概要
『ウルトラマンブレーザー』第14話「月下の記憶」にて初登場。
「デルタ(△)」の名の通り、まるでステルス機(全翼機)のような三角形のシルエットをした飛行怪獣。
漆黒の体と頭部や腹部、翼の末端にある満月のような円形の青白い発光体が特徴。
こんな奇抜な姿だが(むしろ見た目通り?)重力を制御することで空中をマッハ9で飛行し、1万キロの距離を30分で飛行するという驚異的な飛行速度を持ち、さらに大気圏を自力で突破できる上、空気抵抗のない宇宙空間ではそれ以上の速度で飛行可能。
また、飛行時は折り畳まれていて分かりづらいが、翼とは別に小さく細い虫のような腕と、鳥のような後脚が存在する。
この抜群の飛行能力を生み出しているのは身体の各部に内蔵された翼の発光部。この発光器官から粒子を放出することで爆発的な推進力と重力制御能力を両立している。
なお、名前に「月光」と付いてはいるが、後述するように別にデルタンダルの生態そのものには月は一切関係なかったりもする。強いて挙げれば発光体が月の光のように見える点や、主に夜間に活動している点ぐらいだろうか。(ただ、日中でも活動できるうえ、劇中では日中に活動していた個体の方が多いが。)
当初、GGF上層部の中ではバザンガ、ゲバルガに次ぐ第三の宇宙怪獣にして、V99絡みの「サード・ウェイブ」に相当する存在なのではと推測されていた……のだが、実はこの見た目でも正真正銘の地球怪獣の一種であることが調査で判明している。
能力・生態
マッハ9もの超高速で身を隠すための巣となる積乱雲を転々として回るという生態を持ち、劇中ではアースガロンなども意に介すことなく飛行し続けていた。
なお、劇中では脱皮することが判明しており、地上に抜け殻が発見され、SKaRDに回収されている(この抜け殻のDNA情報などから地球怪獣であると判明した)。
この抜け殻は崖崩れの中から発見されていることから、休眠状態(もしくは産まれてしばらく?)では地中に潜んでいたと示唆されている。
後に超巨大な別個体が登場したことから、種族としてはかなり大きく成長する模様。
劇中でのデルタンダルは、基本的に空中で少なくとも2週間以上に渡って活動を起こしていたため、一度飛び立つとほぼ地上に降りることはないようである。
その一方で二度目の超巨大個体の出現時には、海域から目覚めて出現し、海中で身を隠して休息を取るなどの行動から、元はエイやトビウオのような空を飛ぶ海洋生物が先祖、或いは海に関係する怪獣であることが示唆されている。
当然その飛行能力に生半可なスピードでの対応は不可能に近く、マッハ4かつ現場に到達するための飛行能力しか持たないアースガロンでは全く追い付くことすらできなかった。
もちろん飛行の際に生じる衝撃波や衝撃音もかなりのものであり、通過した近隣の家の窓ガラスが衝撃波で割れるばかりか、地球防衛隊の哨戒機や人工衛星すらも破壊する大被害を引き起こし、アースガロンも管制システムを損傷してピンチに陥っている(アースガロンは衝撃を軽減していてこれだけの損害を出しており、まともに喰らっていれば大破していた恐れもあった)。
戦闘になると、胸の発光体から時間差で大爆発する青い光弾「デルタンダル月光弾」を発射する他、後方からの敵には威力そのものは多少劣るがフレアのように連発できる光弾を放ち、敵を牽制・迎撃する。自分を攻撃したアースガロンの空路を記憶し敵の排除のために基地を攻撃しようとするなど、それなりの知性も存在する。
常に空中や海中で暮らす彼らが一体何を餌にしていたのかは不明(デルタンダルBが海中を拠点にしていたことから、ゲント隊長は「海の幸で腹ごしらえか」と肉食性であることを推測していた)だが、恐らく狩りや外敵への迎撃手段として使っていると思われる。
この月光弾の威力は個体ごとに多少バラ付きがあるらしく、光弾を発射する戦闘機タイプの個体は「Fighter」という意味で「デルタンダルF」、爆撃機タイプの個体は後述する「デルタンダルB」と呼ばれる。
宇宙空間をも移動できる超高スピードでの飛行能力故か、外皮の防御力もかなり高く、何気に劇中では初めてあのレインボー光輪が直撃しても致命傷にならなかった怪獣でもある(つまり、単純な装甲の頑強さはニジカガチ以上ということになる)。
※後に第23話に出現した個体はレインボー光輪で真っ二つにされていたため第14話の個体は刃自体は直撃していなかったか、特に装甲が堅かった個体だった可能性が浮かんでいる。
デルタンダルF
DATA
第14話「月下の記憶」に登場した、劇中で初めて姿を見せた個体。
