テルアキ「天に数多の虹が輝く時、“それ”は現れる……」
ゲント「ニジカガチ……」
テルアキ「ご存知なんですか?」
ゲント「ああ。……恵みか、災いか……」
DATA
概要
『ウルトラマンブレーザー』第7・8話「虹が出た」前編・後編に登場する怪獣。
岩のような重厚な甲冑を纏ったような容姿をしており、フォルムもオーソドックスな二足歩行型で、かなりの巨体。
体色も灰色をベースに所々赤やオレンジなど毒々しい色合いで彩られており、見る人によっては禍々しく不気味な印象を与える。
一見ウミウシの触角にも酷似したデザインの頭部は、「鎧角」という所謂鎧兜のような開閉式の装甲となっており、普段はその下に素顔を隠している。
鎧角を含む全身の鎧の硬度は高く、防衛隊の誘導弾攻撃やアースガロンのアースガン、アースファイアにも耐える。
ニジカガチが真の顔を見せることは「御目見」と称され、その顔は山羊のように瞳孔が横長な両目と、極彩色で彩られた蛇の頭蓋骨を彷彿させる顔立ちのため、悍ましいとも凄まじいとも形容できる凶悪な面構えをしている。
また、鎧角の裏側は青や黄色、黒で彩られたサイケデリックな模様になっている。
なお、普段は鎧角で覆われて声が籠るのか、素顔が露わになった際は鳴き声に遠吠えのような高めの声質が加わる。
古来より日本の人々に「虹蛇神」と呼ばれ信仰されてきた伝説の存在であり、伝承では「天に数多の虹が輝く時、それは現れる」とされ、出現の前兆として雨の前触れと言われる「逆さ虹」が長期間観測される。
時に「乾いた土地に恵みの雨を齎す空の主」とも、時に「心に邪な気持ちがあると、嵐を呼び全てを奪い去る災厄を齎す荒神となる」とも伝えられ、4世紀の頃にはニジカガチの力を利用して「国のリセット」を行ったとも伝えられている。怪獣研究の権威である横峯万象元教授は、ニジカガチを「自然そのもの」「畏れ、敬うべきもの」「神」などと表現している。
日本各地の伝承によると、“(日本各地に隠された)七色の腕輪を集めて用いる、若しくは生贄を捧げると呼び覚ますことができる”とされている。
能力
天候を操る能力を持ち、口から周囲の木々や瓦礫ごと大気を大量に吸引して気圧を急激に低下させ、大規模な降雨を誘発させられる他、副次効果で高山病のような体調不良をも起こす(アースガロン内のナグラ・テルアキとバンドウ・ヤスノブが上記の症状によって苦しんだ)。
また、鎧角が展開して後立角になると、額のクリスタルを発光させ頭部が一瞬虹色に輝いたのち、ウルトラマンブレーザーのスパイラルバレードをも相殺する程強力な解析不能な未知のエネルギー由来の七色に輝く破壊光線「虹光線」を発射するようになる。
更に腕輪のエネルギーを吸収しパワーアップして以降は全身を七色に輝かせたのち発射する闇のような黒や紫といった重い色をした「虹裏光線」に変化し、直撃を回避したにもかかわらずアースガロンを機能停止に追い込み(このことから、もしも直撃していればアースガロンの大破は免れなかったと思われる)、着弾地点には青い爆炎が生じるなど、格段に強化されている。
これらの光線は額のクリスタルを破壊すると発射できなくなるが、ダイヤモンド並に硬い上に「後立角」時にしか姿を見せず、その上的も小さいため狙って破壊するのは難しい。
膂力も強く、アースガロンやブレーザーを押し退ける程で、先端が剣のような形状になっている強靭な尻尾による打撃も強力。
復活後ブレーザーに倒されたが、死後強力な怨霊として成仏せずに存在し続けている程の強力な魂と念を持っている。劇中ではザンギルの持つ石から力を奪い実体化したがザンギルによれば石の力がなくともその念の強さでいずれこの世で大きな災いを齎すらしく、自力で復活実体化出来る可能性も示唆している。
教授が例えた様にその存在は生き物と言うより、自然や呪いなどの類に近く大昔の人間が(現実的に出来たか兎も角)倒さずに封じたという点もその強大さがうかがえる。
