忘れたのか、オレはおまえが嫌いだ
こんな写真をベンチに飾って満足するのは、お前らの感傷だけだ
そんなもんで、本望だの成仏だのと……勝手に整理をつけられちゃ、たまらねぇ
華やかな舞台に立った兄を、暗闇で見つめる弟の気持ちが解るか?
CV:田中秀幸
概要
野球漫画『タッチ』における最重要人物のひとり。2年生まで主人公たちを指導し続けてきた西尾茂則監督が体調不良を起こした事を理由に、彼に代わり明青学園野球部に赴任してきた監督代行。
高校3年生編から登場する、同作最終章のキーキャラクターのひとり。
復讐に燃える鬼監督
本当は兄の柏葉英一郎が監督代行になるはずだったが手違いで就任した。3歳年上の兄・英一郎が才能に優れ親の愛情を受けているせいで、嫉妬からグレて中学時代は不良として素行が悪かった。特に英一郎が高3・英二郎が中3の時に、英二郎が起こしたとされる「バイク事故」を原因として英二郎が明青学園高等部に入学したあとに野球部部員から陰湿なイジメを受け、ついに我慢できず当時の3年生エースを殴ったことが原因で退部に追い込まれる。さらに、この一件を原因として幼馴染であったガールフレンドも兄にとられてしまう。(現在、この元カノは兄嫁となっている)。 達也の親友・原田正平の叔父とは同級生だった。
就任後は、西尾が入院中で不在であり、就任の条件として学校側に口出しを一切しないことを必須条件にさせていたため、『他校のエース(西村勇)を竹刀で殴り負傷させる』、『拷問に近いシゴキを加える』(結果、明青野球部は1年2年部員の退部・退学が相次ぎ、2年は全滅し1年も運動音痴の佐々木だけがマネージャー見習いとして残るという「伝統を受け継げない状態」すなわち存続の危機に陥った)、『昼間のグランドでも平然と飲酒する』、『西尾監督の承認を得て新体操部と掛け持ちしていたマネージャーの南を独断で退部させる』、『卒業生から寄贈されたピッチングマシンや道具を自らの手で焼却する』、『甲子園予選で体力・野球技能共に部内で最も劣っている佐々木を先発投手に起用し、コールド負け寸前まで追い込む』『キャッチャーフライの捕球練習で、孝太郎の肩を負傷させる』など、その横暴さを次第にエスカレートさせていく。
達也と南にその過去や経緯が知られ、復讐の為に野球部監督代行に就任し、故意に部員たちを虐待していると疑われ、反感を持たれている。だがその一方で、西村勇のカーブを見切ったり、達也と対戦した際には見事なバッティングやピッチングを見せるなど、こと野球に関しては確かな技術と才能を誇る。
また真偽不明であるが、登場初期のテロップで担当声優が故・井上真樹夫と誤植されていたとの噂もあった。(本放送当時のテロップで再放送時には訂正されたと言われている。)
関連タグ
類似キャラクター
横賀高校監督 シュート!で、高一の冬季大会で掛川高校と対戦した相手。柏葉英二郎のそっくりさんで、本家よりヒール性が増加。不良高校の横賀高校を強権で纏め上げ、掛高を苦戦させ、田仲俊彦のハットトリックを阻止した。名無しなのが気の毒。
鬼監督の真実
(以下、ネタバレ注意)
達也「・・・なら、いっそのこと徹底的に嫌われてみたいものですね」
「だったら、甲子園に行くんだな」
のちに準決勝で明青の快進撃に駆け付けた明青野球部OBの島と森田(英一郎の2つ年下、英二郎の1つ年上)の登場によって、とんでもない真相が明かされる。
実は英二郎が中学3年生の時に起こした事故とは兄の英一郎が高校3年生の時に起こした事故だったのである。さらにその当時、英一郎は地域において「有力選手のひとりにして優等生」として注目されていた。このスキャンダルが英一郎の人生の傷になる事を恐れた柏葉兄弟の両親は、よりにもよって事故を揉み消すために当時は既に真面目になっていた弟の英二郎を「どうせ英二郎は今までさんざん家族に迷惑をかけてきたのだから、今更傷のひとつふたつ増えたってどうってことはないだろう 」と身代わりに据えたのであった。(ちなみに現実でコレをやると犯人隠避という犯罪行為になるが……)
そして当時の明青野球部で行われた英二郎へのイジメは、英一郎より有能であった英二郎が甲子園に出る事によって英二郎に注目が集まり、万が一にもこの事実がマスコミに暴かれて露呈することを怖れた兄・英一郎が体育会系によくある上意下達とOBの権威により直属の後輩であった島や森田たちに直接指示でやらせた事であった。
つまり「誰からも慕われる最高の人格者にして有能なエース・柏葉英一郎」とは、実は「弟の人生を喰い物にし、その犠牲のもとに人格者の仮面をかぶり、それを当然として良心の呵責も感じる事無く栄誉をのうのうと手にして、その人面の良さから来る対人関係の器用さを悪用して弟の全てを奪いつくして、それを苗床に更なる栄誉と名声を得続けたというクズ心根を持った正真正銘なゲス兄貴」だったのである。
