「お前らはウルトラマンとして落第点だということだ!」
概要
『ウルトラマンR/B』第8話「世界中がオレを待っている」にて、愛染マコトが湊カツミと湊イサミの兄弟に手渡した、ウルトラマンとしての行動を評価をした書類。
戦いのテクニックやヒーローとしてのかっこよさ等のポイントが半ば狂気すら感じられるほど細かく項目分けされて採点されている。
PDFにしてメールでも送っておいたらしい。
劇中ではカツミのものが画面に映ったが、「よい」「まあまあ」「だめ」のうち「よい」は0個だった。イサミのものは画面では映っていないが、後に劇場グッズが販売された。
内容
評価項目
日常 |
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宇宙平和を目的とした行動を心掛けている |
常に正義感を胸に抱いている |
正体がバレないよう振舞っている |
人命第一で行動する |
日々トレーニングに励んでいる |
健康に気を付けて生活している |
人々の生活に異常がないか目を光らせている |
戦闘中 |
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怪獣が現れたら速やかに現場に駆け付ける |
誰も見ていないところで変身している |
変身アイテムはいつでも使えるようにしている |
変身アイテムを格好良く使っている |
変身直後の決めポーズを格好良く行える |
瞬時に敵の特性や弱点を見極める |
街や自然を破壊せずに戦っている |
人間や飛行機を手に持つときは力加減に気を付ける |
己の未熟さを他人のせいにしない |
変身後は私語を慎む |
怪獣の雄叫びや星人の主張には必ず耳を傾ける |
悪意のない怪獣や星人とは仲良くする |
敵の特殊な攻撃や能力は一通り受けて立つ |
触手や大きな角から先に攻撃する |
攻守を問わずスタイリッシュな動きに勤める |
簡単に敵を倒さず適度にピンチを迎える |
人々の声援で奮起する |
夕日をバックに戦う時は気合を入れる |
先輩からお借りした力は正しく使う |
スラッシュ系の小技も忘れずに使う |
流血などの残酷な倒し方は控える |
必殺技を乱用しない |
3分以内に敵を倒している |
戦闘後 |
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戦闘終了後は速やかにその場を立ち去る |
変身解除後は、爽やかに手を振りながら帰ってくる |
変身解除後は次の変身までインターバルをおく |
やむを得ず倒してしまった相手には哀悼の意をささげる |
一見するともっともだと言える評価基準であるが、かっこいい決めポーズやスタイリッシュな動きを求める一方で、敵の特殊能力を一通り受け、適度にピンチを迎えるなど、ウルトラマンの戦いをプロレスの興行的なものと考えている、そしてヒーローものにおける一種のお約束を重視している様子。
実際、第11話でホロボロスと戦闘した際には律儀にもここに書かれた基準にある程度則した戦いを繰り広げていた(その一方で街の被害を顧みない戦い方を繰り広げたため、湊兄弟からは激しい非難を浴びることになる)。
なお、この基準にあてはめれば不合格となってしまう戦士や、この基準から外れていても人々に受け入れられたウルトラマンも多く、愛染が執着を見せるクレナイ・ガイ/ウルトラマンオーブもこの評価に当てはまらない点が多数ある。
例:
- 復讐のために地球に被害が及ぶことも厭わなかったウルトラマンヒカリ(ハンターナイトツルギ)
- 正義に対して異なる価値観を持って主役戦士と対立したウルトラマンアグルやウルトラマンジャスティス
- 防衛隊の仲間に正体がバレても絆を深めたウルトラマンメビウス
- 変身アイテムをしょっちゅう盗られたり落としたり忘れたりとやらかしが多いウルトラセブンと初代ウルトラマン……の変身者
- 戦闘中に大木を引っこ抜いたり、煙突をヌンチャクにしたりしたウルトラマンエースやウルトラマンレオ
- 戦闘中に軽口をたたきまくるウルトラマンゼロ(偶然だがオーブダークはハリケーンスラッシュとエメリウムスラッガーの技を使用していない)