高耐久、多彩な能力と攻撃方法を持つ純粋敵というニュージェネシリーズ恒例のボス格怪獣であるが劇中での設定や活躍に加え、『ブレーザー』という作品の世界観が従来シリーズから切り離され既存シリーズに比べ幾分ウルトラ戦士怪獣両方と共にスペックや能力が控えめであった事も影響し序盤のボスキャラであるにもかかわらず視聴者にも強いインパクトを残した。
劇中での活躍
第7話
近年の環境破壊を起因としたあらゆる災害や怪獣の現出に憂いた横峯が、自然を敬う心を失った人間と文明そのものを洗い流しリセットするべく、富士の樹海にある聖なる泉に、ニジカガチを呼び覚ます七色の腕輪を自身の腕ごと突っ込み覚醒させる(その影響で横峯の腕には蛇のような形の刻印が刻まれ、虹光線のような光弾を発射できるようになる)。
雨が降る前触れである逆さ虹を出現させた7日後に、泉の水を急激に干上がらせて地上に現れ、GGFによる誘導弾攻撃を受けてアースガロンと交戦。アースガロンの牽制にも全く動じず、逆に周囲の大気を吸い込んで雨雲を発生させ、雨を降らせた。
その後、かつて日本をリセットした場所である三重県・比土羅市へ向かって、大気を吸引し雨を降らせながら街から街へと蹂躙し移動。その影響で日本列島に台風を7つ出現させるなどの異常気象を齎した(一方で、比土羅市だけはニジカガチ自身が「台風の目」となっている影響からか、不気味なまでに晴れていた)。
翌日の7月21日に存在を危険視したSKaRDの判断により、アースガロンと交戦。しかし圧倒的な戦闘力と、鎧角を開いてからの虹光線で返り討ちにし、アースガロンを機能停止に陥らせた。
その後ヒルマ・ゲントが変身したウルトラマンブレーザーと交戦するも、ブレーザー相手にもスパイラルバレードを虹光線で相殺しつつ、逆に余波でダメージを与えるなど圧倒的な力を見せ付け、最終的にブレーザーを撤退に追い込んだ。
第8話
その後も比土羅市に留まり、大気だけでなく海から水蒸気を巻き上げ、7つの台風を超巨大な一つの台風に強大化させていく。
しかしブレーザーを退けた翌日の7月22日、そこへ修理・再装備が施されたアースガロンの強化形態・アースガロンMod.2が駆け付け、交戦を開始。多目的レーザーで牽制されて鎧角を無理やり開かされた上、レールキャノンを頭部に受けたことで憤慨。アースガロンに突進し格闘戦となる。
その後、横峯が身に付けていた腕輪が破壊されてもなお活動を続けただけでなく、その腕輪のエネルギーを取り込んで強化した虹裏光線を放ち、先述の通り直撃を回避された上でアースガロンを活動停止に陥らせた。
しかし、再びゲントが変身したブレーザーと交戦。虹裏光線の連射や尻尾の先端から出した剣で圧倒し再び追い詰めるが、その隙に伏せた状態で反動が軽減されたアースガロンMod.2のレールキャノンが遂に額のクリスタルに直撃し破損。
虹光線が発射できなくなったのに加え、その額から出た虹のエネルギーをブレーザーが掴み、ニジカガチストーンに変化させた。そしてゲントがニジカガチストーンをブレーザーブレスに装填し、ブレーザーの放ったレインボー光輪により体を縦に真っ二つに斬り裂かれ爆散、巨大な虹と七色の光となって台風もろとも拡散、消滅した。
その後
ブレーザーによって倒されたと思われたニジカガチだが、実は完全に滅ぼされたわけではないらしく、その後もニジカガチの追跡調査がされた他、「あれだけの強さを持った怪獣を1人の人間がコントロールできるわけがない」という理屈により嫌疑不十分で釈放された横峯が再びその鳴き声を聞くなど、上記の通り「自然そのもの」や「神」に値する存在であることが示唆された。
ニジカガチの声を聞いた横峯は晴れやかな笑顔を浮かべてはいるが、結局彼が考えを完全に改めたのか、それとも心の奥底ではまだ思想を諦め切れていないのかはハッキリと描かれてはいない。
尤も、最後に不穏を煽るSEが流れたなどそういったメリーバッドエンドを強調する描写はないことは留意すべし(あくまでニジカガチの鳴き声が聞こえたのを一部の視聴者がそう捉えたというだけで、公式が明言したわけではない)。
また、ゲントとテルアキも横峯が嫌疑不十分で釈放されたことを知っても危機感を持っておらず、横峯を探し出して拘束しようとはしていない。