この個体は劇中では単に「デルタンダル」として呼ばれるだけであったが、後の別個体と区別を付けるために爆撃機に対する戦闘機=「Fighter」になぞらえ、「デルタンダルF」という名義に変わった様子。なお、ウルトラシリーズでは基本的に個体を区別する際は後に出現した個体が○代目などの名義になるため、先に出現していた個体の名義が変わるのは非常に珍しいことである。
劇中での活動
ゲバルガの掃討からしばらく日が経ってから地中より出現し、世界中を飛び回って活動するようになる。
当初は飛行時の衝撃波で家屋のガラスを割る程度の被害で済んでおり、防衛隊も監視するに留めていたようだが、8月23日に警戒中の哨戒機を撃墜したことで、遂に防衛隊は臨戦態勢に突入。
8月24日、出動したアースガロンと日本海上空で激突するが、アースガロンは空中戦を想定した設計ではなかったためにデルタンダルの動きを捕らえることができず、燃料も底を突きかけたためにSKaRDはこれ以上の追跡を断念し帰投を決断、結果取り逃がしてしまう。
8月25日、根城にしていた積乱雲が消滅したために新たな積乱雲に侵入したところを、待ち構えていたアースガロンの多目的レーザーによる狙撃を受け、これに炙り出される形で再び出現。
アースガロンのアースガン掃射をものともせず、逆に衝撃波で管制システムを破損させ、自動照準と誘導弾を使用不可の状況に追い込むが、ヤスノブ隊員がこんなこともあろうかと用意していたテイルVLSに有線誘導による極超音速誘導弾に被弾したため、動きが鈍ってしまう。
さらに追って現れたウルトラマンブレーザーのレインボー光輪の直撃にも耐え抜き、空中で熾烈な取っ組み合いを繰り広げるが、チルソナイトソードによるイナズマスラッシュを至近距離で受けて弾き飛ばされた隙にデルタンダル月光弾とライデンズフィニッシュの撃ち合いで威力負けし、爆散した。
第17話「さすらいのザンギル」では、ザンギルの持つ顕現石の力で実体化した彷徨える霊の1体として再出現し、モニター内の映像に一瞬だけ登場した。
第23話「ヴィジター99」にも登場。
劇中ではFの個体が二体で小笠原諸島周辺を移動しており、一体はアースガロンMod.3の誘導弾で弱った所をレインボー光輪で両断、もう一体は大気圏外に逃走したがその後もブレーザーに撃破されたことが明かされている。何故かこの時期にはデルタンダルが大量に出現しており、この月だけで5体も現れていたらしく…?
最終話「地球を抱くものたち」にも登場。
複数で現れ、他の怪獣達と同様にヴァラロンが設置した有機爆弾を捕食することで処理していた。その内の一体が地上に降りている。
デルタンダルB
DATA
別名 | 月光怪獣 |
---|---|
身長 | 300m |
体重 | 8万4千t |
出身地 | 豆鳥岬から東2500Kmの沖合 |
スーツアクター | 永地悠斗 |
第21話「天空の激戦」に登場した別個体。
以前撃破されたデルタンダルの約6倍の体長を誇る巨体の持ち主であり、当然その大きさの分攻撃力は以前の比ではない。雲海の上を飛行艇の如く悠然と飛行し、腹部の球体部から月光弾を爆撃機のように投下・発射する様から、テルアキ副隊長から「Bomber」の意を込めて「デルタンダルB」と呼称された。
また、「自分を攻撃した者の住処、または巣(この場合、電磁波兵器を投下した機体とアースガロン)を飛行ルートから逆算して攻撃する」という習性があり、劇中ではアースガロンの飛行ルートからSKaRD CPのある教江野基地を目指していた。
劇中での活動
12月4日、GGFが対宇宙怪獣を想定して行った電磁波兵器の実験で覚醒し、実験を行った海域から出現。兵器を搭載した機体が出撃した磯竹基地を爆撃した。
これに対処すべく、アンリ隊員の操縦(とEGOISSのサポート)でアースガロンMod.3が出動。心臓部や関節部分を狙撃されるも命中せず、逆に月光弾で返り討ちにし、(ゲント曰く「腹ごしらえ」のために)一時海中へと姿を消す。
その後、教江野基地を目指して再出現。ヤスノブ隊員も搭乗し出撃したアースガロンとのリベンジ戦でも激しい空中戦を繰り広げ、その巨体と持ち前のスピードで優位に立ち回り続ける。
続けて現れたブレーザーにはチルソファードランサーで月光弾を撃ち落とされるも、以前の個体よりも硬い表皮によりファードランアーマーのチルソファード炎竜射にも耐え抜くタフさを見せたが、電撃で動きが鈍った隙にアースファイアで関節部分を攻撃されてダメージを受ける。
