概要
『ウルトラマンブレーザー』第7・8話「虹が出た」前後編に登場する人物。
1960年岩手県生まれ。
元地球防衛大学の教授。
ヒルマ・ゲントの恩師で、怪獣学の権威として『怪獣の目』や『多々良島マグラー対策の反省と怪獣理解の必要性』など様々な著書を執筆している。
彼の存在や功績は地球防衛隊では一般教養とされている他、防衛隊の怪獣対策マニュアルは彼が書いた草案を基にしているらしい。
幼少期は、ニジカガチを「神」として崇める村で過ごしていた。
一見気難しそうに見える彼もゲントとは釣りの趣味で合うらしく、笑顔を見せるなど良好な関係を築いているが、今回一緒に釣りをするのは7年振りらしい。
ナグラ・テルアキは彼のファンらしく、ゲントが元教え子だと知った時は「羨ましい」と述べていた。
ちなみに、名前の字面のせいで、ミナミ・アンリには最初「ヨコミネ・バンショウ」と読み間違えられた。
思想
「いつか君に話したろ。かつて人類は怪獣と共生し自然と調和を保っていたと。その象徴がニジカガチだ。……だが人類は怪獣を忌み嫌うようになり、排除するようになった。……結果、世界の調和が崩れ始めた」
ゲント「では……怪獣を好きに暴れさせろと?」
「好きに暴れているのは、むしろ人類の方だとは思わんかね?」
ゲント「人類だって自然の一部ですよ。是非はどうであれ、それも地球の営みじゃないですか?」
「いかにも人間らしい、傲慢な考えだな……!」
「問題は正しい道を歩む事ができるのにそうしてこなかった事だ!……そして、これからも……!!」
彼は「怪獣との共存もできるはず」と考えており、怪獣を「一方的に脅威」と見做して排除し、自然を我が物とする人間に否定的になっていた。
そして、かつて比土羅市において「文明をリセットした」と伝えられているニジカガチを復活させ、自らの手で再び文明をリセットし、元の美しい世界を取り戻そうと目論んでいる。
その主張は、教え子だったゲントにさえ「先生の講義がつまらないと感じたのは初めて」と言わしめた。
しかし、過去の横峯はゲントと同じ「こちら側の日常(=人間の生息域)を脅かす場合は排除もやむなし」と、現実的な視線を持っていたため、ゲントと再会するまでの間に何か筆舌し難い経験をしたのではないかと思われるが……?
ただし、例え横峯に筆舌し難い経験があったとしても、劇中の行為自体は「自身の思想である“自然保護”を実行するため、無関係の怪獣を手駒に破壊活動している」面が強く、彼自身もまた自然を我が物とする人間である皮肉を視聴者に露呈している。
尤も、自分を止めようとするゲントに攻撃するもトドメを刺さずに見逃す、テルアキの指摘に図星を突かれるとそれを受け入れる等々、自らの思想に盲目的に固執している訳ではなく、本質的には人格者のままのようでもある。
とすると今回の件は、テルアキの言葉を借りるのならば「誰よりも人間に厳格な愛情を向けていながらも、人間がそれに応えなかったために強硬策に走ってしまった」のだろうか?
