概要
コンセプトカフェの一種に分類される。
喫茶店(喫茶スペース)に「お屋敷」(邸宅)というコンセプトを設定し、配膳など接客サービス(給仕)を行う女性従業員(もしくは女装した男性)はそのお屋敷の使用人であるメイド、利用客は「ご主人様」/「お嬢様」と役割を見立て、店内でのロールプレイを楽しむというもの。
接客担当はメイド服を着用しており、店舗の内装も洋館風になっていたり、アニメやゲームの世界観に寄せたものになっていたりする。メイド服は古典的な「仕事着」であるヴィクトリアンメイド型のものというよりは、レースとフリルを多用したり、スカートがミニ丈であったりと、非日常の衣装としてセクシーさや可愛らしさを追求したフレンチメイド型のことが多い。
飲食物のメニューは一般的な喫茶店とあまり変わらないが、メイド(従業員)が愛らしいメイド服を制服として「萌え」要素を追求した距離の近い接客スタイルであることが大きな特徴である。ただし接客などは普通で「あくまで店員の制服がメイド服(風)なだけ」という店や、店員がコスプレでの接客を行うが、複数ある内の一つとしてメイド服を採用しているという店も存在しており「メイド喫茶」の指すところの幅は広い。
また2000年代半ばからは、同様の形態でカフェバーや居酒屋といった夜間の営業を中心とする店や、個室マッサージ、キャバクラ然とした「水商売」系の業態の店が増え、「喫茶」という名称とはかけ離れている場合も多い。
同様のコンセプトを持ち、男性従業員(もしくは男装した女性)が執事に扮して接客を担当するものは「執事喫茶」と呼ばれる。
成り立ち
1990年代の前半~半ばにかけて「禁断の血族」(1993年 シーズウェア)、「河原崎家の一族」(1993年 シルキーズ)、「GLO・RI・A~禁断の血族~」(1996年 シーズウェア。「禁断の血族」の続編)など、洋館を舞台にした成人男性向けのPCゲームが販売されており、これらの作品で(あくまでサブという形ではあるが)メイドキャラがヒロインとなっていたことから、萌え要素の一つとしての「メイド」が少しずつ認知されるようになっていた。
その後登場するメインヒロインが全員メイドである「殻の中の小鳥」(1996年 BLACKPACKAGE)、さらにその続編である「雛鳥の囀」(1997年 STUDiO B-ROOM)が登場・ヒットしたことによって、オタク文化の中でメイドが1つのジャンルとして確立される(※ただし、両作品のメイドは厳密にはメイドの姿を借りた娼婦で、舞台は高級娼館である)。
2000年代初頭からは「まほろまてぃっく」や「花右京メイド隊」など、一般向けでもメイドをメインヒロインにしたコンテンツが世に出るようになった。
さらに1990年代には関東を中心に展開された「アンナミラーズ」や「馬車道」、名古屋の大須では巫女姿のウェイトレスが給仕する「大須の巫女茶屋」という店が話題になるなど、飲食店の個性的な制服が注目されており、ウェイトレス同士が戦う成人男性向け格闘ゲーム「V.G.-ヴァリアブル・ジオ-」(1993年 戯画)や、ファミリーレストランを舞台にした成人男性向け恋愛SLG「Piaキャロットへようこそ!!(1996年 カクテルソフト)」のように商業作品のモチーフとして取り入れられていたほか、同人誌即売会でもウェイトレスのコスプレをするなどオタク文化の一つとして有名となっていた。これも「個性的な制服」の一種であるメイド服人気に大いに影響したと考えられる。
「Piaキャロットへようこそ!!」の続編「Piaキャロットへようこそ!!2(1997年 カクテルソフト)」もヒットし、その人気から1999年には秋葉原にあったゲーマーズスクエア店の6階にて、同作品をモデルとした「Piaキャロットレストラン」が期間限定でオープン。これが、メイドカフェの元祖と呼ばれる「CURE MAID CAFE」の原型となった(その後20001年にゲーマーズが他の場所へ移動し、代わりにコスプレ衣装やアパレルを中心としたアニメグッズを取り扱うコスパが入所。これより「CURE MAID CAFE」は独立した店舗として運営)。