反撃で巨大な月光弾を発射する準備に入るが、エネルギーを溜めている際に体内の光弾発生器官を破壊すると地上にも被害が及ぶ程の大爆発を起こしかねないことから、ブレーザーによって大気圏外まで移動させられた後、アースファイアで心臓部を撃ち抜かれて致命傷を負う。
それでもアースガロンを道連れにせんと突進を試みたが、最期は接触寸前にブレーザーのチルソファード炎雷斬により体を真っ二つに両断され、大気圏外で爆発四散した。
余談
- 放送前のプレミア発表会にて登場していたが、この時点では名前はまだ明かされていなかった。また、プレミア発表会の時は下半身の無いまるで置物のような形で登場したため、プリズ魔などのような置物型の怪獣と思っていたファンも多く、本編で実際の姿を見た視聴者からは驚きの声が上がった。
- 劇中描写やデザインを担当した楠健吾(クスノキケンゴ)氏のポストからデルタンダルの造形物は、顔などのアップのシーンで用いる上半身だけのギニョールと、全身を映す際に用いる飛び人形の2種類が使われており、飛び人形を用いた空中戦の撮影ではマリオネーションと呼ばれる操演の新たな仕掛けを用いている。これにより本編でも見せた監督の思い描いた通りに飛び人形を使えるようになった。
- また楠氏によると、デザインコンセプトは「今様の円盤生物」であり、1990年にベルギーで目撃されたデルタ型UFOをモチーフとしている。とはいえ、それでは今更そう驚かれないだろうからと、「いかにも宇宙怪獣な見た目で実は純然たる地球の原住生物」という設定を加えたらしい。
- 第14話でのチルソナイトソードを装備したブレーザーとの戦闘シーンは、田口監督回ではお馴染みの長回しワンカットで撮られており、特撮助監督の内田氏によると、「デルタンダルの造形は田口監督の中では長回しワンカットの構想があったため、造形含めて合成主体とするのを前提とした作りとなっており、顔と腕を動かすのに実際には3人のアクターを必要としたため、大変だった」と語っている。
- 空中戦はワイヤーアクションや操演(場合によってはCGも)など、複雑な仕掛けを伴うことから撮影が大変であるため敬遠されがちで、それ故ウルトラマンと怪獣の空中戦は短時間で、大抵の場合ウルトラマンと怪獣のどちらかが撃墜されて、それ以降は地上戦に移行するという流れになることが多かった(第2話や第6話で撮られたプール特撮も同様に、スタジオにブルーシートを敷いてそこから水を入れるのに時間(カットによっては入れ終わるのに約1時間)を要するため敬遠されている)。
- しかし第14話のデルタンダルとの戦闘シーンは、ウルトラシリーズでも非常に珍しい、一度も誰も地上に降りることなく空中戦のみで片が付けられるという異例の展開となった。脚本担当の小柳氏は、「脚本打ち合わせの時「怪獣地上に降りないなー」と田口監督に言われて「あっ!」となりましたが、すんばらしい空中戦にして頂けました!」と述べており、打ち合わせの段階までこのことに気付かなかったようである(後のインタビューでは田口監督は良い意味で捉えて、撮影に望んだとのこと)。同様に、21話でも戦闘は空中戦のみで誰も地上に降りていない。
- 一方、一瞬だけ再登場した第17話では、単純な操演で演出が為されている。
- 視聴者からは劇中の出現時期から宇宙怪獣に対する迎撃や偵察のために出現していたのではないかと考察されている。
関連項目
アマツバメ:現実に存在する動物。デルタンダル同様、生涯のほとんどを飛び続ける鳥類である。中でもハリオアマツバメは飛行速度に優れ、ハヤブサをも追い抜く鳥類最速の飛行能力を持つ。
ウルトラシリーズ
ズグガン:後に登場した、デルタンダルと同じく純粋な地球出身とは思えないような外見をしたブレーザー怪獣。
ガマクジラ、バレバドン、ダイオリウス:空中戦を繰り広げたウルトラ怪獣繋がり。こちらは両者が終始空中戦だった事も共通する(ガマクジラは明らかに場所違いな気もするが…)。
マザーケルビム:3年前の作品にて、デルタンダルBと同じく第21話に登場した超巨大怪獣。この回を担当したのも同じ武居監督である。
他作品
ラドン:飛行に伴う衝撃波で被害を出す怪獣繋がり。
ギャオス:夜行性の飛行怪獣繋がり。平成版は顔付きもデルタンダルと似ている。
イリス:満月の夜の高空という、戦闘シーンのシチュエーションに類似点が見受けられる怪獣。ちなみに飛行速度も同じマッハ9。
トゲキッス:デルタ翼機のような外見をした、飛翔能力を持つモンスター。こちらも月にちなんだ技を覚えるが、やはり月とは関係がない。