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※本記事には、現在公開中の作品のネタバレを含みます。























浅見「ひとつだけ教えて。あなたは外星人なの?それとも人間なの?」


「両方だ。敢えて狭間にいるからこそ見えることもある。そう信じてここにいる」


データ編集

身長:60m
体重:2,900t(地面に残された陥没痕からの推定)
出身地:光の星
CV:高橋一生
モーションキャプチャ:古谷敏/庵野秀明

概要編集

登场

リピアーとは、シン・ウルトラマン」に登場する外星人、ウルトラマンの本来の名前である。

地球に降着して以降「ウルトラマン」と呼ばれるが、終盤のあるシーンで一度だけこの本名で呼ばれる。

ウルトラマンシリーズ本編の初代ウルトラマンの本名ではないので注意)。



禍威獣第7号ネロンガが出現した際に突如大気圏外から飛来し、降着した衝撃から子供を庇い命を落とした禍特対の作戦立案担当官・神永新二と融合。

その姿を借り、人間と外星人の狭間の存在として地球で活動する。


巨大不明生物出現!巨大人型生物

降着直後は体表と同じ銀色のライン、そして口元に皺がある顔立ちをしていた。

いまに枯れる花が 最後に僕へと語りかけたウルトラマン

その後神永と一体化してからはラインが赤く変わり、顔立ちも鉄仮面のようでどこか微笑を浮かべたような表情に変化した。

前述した地球降着時の姿がリピアー本来の姿であり、体色の変化の理由については「地球人との融合に伴うスペシウムエネルギーの損耗によるもの」とされている。終盤、神永と分離した際に体色が赤から銀に戻っているのが確認できる。

なお、顔立ちが変わった理由は不明であり、作中でも体色の変化は指摘されているが表情の変化についてはスルーされている。


神永から元の姿に戻る際には、ベーターシステムの起動点火装置たるベーターカプセルを点火することで、別次元のプランクブレーンに隔離された外星人としての本体を召喚する。その際、プランクブレーンから出現した右手が神永を掴む様に一体化し、そのまま腕を突き上げた状態で実体化する(この変身シーンが見られるのはザラブ戦の1回のみで、それ以外はベーターカプセルを点火した瞬間別カットに切り替わる)。

ぐんぐんカットは最終決戦直前で登場した。


活動エネルギーは超重元素のスペシウム133という物質で、これの応用により光波熱線の使用や、重力を歪めた飛行等が可能になる。

飛行速度の公式設定はないが、地表に降着した際には12000km/h≒マッハ9.6と言及されており(※)、ネロンガ撃破後の飛行では本人周囲にベイパーコーンが発生しているため、地表からの飛行でも超音速に到達していることは間違いない。

「何をしている…」

しかし、プランクブレーンからの非コンパクト化の負荷に加え、融合した神永の生命情報維持に多くのスペシウムエネルギーのリソースを割いていることから消耗が激しく、エネルギーが低下すると体表のラインが赤から彩度を抑えた緑に変色し、活動限界に達すると消滅してしまう。


(※)……浅見弘子役の長澤まさみ氏は撮影中、「ウルトラマンがマッハ8で飛んでいきます」と説明されて困惑したらしい。


必殺技編集

腕を十字に組んで放つスペシウム133の光波熱線。威力は凄まじく、ネロンガ撃破時は光線の軌道上にあった山の斜面を抉り取り、発射直後に大気がプラズマ化する程。


とくに地球に降着し初めて光波熱線を放った際は、右手を垂直に立て、左手をゆっくり真横に伸ばしながらエネルギーを充填していたが、ザラブ戦以降はこの予備動作無く発射している。エネルギーを充填した威力は上述通り凄まじい威力で、光学兵器に耐性のあるネロンガでさえ耐えきれなかった。

一方で禍威獣より上位にあたる外星人には決定打にならず、ザラブでさえ波状光線で辛くも相殺し、メフィラスにおいてはグリップビームで押し返してきている。


後述のフュージョンファイト客演時には神永と融合後の姿で予備動作ありの発射を披露するが、その際にはエネルギー切れの姿へとなった為、本編ではエネルギー問題で十分な威力で放てなかったとする考察もある。


(おそらくスペシウムエネルギーで生成した)丸い鋸状エネルギーを投げつける。光輪は自分の身長と同程度まで巨大化させたり、複数に分裂させることも可能。スペシウム光線を相殺したザラブの防御を無効化して両断する威力の高さを見せている。だが、メフィラスには片手で弾かれ、ゼットンにはバリアーで塞がれた上破片を撃ち返されてしまった。

ザラブとの戦いの直前、神永を救出しに現れた浅見電動丸鋸を使用して扉の鍵を破壊しており、恐らくはこれを元に編み出したと思われる。


敵の電撃を胸筋で受け止める防御技。ネロンガの電撃に長時間歩きながら耐え続けた。


  • 光線白刃取り

ビームを合掌した両手で受け止めて無効化する防御技。メフィラスのグリップビームを両手で防いで弾き飛ばした。


防御のために展開される長方形状のバリア。ゼットンの対空防御に対抗するために展開したが、破られてしまった。




人物像編集

自分の行動が原因で神永が死亡したことに対する責任を取ると共に、『自分よりも弱い者の為に命をかける』地球人の行動に興味を持った為、神永を理解しようと光の星の掟に背いて神永と一体化する。

人間の勉強

以降は感情を表に出さず、生前の神永以上に独断行動を取るようになる。


当初は人間について「群れで行動する生物」とのみ認識していたが、短い間とはいえ禍特対の面々と触れ合う内に人間の素晴らしさや可能性を信じるようになる。その一方、あえて多くは語らず行動で示す場面もある(助けを信じてベーターカプセルを浅見に託したり、事態解決のヒントとなるベーターシステムの原理式を記したメモリを滝明久のデスクの上に置いておいたりする、など)。


加えて人類の黒い一面も学んだようで、政府機関の男が禍特対メンバーに危害を加えることを仄かした際には「もしそれを実行すれば、人類をためらうことなく滅ぼす」と言い放つ一面を見せた(本人曰く「対等な立場での交渉」)。


地球飛来直後のネロンガ戦は一言で表すなら「処理」に近く、格闘戦を一切行わず周囲の被害にも配慮していないような戦闘スタイルだった。神永と一体化以降は内面の変化が影響したのか、ガボラ戦では放射能が広がらない為に熱光線を体で受け止めながらスペシウム光線を使わずに駆除、後処理で遺体を持ち去ったり、ザラブ戦では落下する浅見を優しく救助し、彼女が使用した電動カッターをヒントにスペシウムエネルギーの光輪を放つ等、戦闘での動きに大きな変化が見られるようになる。