なお、アニメ版では大人の事情でも働いたせいなのか「イジメは英二郎の才能を妬み、英一郎より有能な英二郎が一年生でエースに君臨させないようにするために、英一郎の存在で控え投手に常に回された英一郎の1つ年下のエース候補生の指示で行われたこと」に設定変更されている。
島と森田との再会によって、その事実を彼らに改めて突きつけた英二郎は『的外れな心配するんじゃねえ!このオレが何のためにあんなガキども(達也たち)と付き合っていると思っているんだ?貴様らが明青野球部OBなどと人前でとても恥ずかしくて言えないようにしてやるためさ!わかったか?』と明青野球部監督を引き受けた偽らざる事実と本音を洗いざらいブチまけた(※)。
その恨み節を鉄拳と共に聞かされた島と森田は「でもあの子たち(達也たち)に罪はないだろう!悔いが残らない試合を(彼らに)精一杯やらせてくれよ!」と英二郎に懇願したが、『そのセリフは(オレの)高校時代に聞きたかったぜ!』と冷たくあしらう。自分を冷遇した先輩たちに対する英二郎の憎悪が露になった瞬間でもあった。
※実際、もし一連の所業がマスコミ沙汰にでもなれば、野球部はよくて当分出場停止、最悪廃部になりかねない不祥事となり、止めなかった学園側にも大打撃となったことは容易に想像できる。英二郎本人も刑事事件沙汰になる恐れもある(もっとも、それも承知だったのかもしれないが)。
さらに後、眼に重い病を抱え、放っておけば失明に至る事も発覚する。サングラスは眼に負担をかけないためのものでもあった。
そして、達也を特に嫌い辛く当たっていたのは、傍目(世間的)には「弟の死という犠牲を超えて甲子園という夢の舞台に立とうとしている兄」として見える達也に、(実際の事情や本人の心境はともかくとして)「弟(自分)を犠牲にして栄光を得た兄」という兄の写し身を見てしまったため。だが達也にはそんな(弟の死を踏み台にして栄光を得たい、とする)思いは無いため、英二郎の達也への嫌がらせは実際には努力の方向音痴にも等しい八つ当たりに過ぎないものであった。そして実は自分が最も嫌っていた達也こそが、自分に最も似ている人物であり、自分を理解できている者である事を試合中の会話を通して理解してしまう。そして、それは達也もまた同様であった。
復讐と夢の狭間で葛藤するジレンマ
予選決勝戦前日、体調不良から復帰して退院した西尾監督から「ワシは高校野球が大好きじゃ。明青野球部を心底から愛している。そして、ただそれだけの監督じゃ。このバカ監督のおかげで、その才能を開花させることなく去っていった部員たちも数え切れないほどおるじゃろう。人をほんとうに見抜く力などワシにはない。だから信じるだけじゃ。須見工に勝つために必要なのはワシではない。本物の監督じゃ」と決勝戦の指揮を正式に任される。
そして西尾監督は「後は任せたぞ、柏葉英二郎。」と、柏葉英一郎ではなく柏葉英二郎に監督として高校時代に置いてきた自らの正しい夢と向き合いこれを叶えるように促した。実は西尾監督は退院直後に英二郎の過去のイジメなどの一連の真実をすでに調べており、英二郎のなりすましや心境にも気づいており、その言葉は先述の語りも含めて、かつて英二郎に苦難を強いた明青野球部の監督としての心からの謝罪と償いであった(このため、西尾監督は後に島と森田から英二郎の件を告発された際もはねのけた)。他ならぬ西尾監督による懺悔と謝罪という事実に直面して英二郎は衝撃を受ける。
……
西尾監督の謝罪に加えて、病の進行、しごきにも負けない部員たちの成長と全幅なる信頼、取るに足らない運動音痴としてベンチにも入れられなかった身でありながら、現実を受け入れて腐ること無くせめて自分に出来る事で先輩たちの助けになりたいとして試合や大会のデータを密かに分析してまとめていた佐々木の存在、事情を知るもその心境まで理解してなお英二郎に期待し「もっと素直になってくれると助かるんですがね」と促した達也の存在などで心境が少しずつ変化していた英二郎は、決勝戦で遂に視力をほぼ失うも最初で最後となったが、的確な采配を出し(その裏には佐々木がまとめていた分析データが大きな助けとなっている)野球部を勝利に導いた。
その後は治療のため一線を退いたが、見舞いに来た達也にいつものよう憎まれ口をたたくその姿は、どこか吹っ切れた様子だった。
治療に成功したかは明記されていないが甲子園の開会式当日に退院、明青野球部を応援するためと「自身の夢と復讐」にケリをつけるために甲子園へ旅立った。
タッチにおける影の主人公として位置付けられている、同作のアンチテーゼを体現しているキャラクター。そのため読者から見れば主人公たちを頭から否定して試練を与えるという、いわば憎まれ役(ただし、上記の通り結果としてそうなっただけであり、憎まれ役と言うより敵役と言った方が近い)。
その一方で、野球では明青学園高等部を地区予選西東京大会優勝(甲子園初出場)に導いた指導者兼功労者であり、恋愛では上杉達也・上杉和也・浅倉南の複雑な三角関係の心理面を把握するなど、タッチを語る上では絶対に外すことができない人物でもある。