「アニキ、南を賭けてボクと男と男の先が長い勝負をしよう!」
概要
CV:難波圭一
明青学園野球部に所属し、ポジションは投手。高校一年時からエースの座を和也が入部するまでエースだったキャプテン・黒木武からアッサリと譲られ(その後、黒木は三塁手に自主的にコンバートし、打順は変わらず4番)、中等部時代から付き合ってきた捕手・松平孝太郎とバッテリーを組む相棒関係となり、甲子園初出場を目指し野球漬けな日々を送ると同時に勉学にも意欲的に勤しむ。
野球や勉強に関しては大変な努力家で負けず嫌いで妥協を許さないところがあり、成績優秀でスポーツもできる優等生で、男女子問わず大変好かれ信頼されている。
基本的には自分のことよりも周りの人々に対し気配りができる大変優しい性格のジェントルマンで、その点では双子な兄・達也と遜色が全然ないが、達也と決定的に違うのは自分が好きなモノ・欲しいモノ(浅倉南)に対し素直に遠慮なく欲しいと積極的に主張できる処である。
達也が自分より才能があるにもかかわらず、自分のために三枚目をワザと演じたりしていることも、達也に対する南の密かな想いも、達也が南を自分に戦わずして譲ろうとしていることも昔からすでに気づいていた。そんな煮え切らないほど優しすぎる優柔不断な達也に業を煮やしており、南との結婚を賭けてその気にさせようと原田正平同様、達也に奮起を促すよう何度も挑発し続けた。
自分が勝とうと負けようと、南を賭けた男と男のサシな勝負を達也に正々堂々と挑むことを高らかに宣言し、まず自分が甲子園を南にプレゼントすることで南のハートを先に射止めようとしていた。この頃の達也・和也・南はそれぞれお互いを尊重し合いながらも、各々他人には打ち明けられないジレンマも同時に抱える複雑な三角関係を呈していた。
そんな三人の中でも、達也のジレンマは和也と南のそれよりも全編を通じて遥かに上回っていた。ただ、達也に挑んだとする和也の「勝負」は達也の了承を聞かぬままに和也が一方的な宣告をした事で勃発したもの(つまり達也自身が納得して持ち込まれている「勝負」ではない)であるため、その成立に関しては後述の一件から疑問符が残る結果としてなっている。
ただ、この勝負を成立させたとしても達也は今まで通り「勝負などせず、最初から降りて、和也に勝ちを譲る」という、南と和也にとっては残酷な優しさを叩きつけ「自分(達也)だけが悪者になればいい」として終わる可能性の方が高かった。(もちろん、それは和也が望んだ結果ではない)
和也は達也にとっては、どこまでも「よくできた自慢の弟」であり、そして家族として「守りたかった宝物」でもあり「栄光を掴むべき弟」にして「自分が邪魔をしてはいけない、大事な家族」という、いわば掌中の珠のような存在と言えた。(それがまた、達也の事を同様に思い「自慢の兄」でいて欲しい和也のジレンマにもなっているのだが)ゆえに、後に自身が和也の代理として表舞台に立った達也は、その事自体にも大きなジレンマ(罪悪感)を抱え、のちの監督代行の言説(誘惑)に直面した時には、心の中で「お前(和也)が引きずり落としたくなるような弟だったらよかったのに 」と、こぼしている。
あまりにも早すぎた最期
高校一年時の夏、甲子園行きが懸かった西東京予選決勝戦の新田明男擁する須見工業高校戦の日に、子供をかばって車にはねられ帰らぬ人になってしまった。和也の遺体が置かれた霊安室で茫然とする達也の
「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで。」
「たいしたキズもないのに。ただ、ちょっと打ちどころが悪かっただけで…もう動かないんだぜ」
という一連のセリフが弟を失った悲しみと虚無感を物語っていよう。
和也の死は上杉家・浅倉家は無論なこと、明青学園高等部と高校野球界、そして最強のライバル・新田明男にも大きな衝撃を与えてしまった。また彼の死は和也と達也が南を賭けて、正々堂々真正面から奪い合うという約束を交わし和解した(と、和也自身は思っていた)矢先の出来事であった。
和也の死のショックを境に、達也と南、そして明青学園高等部とそれに携わる関係者の運命そのものに暗い影を落としてしまい、特に公私共に信頼し合う相棒だった孝太郎に至っては『和也(エース)がいない野球部なんて…』と退部を考えるほどにまで引きずっていた。そして約2年後にやってくるあの鬼監督にも多かれ少なかれいろいろな意味で影響していくことにもなる。
余談
作者のあだち充によれば、和也を死なせる事は最初から決めており、タイトルのタッチには「バトンタッチ」という意味が込められているとの事である。連載当時に担当編集者から「人気のあるキャラだから絶対死なせるな」と散々言われていたが、死亡が確定した完成原稿を置いて一時的に逃亡したと語っている(捕まったら死なないverを描かされると思ったから)。
因みに水曜日のダウンタウンによる「野球漫画史上最強の防御率NO.1投手ランキング企画」では52イニング1失点で防御率0.17で1位に輝いた。
2位の立花投馬81イニング3失点で0.33であったため圧倒的な数字である。
関連タグ
本田茂治…彼と同様、作中で事故死した野球漫画の登場人物且つ主人公の血縁者繋がり(ついでに掲載雑誌も同じで彼もまた作品初期における事実上の主人公ポジションであった)。
猪狩進…ポジションは捕手だが紳士的な弟キャラでシリーズによっては交通事故に遭うといった共通点があり、和也がモデルの一人になっていると思われる。
久保嘉晴…シュート!の主要人物で、若くして早逝し、舞台外で落命し、死後も登場人物に影響を与えた共通点と、伝説の11人抜きを決め往生した相違点があり。