「所詮は怪獣。人間がコントロールしなければ……」
「ネオメガス、ウルトラマンを倒しなさい!お前の力を見せるのです!」
演:野村真美
概要
ウルトラマンデッカー第10話『人と怪獣』に登場。
元TPU怪獣研究室室長であり、カイザキ・サワの大学時代の恩師である女性。56歳。
12月20日生まれで血液型はO型。職員番号はTM0038217。
城南大学理学部と米ハレンスタン大学博士課程を経て、TPU科学技術大学の理学部生物学科教授となり、TPU怪獣研究室長も兼任していた。ムラホシ・タイジいわく怪獣研究の第一人者。
5年前にクローン技術を応用して怪獣を生み出し、更にその怪獣の脳にコントロール装置を埋め込んで制御し、怪獣兵器を生み出そうとした事でクローン生体規制法と生体兵器禁止法の違反により室長の任を解かれ、消息不明となっていた。
ちなみに、TPUの怪獣対策分野は怪獣災害の沈静化からスフィア襲来までの間は縮小傾向だったので、彼女の5年前の不祥事と失踪もこの縮小傾向に影響した可能性はある。
元々は純粋に怪獣の生態を研究する研究者だったが、次第に怪獣の力を恐れるあまり、来るべき怪獣の脅威に対する兵器として逆に怪獣の力を制御して利用するべきと言う危険な思想を抱くようになった。しかし、それを危険視したカイザキが上層部に報告した事で計画は挫折し、室長を解任された事でカイザキに恨みを抱いていた。
しかし、その後は怪獣やスフィアの脅威に警戒する他国や企業から秘密裏に資金提供を受けつつ、10年前に発見した怪獣の化石に様々な怪獣の遺伝子を組み込み、更に脳にコントロール装置を組み込んで、クローン怪獣兵器ネオメガスを生み出してしまった。
『怪獣は人類が管理すべき』という極端な平和理論の元、ネオメガスを誕生させデモンストレーション代わりにキングゲスラやサドラを襲わせて、これをスフィアや怪獣、他星人類の脅威への対抗策にしようとしていた。
スポンサー達がこの技術を必ずしも平和利用するとは限らない点をカイザキから指摘されても、シゲナガにとっては「そんな事を恐れていては進歩などあり得ない」と百も承知な事であった。
自身を否定したカイザキに自分の正しさを証明するために彼女の前でネオメガスを起動させ、カイザキを救出に現れたデッカーと戦わせる。
ネオメガスとそれのコントロールには絶対的な自信を持っており、アスミ・カナタに対して「私の生み出したネオメガスが世界を救う」と豪語すらしていた。
実際ネオメガスをペンダント型のコントロール装置を破壊されるまでは暴走無しで完璧に操っており、ネオメガスの手のひらに乗ったまま潜伏先から外に出て来てすらいる。
デッカーを倒すことで「人類がこの地球を守る力を手に入れる」ことを証明しようとするが、拘束装置も兼ねたコントロール装置を破壊されると次善の策を持たず、なすすべもなかった。
結局デッカーとGUTS-SELECTにネオメガスを撃破され、シゲナガも逮捕された。
彼女のバックにいたスポンサーもTPU情報部によって突き止められて研究データも回収、飛び散った細胞も全てTPUによって処理される予定で、「二度とネオメガスが生み出される事はない」と告げた上で、カイザキは「自分は(怪獣と)”共存”なんて大それた事ができるとは思っていないが、無駄な争いを避け、人間も怪獣も、一つでも多くの命を救う為に自分のできる事をしたい」と自分なりの平和の為の想いをシゲナガにぶつけた。
それに対してシゲナガは、既に信念のために法も倫理も踏み越えている上にコントロール自体は成功しているためか、「そんな事で終わると思っているの? そんな綺麗事で怪獣と人間の戦いは終わらない…”完全に滅ぼす”か…”支配”しない限り…永遠に……」と冷笑する様に返し、最後まで自分の過ちを認める事はおろか、主義主張を改める事もなく、かつての教え子と相容れないまま、TPUの兵士達に連行されていくのだった……
そして、シゲナガが投げかけた言葉を裏付けるかのように、それからまもなくして厄介な存在によって、より強化された第二のネオメガスが誕生する事となる……
また、本編後半には、民間人の間でもシゲナガが掲げたような「打倒するか、利用して共生する」という、過激かつ危険な人類の敵対生物への対策方法が擁立、浸透していることが判明。それもよりによってネオメガスを利用した厄介な存在 スフィアを利用しようとする企業が現れる始末であった。
元よりスフィアは怪獣以上に難解な存在である上に、シゲナガの様な専門家でもない彼らでは当然、それをコントロールなど出来るはずもなく、最終的により強大な怪獣を誕生させる事態を招く事となった……
