概要
『ウルトラマンブレーザー』に登場する謎のキーワード。
地球防衛隊の最重要機密事項でもあり、劇中では詳細について探ろうとしたエミ隊員に対して、ハルノ参謀長が「無闇に詮索すると身に危険が及ぶ」「SKaRDの存続に関わる」と度々警告しているほど。
各話における扱い
第4話
エミがノヴァイオ社の社長室奥に隠されていたGGFの機密資料(防衛隊OBにしてノヴァイオ社の社長である曽根崎浩が密かに持ち出したもの)に触れた際、資料内にレヴィーラの元になった宇宙生物のイラストと共に確認されたのが初出。
しかし、この時は画面に一瞬名前が出てきただけでフェードアウトしてしまい、特に大きく取り上げられなかった(後述のエピソードでも、エミはこの時V99の名前を目にした経緯を特に言及していないため、彼女自身も資料にV99の記載に気づかなかったと思われる)。
第14話
バザンガ・ゲバルガの2体の宇宙怪獣や、1999年に飛来した謎の隕石に関係しているらしい状況や、防衛隊が防衛隊日本支部元長官のドバシ・ユウの管理の下、岐阜県の宇宙装備研究所第66実験施設にて、V99に関する何らかの研究を行っていた過去が判明した。
この実験施設は2020年に謎の爆発事故が発生し、事件が沈静化して以降は厳重に封鎖されている(施設をシェルターのようなもので覆っているだけでなく、武装した警備員を配置する等して、外部から立ち入りができないよう徹底した対策を取っている)。
尚、この事故でエミ隊員の父親である蒼辺樹を含む、多くの研究員が消息不明となった(更に、報告書では確認できるだけで3名の死亡が確認されている。あくまで報告書が書かれた時点での死者数なので、その後怪我の重症化や後遺症も加えれば、更に多くの人が死亡した可能性もある)。また、劇中で度々語られてきたゲント隊長が3年前に爆心地に突入して多くの命を救い、その際にウルトラマンブレーザーと一体化した事件はこの爆発事故を指していた事実も判明する。
同話において、エミ隊員はV99について「バザンガやゲバルガを地球に送り込んできた敵対勢力」と推察しているが、当のドバシは「いい線行っているなぁ……」「まあ、好きに調べたまえ。君は優秀だから真実に辿り着くだろう」とはぐらかすような反応に終始しており、その詳細を語ろうとはしなかった。
第19話
樹と共に研究に携わっていた西崎勉から、あの実験施設で何があったのかが語られる。
以下、物語の核心に触れるネタバレの為閲覧注意
警告! 第19話「光と炎」をまだ見ていない人は直ちに引き返しを推奨する! 繰り返す! 第19話「光と炎」をまだ見ていない人は直ちに引き返しを推奨する!!
西崎によれば、
「アメリカから運ばれてきたというワームホール発生装置の復元が行われていたようで、復元には成功したものの制御不能となり、爆心地にいた樹を含む何人もの研究者がワームホールに飲み込まれてしまった」
らしく、それを語った西崎はエミ隊員に「樹から受け取った」ロケットペンダントを彼女に託す。
ペンダントには生まれたばかりのエミの写真と共に、ある金庫を開ける鍵が隠されており、これを見つけたエミ隊員とゲント隊長は中身を確認すると、そこに入っていたのは樹が書き遺した手記で、V99に関する詳細が記されていた。以下、その内容を抜粋する。
9月8日 |
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明日は遂に人類初のワームホール発生実験である。これによって1999年にやってきた地球外生命体、すなわちV99の目的が判明することを祈っている。彼らが残した装置の復元に携わった我々研究チームは、その科学力が地球人と比べものにならない事は知り尽くしている。もし再び彼らがやってきたら、私は彼らと対話をしてみたい。彼らの文化、彼ら自身の事を私は知りたい。明日の実験が、人類にとって大きな一歩となることを信じている。 |
V99とは1999年に地球に飛来した地球外生命体であることが判明。“V”も“Visitor”の頭文字であった。
ワームホール発生装置も彼らによってもたらされたという。
2人はさらにこれを読み進めようとするも、そこにドバシが現れ手記を奪われてしまった。
また、これらの内容はSKaRD内でもゲントとエミが極秘でV99案件を調べてたが23話で、遂に他の隊員達に情報が共有された。
第25話
