概要
お茶以外の飲み物をメインに扱っていても「喫茶店」と呼ぶ。
喫茶店でも、お酒を出す店も例外として存在する。お酒を絶対に出さない喫茶店は、「純喫茶」とも呼ばれる。
緑茶などの日本茶をメインに扱う店は、「和カフェ」、「茶屋」、「甘味処」などと言われることが多い。
以前は非加熱食品やアルコール類が提供できない「喫茶店営業許可」で営業する店を喫茶店と呼び、「飲食店営業許可」が必要なカフェと区別されていたが、2021年の法改正で喫茶店も飲食店営業許可で営業するようになったため、両者に法的な区別はなくなり、店の方針や雰囲気による違いのみとなっている。
歴史
日本では明治時代からコーヒーと紅茶を嗜む一般的な飲食店としての一面を養う一方、大正時代に入ると店同士の売上競争が激化するにつれて現代でいうキャバクラと化す店舗も続出。見目麗しく器量のいい女性店員を数多く雇用し、コーヒーばかりでなく酒類も提供するようになる。
なので戦前で「夜に喫茶店へ行く」というと、「男の社交場」「夜遊びの定番」といったあまりよろしくない印象が付いて回るのが定番だった。
ゆえに、こうした「夜遊びの喫茶店(いわゆるカフェー・特殊喫茶)」と区別するために、現在に言う喫茶店は「純喫茶・純粋喫茶」を名乗るようになった。
戦中は風紀の統制や物資の枯渇によって、コーヒー豆や茶葉の供給に苦心し、店を畳ざるを得ない状況に立たされる店舗も増えた。特に物資の枯渇は戦後にまで尾を引いて業界を悩ませ続けた。その後、法規(風営法など)の整備とともに「夜の喫茶店」はバー・クラブ・キャバクラへと転換・吸収され、その姿を消した。
1960年代に喫茶店ブームが起こり、以降70年代から80年代後期にかけて学生たちの溜まり場として隆盛を誇った。なんといっても『学生街の喫茶店』(ガロ/山上路夫作詞、すぎやまこういち作曲)などというそのものズバリの曲もあったほどである。
その事もあり、この年代の漫画・テレビドラマ・ジュニア向け小説などでは登場人物が活動する定番の舞台としてさしたる理由付けもなく頻繁に登場した。
しかし、こうした「学生たちの溜まり場」としての喫茶店は、80年代後半になると不良(ヤンキー)の溜まり場として大人たちから危険視され、学校側の校則強化や法律の整備によってほぼ排除され、さらにバブル崩壊後はコスパ志向と商店街の衰退が強まり、90年代以降はファーストフードやファミリーレストラン、チェーン店系コーヒーショップ、2000年代以降はそれらにスタンドカフェ(オープンカフェ)が加わって、これら業種がその代替としてとって代わるようになった。
結果として昭和時代の業態を継承する喫茶店は、むしろ大学生から上、主には社会人や主婦の小休憩所という向きが強くなり、とりわけ洋食屋が少ないエリアではその代替を担っていることが多い。昨今では、純喫茶は昭和ノスタルジーを感じる場所として、専門の写真集が刊行されたりもしている。
名古屋圏の喫茶店文化
名古屋市及びその周辺地域(主に愛知・岐阜・三重の東海地方)では、「喫茶と言えば名古屋、名古屋と言えば喫茶」と言うぐらい全国区で有名な独自の文化が構築されていることで有名。他の地域と異なり、「お茶やコーヒーを楽しむ場所」より、「食事をする場所」というイメージが非常に強い。
最大の特徴はモーニングというサービスだろう。要するに朝食なのだが、「朝食の時間帯にはコーヒーなどのドリンクを頼むだけで無料でパンやゆで卵、サラダなどが付いてくる」という非常に豪勢なサービスである。
店舗によってはさらに和食も用意されていたり、バイキング形式だったりと差別化のために苦心している。場合によっては、全日注文可という「モーニングとは何なのか?」と聞きたくなるようなサービス形態の店も……。
もはや、「モーニング」とは「ドリンクに低額で付随する食事サービス全般」を指す名詞と化している感がある。
この独特の習慣には、この地方が1950~60年代の高度成長期においては繊維業で栄えた地域であり、これらの工場建屋内は仕切った応接室であっても織機の騒音が非常にやかましく、およそ商談をする場所に相応しくなかったという事情があった。そうした企業の会議室代わりに喫茶店が使われ、お茶代わりのコーヒー+添えの茶果が一日中出るというのが非常に合理的だったという背景がある。
他にもコーヒーにピーナッツ等つまみを添える、「鉄板焼スパゲティ」(ステーキやハンバーグに使う鉄板の上にナポリタンやミートソース、あんかけスパゲティ等をのせ、周りに溶き卵を流し込む。 )も名古屋圏の喫茶店が発祥である。
名古屋以外の喫茶店文化