しかし、彼の「地球人と融合する」という行動は黒幕の人類生物兵器化計画を助長することになった他、(大半は黒幕のせいだが) マルチバース全ての知的生命体に地球人類が強力な生物兵器に転用できる事を証明してしまい、皮肉にも地球規模の危機を招くことになってしまう。


劇中での活躍編集


光の星がリピアーにどのような使命を課したかは語られていないが、おそらく地球に放置されていた星間戦争用生物兵器=「威力偵察戦力分析用禍威獣」が突如目覚め始めたことを受け、地球文明への被害と人類の進化の阻害を防止するべく送り込まれたものと思われる。


地球飛来〜ネロンガ撃破編集


空自隊員「大気圏外より飛来中の飛翔体あり、正体不明!」

田村君男「何なんだこれは…⁉︎」


初期の生物が6体駆除されたタイミングで局地制圧用の強力な次世代型禍威獣・透明禍威獣ネロンガが出現、それに伴ってリピアーも地球に降り立った。

その姿を見た禍特対や自衛隊の面々が驚愕するなか、ネロンガの放電攻撃を受け流し、スペシウム光線で撃破に成功する。


だが、降着場所付近で逃げ遅れた子供を保護していた神永新二が衝撃波に巻き込まれ死亡してしまう。

一部始終を目撃したリピアーは、他者のために自らの命を使った神永の行動に興味を持ち、彼を理解したいと考え光の星の掟で禁じられた他生命体との融合を決意。

その場を離脱し姿を消した後、神永と一体化し保護した子供と共に帰還する。


バディとの出会い編集


「バディは相棒と理解していいのか?」


突如現れネロンガを駆除し中空で姿を消したリピアーは正体不明の人型生物として禍特対の調査対象となった。

ネロンガ騒動の翌日、公安調査庁から禍特対に浅見弘子が新たに配属され、神永/リピアーとバディを組むことになる。

巨人の降着時に最もその近くにいた男として浅見からは興味を持たれるが、その巨人本人であるリピアーは「巨人の降着時に気絶していた」と説明し、浅見を呆れさせる。


「ここにいる人間たちはどう呼べばいい?」

浅見「あなたも所属している禍特対専従班でしょ?」

「いや、人間の思考概念的な言葉だ」

浅見「…ここにいるのはチームメイト。私たちの仲間よ?」

「…?」


神永の記憶と思いは受け継いでいるものの、地球における人類の言葉の意味を理解しているが、実感はしていない。

また、人間よりも優れた存在故か「個」の概念は確立しているが、「仲間」や「助け合い」等の概念が希薄、もしくは感性が異なる。特に、浅見の分のコーヒを淹れてこなかった際には「我々は個体で生命が完結している。それぞれが自分のために動くものだろう」と言い放ち、「人間は誰かの世話になることで生きていく社会性の動物なのよ」と嫌味混じりで訂正されるが…


「そうか。それが群れか」

浅見「…アホなのこの男は」


このように、度々側から見れば頓珍漢な発言をしてしまい、浅見からは変人と認識されてしまう。

ちなみに、生前の神永は単独行動が多く「よく分からない男」と認識されており,このやり取りを直近で聞いている滝明久船縁由美からは特に変な印象を抱かれてはいない。

しかし、神永として人間と接する中で人類に対する興味を深め、辞書や専門書といった様々な分野の書物に目を通すなど、人間に近づこうと彼なりに努力はしていた。


突如現れ、そして姿を消したリピアーの存在は「空から飛んできて禍威獣を駆除した巨人」として、現場にいた人物と一部の政府関係者にのみ認知されていた。

人型の禍威獣なのか、それとも外星人なのか。得体の知れない存在故に新たに禍特対の調査対象となったリピアーは、浅見によって「巨大人型生物ウルトラマン(仮称)」と名付けられ、防災大臣小室肇からは諸外国から干渉される故「厄介な存在」とされながらもその名称を気に入られ、友好的に捉えられる。


ガボラ出現、「ウルトラマン」へ編集


「核廃棄施設まで、あと山一つしかない…」


首都近郊において禍威獣が出現したとの一報を受け、禍特対メンバーと共に現地指揮所に赴く。

出現したのは地中を掘削しながら前進さする地底禍威獣ガボラであり、かつて放射性物質を捕食し、甚大な被害をもたらした放射性物質捕食禍威獣パゴスと同族の厄介な存在であった。しかも、パゴス同様放射線を大量に含むヤバめの光線(船縁曰く)を発射するおそれもある。

進行方向には地下核廃棄物貯蔵施設があり、かつてのパゴス事案の二の舞を避けるために地中にいる状態での駆除を進言する。早速米軍から買い取った大型地中貫通爆弾「MOPⅡ」がガボラに向けて投下されるが、ガボラは攻撃をモノともしない。追加のMOPⅡが次々投下されるが効果は無く、遂に在庫切れとなる。そんな自衛隊を嘲笑うかのようにガボラは地上に出現し、なおも進撃を続ける。禍特対は核廃棄施設に到達するまでに駆除しようと動き出すが、放射性物質を体内に含んでいるガボラを地上で駆除した場合、周囲に放射能が撒き散らされる可能性が高い。だが、各廃棄施設を襲撃された場合に拡散される放射性物質の量よりガボラの体内保有量が少ない可能性に賭けて飽和攻撃が進言される。

事態が強行作戦に向けて動き出した中、リピアーは静かに対策本部を抜け出す。

対策本部を抜け出したリピアーは人目につかない雑木林の中を駆け抜け、スーツのポケットから先端に赤いカプセルが取り付けられたペンライト型の装置を取り出す。装置を点火、光に包まれ、神永の姿から外星人の姿に変身する。その姿は、降着直後の銀色の体表ラインが一変し鮮やかな赤いラインに変化し、微笑んでいるような表情をしていた。

突然のウルトラマンの出現に驚く禍特対一同、その中で浅見はその巨体を見上げて呟く。


浅見「あれがウルトラマン…綺麗…」


変身を遂げたリピアーは核廃棄施設へと飛び立つ。

ガボラが核廃棄施設を襲撃するよりも早く現地へ到着したリピアーは、迫り来るガボラの前方に回り込み、スピンキックで蹴り飛ばし、戦闘に突入する。

攻撃を受け流しつつ核物質貯蔵庫から遠ざけ、駆け付けた禍特対メンバーをガボラの激ヤバ光線(滝曰く)から守るべく全身で受け止め放射線を除去、間合いを詰め頭部に一撃を叩き込み、ついにガボラを駆除する。