2001年は前述の「まほろまてぃっく・「花右京メイド隊」が続けてテレビアニメ化した年でもあり、当時、いかにメイドが人気だったかが窺え、アニメやゲームを愛好するオタクが集まる秋葉原で飲食店を経営するにあたり、メイド服を制服として採用するのは自然な発想だったと言える。
また、「お客様にゆっくりしてもらう」ために、お店のコンセプトを「癒し」にした点も、メイド服が制服となった理由のひとつとも考えられる。
事実、1990年代〜2000年代はじめの秋葉原は飲食店自体が非常に少なく、懐具合の厳しい人たちの間では、「(牛丼が美味しくないことで知られる)牛丼屋・サンボの生卵に中らなかったら一人前の秋葉人」などという皮肉が話されていたほどであった。秋葉原を訪れたオタクたちが、一人または少数のグループでも入りやすく、ゆっくり美味しく食事を楽しむためには喫茶店のような空間が必要不可欠であり、これが折からのメイド人気と合わさって「メイドさんが接客する入りやすくて落ち着いた雰囲気の喫茶店」というメイド喫茶そのもののコンセプトを生み出したといえる。
2002年には、パソコン専門店のT-ZONEによる新事業としてメイドが接客を行う「Mary's」→「Cafe Mai:lish」(※2005年にT-ZONEは業務停止し、同社から独立した株式会社メイリッシュによる運営に切り替わっている)が、2003年にはコスプレ姿の店員が働く「Cos-Cha」がそれぞれ秋葉原にオープンすると、類似のスタイルの飲食店が次々と現れ、一連の店は「メイド喫茶」ないし「メイドカフェ」と呼ばれるようになった。
2004年には「Cafe Mai:lish吉祥寺店」がわずか1年ほどで閉店し、それ以外の店もいくつか閉店したため、客の大半の層であるオタクたちからも間もなくメイド喫茶ブームは終結・衰退するものと見られていた。
しかし、2005年頃から『電車男』の実写化(原作となる2ちゃんねるへの書き込みは2004年の3月~5月)をきっかけとした、一般人を巻き込む形でのアキバブームが起こり、メイド喫茶やコンセプトを引き継いだ喫茶以外の形態の店も爆発的に増加。フィクションにおけるメイド人気も長く継続することとなった。
ちなみに、元祖と言われる「CURE MAID CAFE」の場合、その
誕生の経緯もあって、新作アニメ・ゲームなどのPRを兼ねたコラボ企画がたまにある以外は「制服がメイド服というだけの普通の喫茶店」である。このため、完璧にメイドさんのいる洋館を再現したクラシカルな空間を期待して行って空調の配管が剥き出しの黒い天井にがっかりしたり、自分が「ご主人様」として扱われるものと勝手に勘違いしたりした客が不満をネット上に書き込むことも多かった。
しかし、当時のそういったメイドカフェに対する勘違いや不満や要望が、逆に後発の店にとっては他店との差別化を図る重要なコンセプトとなり「@ほぉ~むカフェ」のようにメイドとのコミュニケーションを売りにする店や、池袋にある「Wonder Parlour Cafe」のような、本格的な洋館とその使用人であるメイドを再現したクラシカルな雰囲気が漂う店を登場させることにも繋がった。
2024年現在はメイド以外のコンセプトカフェが多数存在することもあって全体としては下火となっているが、古くからの店舗も残っており、メイド喫茶文化は秋葉原にとどまらず日本全国、ひいては海外にまで波及している。
また近年は、文化祭の出し物の定番の一つとなっており、フィクションやノンフィクションでもよく登場している。
著名なメイド喫茶
関連タグ
メイド喫茶(メイドカフェ)がテーマ、舞台の作品
会長はメイド様!:アニメでは主人公がメイド喫茶「メイド・ラテ」でバイトする描写が原作より大幅に増え、第二の舞台となっている。
ドリームクラブ:当初、演出やホストガールの雰囲気から「これはキャバクラでは」と指摘された際に、公式から「キャバクラではなくメイドカフェのようなもの」と説明された。