概要
リンカーン爆撃機をベースに胴体を新規設計のものに変えた機体。初飛行は1949年3月9日。
「シャクルトン」の名は、探検家のアーネスト・シャクルトンから来ている。
Let's Go 英国面
…とこれだけ書けば哨戒機としては割とよくある話だが、そこはイギリス。
いろいろな意味とポイントでキている。
そう、いろいろな意味で。
まずなんといっても機首部分の外見。
…正直言って説明面倒なのでこの画像を見てほしい。
…これ、飛行機の機首なんだぜ?
機首に搭載された連装砲と、それを操作するためのガンナー席…
この絶妙な配置のお陰でどうみても顔にしか見えません本当にありがとうございました。
そして動力。
ロールス・ロイス グリフォンエンジンを使用し、二重反転プロペラを駆動する。
このグリフォンエンジンが曲者にも程がある。
燃費極悪・整備性最悪・爆音、これだけならまだしも稼働中には独特の高周波音をがなりたて、潜水艦どころかパイロットの耳を"撃沈"してしまう始末。
さらにこの他にも居住性を改善したシャクルトンMk.3はいろいろ装備を詰め込んで重量が増えすぎたお陰でジェットエンジンによるブースターを使って離陸する必要がある(JATO)なんてオチまでついてくる。
尤も、この補助ジェットエンジンの搭載によりグリフォンの離陸出力を抑える事が可能にになったため総合的な整備性はむしろ向上したらしい。どんだけ整備性劣悪なんだよ
しかもこいつ、哨戒機としては1970年代で運用終了したが、その後早期警戒機に改造されて1991年まで現役だった。尾輪式なのに。理由は大体こいつのせい。
この早期警戒型、あくまでニムロッドAEW完成までのつなぎの予定であったためレーダーをフェアリー・ガネットAEWから移植している。のだが、このガネットAEW自体が本命のホーカー・シドレー P.139B((未完)が完成するまでのつなぎとして前任機からレーダー移植を受けた機体なのである。でで、その前任機とは何者かというと、なんとEA-1。つまり、第二次大戦中に開発が始まったしたレーダーを冷戦終結まで使い倒したことになる。
運用
イギリス空軍の他、南アフリカ空軍でも使用された。
南アでは「空飛ぶ10万個のリベット」というアダ名を頂戴していたそうで。
鷲獅子のその後
前述の通りこのシャクルトン、哨戒機型は1970年代まで、AEW型に至っては1991年まで運用された。視点を変えれば、それまで貴重なグリフォンエンジンが可動状態で維持されていた、という事である。
退役後、民間市場に放出されたシャクルトンは大変に重用される…飛行機というより、グリフォンスピットファイアのエンジンドナーとして。現在飛行可能な二重反転スピットファイアのエンジンはだいたいシャクルトンから臓器移植を受けているらしい。
さらには、最高峰の出力を持つ水冷式レシプロ航空エンジンということでP-51に移植したエアレーサーも複数機生まれた(仮にもマーリン系だしね)。最近まで飛行可能であった機に P-51XR「プレシャス・メタル」がある。
このカッコイイモンスターレーサー存在するのも、あの変な顔のシャクルトンが長期間現役だったから…と考えると、世の中分からないものである。
関連イラスト
シャクルトンの原型となったアブロ・リンカーン。