地球にヴァラロンが飛来すると同時に、V99の艦隊が地球の軌道上に出現。これに対しドバシはこれを「フォース・ウェイブ」とし作戦本部から迎撃命令を世界中に下すも、そこにハルノと彼によって拘束を解かれたエミが現れ、手記に書き遺された更なる真実について語り始める。
1999年に防衛隊が破壊したとされる隕石の正体は、V99の搭乗していた宇宙船であり、その残骸からは武装や兵器の類は一切確認されなかったのだ。
この事実から最初からV99に侵略の意思はなかった旨が読み取れる(尚、この時破壊を命令したのが当時日本支部長官を務めていたドバシ・ユウであった)。
そして、このV99の技術を使って作られたものこそが、件のワームホール発生装置とアースガロンだったのである。
アースガロンがV99の技術で作られた事実から、V99との対話が可能であると同時に判明し、アースガロンはV99の艦隊に対し信号を発信する。そして彼らの意思を断片的に読み取りに成功する。
《仲間、武器、光の星、新天地、旅、青い星、危険、恐怖、恐怖、恐怖……》
このメッセージから、V99は一部の同胞達が新天地を求めて旅をしていた所を脅威と誤解されてしまい、訳もわからず攻撃されて多くの犠牲を生んだのを受け、地球は『危険な星である』との恐怖から宇宙怪獣を送り込んでいた真実が判明した。要は、宇宙怪獣を送り込んでいたのは、攻撃を仕掛けてきた地球への防御反応に過ぎなかったのである。
真実を知るとアースガロンは武装を解除し、V99との対話を試みる。それに呼応するようにブレーザーや各国の防衛隊支部も同じく、攻撃準備を中止する。
当初、V99は対話に応じる姿勢を見せなかったものの、エミの提案でアースガロンがただ一言「未来」と伝えると、V99の艦隊はこちらの意思を汲み取ったように同じく「未来」と返し、ワームホールを通り地球から撤退(……が、しなかったのか、したくてもできなかったのかは不明ながら、ヴァラロンは回収していかなかった)、これにより地球とV99との全面戦争の最悪の事態はギリギリのところで回避された。
関連用語および怪獣
ファースト・ウェイブ
第1話での宇宙甲殻怪獣バザンガの襲来に対し付けられた呼称。
地上破壊と対空砲火を兼ねた破壊活動が展開された。
上記の顛末から、その意味はV99の同胞による報復行為としての第1波であった。
セカンド・ウェイブ
第11話での宇宙電磁怪獣ゲバルガの襲来に対し付けられた呼称。
電磁波によるネットワーク汚染を主とする破壊工作が行われた。
また、第18話でこの個体が生み落としたと思われる汚染獣イルーゴの大量発生と、第19話の宇宙汚染超獣ブルードゲバルガの出現もセカンド・ウェイブの一環としてまとめられている。
こちらでは大気汚染を主とする破壊工作が行われた。
サード・ウェイブ
第23話で同軌道上で発見された宇宙爆弾怪獣ヴァラロンを乗せた隕石の接近に対し付けられた呼称。
地球からのタガヌラーの砲撃により月に墜落する形で地球接近は一旦は回避されたが、健在だったヴァラロンは有機爆弾の連続爆破によって、月の軌道変更を引き起こし地球に衝突させる作戦に転じた。
最終的にブレーザーによって月軌道は修正されたものの、強化形態となったヴァラロンは最後の爆発の余波と破片を利用して地球へ飛来し、地上破壊活動を展開した。
フォース・ウェイブ
地球に降り立ったヴァラロンによる破壊活動から間もなく、同軌道上にV99艦隊が出現した事態に対し付けられた呼称。
顛末は第25話の記述の通り。
残された謎
- ブレーザーとの関係
放送時は「ブレーザーやファードラン等のM421の生命体とも何か関係があるのではないか?」などの考察もあったが、劇中では特に関係性つについては明かされなかった。
状況から考えて「地球人が再現したワームホール発生装置が暴走した際に、たまたまM421と地球が結ばれてしまっただけで、V99は直接的にはM421とは関係がなかったのではないか?」とする見方がある一方で、地球との対話の際に「光の星」の意味深なフレーズを述べている点から、「(M421を指しているかは不明なものの)ウルトラマンと何かしら関係がある種族だったのではないか?」とする考察もある。ちなみに、ある宇宙には、実際に天体の名称に「光の星」が出てくるが?……
しかし、第1話の時点で「宇宙飛行士の間で『ウルトラマンが都市伝説的な存在』として語られていた(=ウルトラマンが以前にも地球の周辺に度々姿を現していた)」経緯が明かされており、これが事実だとすれば「V99が地球に姿を現したのは、ウルトラマンと接触するためだったのではないか?」との考察も成り立つ。
- 本当に防衛だけが目的だったのか?