本編での動向
第7話
本編冒頭、富士山麓の樹海にある聖なる泉に到着すると、そこに日本中で集めた七色の腕輪を付けた自身の左腕を沈め身に着け、ニジカガチを復活させる。
その後、左腕には蛇のような刻印が刻まれ、これと腕輪を介し、光弾を発射したりニジカガチを操れる特殊能力を手にする(普段は腕輪ごと包帯で隠していた)。
趣味の川釣りをしていたところ、「逆さ虹」の長期観測から教授の話を思い出し話を聞きに来たかつての生徒であるゲントと再会し、共に釣りを楽しみながら久しぶりの講義としてニジカガチの話をする。
その後ニジカガチの復活に伴い、ゲントに復活の首謀者として疑われ、自身の思想を否定されると、包帯をほどいて腕の刻印を見せる。容疑が確定した事でゲントは彼に同行を求めるも、横峯は左腕から光弾を発射して抵抗(この際自身も反動で倒れ、掛けていた眼鏡を落とした)、ゲントを倒してその場を去る。
「君は自分の成すべき事をしろ。……だが私の邪魔はさせん」
ニジカガチと共にかつて日本の国をリセットした場所である比土羅市に到着し、腕輪の力で真の素顔を「御目見」させ、額から放った虹光線でアースガロンやブレーザーすらも退ける様子を見て呟く。
「ようやくだ、ニジカガチ……。新たな世界が始まる……」
第8話
ニジカガチがアースガロンとブレーザーを退けたのを満足気に見た横峯は、その後はニジカガチ自身が好きに暴れるよう任せ、自分は比土羅市内の港の一角で釣りをしていた。
そこに交渉役のテルアキと、ミナミ・アンリ、アオベ・エミが現れ、横峯に銃口を向ける。横峯は「撃ちたければ撃て。元より覚悟の上だ」と死も辞さない態度を示す。
そんな横峯を見たテルアキは銃を下ろし、言葉で横峯の蛮行を止めようとする。
テルアキ「あなたの危機感は理解できます。…確かに人間はこの星の自然を破壊してきました。ですが人間も自然の一部です。その人間を滅ぼそうというのも、この星の生態系に対する冒涜ではないですか?」
「……ヒルマ・ゲントと同じ事を言うんだな」
テルアキ「人間を守るのが我々の仕事です」
「生物は絶滅を繰り返す。……それも自然の摂理だよ」
そして、横峯は「流石に人類を完全に滅ぼすつもりはなく、あくまで現代文明をリセットするだけで、その後生き残った人類が自然や怪獣の恐ろしさを語り継ぎながら、新たな文明を築く」事が自分の願いだと語る。
横峯の思想に、テルアキは一定の理解を示しながらも、横峯の著書『怪獣の目』を取り出し懸命に説得を続ける。
……横峯は著書の中でも人類に厳しい目を向けていたが、同時に人間と怪獣の共生を誰よりも真剣に考えていたと。
テルアキ「人という種族と、あなたほど真摯に向き合った人を僕は他に知りません!」
横峯は本当は愛情深い人間なのだと、テルアキは悟る。
テルアキ「確かに人間は改めるべきです。そこは賛同します。……でも、他の生き物はどうなるんです? 草木や、虫や、動物達……そして、怪獣すら洗い流そうと言うんですか?」
テルアキ「僕はこの世界でもっと生きたい! 他の生き物だって!……『生きたい』と思う気持ちこそ、全ての生物が持つ絶対に奪ってはいけない、一番大切なものなんじゃないんですか!!」
テルアキのこの言葉には横峯も動揺を隠せず、そして彼の考え方に対し、「正しいな、それも……。まさに真理だよ」と認める。
「……だが、同時に2つの正解はあり得ない! 君か、私か……間違った方が淘汰され、正しい者が生き残る!!」
横峯は左腕から電撃を飛ばしてテルアキを攻撃しようとするが、テルアキは咄嗟に避けて横峯の左腕の腕輪(=横峯とニジカガチを繋ぐ媒介)だけを破壊した。
……しかし、腕輪を破壊されてもニジカガチは止まらない。それどころか、腕輪から溢れたエネルギーを吸収し更に強大化した。
「既に賽は投げられた……神のみぞ知るだよ」
横峯はニジカガチの勝利を疑っていなかった。
しかし、出現したブレーザーとアースガロンMod.2が共闘体制を取り、ブレーザーがニジカガチの頭を押さえている隙にアースガロンMod.2が右肩の600mm電磁榴弾砲からレールガンを発射、ニジカガチの光線を放つ額の結晶体の破壊に成功した。
そして、ニジカガチの額から漏れ出る虹色のエネルギーを掴んだブレーザーは新必殺技・レインボー光輪を発動、ニジカガチを真っ二つに切り裂いた。
テルアキ「教授!……1つお願いが」
