトラマンしている。
ウルトラマンジード/朝倉リク:闇の力を受け継いだ、ヒーローに憧れる人造ウルトラマンつながり。彼もまた精神的に幼い面が見られ、ゼロとの評価の差に落ち込むこともあった他、利用されていた側とは言え、戦い自体が意図的な舞台でもあった。しかし最終的には持ち前の前向きさによって皆が認めるヒーローに成長した為、正しく本物のウルトラマンと言える。ババリュー共々引き合いに出されることが少なくない。
リシュリア星人イグニス/二代目トリガーダーク:「不正にパクった変身システムでウルトラマンの力を制御し変身する」という点ではチェレーザと似通ってるが、彼の場合は滅ぼされた故郷を復活させるという真摯な目的があり、母星の復活のために地球を犠牲にしたら憎むべきヒュドラムと同じになってしまうというモラルも持ち合わせていた。のちに地球を守るために協力するようになりTPUからも「はじめはいろいろやらかしていたが今では頼もしい仲間」と認識されるようになった。
いわば心が本物のヒーローになったオーブダークといったところ。
ウルトラマンキング、ウルトラマンノア:チェレーザの語る理想に最も近いウルトラマン。一部で言われている説から想像するとチェレーザの言っているウルトラマンは「ネクサス」または「ノア」の事だと言われている。ちなみにオーブダークのパンチシーンの脚本のト書きには「ネクサスのように」と書かれていたと言う。
ウルトラマンナイス:チェレーザのウルトラ通信簿を意外にも多くこなしているウルトラマン。また彼の主題歌を負の面で見ればチェレーザの拘りを満たしているとも言える。
痛みを知るただ一人であれ:チェレーザはウルトラマンの信念を意味するこの言葉から最も遠い1体と言える。実質この言葉の対義語と言える。