エネルギーを消費したリピアーは禍特対メンバーに一瞥を送り、見守られながらガボラの亡骸を持ち上げ大気圏外へと運びこれを処分する。

神永の姿に戻ったリピアーは陸自の車両で指揮所に帰還した禍特対メンバーを迎えるが、浅見はいつの間にか姿を消しそして戻ってきた神永を訝しむ。


後日、避難中の一般人数名がリピアーとガボラの戦闘を撮影しネットに公開したことでその存在が日本のみならず全世界に知られることになり、日本政府もその存在を事実と認め、浅見の決定した「ウルトラマン」の仮称を公式な呼称とすることを決定した。


一方、浅見の根回しで尾行していた公安調査庁の職員を振り切り、リピアーは相変わらず無断で単独行動を取り続けていた。



第二の外星人出現編集


加賀美「権力者の考えることは、古今東西常に同じというわけだ」

ザラブ「君はもう私のものだ、ウルトラマン」


ガボラ出現から数日後、相変わらず神永/リピアーが単独行動で不在の禍特対専従班の前に、黒マントに身を包んだ「ザラブ」と名乗る外星人が現れる。

出現に伴って発生した強力な電磁波が引き起こした停電によって消去されてしまったデータを復旧させ友好的な態度を見せたザラブは、「日本との友好条約」締結のために来訪したと告げ、大隈泰司総理と面会し、条約を結んだ。

しかし、ザラブの行動を訝しんだリピアーは神永の同僚、加賀美と接触し、人気の無いトンネルに駐車した車の車内で資料を受け取る。

その資料からザラブの条約が友好どころか一方的な許諾内容を強引に押し付けた不平等極まりないものであり、さらに他国にザラブが情報を流し、尚且つ自身も諸外国へ接触しようとしていることを知る。

不平等な立場に立たされるにもかかわらず、ザラブと条約を結び諸外国を出し抜こうとする日本政府に疑問を抱くリピアーに対し、加賀美は日本が優位に立つためにはリスクが大きい選択も厭わない官僚への皮肉を言い残して車を去る。


ザラブ「好奇心は身を滅ぼす。元公安の性とはいえ、君は多くを調べすぎる」


その直後、姿を現し接触してきたのは人類側との交渉を滞りなく進めつつあるザラブ本人であった。

目的を問い詰められたザラブは「マーカーを発見次第その惑星の原住知的生命体を無条件に絶滅させる」ことが目的であり、ゆくゆくは国同士で争わせることでホモサピエンス(=現生人類)を自滅させる計画をリピアーに語る。その計画には、ウルトラマンの存在を利用することも含まれていた。

理由を問うリピアーに「それが私の仕事だからだ」と答え、企図している大量殺戮については「ホモサピエンスが自分たちの都合で害虫と判断した種を虐殺するのと同じ」と言い切り、人類を「滅ぼすに値する未成熟で秩序の無い危険な群体」と蔑むザラブ。

目先に突きつけられた利益に目が眩む人類の黒い一面を垣間見ながらも、「人類には懸命なところもある」と信じているリピアーはザラブとは相容れないとして、計画を阻止するべく拳銃を向けるが、ザラブはすでに神永がリピアー=ウルトラマンの正体であると見抜いていた。

催眠術で眠らされたリピアーは、そのままザラブによって姿を消され、どこかへと拉致されてしまった。

だが、逆にそれを先読みしていたリピアーは拉致される直前にフロアマットの下に隠していた特殊インクを踏み潰し、自身の痕跡を残すことに成功した。


その夜、リピアーそっくりの巨人が横須賀に出現する。妙に目つきの鋭いその巨人は自衛隊の横須賀基地を破壊し、姿を消した。

3日後、神永が右手を突き上げると、光に包まれウルトラマンに変身する、という動画がインターネットにアップロードされる。


浅見「顔認識、完了しました。間違いありません。禍特対専従班、神永新二警視正です」

田村「…そうか。本能では混乱しているが、理性で事実と受け止めよう」

船縁「じゃあ…彼が最初から外星人だったってこと⁉︎」

滝「…」


リピアーの正体は禍特対だけでなく、世界中に晒されることになってしまう。

そればかりか、ザラブによって「ウルトラマン抹殺計画」が政府に進言され、リピアーは本人の知らぬ間に追い詰められ始めていた。


神永救出編集


『β-Capsule 君に託す 神永』


ザラブ「君がウルトラマンの本体を別次元から召喚するには"ベーターシステム"が必要だ。その起動点火装置の有無を今一度確認させてもらう」


ザラブに拉致されたリピアーは拘束され、解体予定のビルの一室に監禁されていた。

そこに現れたザラブはリピアーが神永の姿から元の姿に戻る、即ち別次元の空間=プランクブレーンに隔離した外星人としての本体を巨大化・召喚するために必要なベーターシステムの起動点火装置「ベーターカプセル」の有無を確認するが、リピアーは所持していなかった。


ザラブ「…まあいい。君はもうウルトラマンにはなれない。それで十分だ」


そう言い残して姿を消したザラブは、リピアーそっくりの姿=にせウルトラマンに変身し、夜の街で破壊活動を始めた。

抹殺計画に難色を示していた小室大臣は苦渋の決断で禍特対に出動命令を出し、田村を筆頭に一行は現場へ向かう。

自由を奪われ、手も足も出ないリピアーの元に、浅見が電動カッターで施錠を破壊、ドアを蹴破って突入してくる。

ザラブに拉致される直前に残した痕跡を追跡し、監禁されている廃墟ビルを突き止めた加賀美は浅見に資料を渡して救出に協力していたのだ。


「浅見君がそんなキャラだとは。意外だったな」


素なのかふざけているのか分からないリピアーを無視し、浅見は拘束を解く用意をしながら神永新二がウルトラマンであることが世界中に拡散されている事を告げる。それを聞いたリピアーは「そうか」とだけ答えた。

浅見は隠すこともなくすんなり認めたリピアーの頬を平手打ちする。


浅見「私たちを馬鹿にして、騙してたのね!」

「騙してはいない。話さなかっただけだ」


連絡も取らず置いてけぼりにされた上に重要な情報を共有されなかったことに遂に溜まった怒りをぶつけるが、リピアーなりの事情を知り、納得はできないながらもそれ以上責めることはしなかった。


リピアーを拘束するバンドを切断しながら、自分が救出に来ると思ってたのか問う浅見にリピアーは「バディだからな」と答える。相棒として信頼し、ザラブに拉致されてもバディである浅見が救出に来ると信じていたリピアーは、ベーターカプセルを「君に託す」とのメッセージと共に浅見の鞄に隠していたのだ。

拘束を解かれ自由の身となったリピアーに、人間なのか、それとも外星人なのかと問いかける浅見に、リピアーはその両方だと答える。あえて狭間にいるからこそ見えることもある、そう信じてここにいる、と。