こうした“破滅を呼ぶ力”を欲望のままに利用し、何度も同じ過ちを繰り返す地球人をある人物からは「連綿と繰り返してきた愚行」と冷ややかに評される事となる…
更に、22話では、彼が同じペンダント型コントロール装置(詳しい入手経路は不明だが、恐らくTPUが回収した証拠品などの中から、密かに盗み出したものと思われる)で使って邪魔な存在を手に掛けようと怪獣を差し向けるというさらなる皮肉を生む結果となった。
余談
モチーフとなったのは『ウルトラマンダイナ』に登場したオオトモ博士(と言うよりも、彼の立ち位置を担っている)。あちらもクローン技術で怪獣を生み出して兵器として利用しようと考えるマッドサイエンティストであったが、兵器だけでなく、平時の危険な環境での作業も視野に入れていたほか、最終的に生存した新世代TD世界のマキと違い、ネオフロンティアスペースでのあちらは怪獣を完全に制御する事が出来ずに暴走させた結果、踏み殺されると言う最期を迎えている。
また元ネタのオオトモ博士の場合は部下のヤマザキ・ヒロユキら数名の部下が協力していた上にTPCに所属したまま内部告発されることもなく計画を遂行したのに対して、マキの場合は部下のカイザキに内部告発された上に劇中では単独行動なため、部下との関係はオオトモ博士とヤマザキ・ヒロユキとの関係のアンチテーゼになっている。
一方原典のヤマザキの「復讐を果たそうとする逆恨みの科学者」部分はアガムスが継承する形になり、こちら側は「怪獣との関係で暴走した科学者」という面が強調されている。
劇中で一瞬映る報告書という形で『デッカー』においてレギュラー陣以上にプロフィールが開示された点は『ウルトラマンティガ』のマサキ・ケイゴと類似している。
出身大学の城南大学は『ウルトラマンガイア』の主人公・高山我夢の在籍していた大学や『ウルトラセブン』でガイロスに襲われた大型船を所有していた大学と同名である。
関連タグ
ウルトラシリーズ
デッカー後半におけるメインヴィランで、シゲナガが登場した頃はまだTPUの一員にしてGUTS-SELECTの味方であったが、その後TPUから離反している。彼もまた、後に明らかになったその経緯や目的から、シゲナガ同様に強大な力を持つ存在を前にして、誤った方向へと舵を切り、暴走してしまったといえる。
二階堂教授:『ウルトラマン』に登場したマッドサイエンティスト。同じく怪獣を育成し、操っていたが、上記のオオトモ博士と同様に制御しきる事が出来ずにその怪獣によって致命傷を負わされ、怪獣がウルトラマンに倒されるとその後を追うかのように命を落とした。
水野一郎:郷秀樹の友人でレオゴンを生み出した生物学者。レギュラー陣の知人で強い信念を持って「許されざる命」を作ったという点で共通している反面、創った怪獣に対する愛着を持っていた点で相違していた。
久里虫太郎、戸井ゆきお:前者は『ウルトラマンA』、後者は『劇場版ウルトラマンR/B』に登場した自作の怪獣でウルトラマンに戦いを挑んだ人間達。久里は敗北後、死亡したが、戸井は生還して改心している。
ゴンドウ・キハチ:ダイナにおける自らの信ずる(過激な)正義を掲げ、いくつもの過剰な威力を有する兵器を生み出し無謀ともいえる作戦を立案するが、いずれも悲惨な結末を迎え、しまいには事もあろうに人造したウルトラマンを兵器にするという大それた計画を実行するも、開発した人造ウルトラマンもまた悲惨な結果に至ってしまった。しかし彼はシゲナガと違って、自分の過ちに気づくと贖罪の為に己の命をダイナの為に擲った。
稲森京子:『ウルトラマンガイア』に登場した女性科学者。こちらも怪獣をコントロールして制御しようとしたが、上記のオオトモ博士や二階堂教授と同様に制御に失敗して逆に怪獣に殺されると言う末路を迎えている。
マウンテンピーナッツ:『小説版ウルトラマンギンガS』に登場した怪獣に対する見方を曲解した過激派繋がり。ただし、こちらは怪獣の保護を優先して人類の命を二の次にする等、シゲナガとは似て非なる思想と言える。
ユウキ・マイ:『ウルトラマンZ』に登場したシゲナガ同様に、怪獣の力を地球防衛の為の兵器として利用しようとした軍事組織関係者
彼女の職業は上級士官とシゲナガと対照的な立場である他、怪獣のみならずウルトラマンの力さえも兵器化する野心を懐き、前述のゴンドウのように人造ウルトラマンを開発するも諸悪の根源の策略に踊らされ、最強最悪の怪獣へと変貌させてしまうというほぼ同じ轍を踏む事となったが、最終的に隊長の手で気絶させた後、シゲナガの様に失脚したものと思われる。