概要
円谷プロが『怪奇大作戦』に続いて製作した、本格オムニバスホラーの大人向け1時間ドラマ。フジテレビ、テレビ西日本(ほか)で1973年1月8日~4月2日まで、毎週月曜日23:15~00:10に放送された。全13話。
映像でのタイトル表記は「劇」が略字表記になっている。
ただし制作は1969年で、ゴールデンタイムでの放送を想定していたのだが、過激な恐怖描写故にに「スポンサーが付きにくい」などの理由でお蔵入りになっていたもので、円谷プロ10周年の1973年にようやく日の目を見ることとなった。同時に青島幸男による解説が新たに撮り起こされ、各話の冒頭と最後に挿入された。
そうした経緯もあってか『ウルトラQ』同様制作順と放映順が異なっており、制作第7話「死を予告する女」まではオリジナル脚本によるホラー、制作第8話「猫は知っていた」以降はミステリー小説を原作としたサスペンスとなっている。
最初期の企画ではタイトルは『ホラーX』。子供向けを意識した30分のオムニバスドラマで、天本英世が案内人メフィストとしてしゃべる人形に怖い話を聞かせるという形で物語が展開される、という構想だった。
その後『ウルトラQ』の初期構想である『UNBALANCE』に近いSFミステリー『クレイジーゾーン』を経て20時代以降放送の60分枠に企画が改められ、『恐怖劇場アンバランス・ゾーン』に至った。
当初はスナック「アンバランス」を舞台に常連客が怖い話を語ったり怪事件に巻き込まれたりするというレギュラーキャストを想定した作りになっていた。
円谷プロの作品としては珍しく東宝出身の監督が一切参加しておらず、10人中5人が日活出身の監督である。
水俣病、人肉食など過激なテーマを扱ったために映像化に至らなかった脚本も複数存在する。このうち千束北男による没脚本「幽霊船の女」は、1978年9月3日にフジテレビ系列局(ただし一部系列局除く)で放送された、「日曜恐怖シリーズ」のプログラムのひとつである「怪しの海」の原案となった。
また土曜ワイド劇場(一部系列局除くテレビ朝日系列局ほか)でも、第12話「墓場から呪いの手」が「白い手、美しい手、呪いの手」としてリメイクされたほか、第13話「蜘蛛の女」のコンセプトを流用した「怪奇!巨大蜘蛛の館」が制作・放送されている。
各話リスト
話数 | サブタイトル | 制作No. | 原作 | 脚本 | 監督 |
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第1話 | 木乃伊(みいら)の恋 | 10 | 円地文子『二世の縁 拾遺』 | 田中陽造 | 鈴木清順 |
第2話 | 死を予告する女 | 7 | 小山内美江子 | 藤田敏八 | |
第3話 | 殺しのゲーム | 9 | 西村京太郎『殺しのゲーム』 | 若槻文三 | 長谷部安春 |
第4話 | 仮面の墓場 | 6 | 市川森一 | 山際永三 | |
第5話 | 死骸(しかばね)を呼ぶ女 | 5 | 山崎忠昭 | 神代辰巳 | |
第6話 | 地方紙を買う女 | 11 | 松本清張『地方紙を買う女』 | 小山内美江子 | 森川時久、満田かずほ(監督補) |
第7話 | 夜が明けたら | 12 | 山田風太郎「黒幕」(連作集『夜よりほかに聴くものもなし』第六話) | 滝沢真里 | 黒木和雄 |
第8話 | 猫は知っていた | 8 | 仁木悦子『猫は知っていた』 | 満田かずほ | 満田かずほ |
第9話 | 死体置場(モルグ)の殺人者 | 3 | 山浦弘靖 | 長谷部安春 | |
第10話 | サラリーマンの勲章 | 13 | 樹下太郎『消失計画』(連作集『サラリーマンの勲章』より) | 上原正三 | 満田かずほ |
第11話 | 吸血鬼の絶叫 | 2 | 若槻文三 | 鈴木英夫 | |
第12話 | 墓場から呪いの手 | 1 | 若槻文三 | 満田かずほ | |
第13話 | 蜘蛛の女 | 4 | 滝沢真里 | 井田探 |
未映像化作品
:台本印刷なし
サブタイトル | 脚本家 | 制作No. | 内容 |
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朱色の子守唄 | 上原正三 | 不明 | 犬神憑きと水俣病を題材にした作品 |
月下美人屋敷狂い | 上原正三 | 不明 | 人肉を肥料に育った月下美人の樹液で永遠の若さを保とうともくろむ、女の妄執を描く物語。 |
タイトル不明 | 山崎忠昭 | 不明 | ブードゥー教の呪いを題材とした作品。 |
タイトル不明 | 山崎忠昭 | 不明 | 猿の脳みそを食べた美食家が、猿の霊に祟られる物語。 |
:印刷台本が存在する作品
サブタイトル | 脚本家 | 予定監督 | 脚本No. | 内容 |
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幽霊船の女 | 千束北男 | 満田かずほ | 2. | ヨットで航行中に遭難した青年が、中世の八幡船とそこに住む美女(正体は巨大蜘蛛)に遭遇する。 |
埋葬された女 | 若槻文三 | 鈴木英夫 | 2. | 若い男女の吸血鬼(生前は恋人同士だった)が登場する。偶然、女吸血鬼と写真に映りこんでしまった平凡な夫婦が、執拗に付け狙われる恐怖を描く。 |
人形が死ぬとき | 広山明志 | 不明 | 6. | 『怪奇大作戦』7話「青い血の女」を想起させる殺人人形もの。一家三人を轢き殺して逃げ去った男女4人が、犠牲者の少女が持っていた人形に復讐されていく展開は、「死体置場の殺人者」に類似している。 |
おそろしき手鞠唄 | 上原正三 | 真船禎 | 9. | 幼い娘を殺された母親が、娘の遺体を食らう事で犯人が誰かを突き止め、復讐する。準備稿タイトルは「人肉を食う女」 |
関連項目
土曜ワイド劇場…先述の通り本作のエピソードのいくつかがリメイクされた。
鶴ひろみ…子役時代に本作でデビューした。
ウルトラQ…企画時のタイトルは「UNBALANCE(アンバランス)」、自然界のバランスが崩れた事で、怪獣をはじめとする様々な怪奇な事件が発生するという意味合いのタイトルだった。本作で再び「アンバランス」という単語が、タイトルに用いられる事となる。
ウルトラファイト…タイトルバックの炎が同作タイトルバックに流用された。
ジキルとハイド…翻案ドラマ版が本作同様、制作から3年間放送出来ないでいた。放送時期・放送局も共通。フジテレビはこれに『無宿侍』を加えた3作を「五社英雄アワー」というシリーズで売り出す構想だった。