概要
公安調査庁とは破壊活動防止法、団体規制法などに基づき、公共の安全の確保を図ることを目的として設置された行政機関の一つである。日本語略称には、公安庁、公調、公庁がある。
法務省の外局の一つであり、様々な団体に対して暴力的破壊活動や無差別大量殺人を行った法律的に規制すべき団体であるかどうかの調査を行う。また調査結果の分析を経て政府への情報提供や処分請求も行っている。要は、日本政府の諜報機関である。
権限
主な活動方法はヒューミントである。すなわち、監視・尾行に加えて団体内部に協力者、つまりはスパイを置いて情報を収集する事が出来る。しかし、公安警察の行うような逮捕・捜査差押えなどの権限は持たない。これは英国のMI5(内務省保安局)やドイツの連邦憲法擁護庁のような他国の情報機関と共通する。
ただし、法的には一定の強制力が付与されている。団体規制法第7条に基づく公安調査官による対象団体への立入や検査について拒み、妨げ、又は忌避した者には、同法第39条に1年以下の懲役刑又は50万円以下の罰金刑が規定されている。
歴史
公安調査庁の創設には、特別高等警察や陸軍中野学校のような戦前情報機関の関係者が関与している。破壊活動防止法の制定は当時武装闘争路線を歩んでいた日本共産党への対処が主に想定されていた。それ故に、今でも日本共産党や左翼だけをスパイする機関とみなされることもある。しかしオウム真理教の破壊活動を当時の村山富市首相(社会党)に報告し、村山内閣によるオウム関係者一斉逮捕に貢献するなど、活動範囲は対左翼に留まらない。
調査対象
現在の調査対象としては日本共産党や新左翼などの左翼、オウム真理教系団体、行動する保守などの右翼、朝鮮総連、さらには中国やロシア、中東のテロリズム情勢まで「内外情勢の回顧と展望」という報告書に記載している。
さらには労働組合や反戦運動、市民オンブズマンのような行政監視市民団体、アムネスティなどの人権団体、ジャーナリズム団体などからも一部対象を選んで調査しているとされる。ボランティア活動に勤しむスパイというのも平和で結構だが、くれぐれも権限を悪用しないようにしてほしいものではある。