- 泥臭い戦闘スタイルが特徴の初代ウルトラマン
- 怪獣を発電施設に向かって投げ飛ばした上に、怪獣の本体に向かって必殺技をこれでもかと連発したウルトラマンスコット
- 人前で平気にウルトラマンと会話する、ウルトラマンを介しての知識を披露するなど正体を隠す気がないウルトラマングレート……の変身者
- 電子生命体を倒すために発電施設をぶっ壊したウルトラマンパワード
- 防衛隊が怪獣と戦ってるのをそっちのけで光線技の練習をしていたウルトラマンゼアス
- (間に総集編を挟んでいたからとはいえども)イサミを超える3週間も、ウジウジ悩み続けたウルトラマンゼット……の変身者
- 観測した星の知的生命体に対して危険と判断するや、恒星系ごと滅却しようとする光の星の使者
- 喋らないが、威嚇したりビルをよじ登ったりと戦闘スタイルが野生児なウルトラマンブレーザー
- 切断技などで流血や首ちょんぱ多数な昭和ウルトラマン全般
- 強大な力を求め、闇に堕ちたウルトラマンベリアル
その他
劇中でははっきり映っていないが、後日限定販売(後述)されたレプリカにおいて、裏表紙に以下のような内容が書かれていることが判明した。
ウルトラ5つの誓い
一つ、腹ペコのまま学校に行かぬこと
一つ、天気の良い日に布団をほすこと
一つ、道を歩く時には車に気をつけること
一つ、他人の力を頼りにしないこと
一つ、土の上を裸足で走り回って遊ぶこと
ウルトラ目標
- 己を信じる勇気、それが力になると思え!
- 護れる命は何があっても護れ!
- カラータイマーが赤になっても最後まであきらめるな!
- たとえ強敵に敗れても、力をつけてまた立ち向かえ!
- 何度裏切られようと、優しさを失うな!
余談
第8話監督の辻本貴則氏によれば、「『ウルトラ通信簿』は是非、静止画にしてじっくり見て欲しい。助監督、持ち道具、スタッフ一緒になってめっちゃ考えた。」とのこと。
なお、2018年9月26日に行われたイベント「円谷プロダクション 秋の新作アニメフェスティバル」にて、会場限定100枚のみではあるがレプリカが発売されている(ちなみに、通信簿の表紙には愛染マコト役の深水元基の直筆サインおよび1~100までのシリアルナンバーが書かれていた)。その後年末の「ウルトラヒーローズEXPOニューイヤーフェスティバル」会場や劇場版公開に合わせ映画館でも発売された。湊兄弟それぞれのバージョンと、氏名・採点欄が空白のバージョンの計3部セットとなっていた。
また、昭和シリーズでは、学年誌の企画としてウルトラ6兄弟の通信簿が載ったことがある。
ゾフィーの点数だけ他の兄弟に比べて飛びぬけていたり、セブンが劣等生扱いされている等突っ込みどころの多いものであった。柳田理科雄氏も『空想科学読本6.5』にて「あまりにひどい」「初代マンに対するいじめ」と苦言を呈している程である。
実際に採点してみると…
愛染の場合
上記の条項をこれでもかと詰め込んでいた当の本人は自分の掲げる理想のウルトラマン像に反している面があり、例を挙げると…
- 変身後に私語は慎む/必殺技を乱用しない⇨変身能力を手に入れて早々破る
- 3分以内に敵を倒す⇨退場回では物の見事に失敗。
- 己の未熟さを他人に押し付けない⇨自分の欠点を棚に上げて湊兄弟を愚弄する
- 常に正義感を心に持っておく/宇宙平和を目的に戦う⇨やっている事は正義の為ではなく、ヒーロー願望を満たすためのヒーローごっこ。ただし、ルーゴサイトは本気で打倒しようとしていたため全くないというわけではない。
- 人命第一/周りに異常がないか目を光らせる/街や自然を破壊しない⇨実際は自分の願望のためならば他人はお構いなし、むしろ自分が事件を起こしている元凶である
- 先輩からお借りした力は正しく使う⇨入手方法からして論外であり、私利私欲の為にしか使っていない。
- 他人の力を頼りにしない⇨自分のアイデンティティが他人依存。
とあんな通信簿を作っておきながら、ヒーローとしては明らかに落第レベルである。
どうでもいい余談ではあるが、この手の条項にありそうな「武器に頼りすぎない」という項目が意外にも無かったりする。そこは憧れの人物が武器を主体に戦うウルトラマンだからあえて入れなかったのだろうか?