ファンの間では彼らが送り込んできた宇宙怪獣の戦闘力や攻撃性の高さから、「地球への防御反応」とする彼らの言い分を疑問視する意見も多い。特にゲバルガ種族は「ネットワーク汚染並びに大気の改造」と文明を機能停止させた挙句、惑星の環境を都合の良いように変質させるのを念頭に置かれた性能をしていた実態から、「あわよくば地球を制圧し、自分達の第2の母星にする計画も併せていたのではないか?」とする見方もある。
だが、地球に攻撃する意思がないとを知るや否や、あっさりと手を引いてもいるため「あくまでただの報復や嫌がらせだっただけ」とする反論もある。
いずれにせよ、V99とは断片的なコンタクトしか取れていないため、彼らの目的や真意については図りかねる部分も多い。確実なのは「攻撃的でこそないが、地球人には理解しがたいような一面も持った種族」であろう。
- どのような姿をしていたのか?
全編を通してV99の詳細な姿は回想も含めて劇中でははっきり明示されておらず、この点も彼らの不可解さや不気味さに拍車をかけている。
蒼辺樹の残した手記には彼ら或いはその宇宙船の特徴について、地球の生物と比較すると最もセミが近いとの記述があり、また言語には膨らみのあるハサミ状の文字が他の文字を囲むように確認でき、新天地を目指し宇宙を旅する流浪の民である事実を含め、視聴者から「バルタン星人を想起させる」との意見が多い。
バルタン星人は、特に初登場時は人間との相互理解が不可能な存在として描写されていたが、『コスモス』や『マックス』のように人間と和解し、友好的な関係を結べた事例も存在するため、人間の提示した「未来」の言葉に共感した劇中の描写も強ち不自然なわけではない。
しかし、当然ではあるがこれらはあくまで視聴者の考察であり、V99=バルタン星人と公式サイドが発表したわけではない。バルタン星人ではなく、それと限りなく近い容姿をした別の知的生命体であった可能性もないわけではないのだ(実際、セミと酷似した知的生命体に関しては前例がある)。
余談
過去作の『ウルトラマンメビウス』の第16話にも同名の〈V99〉が存在するが、恐らく無関係だろう。ただし、同回に登場した人物は後に『ブレーザー』本編の第17話で存在が示唆されている。
V99の宇宙船が飛来した1999年は、現実世界では『ウルトラマンガイア』が放送されていた頃の時代だが、かのノストラダムスの大予言の年でもあった。
ファンからは「そもそもドバシがV99の宇宙船を撃墜しなければ、今回の事件は起こらなかったのではないか?」との意見があるが、当時の技術では恐らく地球に接近する物体に敵意がないと気付くことはできなかったと思われる。地球に得体の知れない物体が接近してきたのであれば、撃墜に打って出るのも防衛の観点から当然の対応である(この辺りは、国籍不明の飛行機が領空を侵犯してきた場合を考えれば想像がつきやすいだろう)。
むしろ、地球側に何の断りもなく不用意に地球に接近してきたV99の側にも落ち度はあった一方で「それで一方的に危険な文明扱いされた挙句、報復紛いまでされたのはいくら何でも理不尽ではないか」とする意見もあるが、現実でも些細な事件が原因で戦争に発展したケースは何度もある。
田口監督も最終回後のインタビュー記事で現実では「様々なしがらみや歴史的背景も絡んできたりするけど、それを分かりやすく、寺田農さん(演じるドバシ)に全て背負ってもらい、撃たなくてもいい相手を撃ってしまったばかりに争いが起きてしまった、という展開にしました。そうしたことはどこでも起こり得ることだと思うんです。たとえば『あの時、ついキツイ言い方をしてしまったせいで、こんな大喧嘩になってしまってもう謝れない』とか。よりミニマムに考えたら子供にだってあることはないでしょうか。結局のところ対立とは、そうした行き違いにあると思うんです。あとは、意地を張り通すのか、『ごめんなさい』と謝るのか、相手の考えを受け入れるのか。それで展開、結末は大きく変わるわけですよね」と話しており、ブレーザーの話の根底にあったコミュニケーションが足りなかったからと話している。
その一方でV99が被害者でもあり加害者でもありヴィランとは言い難い面について本作は人間関係に特化させたドラマにさせるためにあえてヴィランじゃない立場にした旨の発言もしている(引用元:シネマトゥディインタビュー記事)。
V99艦隊の船のプロップはグリーザ・第3形態の背中の棘と、吸引怪獣プラーナを流用して作られたと思われる(ちなみに、プラーナのプロップもグリーザ・第1形態へと流用されている)。『フィギュア王』で公開された上から見た写真だと中央がバルタン星人の顔の様な形となっている。
関連項目
異次元壊滅兵器D4:田口清隆監督がメインの作品に登場した兵器。後半のキーパーソンになっているのも共通。
根源的破滅招来体:『ウルトラマンガイア』において怪獣や尖兵を送り込んでいた似たような存在。
来訪者(ウルトラマンネクサス):本編開始前に地球へ飛来していた異星人。こちらは完全な味方側だった。
宇宙浮遊物体スフィア/バズド星人アガムス→V99→???