曖昧さ回避
概要
強力な重火器を搭載し、地上兵力の火力支援を行う航空機の総称。
かなり範囲の広い言葉で、どうにか定義するなら「冷戦に入ってから開発された対地攻撃航空機の内、攻撃機、爆撃機と呼ばれないもの」と言ったところか。それでも著者によってはB-17のような、第二次世界大戦頃の銃座付き大型爆撃機をガンシップと呼んでいたりするんでややこしいことこの上ない。
先述の定義からするとCOIN機や攻撃ヘリコプターもガンシップに含まれ、実際そう呼ばれることがある。
これについてはそれぞれの記事を参照していただくとして、ここでは輸送ヘリ・輸送機に武装を施したものについて解説する。
ヘリコプターのガンシップ
先述の通り、輸送ヘリに機関銃、砲、ロケット弾やミサイル等の武装を施したものであり、武装ヘリコプターと呼称されることもある。
理論的にはどんなヘリコプターもガンシップにすることが可能であり、過去にはCH-47輸送ヘリコプターの装甲と火力を強化した『ACH-47』等大型の機体もあったが、現在では小回りが利く中型・小型機が主流。
機体を専用設計した攻撃ヘリと違い、ほとんど機体やエンジンには手を加えないまま武装を搭載している。攻撃ヘリのように回転銃架が搭載されることはほとんどなく、機銃使用時は固定翼機のように上空を通過しながらの掃射となる。
機体がほぼそのままなので防御力・搭載量・火力は攻撃ヘリに比べて劣る。外部搭載物が空力特性に悪影響を与えることもあり、攻撃ヘリどころか原型の輸送ヘリと比較してすら飛行性能が劣ることも。
しかしながら既製品を流用できる分「安価かつ整備・運用の方法も変わらない」「武装を外せば通常の輸送任務にも使用できる」「市街地戦では火力の低さが二次被害を出しにくい点で有利」というのは軍事的には見逃せないメリットであり、攻撃ヘリが普及して以降も脅威度の低い目標への攻撃や特殊作戦に用いられたり、懐事情が厳しい中小国で攻撃ヘリの代わりとして運用されたりしている。
デジタル化が進んだ近年は単に武装を追加するのみに留まらず、攻撃ヘリと同等の電子機器を追加装備する事で攻撃ヘリと遜色ない戦闘能力を持つようになってきており、コストパフォーマンスを重視する国々からの支持を広げつつある。
最初期の利用は1960年代に発生したポルトガルの植民地戦争と言われていて、この際の機体はフランス製のSA 316 アルエットIIIであり、機関銃、空挺強襲作戦において輸送ヘリの護衛に使われた。
ほぼ同時期、ベトナム戦争でもUH-1を原型としたガンシップが運用されているのだが、飛行性能の低下、防御力の不足により損害が大きく、この経験が攻撃ヘリAH-1の開発につながっている。
固定翼機のガンシップ
こちらも輸送機に武装を施したものだが、武装が前方に向かっている武装ヘリと違い、こちらは武装が機体の胴体から突き出して横を向いている。
通常攻撃機や爆撃機は前方ないし下方に向けてしか火力を発揮できず、繰り返し攻撃が必要となると、目標の上空を通過後Uターンして戻ってくる必要がある。
一瞬で敵上空を通過してしまうため攻撃は短時間にとどまってしまい、標的をじっくり探しながら攻撃することも難しい。
これに対し、ガンシップは側面の火器を目標に向け続け、周囲を旋回しながら継続的な火力支援を行う。
大型の輸送機をベースに開発される事が多い。搭載量を活かして数百発の砲弾を積み込み、長時間現場に滞空して攻撃を継続することが可能で、半日に渡って地上部隊を支援し続けたこともある。
こちらも飛行性能や防御性能は据え置きで、その性能から、戦闘機や近代的な防空網に対して弱く、絶対的制空権の確保が可能なアメリカ軍や、軍ではなく麻薬密輸組織と戦う一部の南米諸国程度でしか運用されていなかった。
しかしながら近年、MANPADSの発達によって、そうした制空権の確実性は揺らいでおり(実際一例だが被撃墜が発生している)、射程外からの攻撃を可能にするため誘導爆弾や空対地ミサイルも搭載されている。
その他対テロ任務用として、中・小型機に大口径機関砲を搭載した軽ガンシップを導入する国が現れ始めている。
元々はベトナム戦争で、旧式のC-47輸送機の側面ドアに重火器を据え付け、簡易ガンシップとして運用した事に端を発する。現在では大型輸送機C-130を改装したAC-130シリーズが有名。
関連タグ
空中戦艦:航空機+大砲の組み合わせでより規模が大きい。