そもそも2人は、ニジカガチが起こした台風が文明を洗い流すだけでは絶対に済まないと判断したからこそ横峯の野望を止めただけで、怪獣を一方的に敵と見なす人類の考えを改めなければならないという横峯の信条には否定せず、むしろ共感している。
横峯も、テルアキの「動植物や怪獣の生態を脅かしてまで文明のリセットをするのは間違っている」という意見に正しいと認めており、「正しいことは同時に2つはあり得ず、勝った方が正しく、負けた方が間違い」と横峯自身が言っているため、その上でまた同じことをすれば横峯も彼自身が忌み嫌う「傲慢な人間」と何も変わらないことになる(今回彼が仕出かしたことも、相当「傲慢」ではあるが)。
今後ニジカガチが再び人類の前に現れた時、齎すのは恵みか、それとも災いか…。
その答えは横峯の言葉通り、まさしく“神のみぞ知る”と言ったところだろう…。
第17話
第17話「さすらいのザンギル」では、なんと怨霊として再登場。
それ故名称も「ニジカガチ(怨霊態)」となっている。
108体の怪獣の幽霊を斬って成仏させているザンギルだったが、劇中から3日前にその108体目としてニジカガチの亡霊と出会い、成仏を試みたが、ニジカガチは石から力を吸い取り肉体を得て実体化、復活を果たしてしまう。
亡霊故にミサイルなどの攻撃をすり抜けてしまうが、霊体化と実体化を使い分けてニジカガチ側からは一方的に攻撃できるという物理法則すら捻じ曲げるとんでもない現象を起こしている。
黒雲と共に境芽市の市街地に降り立ち、虹光線を発射して破壊活動を行い、駆け付けたブレーザーの放ったレインボー光輪を特大の虹光線で応戦し破壊。ザンギルも駆け付けるも尻尾の剣に炎のようなエネルギーを纏って強烈な攻撃を行い、追い詰める。
しかしブレーザーはザンギルから一時的にチルソナイトソードに亡霊を斬る力を付与されたことで形勢逆転、二人がかりの猛攻で追い詰められてもなお尻尾に纏った炎を回転しながら全身に覆い突撃するも、チルソナイトソードに突き刺されて上空に投げられた上、ザンギルの突撃で纏っていた炎を解除され、最後はブレーザーによってまたしても一刀両断される。
…が、ニジカガチの怨念は凄まじく、真っ二つになった体が起き上がって油断したザンギルを挟み込み、そのままザンギルの体に取り憑き、乗っ取ってしまう。肉体の主導権を奪われた彼はブレーザーにも躊躇なく斬り掛かる(この時も剣に変形した腕に炎を纏って攻撃していた)。
そこにアースガロンが現着し、事情が飲み込めない状態であったがブレーザーを援護すべくザンギルを攻撃、それにより体勢を立て直したブレーザーがザンギルをすれ違い様に斬り、彼は地に倒れてしまう。
肉体が動かなくなったことで球形になったニジカガチの怨霊はザンギルから離れるが、なんと起き上がったザンギルとブレーザーに同時に刺し貫かれる。
実はブレーザーはザンギルを斬る際、咄嗟にソード向きを変えて峰打ちしたことで仮死状態に留めていたのだった。
こうして108体目の怪獣として、ニジカガチも何とか成仏させることができたのだった。
大抵の再生怪獣枠は難なく倒されることがお約束に近いが、ニジカガチは元が「神様」というのもあってか、上記のように霊体化と実体化を駆使し、新たな力を得て強くなったブレーザーとザンギルを圧倒するという、相変わらず他の怪獣とは桁違いの強者っぷりを見せている。
怨念により悪霊と化したニジカガチだが元が神という存在である事から実際は
『阻止されてなお文明滅亡を望む横峯の妄執がニジカガチの姿と能力を借りた物』と言えるかもしれない。
商品化
ウルトラ怪獣アドバンスで立体化。
全高約155mm(鎧を閉じた状態)で、頭部の鎧が起き上がる変形と、尻尾の先端に隠れた剣が伸びる2つのギミックを搭載しており、劇中と同じアクションを再現。
さらに、ボーナスパーツとして別売りの『DXアースガロン』と一緒に遊べる「Mod.2ユニット」が付属している。
余談
- 存在自体はプレミア発表会と直前スペシャルで判明していたが、その時点ではまだ名前が明かされておらず、上記のウルトラ怪獣アドバンスの商品情報で正式に名称が判明した。