浅見「…私も、これを私に託してくれたあなたを信じる。あなたの偽物がすぐそこで暴れ回ってる。早く倒して!」


浅見に託したベーターカプセルは、彼女の手からリピアーに返還される。

その直後、ビルの外壁を破壊し手を突っ込んできたにせウルトラマンに浅見は捕えられてしまう。


リピアーは、ベーターカプセルを持った右手を突き上げ、点火スイッチを押す。

ベーターシステムが起動し、眩い光と共に周囲が赤く光り輝く。開かれたプランクブレーンから伸びた巨大な右手がリピアーを包み込みーー


ビルを突き破って現れるもう1人のウルトラマン。

本物の登場に動揺するにせウルトラマン。

驚きと安堵の表情で見上げる浅見。


滝「ウルトラマンが、2人!?」

船縁「新たな方がモノホンよ!」


浅見を捕らえた右手を蹴り上げ、怯んだにせウルトラマンを蹴り飛ばす。中空に投げ出された浅見はリピアーの両手で優しく受け止められ、地上に降ろされる。

浅見の無事を確認したリピアーは一瞥を残し、にせウルトラマンと対峙する。

格闘の末、逃走を図るにせウルトラマンにスペシウム光線を発射。直撃を受けたにせウルトラマンは高層ビルに落下し、光学擬態装置が解けてザラブの姿が露わになる。

波状光線でスペシウム光線を相殺し、往生際悪く逃げようとするザラブを、スペシウム133の巨大光輪で真っ二つに両断し、人類滅亡を目論んだ邪悪な外星人の駆逐に成功する。


リピアーはそのまま夜空に消えていき、浅見は静かにそれを見送った。


浅見「ありがとう、神永さん…」


人間社会に居場所を失う編集


警察庁長官「そうだ、神永新二元警視正だ!発見次第身柄を拘束しろ!最優先だ!」

内閣情報官「世界各国の諜報機関が動いている。必ず我が国が先に見つけるんだ」

公安調査庁長官「これだけの捜索網でも見つからない…神永新二はどこに隠れたんだ⁉︎」


ザラブによってその正体を世界に公表されたリピアーは、禍特対本部に戻ることもできず、にせウルトラマン騒動の直後に姿を消した。

その行方を追って、警察庁、公安調査庁をはじめ日本政府の各機関が動き出し、米国のCIAや英国のSISといった諸外国の諜報組織までもが工作員を日本に送り込んできた。

神永新二の手がかりとして禍特対本部は四方八方から監視され、諜報機関だけでなく、ゴシップ誌でも面白半分に取り上げらる始末。神永新二は既に外星人として扱われ、戸籍も日にちを繰り上げられ死亡扱いとされた。

ウルトラマンに変身できる人間の存在が明らかとなった今、身柄を抑えて軍事目的を始めあらゆることに利用しようと考える各国政府によって、リピアーは人間社会に居場所を失ってしまった。


メフィラスの暗躍編集


メフィラス「まさに呉越同舟、私の好きな言葉です。どうです?私と一緒にこの星のために働きませんか?」

「君の話次第だ、メフィラス」


禍特対本部へ戻ることもできず、雲隠れしていたリピアーは「外星人第0号」を名乗るメフィラスという男に呼び出され、児童公園で密会する。


地球に放置された生物兵器=禍威獣を目覚めさせたのは君かと問うリピアーに、メフィラスは「禍威獣の復活は人間の環境破壊が原因」としながらもこれを肯定、そしてそれをエサにリピアーを光の星から誘き出したことを告げる。

その目的は、禍威獣とリピアーが戦う姿を見せつけた上でベーターシステムを開示し、暴力でも科学技術でも地球人は劣っていることを痛感させ、優れた存在に縋るしかない人間に善意を装ってベーターシステムを与えることで現生人類を兵器に転用可能な生物資源として独占管理することであると告白する。


日本各地に被害をもたらした禍威獣、そして人類を滅ぼそうと企んだザラブ、そして故郷に背いてまで人類を守ろうとしたリピアーは、メフィラスの外星人には従うしかないという理想的概念と強者への依存を人類に植え付けるために利用されていた。

さらに皮肉なことに、神永との融合で地球人がベーターシステムに適応していると判明し、実験台に選ばれた浅見の巨大化が成功したことでそれが実証されてしまう。


つまり、リピアーは図らずともメフィラスの計画を助長していたということになる。


そこまで語ったところで武装した機動隊と禍特対メンバーが現れ、河岸を変える羽目になったリピアーはメフィラスと共に姿を消す。


浅見「あの男…どこがバディよ!信頼して損した…」


居酒屋に河岸を変えた2人は地球の行く末について密談を続けていた。

メフィラスからは戦うことは避けたいと、静観もしくは共闘を勧められる。外星人である自身やメフィラスはその気になれば武力制圧が可能であり、人類の生殺与奪は掌握したも同然であるが、絶望を植え付け統制することは人類側の自立的な発達を阻害するものであるため、人間と接する中で人間を愛するようになっていたリピアーはこれを拒否する。


だが既にメフィラスは、自分を上位概念として存在させる代わりに人類を強化させ敵性外星人による侵略に備えるためにベーターボックスを譲渡するという条約を政府と結んでいた。

大隈総理と交わした密約文書を見せ、あくまでベーターシステムを発したのは人類自らの意思であり、光の星の掟で現住生命体に干渉できないリピアーはこれを妨害できないと告げる。だがリピアーは自身ではなく神永の意思としてメフィラスの計画を実力で阻止すると宣言する。


メフィラス「君の行動は光の星にも伝わっている。いずれ君自身が、この星に災いを招くぞ」

「そうだとしても、私はこの弱くて群れる小さな命を守っていきたい。」

メフィラス「それは…君ではなく君の中にいる人間の心ではないのかウルトラマン?」


挑発的なメフィラスに対し話は終わりだと酒の入ったグラスをカウンターに置き、交渉は物別れに終わってしまう。


メフィラス「割り勘で良いか?ウルトラマン」


ベーターボックスの奪取編集


メフィラスと別れたリピアーは浅見に連絡を取り、禍特対メンバーに事情を話した上でメフィラスからベーターボックスを奪取することを告げる。

ベーターボックスの所持は人類に取って非常に危険であり、兵器としての価値に目をつけた他の外星人にも利用される可能性もある。何としても密約を阻止しなければならない。

全ては自身のせいだと頭を下げるリピアーに田村は協力を快諾するが、どうやってベーターボックスを奪取するかが問題だった。プランクブレーンに隠蔽されているベーターボックスの位置を特定する必要があるが、人間に感知することは不可能であった。

