登場怪獣
- 対話宇宙人メトロン星人
概要
2005年12月10日放送。脚本:小林雄次 監督:実相寺昭雄。
『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」の続編で、実相寺昭雄最後のウルトラシリーズ監督作。
「狙われた街」の映像が劇中に挿入される、登場するメトロン星人が「狙われた街」に登場した個体と同一人物である(そのため、劇中では「対話宇宙人メトロン星人再登場」と明記されている)、「狙われた街」でも見られたちゃぶ台での会話・夕焼けの中の対峙といった演出など、随所に「狙われた街」との関連性が見られるエピソードとなっている。
予告
北川町で頻発する不可解な事件。それは侵略者メトロン星人の陰謀だった。
戦え!カイト、チームDASH。
次回、ウルトラマンマックス『狙われない街』
(テレビ版)
俺の親父、ウルトラセブンに倒されたメトロン星人は生きていた!
こいつは地球なんか侵略しないと言っている。一体どういうことなんだ?
次回、ウルトラマン列伝『復活のメトロン!狙われない街!!』
(ウルトラマン列伝版)
STORY
東京・下町にある町、北川町。そこの町工場で一人の男が暴れていた。
そこに警官たちが駆け付け、男を取り押さえる。煙草が大好きでケータイが大嫌いな中年刑事の楢崎は、事件現場で黒服の怪しい男を目撃する。DASHのカイトとミズキも現場に来ていた。
「怪獣や宇宙人よりも恐ろしいものを知ってるか?人間だよ」
このところ、北川町では突然人間が暴れ出すという事件が相次いでいた。
今回逮捕された男は昼食の後の記憶がないという。警察科学研究所で男のCTスキャンを行った結果、脳の前頭葉が委縮している事が判明した。
この状態になると理性が無くなり、他人の事が考えられなくなるという。一人の研究員の携帯電話に電話がかかり、研究員がそれに出るや否や彼は凶暴化し、楢崎に襲い掛かった後意識を失った。
事件を起こした人間が皆、同じアンテナの携帯電話で会話していた事が判明。カイトは宇宙人の仕業と考え、ミズキや楢崎と共に携帯のアンテナ製造工場を訪問する。
エイリアンスキャナーに反応があり、踏み込んでみるとそこには普通の人間が働いているだけでスキャナーの反応も消えていた。しかしこのアンテナは高性能で好評だという。
電波が怪しいと考えた楢崎は、北川町の携帯電波を止めるように指示した。一方、DASHのヒジカタ隊長がミズキに新しい情報をもたらす。
それは、今から約40年前にも、北川町で人間が突然暴れ始める事件があった事。
怪しい男を目撃したカイトは追跡を開始。お葬式が行われている寺に追い詰めると、そこには携帯電話が置いてあり、鳴っていた。カイトがそれに出ると突然頭に謎の声が響く。
謎の男は宇宙人で、カイトがウルトラマンマックスであることを見抜いていた。カイトが地球侵略が目的か問うと、「そんなつもりはなし、今に自滅する」と返した。
ミズキ、楢崎と合流したカイトは再び男の追跡を開始。古いアパートに追い詰め、楢崎が男を取り押さえる。
「メトロン!」
「ケンちゃん!」
突然抱き合う二人。だがすぐに離れ、男は逃げていく。男を追うカイト。
楢崎は北川町も40年前で変わったという。そこへDASH本部から再び連絡があった。
40年前に北川町で起きた事件。それはたばこの中に赤い結晶体を混入し人間を狂暴化させ、人間同士の信頼関係を失わせようとする宇宙人の作戦だったのだ。その時、光の国に住むマックスの同胞に倒された宇宙人を楢崎の両親が保護し、治療していたのだ。
カイトは男を追いかけ、アパートの中に入る。そこには怪獣の着ぐるみが沢山吊るされており、その中にあの男はいた。
ちゃぶ台をはさんで会話するカイトと男。男がカイトに勧めた眼兎龍茶なるお茶を飲むと、本来の姿であるメトロン星人へと変身した。
自分の星に帰れと言うカイトに、じゃんけんで勝てたら帰るというメトロン。チョキしか出せない手の構造を突き、ジャンケンに勝つカイト。
ラバーカップなどの地球で気に入ったものをおみやげとしてまとめながらメトロンは語る。
「40年間潜伏して見守ってきたが、もう攻撃しなくても人類は俺達の手に落ちると確信したんだ」
「人間は便利なツールを手に入れ、どんどん退化し始めたからさ。町中サルだらけ」
「放っておいても滅びるよ。新しい道具で人間の脳は委縮し始めている」
「低能化して、環境を破壊して、礼儀も知らない人類を物好きに守る必要もないだろう?」
どこかカイトを挑発するように語るメトロンにいら立ちを見せるカイト。
帰るからもう一勝負と言うメトロンは、今度は人間に変身してパーを出した。笑うメトロン。
「いつまでも、あると思うな仇桜ってな、イェ~イ!」
天井を突き破り巨大化するメトロン星人。カイトもマックスに変身。
水面に映るメトロン星人。40年という長い月日がたち、町の様子がすっかり変わっても美しい夕焼けの情景。
「地球の夕焼けは美しいなぁ、とりわけ日本の黄昏は。この陰影礼讃が何よりのお土産だな」
「つべこべ言うんじゃない!」とカイトの声で怒り始めたマックスに、メトロンは口笛を吹くと走り始めた。その先には迎えにやって来た彼の円盤が待っていた。
円盤に乗り込み、地球を去っていくメトロン星人。マックスは思わず手を振って見送った。
メトロンが自分の星に帰った事を楢崎に教えるカイト。楢崎は納得しつつも寂しそうに言った。
楢崎「俺も連れて行って欲しかったなぁ…事件が山ほど待ってるんでね、宇宙人よりも厄介な…」
カイト「奴はこの星に見切りをつけて、故郷の星に帰って行ったんだ…」
ミズキ「でも…」
余談
当初実相寺監督は「胡蝶の夢」と「星座泥棒」を担当する予定だったが、メトロン星人の後日談をやりたいと提案し本話を担当した。
脚本のタイトルは「見捨てられた街」だった。
ちなみに本作の撮影後実相寺監督は携帯電話を解約している。
実相寺監督は当時の著書「昭和電車少年」などで電車の中での若者のマナーの悪さに苦言を呈しており、劇中でも電車の中で携帯電話で会話をしている若者の映像に猿の鳴き声をインサートしている。
メトロン星人のCVを担当した寺田農氏は、着ぐるみによる撮影と同時並行で現場でアテレコを行った。
物語のクライマックスでメトロン星人が立っている場所は昭和の風景が残る下町、マックスが立っている場所は文明の象徴とも言うべきビル群が並ぶ平成の光景と見事に対になっている。
また、ミズキ隊員の「でも…」という言葉の先はぼかされているが、これがもしメトロン星人の残した言葉への彼女なりの反論だったとするならば、全ての答えはマックス最終話にあると言えるのかもしれない。
なお、先述したように本作は「狙われた街」の続編であるが、『マックス』の世界は21世紀になって初めて怪獣が出現したという設定であり、本来『セブン』の世界とは繋がりがない。この矛盾について、脚本を担当した小林雄次はブログで「今回限りの例外」とコメントしている。
メトロンが潜伏していたアパート前の空き地が映るシーンで、ガヴァドンが土管に描かれている。また、壁には「俺の名前を言ってみろ」と落書きがされていた。
関連タグ
怪獣使いの遺産 本エピソードと同様に後年製作された「怪獣使いと少年」の後日談。
ゼットン星人マドック:この回のメトロン星人のオマージュと言えるキャラ。