- 実は、OPの台風ニュースの中にも(分かりにくいが)一瞬だけ姿が映っている(一応その映像の明るさを上げれば分かる)。
- デザインを担当したのは、前々作『ウルトラマントリガー』にてカルミラ、トリガーダークなどのデザインを担当した武藤聖馬氏。
- 「カガチ」とは蛇を神格化した存在の呼称で、漢字で書くと「蛇神」となる。また、別名の「天弓」は雨が降った後の晴れた空に見られる虹のことであり、上記の意味も踏まえて漢字で「虹蛇神」となる。
- 劇中でニジカガチが蹂躙し暴れ回っていた地域「比土羅市」は、9つの頭を持つ蛇の怪物・ヒュドラが由来と思われる。ちなみにウルトラ怪獣にも同じ由来の高原竜ヒドラやヒュドラム、そして全く同じ名前の闇の巨人・俊敏戦士ヒュドラが存在する。
- ちなみに、ヒュドラはハイドロゲンの語源になった説があり、水に関連した怪物である。
- 劇中で「日本各地で熱帯低気圧が発生した」とされていたが、熱帯低気圧とは本来「熱帯又は亜熱帯に属する地域で発生する低気圧」を指すため、本来ならば作中世界の日本全国が沖縄のような暑い地域になる。そのため、本来発生したのは「台風」のはずである。
- 劇中では圧倒的な強さを見せ付けたニジカガチだが、実際のところニジカガチ自身に善悪の概念はなく、手を出した人間の心によって豊穣神と破壊神のどちらにもなり得る存在である。そのため、劇中での成り行きを冷静に見ると、台風こそ生み出してはいたものの直接的な破壊行動は全くしておらず(流石に移動の際には建物を壊してはいたが)、アースガロンやブレーザーとの戦闘はいずれも自分から先に攻撃は仕掛けておらず、自己防衛のために戦っていたとも見て取れる。こうした面から見てみると、ニジカガチには「1人の人間の願望によって自由を奪われた挙げ句、望まぬ破壊活動を強いられた被害者」としての側面もある。
- 尤も、横峯が所持する腕輪が破壊され、彼の支配から逃れた後も虹光線を乱射し破壊の限りを尽くしていたのも事実である以上、ニジカガチに「顕現した以上は“自らの役割”を果たす」などの意図がなければ、人類にとっての加害者であるのも間違いないだろう。
- とは言えそもそもの話、「善悪の概念がない怪獣」というのは何もニジカガチに限った話ではなく、過去のウルトラシリーズで度々登場してきた、侵略者の尖兵などではない“純粋な野生の怪獣”のほとんどに言えることである。そして、かつて『ウルトラマンオーブ』にてクレナイ・ガイが「怪獣だって、人間の前に出てきたくはないはず」と語ったように、言ってしまえば出現する怪獣側にもやむを得ない事情があり、その行動を人類側が「善」と取るか「悪」と取るかという話でもある。身も蓋もない言い方をすれば、ニジカガチを「被害者」だの「加害者」だの判別しようとする思考自体が、横峯の言う「人間らしい傲慢な考え方」と言えるのかもしれない。
- また倒された後は悪霊と成り果て破壊の限りを尽くしたという点で「悪」と言われる事もあるが元凶はそもそも人類を滅亡させよう横峯である。
- この怪獣の名前が公開された当時、名前に「ニジカ」という部分が「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場する伊地知虹夏の「虹夏」と一致している事と「ガチ」がファン層を示す「ガチ勢」に見えることから、無理矢理なこじつけネタとして「虹夏ガチ」「虹夏ガチ勢怪獣」など本編登場前からウルトラ、ぼざろファン両方からネタにされる。怪獣要素に加えカラー的にも虹色のせいで結束バンドのカラーリングが入っている、本編登場後も七色の腕輪や台風を起こす能力などぼざろに関わるネタも多かったのもネタ化に拍車を掛ける事に。
- X(twitter)やニコニコ動画等で数多くのファンにネタにされたため現在のグーグルでニジカガチを検索すると検索候補に「ニジカガチ ぼざろ」「ニジカガチ 虹夏」とぼっち・ざ・ろっく!関連ワードが表示され、この怪獣のソフビと伊地知虹夏関連グッズを一緒に移した写真もSNSで数多く投稿されるなどネタとしても定着している。