演:阿部翔平
概要
『ウルトラマンデッカー』第21話「繁栄の代償」に登場したゲストキャラクター。
「サイテックラボラトリーホールディングス」の会長であり、会社の所有地で発見された宇宙浮遊物体スフィアの死骸を利用し、スフィアから抽出した「Sプラズマ」を分裂・増殖させエネルギーとする「Sプラズマ増殖炉」を開発させていた。
科学の力を過信し、シミュレーションの結果だけを信じる傲慢な性格の人物で、カナタに「スフィアの危険性とSプラズマ増殖炉の中止」を進言されても「スフィアの死骸の所持や利用を規制する法律なんてない」「あらゆる事態を想定し完璧なシミュレーションに基づいた管理をしている」と机上の空論に基づいた屁理屈や言い訳をするばかりか「スフィアが襲来してから地球の発展は遅延したままであり、それならばスフィアを利用して共生するべきである」と頑なに耳を貸そうともしなかった。
そんな慢心し切った考えに対し、似たような考えに基づいて怪獣を制御下に置こうと目論んだ科学者の前例を既に見ていたカナタから「そんな二択、前提から間違えている!」と非難されても意に介すどころか、「では聞きますが、(そんなに危険視するのであれば)GUTS-SELECTにはスフィアを打倒する確実な手段があるのですか?」と現状でスフィアの撲滅の目処が立っていないGUTS-SELECTをどこか見下しているかのような質問を返し(それを聞いたカナタは思わず「それを今一生懸命やっているんだろうが…!」と本音を零すかのように不満を口に出していた)、リュウモンから「貴方の言う『スフィアとの共生』は確実な手段だとでも言えるのですか?」と切り返されても尚「言い切れます!既にSプラズマは膨大なエネルギーを放出する事に成功していますから」「人類は科学の力で自然の猛威に挑戦し、自らの力として取り込み発展してきた。それは歴史が証明しています」と断言した上で、次の予定があると言い訳しつつ半ば逃げるようにカナタ達との問答を終わらせてしまう。
GUTS-SELECTには一般企業の方針に干渉する権限がない事から、カナタ達も一先ず「上層部から政治的なアプローチをしてもらうしかない」として引き下がるをえなかったが、「あんな危険な研究、今すぐやめさせないと…!」と焦燥感を募らせるカナタに対し、リュウモンはヒヤマの考えは「ある程度分からなくはない」としつつも、スフィアを利用する行為にはカナタ同様難色を示していた。
一方ヒヤマの方も、いずれTPUから横槍が入る事を危惧し、その前にスフィアをアンダーコントロールするべく、実験も行っていない現時点で行うのは時期尚早である旨の部下の技術者の諌言を無視して、Sプラズマ増殖炉の出力を大幅に上げてしまった結果、死んでいたはずのスフィア本体が熱暴走を起こし再活性化。
この想定外の事態を前に、「あり得ない…死んでるんだろ、あれは!?そんな想定なかっただろ!?」と技術者達に八つ当たりしつつ、「何なんだこれは…!?どうしてなんだぁぁぁッ!?」と嘆いている間に、スフィアは完全に蘇生し、Sプラズマ増殖炉を建物ごと粉砕し、その残骸と融合した結果、スフィアジオモスが誕生する最悪の事態へと至ってしまった。
ヒヤマ達はどうにか建物が破壊される寸前で脱出できたものの、スフィアジオモスや、それによって呼び出されたスフィアザウルスによって施設が破壊され、大パニックとなる中、懸命に応戦するカナタとリュウモンの下へ駆け寄るなり、「何をやっているんだ!?早くあの怪獣をなんとかしろ!!この施設が失われたら、どれだけ人類の科学が遅れると思っているんだ!!」と、自分の判断ミスが原因にもかかわらず、尚も勝手な言葉を喚き散らし、リュウモンから「その独り善がりな科学が招いた結果がこれだろ!!」と怒り混じりに一蹴された。
ヒヤマ自身は、施設を破壊し尽くした後に街へと進撃するスフィアジオモス、スフィアザウルスをカナタ達と共に呆然と見送る場面を最後にフェードアウトしており、その後については不明であるが、その後スフィアジオモスはデッカーと未来からやってきたウルトラマンによって撃破されており、同時にSプラズマ増殖炉も完全に喪失し、戦いの余波で施設も大部分が破壊されるなど自社の所有する財産だけでも相当な損失が生じている。その上、怪獣の出現を誘発し周囲の街に甚大な被害を生じさせた事から、多方面から相当額の賠償請求が来る可能性も高く、いずれにしてもかなりの大損害を被ったのは確実である。
更に、犠牲者も出ているならば業務上の過失等で逮捕された可能性も高い。
何かと『人類の科学の進歩の為』という方便や『スフィアとの共生』という綺麗事を口にしていたが、結局のところは自分の会社の利益になる事しか考えておらず、ある人物の言う通り『欲望のままにスフィアを利用しようとした身勝手で愚かな人間』であり、今回のタイトル「繁栄の代償」を最悪の形で体現する事となった人物と言えよう。
余談
演者の阿部氏は、過去に『ウルトラマンギンガ』にて主人公の通っていた小学校を撤去してリゾート施設にしようとしていた建築会社の人間「桑原伸吾」役で出演していた。こちらではナックル星人グレイの口車に乗って自分だけ助かろうと(未遂に終わったが)ギンガスパークを盗み出そうとする卑劣な人間を演じている(ちなみに、彼の上司である女性「黒木知美」も、桑原同様非常に自分勝手な性格の人物で、こちらもグレイに利用されている)。