残された手掛かりは初回被験者である浅見の身体情報であるが、数値化された情報はリピアーでも追跡が不可能だった。

だが、船縁が突破口を発見する。


船縁「数値化されない情報が一つだけあるわ。匂いよ」

「残り香か。…時間が無い、それで行こう

浅見「…えっ。今から…?」


巨大化させられた上ネットで晒し者にされ、更に各省庁と検査機関をたらい回しにされ「恥ずかしくて人に言えない検査」まで受けて数日間入浴できていない浅見にとって屈辱極まりない方法であったが、リピアーは構わず浅見に顔を近づける。


浅見「…ごめんなさい、このところ忙しくてシャワー浴びれてない…」

「問題ない。体臭は特定できる」

田村・滝・船縁「………」

浅見「…もうっ。そういう意味じゃない!」


田村、船縁、滝が複雑な表情で見守る中、浅見の匂いを記憶したリピアーはベーターカプセルを点火、プランクブレーンに侵入する。


その翌日ーー湾岸近くの某所にひっそりと設けられた調印式会場にて。

メフィラスが大隈総理との条約に署名し、ベーターボックスを召喚、日本政府に譲渡したタイミングでリピアーは会場を急襲、ベーターボックスを取り上げ、禍特対メンバーが登場するCH-47に放り込む。政府に譲渡された=人類側に所有権が移行したタイミングでベーターボックスを禍特対メンバーに託すことで、「処遇を人類に任せる」というメフィラスの裏を突いた行動に出たのだ。


メフィラス「君と戦うのは残念だ…ウルトラマン」


まんまと出し抜かれたメフィラスは、浅見の匂いを追跡したリピアーを変態呼ばわりしながらも本来の姿に戻り、ベーターボックスを起動、巨大化する。


調印式会場から離れた工業地帯、コンビナート群の中で対峙したリピアーとメフィラスは最後の交渉を行う。


「メフィラス。ベーターシステムを持って、さっさとこの星から立ち去れ」

メフィラス「謹んで、お断りする」


最後の交渉も決裂し、遂に両者の戦闘が始まる。

八つ裂き光輪の連続発射を弾き返すメフィラス。

ペアハンド光線を白刃取りで受け止めるリピアー。

間合いを詰め、リピアーを蹴り上げるメフィラス、建造物を巻き込みながら転倒するリピアー。

右手の指を分裂させリピアーの首を絞めるメフィラス、その腕を取って背負い投げるリピアー。

メフィラスに右ストレートを繰り出すリピアー、それを受け流し投げ飛ばすメフィラス。

繰り出したキックが炸裂し、互いに相殺し合う。


禍特対メンバーがCH-47の機内から見守る中、互角の格闘が続く。


土煙の中睨み合うリピアーとメフィラス。ゆっくり構えを解き…同時にスペシウム光線、グリップビームを発射する。

空中で衝突し激しく火花を散らす両者の光線、だがメフィラスがゆっくりとリピアーに歩み寄り、間合いを詰め始める。


メフィラス「君を支えるスペシウムエネルギーは、プランクブレーンからの非コンパクト化への負荷と同時に、他生命体との融合情報を維持する状態では急激に消耗する」


対するリピアーはメフィラスに押され、徐々に体色が緑に変わっていく。メフィラスはリピアーを甚振るように間合いを詰め続ける。


メフィラス「ネゲントロピーを利用した私とは違って、活動制限時間はかなり短いはずだそれまでに私を倒せるかウルトラマン!


メフィラスの拳とリピアーの手刀が密着し、ゼロ距離射程のグリップビームはスペシウム光線を圧倒する。


…だが、メフィラスは優勢にもかかわらず突如戦闘を中止する。

強硬な姿勢から一転、地球にリピアーを殺してまで手に入れる価値は無くなったとして、要求を受諾、ベーターボックスを持って地球から去ることを告げる。

禍特対メンバーからベーターボックスを受け取ったリピアーはメフィラスに返還する。メフィラスはベーターボックスを受け取ると「厄介な者」が来ていることを告げ「さらばウルトラマン」と捨て台詞を言い残し姿を消した。


禍特対メンバーが無事に地上へ戻ったのを見届けたリピアーは、活動時間が限界に達し、仲間たちが見守る中姿を消した。


新たな光の星からの使者編集


メフィラスの計画を阻止したリピアーは、初めて降着した山の中で1人岩に腰掛けていた。

彼の視線の先には草木に囲まれて神永の遺体が横たわり、掌には神永のドッグタグが握られていた。

小鳥のさえずりの中、何者かがリピアーに呼びかける。


???「君がこの男の生命を奪ったのか、リピアー。いや、この星に合わせ"ウルトラマン"と呼ぼう」

「そうだ。彼は幼い命を私の衝撃波から守ろうとして命を絶った。彼は他者のために自らの生命を使う興味深い生命体だ。私は彼を理解したい」

???「だから禁じられた人類との融合を試みたのか?」


頭上から見下ろすように佇む、リピアーに酷似した金色の外星人。ゾーフィと名乗るその外星人は、掟に背いたリピアーに代わって人類の監視者兼裁定者として派遣された光の星からの新たな使者であった。


ゾーフィは人類が兵器転用可能であることがマルチバース全域に広がったと同時に、人類が光の星の生命体と同じ進化に至る可能性が浮上したため廃棄処分と決まったと語る。


光の星の裁定を過ちであると言うリピアーに対し、ゾーフィはリピアーが人類との融合を果たした事こそが過ちであると反論し、人類を数十億単位の生物兵器に転用可能であることが証明され、それに目をつけた他の知的生命体によって地球が荒らされるのを未然に防ぐため全て刈り取ることが最適な判断であると告げる。

光の星の掟に忠実な裁定者の下した結論は、全宇宙の平和を守るために現生人類を太陽系ごと粛清するという、冷徹なものだった。


ゾーフィ「私は執行者として、"天体制圧用最終兵器"を伴ってきた」


ゾーフィがリピアーに見せたものは、奇妙な音を発する黒い装置であった。


「……"ゼットン"なのか?」

ゾーフィ「そうだ。今より自立プログラムに切り替える。システムが整い次第、人類は恒星系ごと滅却される」


ゾーフィによって起動された天体制圧用最終兵器ゼットンは宇宙空間に打ち上げられ、攻撃システムを生成し始めた。準備が整い次第、無警告で攻撃が実施され、地球は恒星系ごと焼き払われることになる。