湊兄弟の場合
対して湊兄弟は劇中で愛染に散々な評価をなされていたが実際の所は…
- 宇宙平和の為に活動している⇨宇宙全体の平和を率先して救おうという大それた事を考えている訳ではないが、宇宙警備隊に協力を求められれば協力している。少なくとも平和を願う心は確実にある。
- 正体バレに気を配る⇨アサヒやウシオに心配をかけない為に正体を隠す。ただしイサミに関しては通信簿を渡された回で自分がウルトラマンだという書き込みを(恐らく匿名とはいえ)しようとしたことがある。
- 日々トレーニングに励んでいる⇨ウルトラマンの能力を慣らすために、迷惑にならないところでちゃんと特訓をしている。ただし、2話では戦闘訓練を積んだわけでもない普通の市民という点は考慮しても怪獣も宇宙人も出現していないとはいえ変身して力を試す為に山を光線で吹っ飛ばすという悪意ではないとはいえ故意の自然破壊を行った。
- 常に正義感を抱いている/人命第一⇨自分の目的の為なら、卑怯な事も平気でやる愛染の行いには怒りを見せ、家族や友人などの身近な幸せを守ろうとする正義感を持ち合わせている。
- 小技を使う⇨湊兄弟は小技を組み合わせて勝利を導き出す戦闘スタイルなので、条件は満たしている事になる。
- 先輩からお借りした力は正しく使う⇨当初は素人も素人だったので、不慣れな面も見られたが、戦いを通してウルトラマンの力に対する責務と向き合い、次第に使いこなせるようになっていった。
- 変身後は私語を慎む⇨ロッソとブルの状態では饒舌だが、ウルトラマンルーブに変身すると口数が減る。というよりも、喋っているのはあくまでカツミとイサミであり、ロッソとブルも劇中では一言も喋っていない。
- 悪意のない宇宙人や怪獣と仲良くする⇨どちらかといえば妹のアサヒが実践している。
(条件を満たせている項目のみ)
とむしろ条件を満たせている項目が多く、ヒーローとしては及第点に入る。
あくまで劇中でのカツミの評価は物語序盤時点でのもの(+愛染の恣意的な評価も込み)であるので食い違うのも仕方のない話である。そもそもウルトラマンR/Bが素人から「本当のウルトラマン」へと成長していく物語である為、条件を満たせている項目が増えていくのは当然といえば当然である。
ただ、主にイサミに関しては自分の正体がバレればどうなるかという事にも考えが至らない甘すぎる自己認識、戦いをどこか遊びと捉えている感のある責任感の低さなど、その動機はともかくとして実際にチェレーザが指摘していた通りの問題が数多くあったのもまた事実であった。
このように問題だらけの通信簿ではあるが、カツミはパワー、イサミはスピードがどちらかというと高いという風にちゃんと公式でも明言されて折り妥当な評価な部分もある。
関連タグ
ウルトラマントリガー:こちらはむしろウルトラマン本人より防衛チームの方が減点されそうである。
痛みを知るただ一人であれ:シン・ウルトラマンの主題歌『M八七』にある歌詞の一部で、シンプルにウルトラマンとしての資質について表現した言葉といっても過言ではない。無論歴代主人公達(と一部協力者)に当てはまる一方でオーブダークはこの点で失格なのは言うまでもない。