…とは言え、性格は神経質なところはあるがヒヤマ程性根が腐った人物という訳ではなく、最終回では上司である黒木と共に改心してリゾート開発を撤回する事を決め、更にはダークルギエルに敗れて力を失ったギンガを復活させる為に光を与える事に黒木と共に協力するという重要な役割も果たしている。
アンチテーゼキャラクター(+組織)
ヒジリ・アキト:前作『ウルトラマントリガー』のキーパーソンの一人で、ヒヤマや下記の面子とは逆に人類にとってのオーバーテクノロジーを正しい意味で兵器への転用に成功した地球人。『デッカー』においてもスフィアの力を利用する事に成功した前例者であるが、こちらは使用制限を設けるなどの処置を施すなどして、その力を正しい形で使わせる事に成功している…かと思われたが、ショーオリジナルの展開では…。
GUYS:『ウルトラマンメビウス』に登場する地球の防衛チームで、メテオールやマケット怪獣といった、ウルトラマンを含む地球外の技術を起源とする兵器を戦力として有している。使用には基本的に隊長や上層部の許可が必要な他、使用可能時間は1分間とするなど厳格な制限やルールを設ける事で、いずれも事態の集束やウルトラマンへの援護などで大いに役立っており、平和の為にきちんと正しい目的で使われている。無論、中には失態や失敗例(但しこちらは試験段階で導入を見送った為民間人への被害は出ていない)が全く無かった訳ではないが、それでも下記のケース程の大惨事とはなっておらず、アキトと同様、ウルトラシリーズにおいて貴重な成功例の一つと言えるだろう。
Xio:『ウルトラマンX』に登場する防衛チーム。友好的な宇宙人の協力により、彼らもまたウルトラマンや怪獣の力を模した、人知を超えた戦力を有する組織である。こちらもきちんと平和目的で利用されている上、その技術が引き金となって発生した失態もほとんど起こしていない。
“破滅を呼ぶ力”を欲望のままに利用した者繋がり
シゲナガ・マキ:同作に登場した「倒すか、制御下に置く」という極端な二択肢の中から『制御下に置く』事を選んでその実例として怪獣を自らの手で生み出し、兵器として利用しようとした人物。こちらも最後まで自らの行いに対する反省はなく、更にはその生み出した怪獣も後にスフィアによって利用されている共通点がある。
ゴンドウ・キハチ:『デッカー』のモチーフ元である『ウルトラマンダイナ』に登場した、防衛組織のタカ派幹部。ヒヤマと同じく人類の科学力を過信するあまり、開発した兵器をスフィアや侵略者に悪用される最悪の事態を招いた経歴を持つ。尤も、ゴンドウの場合は高慢な部分はあれど自分なりに人類の未来と平和を想っての信念に基づいた正義感と、最後は自らケジメを取る責任感を持ち合わせた人物である。
西条武官:『ウルトラマンコスモス』に登場した、地球防衛組織のタカ派官僚。彼もまた人類の脅威に対する対抗策として地球外技術で造られた兵器を利用しようとした結果、暴走による惨劇を招いたトラブルメーカーである。しかも暴走前には別の対策方法の擁立に難航している主人公のチームを見下すような物言いをしたり、暴走した際にも自分達の行いを棚に上げて無理難題な命令を下すなど、高慢・無責任ぶりはヒヤマにも勝るものがある。更にゲストキャラクターであるヒヤマと違い、彼は準レギュラー扱いであり、この件以前にもやらかした事がある。
神山政紀:『ウルトラマンギンガS』の登場人物で、敵対勢力への対抗策として地球の命を消耗する禁忌の兵器を製造した挙げ句、物語の黒幕に奪われ悪用される大失態を犯してしまった。こちらも傲慢な性格かつ想定外の事態に陥るとウルトラマンに泣き付く無責任な人物ではあったが、ヒヤマやシゲナガらと違って最後は自らの行いを後悔し、反省の兆しを見せていた。
ユウキ・マイ:『ウルトラマンZ』に登場した、未知の力の危険性を理解せず、その力をアンダーコントロールによる制御で利用しようとした結果、最悪の事態を招いた人物繋がり。また、同じ田口監督作品の登場人物という共通点もある。
曽根崎浩:次作に登場する、自分の会社の商品を売りつける事で人類の救世主になると言う身勝手な欲から、自分が生み出した怪獣をわざと暴れさせていた人物。
バット星人:『ウルトラマンサーガ』において、同じくスフィア(出自は異なる)を利用して最強の怪獣や怪獣兵器を生み出した宇宙人。コイツの場合は、全宇宙を支配する為だけにスフィアを利用した正真正銘の大悪党である。
繁栄の先の事を想像しなかった者繋がり
ヴィルッド博士:『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』に登場したタイの科学者。こちらも「科学こそが現代のハヌマーン」と科学の力を過信した結果、地底に眠る怪獣軍団を呼び覚ましてしまうという、ヒヤマと似たような過ちを犯している。
今里光:『ウルトラマンタイガ』に登場した、企業経営者のゲストキャラクター繋がり。自らの自己顕示の為だけで打ち上げたロケットが原因で他人を死に至らしめたにもかかわらず、反省の色を見せないどころか事件の元凶である事すら理解せずに無責任な言動や態度を見せるなど、自分勝手なところはヒヤマ以上と言える。
新井タカシ:『ウルトラマンジード』に登場した、売れない貧乏芸人。彼もとある小さな宇宙生物モコ(正確にはモコに宿った力)を(生活の為とは言え)金儲けに利用していた。しかし、彼自身はお腹を空かせていたモコになけなしのパンを与えたり、怪獣に狙われていたモコを守ろうとするなど根は善良な人物であり、モコもタカシに懐いているなど、両者には確かな絆が芽生えている。最終的には、モコに宿っていた力がなくなった後もお笑いコンビとして活動をするようになった。