概要
元々は「対潜哨戒機」…つまる所が「敵の艦船、特に潜水艦を探し出し撃退するための航空機」として誕生したものだが、最近では潜水艦の捜索・撃退に限らず様々な任務を行うようになったため「対潜」が外れて単純に「哨戒機」と呼ばれることが多くなった。
対潜水艦能力をオミットされたものもあり、これらは「洋上監視機」と呼ばれる。主に発展途上国の軍や、沿岸警備隊のような準軍事組織で使われる事が多い。
ぶっちゃけると今どきの哨戒機は言わば「海のパトカー」みたいなもんである。敵艦船の捜索・撃退はもちろんのこと、不法入国者の阻止・不審船の捜索及び阻止・麻薬などの違法な薬物の密輸阻止・海賊やテロ組織の取り締まり、洋上での捜索救難活動の支援なども行っている。
また、充実したセンサーを活かして敵国付近で情報収集活動(要するに諜報活動)を行う事もあり、日本を含めた海洋国家では領空に近づいてくる哨戒機に対し戦闘機がスクランブル発進するのはよくある事である。
ちなみに、海で任務を行う事から海軍が運用していると思われがちだが、イギリスのように空軍が運用する事もある。国によっては海軍が艦載機の運用に特化していたり、空軍だけが航空機を保有できたりするケースがあるためである。
(対潜)哨戒機の主な特徴
「潜水艦を始めとした敵艦船を捜索・撃退する」のが第一任務であり、このためにレーダー・センサー系は非常に充実している。
具体的には洋上を探索するためのレーダー、洋上を映すカメラを装備したターレット、海に落として潜水艦を探知するソノブイ、艦船が発する電波を収集・解析するESM(電子戦支援)装置、などなど。
- 電子機器が飛んでいるような飛行機
各種のレーダー・センサーで得られた膨大な情報を処理するため、コンピュータなどの電子機器も高性能なものを多数搭載している。コンピュータが飛んでいるとはよく言ったものである。ぶっちゃけ、「哨戒機の性能は飛行性能よりも電子機器(の拡張性)がモノを言う」ってくらい。さらに自律航法装置や通信機も充実しており、自己完結性が高い航空機でもある。
「敵艦船を捜索する」という任務が主なので、高速で飛行するよりも「低速で長時間滞空可能」という性能が求められる。これらの特性から、旅客機をベースとした哨戒機が開発されることも少なくない。旅客機は『人や荷物をいっぱい積めるスペースがあって、ゆっくりでも長く飛べる』という特性なので哨戒機に転用するには丁度いいのである。
旧日本軍の対潜哨戒機「東海」は、ある意味これの行き着く先と言っていい(巡航速度は130km/h程度に抑え、その代わり滞空時間をむちゃくちゃ長くした)。
但し飛行時間短縮による効率化や敵戦闘機の妨害を考えると、高速性能は決して無駄とはいえない。そのため近年はジェット機の哨戒機も登場し始めている(P-1の開発理由にも、「現行のP-3Cでは敵戦闘機を振り切ることが難しい(そのため4発ターボファンエンジンを採用した)」という側面がある)。
主な哨戒機
- BAeニムロッド:デ・ハビランド コメットをベースとしたイギリスの哨戒機。独特な形状は紳士の国だから仕方がない。
- P-1:日本の純国産哨戒機。実用機で初めてフライ・バイ・ライト(光ファイバーで機体制御を行う)を採用。
- P-2:ロッキード社の哨戒機。プロペラとジェットエンジンを併用しているのが特徴。
- P-3:西側哨戒機のベストセラーの一つ。ロッキードのターボプロップ旅客機、L-188「エレクトラ」がベース。
- P-8:ボーイング737をベースとした、アメリカ軍の次期哨戒機。
- S-3:アメリカ軍の艦上哨戒機。掃除機のようなエンジン音が特徴と言われている。
- SH-60 シーホーク:UH-60を元とした哨戒ヘリコプター。
- Tu-142:Tu-95をベースとした哨戒機。
- フェアリーソードフィッシュ:イギリス軍の艦上哨戒機。複葉機ながら使い勝手がよく、第二次世界大戦の前期でも前線で活躍した。
- フェアリーガネット:艦上哨戒機。世界一醜い航空機という異名を持つ独特な姿と、主翼の折りたたみ方が特徴的。(なんと「三つ折り」にする)そもそも作ったメーカーが毎回色々とアレな飛行機ばかり作っているところだから仕方がない。
- 東海(哨戒機):旧日本軍の哨戒機。ある意味で「哨戒機とは何たるか」の行き着く先と言える機体。前面が若干ドイツ風なのはドイツの急降下爆撃機を参考にしたから。
- 二式大艇:日本軍の大型飛行艇。哨戒任務のみならず、偵察・輸送・爆撃と何でもこなす。さらに重武装・重装甲でも知られており「空中戦艦」と呼ばれて恐れられた。お前のような飛行艇がいるか。
- ショート・サンダーランド:第二次世界大戦で活躍したRAFの大型飛行艇。ドイツのUボートの天敵で、乗員からは「ヤマアラシ」と呼ばれ、怖れられた。