ニジカガチが敗れ、呆然とする横峯。
そんな彼に近付いたテルアキが掛けた言葉とは……
テルアキ「……サインしてもらっても良いですかっ!?」
エミ「……今それ言う?」
……まさかのサイン要求。
この発言にはアンリもエミも、そして横峯も唖然とするしかなかった。
ニジカガチ事案が終わった後、ゲントによれば横峯は一度逮捕されたが「あれだけ強力な怪獣が、1人の人間にどうこうできるはずがない」として嫌疑不十分で釈放される事となった。
その後、相変わらず土手で釣りを楽しむ横峯。
そんな彼の耳に、倒されたと思われたニジカガチの鳴き声が聞こえた。それを聞いた横峯は、思わぬ再会に心からの笑顔を浮かべるのだった。
横峯が自分の考えを改めたかどうかは不明だが、上述のテルアキとの問答と、ニジカガチがSKaRDやブレーザーに倒されたこともあり、横峯自身の発言を踏まえれば「自分とニジカガチが負けたため、SKaRDが正しく、自分の考えが間違っていると証明された」事になる。その上でまた文明のリセットを企んでいたならば、彼自身が忌み嫌う傲慢な人間と何も変わらなくなってしまう(今回の事件の動機も、捉えようによっては傲慢だが)。
上述にもあるが、彼自身は自分の思想が絶対的に正しいという妄信的な考えは持っておらず、敗北後は愕然としたものの、醜く喚き散らすような事はしなかった(間を置かずにテルアキがサインを要求したせいでもあるが)。
ゲントとテルアキも横峯が釈放された事を知っても、捜索や監視・拘束をしようとはせず放置しており、「彼ほど聡明な人物であれば二度と同じ愚を犯す事はしないだろう」と信じていると思われる(ニジカガチによる台風の被害を防ぐために彼の野望を止めただけで、「怪獣を一方的に敵と見なす人類の価値観を改めなければならない」という横峯の思想には否定せず共感している)。
「一見万事解決に見えて、何も解決してないのでは?」という意見はあくまでも一部の視聴者の邪推でしかなく、公式が明確に描写したわけではない(ニジカガチの声がした事以外は、不穏な要素を描写されてはいない)。
ニジカガチが人類に対し、現在如何なる感情を抱いているのかは、まさしく神のみぞ知る事である。
ちなみにまったくの余談だが、後の17話ではニジカガチが怨霊として登場している。
もし横峯が怨霊と化したニジカガチの姿を見ていたら、はたして何を思うのであろうか……?
関連項目
藤宮博也:四半世紀前のウルトラシリーズ作品の登場人物。こちらはウルトラマンに変身するキャラクターだが、地球を救うために怪獣を出現させるテロ行為を働いた(尤も彼の場合、その思想は敵によって植え付けられたものだが)。
平成ウルトラセブン:自然賛美と人類の負の側面に踏み込み、登場人物の中には文明やその発展のための人類の行いを否定する考えや意見が飛び交った。『太陽の背信』に登場したイナダ教授は、横峯程過激ではないが「人間も自然の一部」との持論を証明するべく行動しているが、その証明のために孫へのやり方には一部から疑問を抱かれている。
春野ムサシ、大空大地:怪獣との共存を望む点は似ているが、横峯本人は2人と違いその思想を拗らせてしまった結果、ヤバい方向に向かってしまった。2人はどちらも共存不可能と判断された敵が現れた場合は、(時には多少悩みこそすれど)駆除を決断できる割り切りができており、むしろ横峯は彼らのアンチテーゼとも言える。
二階堂教授、オオトモ博士:怪獣との共存(実際には「支配」と言った方が正しい)を実現しようとした結果、ろくでもない末路を辿ったマッドサイエンティスト達。一時は横峯も彼らのようになってしまうのかと不安視されたが、幸いにもそんな事はなかった。
シゲナガ・マキ:前作に登場した、元防衛組織所属のマッドサイエンティスト。自らの思想のために怪獣を利用した点は同じだが、肝心の怪獣に対するアプローチは「怪獣を人間が支配すべき」という、横峯の考えとは対極的である。
浦澤ナギ:前作で怪獣を「神」と崇める村に住んでいた御老人。こちらも「怪獣との共存」を望んでいたが、劇中ではその存在に化けて村の役場の人間や工事の人間を脅かすだけで、外の人間に危害を加えるような大掛かりな真似はしなかった。
曽根崎浩:同作に登場する、怪獣が暴れる元凶となった人間繋がり。ただし、こちらの動機は横峯以上に救いようがない(というより、まさに横峯が忌み嫌うタイプの人間そのものである)。