ゾーフィ「光の星が確認している知的生命体は130億近く存在する。その一つが消えたところで、宇宙は何も変わらない

「この星の人類にとって、自分達は唯一無二だ」

ゾーフィ「この星の現住生命体は、命を賭すほどの価値があるとするか?ウルトラマン」


リピアーは同胞と敵対する事になっても『人間』と『外星人』の間に立つ事を選択する。衛星軌道に達したゼットンはカプセル状の形態からパーツを展開、生物のようなフォルムに姿を変え、静かに攻撃システムを生成し始めた。


神永の姿で本部に戻ったリピアーは仲間たちに真相を話そうとするが、そこに政府の男が首相補佐官(と室外に警察の特殊部隊)を引き連れて現れる。

政府の男は、ウルトラマンを国連が設立した新たな組織による共同管理下とする条約に批准したとして、リピアーの同行を求める。世界滅亡の危機の前に、リピアーは仲間との会話を優先したいとこれを拒むが、政府の男は禍特対メンバーの殺害を仄めかして恫喝する。


「もしそれを実行すれば、私はゼットンよりも早く人類を躊躇うことなく滅ぼす」


逆に全人類を人質に恫喝するリピアーに政府の男は強行姿勢から一転、ゼロサム常態は避けたいと言い残し、本部を後にする。

邪魔者を退けたリピアーは改めて禍特対に現状を説明する。

すでに同族のゾーフィの元を離れて自立しており、攻撃準備が整い次第無警告で1テラケルビン=1兆度の超高熱球が地球に向けて発射されることになる。

地球どころか太陽系が蒸発し数光年先まで被害が及ぶ途方もない威力に絶句する滝。

ゾーフィを説得できないのかという田村だが、光の星の掟に忠実な男に説得は望むべくもなく、人類に残された手段はゼットンが火球を放つ前に破壊することのみ。

しかし、外星技術より遥かに劣っている地球の兵器ではゼットンを倒すことなど到底無理な話であった。全世界で使用可能な核兵器(TNT火薬換算で200万kt、広島型原爆約13万発分)を全て突入したとしてもとても足りず、撃破は絶望的であった。

外星人と地球人の力の差を見せつけられ遂に心が折れた滝は、ウルトラマンに全部任せるのが最適と結論づけ、「神永さん、後をよろしく」とだけ言い残し本部を出て行ってしまう。


単身ゼットンに挑むことになったリピアーは、USBメモリを滝のデスクに置く。これは何、と視線を向ける船縁に微笑み、リピアーは禍特対本部を後にする。


そして、衛星軌道では人類を嘲笑するかのようにゼットンのフォルムが完成し、不気味な電子音を発し始める。


「ゼットン……ピポポポポ……ゼットン……ピポポポポ……」



原罪に身を置き編集

ビルの屋上で、上空に佇むゼットンを眺める浅見とリピアー。


光の星出身のリピアーは、ゼットンに勝てないことを理解していた。全快の状態でもとても敵わない相手に、神永と生命を共有してエネルギーを激しく消費している今の自分が挑んでも、自殺行為に等しいとーー。

だが人間を愛しているリピアーは、それでも立ち向かう覚悟を決めた。


「成せばなる。成さねばならぬ、何事も。ーーやってみるだけだ」


そして浅見もまた、リピアーが負けると分かっているのに人間のために1人でゼットンに挑もうとしていることを見抜いていた。


浅見「…うん、わかった。頑張って!ーー気合い入れていこう!」


ベーターカプセルを点火したリピアーは、浅見に見送られながら宇宙空間に飛び立つ。


ギリギリまで接近して発射したスペシウム光線も、間合いを取って放った巨大な八つ裂き光輪も電磁バリアーに阻まれ悉く無力化されー

ゼットンの迎撃システムによる猛攻の前に防戦一方となり、雨霰と放たれる光弾の雨に防御のリバウンド光線は呆気なく砕かれ、エネルギーが底を尽き掛ける。

満身創痍のリピアーに、ゼットンは無慈悲にもとどめの熱球を放ち…


回避が間に合わず直撃を受けたリピアーは吹き飛ばされ、炎に包まれ大気圏へ落下する。

遂にエネルギーを全て失い、瞳から光が失われ、神永の姿に戻り海へ落下するリピアーの前にゾーフィが現れる。


ゾーフィ「無駄な抵抗は止め、静かに人類の粛清の時を待て。ウルトラマン」

「いや、人間を信じて最後まで抗う。それが私の意思だ」


海面に叩きつけられたリピアーは全身に重傷を負い、意識不明の重態となる。

昏睡状態のリピアーに、付き添いの浅見が静かに問いかける。


浅見「…ゼットンに勝てないの、最初から分かってたんでしょ?神永さん…」


人類に託した想い編集


「最初に。

私が原因で、人類存続のために強制的に発達させなければならない事態になってしまったことを、謝る。

私が知っているベーターシステムの基礎原理と高次元領域に関する関係式を、君たちの記号に置き換えておいた。

ベーターシステムは、与えられる既製品ではなく、人間が自らの知恵で考え、その手で新たに作り出してほしい。それをどう使うかは人類の自由だ。

最後に。

ウルトラマンは万能の神ではない。君たちと同じ、命を持つ生命体だ。

僕は、君たち人類の全てに期待する。


滝、後をよろしく」


ウルトラマンが敗北したことを受け、日本含め各国政府はゼットン案件の真相を国民に一切通告せず、何もせず何も知らないまま終わるのが一番の幸せであると結論づけた。


ゼットンどころか禍威獣災害も、外星人騒動も、ウルトラマンの存在すら忘れ去ったかのように、人々は穏やかな時を過ごしていた。その先に滅びの運命が待ち受けているとも知らず…。


いつしか、天空に不気味に佇むゼットンの存在など誰も気にしなくなっていた。


ゼットン案件について何もするなと指示を受けた田村は気力を失ってしまい、ただ失意の時間を過ごしていた。滝は破滅の運命を受け入れたかのように振る舞うが、外星技術に人類が積み上げてきた叡智が敵わない悔しさを抑えきれずにいた。

悔し涙を流しヤケ酒に走る滝に、ゼットンに弱点はないかと1人分析を続けていた船縁はリピアーが残したUSBメモリを示す。


パソコンに接続してデータを表示すると、記録されていたのは複雑な計算式が記載された英語の論文であった。

「β-system」と題された論文には、起動することでプランクブレーンを開き、そこにある未知の物質(リピアーの場合スペシウム133)で対象の生物を巨大化させるベーターシステムの基本原理と、プランクブレーンをはじめとする余剰次元の詳細が記されていた。

なす術が無いと全てを諦めかけていた滝は、リピアーの想いを受け取って絶望の淵から立ち直り、ゼットン打倒のために託された希望を地球人の手で発達させることを決意する。

滝はベーターシステムの方程式を読み解き、田村と船縁は日夜研究を続ける滝を見守り、そして浅見は眠り続けるリピアーに寄り添い、人類がまだ諦めていないことを伝え続けた。