なお名古屋のほかにもモーニング発祥の地といわれる一宮市に、個人の喫茶店利用額日本一という岐阜市(加えて東濃、茶碗蒸しが出るなどボリュームでいえば名古屋以上)、人口あたりの喫茶店数日本一といわれる高知市の喫茶店もモーニングが凄いことになっているので、興味があれば調べてみてもいいだろう。
ほかにも喫茶店文化が知られる都市として、人口あたりの喫茶店数がダントツで日本一(現在は4位)で、かつて市内に400軒以上の純喫茶があった和歌山市(今は逆に昭和時代からのレトロ純喫茶が数多く残る都市として注目されている)、人口あたりのコーヒー消費量日本一の徳島市(古くからのコーヒー専門自家焙煎純喫茶店が非常に多い)などがある。
フルサービス型喫茶店チェーンの復権と大手によるチェーン展開
近年はシアトル系カフェに比べると割高ながら好調な経営を保っているコメダ珈琲店、星乃珈琲店を中心に従来のフルサービス型喫茶店復権を果たしてきている。特に後者は完全にシニアをターゲット、昭和時代の純喫茶をコンセプトにしており、すかいらーく(むさしの森珈琲店)、高倉町珈琲店など追随企業が増えてきている。
関連イラスト
関連タグ
関連業種
飲食店 カフェ 純喫茶 パーラー カフェバー オープンカフェ / スタンドカフェ バール カフェテリア 茶屋 / 茶店
メニュー
モーニングサービス コーヒー 紅茶 クリームソーダ コーラフロート コーヒーフロート オレンジジュース サンドイッチ ケーキ パフェ ナポリタン
その他
自動販売機:飲料類の自販機は缶・ボトル入り飲料を売ってるだけでも喫茶店・飲食店の営業許可を要する。
インベーダーゲーム・脱衣麻雀:専門のアーケードゲームセンターが登場するまでは主な稼働の舞台であり店によっては重要な収入減でもあった。
星野源:同上。(ジャズ喫茶、現在は閉店。)
各種営業形態
漫画喫茶 インターネット喫茶 猫カフェ メイド喫茶 執事喫茶 ジャズ喫茶
実在する喫茶店
スタンド(オープン)カフェ業態の喫茶店
ドトールコーヒー 上島珈琲店 スターバックス タリーズコーヒー ベックスコーヒー
名古屋圏文化の喫茶店
関連企画
版権企画
喫茶店をメインの舞台としている作品
※()内は登場する喫茶店の屋号。
喫茶店を舞台の一つとしている作品
- あっちこっち(喫茶「ハチポチ」):戌井みいこが経営する喫茶店で、弟の榊がパティシエ、伊御と姫が接客担当としてアルバイトをしている。
- 宇崎ちゃんは遊びたい!(喫茶「アジア(アニメでは亜細亜)」):亜実の家で、父が経営し、主人公とヒロインのバイト先。
- ガヴリールドロップアウト(「エンジェル珈琲」):ガヴリールのバイト先で、ヴィーネが常連客。
- かへたんていぶ(つばめヶ丘学園高等部 学生喫茶「かへたんていぶ」):主人公たちが所属している部活。部活動の一環として学生喫茶の設備を用い喫茶店の運営をしている。
- だがしかし(喫茶「エンドウ」):ココノツの幼馴染であるサヤと豆の家で、サヤが看板娘として店を切り盛りし、ココノツとほたるが常連客。
- タッチ(喫茶「南風」):ヒロインの家で、その幼馴染である主人公兄弟とその友人たちの溜まり場。
- たまこまーけっと(「星とピエロ」):レコード屋だが、コーヒーや軽食も出してくれる。
- つなみティーブレイク(喫茶店「ドーバー亭」)
- 東京喰種(「あんていく」)
- Dr.スランプ(喫茶店「コーヒーポット」):木緑あかねの家で姉の葵が経営。
- とらいあんぐるハート3/魔法少女リリカルなのは(喫茶「翠屋」):主人公の実家。両親が経営。
- 名探偵コナン(喫茶「ポアロ」):安室透と榎本梓が働いている。
- ハヤテのごとく!、それが声優!(喫茶店「どんぐり」):加賀北斗が店長。桂ヒナギク・綾崎ハヤテ・三千院ナギ・西沢歩のバイト先。
- ひなこのーと(喫茶「ひととせ」):真雪が事実上の経営者で、ひな子が時折バイトしている。
- ふらいんぐうぃっち(喫茶「コンクルシオ」):杏子が経営者の母と共に働いており、真琴達が常連客。
- ペルソナ5(純喫茶「ルブラン」):主人公の家となる場所であり、佐倉惣治郎が経営。
- ヨコハマ買い出し紀行:経営する主人公自身が「ほぼコーヒー付き展望台」というほどお客は来ないが(3日に1~2人)、一応喫茶店である。
- ラブライブ!スーパースター!!:かのんの実家で母が経営者。Liella!メンバーがミーティングの際に利用することもある。
- リコリス・リコイル(喫茶「リコリコ」):Direct Attackの支部。ミカが店長で、錦木千束、井ノ上たきな、クルミ、中原ミズキが働いている。