そしてーー


遂に攻撃システムが完成したゼットンは、四肢を地球に向けて発射態勢に変形し、衛星起動を離脱して降下し始めた。

それを察知したリピアーは昏睡から目覚め、ベーターシステムを取るが、浅見に「話がある」と止められる。


リピアーが眠っている間に、世界中の学者を招致してベーターシステムとプランクブレーンの原理を読み進めた滝は、人類が生き残る方法を発見したのだ。

その方法とは、ベーターカプセルを点火し六次元を通じてプランクブレーンと繋がった際に発生した重力波をゼットンに集中させることで、1ミリ秒だけ展開された余剰次元と1兆度の熱量を利用してゼットンをプランクブレーンに押し込む、つまり「変身後1ミリ秒でゼットンを殴り飛ばす」というもの。

一見簡単に見えるが、成功させるにはゼットンにギリギリまで接近し、僅か1ミリ秒で重力波と熱球の熱量をゼットンに集中させなければならないという、非常に難しい作戦であった。

これはべーターシステムを当然のように使ってきたどの知的生命体も発見することができなかった、いわばバグのような特性を、外星技術と比較し遥かに劣っている地球の科学をもって発見し、そして発展させることで導き出した人類が未来をその手で掴み取るための、そしてリピアーの人間への信頼と希望を確かなものにする価値ある作戦であった。


だがーー


田村「その結果、ウルトラマンはどうなる?」

滝「…予測計算だと消滅時に巻き込まれ、不明の平行宇宙へ飛ばされてしまいます…」

船縁「そんな…!」


皮肉なことに、人類の叡智が結集した作戦の成功は、黒い一面を垣間見ようとも、故郷の同胞と敵対することになっても、人間を愛し信じ続けた1人のヒーローの犠牲と引き換えによる残酷なものだった。

人類が生き残るためにリピアーを犠牲にはできないと、田村は即座に作戦を却下、実行に反対した。だがリピアーは人類の未来が最優先事項だと実行を望んだ。そのために自分の命を使い切っても構わない、と。



最後の戦い編集


1テラケルビンの熱球発射まで、残り38秒。(※1)

ビルの屋上、最後の決戦に赴くリピアーは浅見と帰還の約束を交わす。


浅見「あなたを信じている。必ず帰ってきて。ーー行ってらっしゃい」


熱球発射まで、残り15秒。

見送る浅見にリピアーは微笑み、ゼットンを見据えベーターカプセルを点火する。


「ああ。ーー行ってくる」


熱球発射まで、残り5秒ーー。(※2)


シン・ウルトラマン


ベーターカプセルを持つ右拳を突き上げ、リピアーはプランクブレーンから宇宙へ飛び出す。

熱球発射まで、残り1秒。(*3)


ゼットンへ接近したところで、ベーターカプセルを一度点火、同時にプランクブレーンのゲートが開かれる。高速で回転しながらゼットンに突進し、刹那の拮抗ののちバリアを破り、光の玉となったリピアーの拳は火球を放たんとしていたゼットンに届く。


※…浅見との約束の場面から画面下に火球発射までのタイムリミットが表示されているが、ベーターカプセルの点火から映像は等速で流れているのに対して秒読みは徐々に遅くなっていくという演出となっている。(ベーターカプセル点火の時点で残り5秒前、2度目の点火は残り1秒前である)これは即ち、この時のリピアーは人間に知覚不能なレベルの超高速でゼットンに突進していることを表している。



熱球の高熱と重力波の直撃を受けたゼットンは大破、残骸は強力な引力でプランクブレーンに吸い込まれていった。


作戦を成功させたリピアーは、必ず戻るという約束を果たすため地球へ向けて飛び立つ。だが強力な重力はリピアーを逃さず、徐々に引き込みつつあった。エネルギーを失い、鮮やかな赤いラインが暗い緑に変化しながらも、リピアーは必死に重力に逆らう。しかし、その身体は地球ではなくプランクブレーンへと吸い寄せられ、そしてーーリピアーを飲み込んだゲートはその口を閉じた。


天空に佇むゼットンの姿は綺麗さっぱり消え去り、作戦が成功したのを見届けた禍特対メンバーは、誰も喜ぶ者はいなかった。リピアーがゼットンと共に消滅したことを意味していたからだ。


リピアーを案じ続けた田村、リピアーから託された想いを受け止めた滝、リピアーが諦めていないと知り希望を捨てなかった船縁、必ず戻ると信じてリピアーを送り出した浅見。

彼らの目には涙が浮び、そしてこぼれ落ちた。


人間を好きになった男の最期の願い編集


ベーターカプセルの残骸が漂うプランクブレーンの中を、エネルギーを失い瀕死の重傷を負ったリピアーは力無く彷徨っていた。


ゾーフィ「ウルトラマン。目を開け」


ゾーフィの呼びかけに、瞳に光が灯り体表ラインが鮮やかな赤色に変わる。

強力な重力に引き込まれたリピアーは、ゾーフィに救出され、プランクブレーンに保護されていた。

リピアーの心の中には自らの命を犠牲にゼットンに挑んだ死への覚悟と、生きて仲間たちの元へ帰るという生への渇望が同時に存在していたのだ。その生きたいと強く願う信号を受け取りリピアーを救出したゾーフィはゼットンを倒した人類の勇気と知恵、そして生命力に敬意を表し、裁定を撤回し人類を残置すると決定した。

役目を終えたリピアーは光の星への帰還を促されるが、それは共存している神永の死を意味していた。


「ゾーフィ、私は1人の人間と共存している。彼の命を維持するために、私は地球に残る」

ゾーフィ「…ウルトラマン、自分を犠牲にする行為に至るまで、君は彼の心を理解した。彼も君のことを理解している。きっと許してくれるだろう」


神永と融合し人間を理解しようとしたが、何もわからないのが人間だと思うようになったリピアーは、人間となって人間をもっと知りたいと願うようになっていた。

また、近い将来にゼットンを倒した戦闘能力に危機感を持った外星人が地球に現れ続けるようになったとき、まだ幼い人間が生き延びる可能性をわずかでも高めるために地球に残りたいと言う。

しかし、ゾーフィは地球人類の粛清こそ撤回したものの、リピアーの処罰までは撤回しなかった。生きて光の星に帰り、掟を破った責任を果たすべきだと説得する。


シン・ウルトラマン


リピアーは、それならば自分の命を神永に渡し、自分の体は未来の人間に任せたいと言う。

死んでも構わないのか、と問われたリピアーは、人間になることは死を受け入れることだと答える。人間になり人間をもっと知りたいと思い始めたときから、リピアーは死を受け入れていた。

短い命だからこそ、神永には生き続けてほしい。

神永の帰還を願う相棒や仲間たちに応えたい。

それが、リピアーの願いだった。


ゾーフィ「ウルトラマン、そんなに人間が好きになったのか。わかった。君の願いをかなえよう」

「ありがとう。ゾーフィ」


ゾーフィは、なぜリピアーが掟に背き、勝てないと分かっていながら人間のために命をかけたのかを理解した。彼は心から人間を愛するようになっていたのだ。

光の星の掟に忠実な裁定者は、リピアーの願いを聞き入れた。

最期の願いを叶えられ、リピアーは感謝を告げる。


ゾーフィ「では、神永と君の体を分離するぞ」


ゾーフィのベーターカプセルがリピアーに向けられ、点火ボタンが押される。

体表ラインが赤から銀色に戻り、リピアーと神永は分離する。


そしてーー


田村「神永…!」

滝「神永さん…!」

船縁「神永さん!」

浅見「……おかえりなさい」


神永新二はリピアーの命を与えられ生還し、禍特対の仲間たちに迎えられた。




ー今に枯れる花が最後に僕へと語りかけた。

「姿見えなくとも遙か先で見守ってる」と


君が望むなら

それは強く応えてくれるのだ

今は全てに恐れるな

痛みを知るただ一人であれ



微かに笑え あの星のように


痛みを知る  ただ一人であれ


痛みを知るただ一人であれ



余談編集

  • 名前は語源にルーツを持たない言葉を意図して付けられており、由来はない。脚本段階では別の名前が設定されていた。
    • 上記のことが明かされるまでは、ヒメイワダレソウの別名リピア(リッピア)が由来との予想もあった。この花は繁殖力が非常に強く、既存の生態系に極めて重大な悪影響を及ぼす重点対策外来種とされる一方、その生命力から雑草避けにもなる庭の守護者という二面性を持つ。ちなみに花言葉は「」「誠実」「私を理解してください」。


  • 戦闘中に「ヘアッ!」や「シュワッチ!」といった掛け声を一切発しない。掛け声が付けられないのは過去作のウルトラマンが客演した際にはしばしば見られた演出であるが、主役ウルトラマンにこういった措置が取られるのはかなり珍しく、他の例はせいぜい原語版のウルトラマンパワードくらいである。ただし、『シン・ウルトラファイト』では初代ウルトラマンと同じ掛け声を発している(『ウルトラファイト』のウルトラセブンは初代ウルトラマンの掛け声だったので、それを意識したものと思われる)。

  • 初期の段階では体表のラインは青であり、エネルギーを消耗すると人類と一体化していない状態では紫、一体化した状態では赤く変色するという、カラータイマーの機能を全身で表現したものになる予定だった。しかし樋口監督から「ウルトラマンタイプチェンジ等ですでにやっている」という指摘を受け、緑になったという経緯がある。そこから更に「ウルトラマンはやはり赤のイメージが強い」ということで、赤から緑に変化することに落ち着いた。
    • ちなみに、初代ウルトラマンも企画段階では宇宙をイメージした青いカラーリングだったが、背景の青空と被ってしまうため却下されたという経緯がある。
    • スタジオカラーのTwitterによると、体色が神永との同化前が銀色なのは、検討用に作られた銀色の雛形を見た庵野氏が「これはこれでカッコいい!」と感じたため。
    • リピアー以前のウルトラマンに緑色が存在しなかった理由はグリーンバックスクリーンと色が重なってしまうため。ウルトラマンサーガは当初は緑色を入れる予定だったが、前述の理由により没となった経緯がある。同様の理由でブルーバックスクリーンを使用していた頃は青いウルトラマンは存在できなかった。その為、リピアーは一時的とはいえウルトラシリーズで初となる本格的な緑色のウルトラマンとも言える(ウルトラマンの仲間である緑色の戦士や、緑色の鎧を纏って戦うウルトラマンはいる)。

  • 一部の児童書には原典のウルトラマンの趣味が『読書』とある。スマホやパソコン等の情報機器が多数ある中、あえて本を選んで読み漁っていたのはこの設定を反映したからともとれる。

  • 劇中ではこの名はゾーフィが神永(と融合したリピアー)に最初に呼びかけた一回のみ登場する。以降はゾーフィ自身も地球での呼び方に倣って彼のことを「ウルトラマン」と呼び、リピアーとは呼ばない。
    • 逆に視聴者からは初代ウルトラマンや区分としてのウルトラマンと区別するため、ネタバレありの場では「リピアー」と呼ばれることも多い。
  • 歴代のウルトラヒーローは、地球人と融合することで新たな能力を獲得する、技の威力が増す戦士が多く、さらに活動制限のデメリットを回避できるなど多くの場合でメリットがあるパターンが多いが、リピアーの場合は神永と融合したことで消耗が激しくなるというマイナスの描写が描かれた。
  • ウルトラマンが国民的人気な中国で現在も稼働中のウルトラマンフュージョンファイト!にも参戦している。必殺ワザはスペシウム133。

関連タグ編集

シン・ウルトラマン 巨大人型生物ウルトラマン(仮称)


初代ウルトラマン:原典に当たるウルトラ戦士。リピアーと同じように「ウルトラマンは神ではない」という考えの持ち主。


ウルトラセブン:TVシリーズの続編平成ウルトラセブンではリピアーと同じく人間の素晴らしさや可能性を信じ、同胞と敵対する事になっても最後まで『人間』側に着く事を選んだ。


ウルトラマンジャック:地球に来た当初は透明だったが、人間と融合することで鮮明な姿となったウルトラ戦士。


ウルトラマンネオス: 台湾のバンド「Mayday」の楽曲「Life of Planet(少年他的奇幻漂流)」のミュージックビデオにおいて、エネルギーを使い果たしたネオスの体表ラインの色が赤からグレー(黒?)に変色する場面がある。なお、カラータイマー点滅中は従来の赤いラインのまま。


ウルトラマンコスモス:上記の通り、高橋氏がゲスト出演している。初代ウルトラマンそっくりの顔を持ち、同じく花の名前を持つなど、地味に共通点が多い。また、赤の入らないウルトラマンでは唯一の主人公であり、メインカラーは没になった青色である。


ウルトラマン・ザ・ネクスト人間と融合することで身体的な変化が現れた戦士繋がり。初代ウルトラマンをリビルドした作品繋がりでもある。この戦士も当初は銀色の姿だったが後に赤いラインの姿へと変化している。


ウルトラマンメビウス:正体がバレた後も、仲間たちと絆を育み共に戦った戦士繋がり。

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