概要
1959年に毎日放送製作、フジテレビ系列で放送された『鉄腕アトム』の実写ドラマ版。5部構成全65話。内14話、19話、34話、46話、48話がフィルム紛失により欠落している。
戦前から円谷英二と組み、東宝でプロデューサー業を務めていた松崎啓次が独立して立ち上げた「松崎プロダクション」によって製作された。
特撮部分は松崎によって旧知の仲である円谷に企画が持ち込まれ、当初は円谷が特撮を担当する方向で広報が行われる予定だったが叶わず円谷は「監修」の形にまわり、円谷特技研究所(のちの円谷プロダクション)のスタッフによってミニチュア撮影などの特殊撮影が行われている。アトムの飛行シーンの撮影には苦労しており、第一部と第二部以降のコスチュームに合わせて人形が作られ、この人形によるミニチュア撮影と瀬川と背景の合成撮影を併用した。足からのジェット噴射描写は、各巻により煙や火花だったりと統一されていなかった。
オープニング映像の「ロボットの発達史」と「ロボット法」の部分はアニメーションで制作されており『鉄腕アトム』としてはアニメ第1作よりも早い初のアニメ化である。
主人公のアトムは当時劇団こじかに所属していた子役の瀬川雅人がスーツを着用して演じており、原作漫画が連載されていた『少年』によると、当時瀬川が住んでいた家の住所まで紹介されていた。
ストーリーは原作のようなSF要素よりもギャング団との戦いが中心となるなど当時の探偵ヒーローものに準じた内容となっている。原作では物語の舞台は21世紀となっているが、第二部最終回でのアトムの台詞によると、本作品の時代背景は放送年と同じ1959年となっている。
一方でお茶の水博士や田鷲警部などおなじみのキャラクターも登場する。
キャスト
スタッフ
脚本:渋谷五十八、岩田重利、コオロギハルヲ、宮川一郎、坂巻昇、志波裕之
演奏:楽団ブルーコーツ
照明:伊藤一夫
録音:KRC
OPアニメーション(第一部):村田安司(「村田漫画」)
製作主任:二宮吉朗
演出助手:恩田圭一
影響
一年放映、全65話と人気自体は高かったものの作者である手塚治虫は「原作のイメージとあまりにもかけ離れている」と批判しており、のちのアニメ版アトム製作の原動力となったという。
その後、1966年に今度はピー・プロダクションがマグマ大使の実写化を持ちかけられた際には、この実写アトムへの不信感から手塚は当初『ビッグX』の実写化を逆提案した。
だが、実際に製作された『マグマ大使』は手塚も絶賛する出来となり、実写化への悪印象が払拭された手塚は、1972年に今度は自ら実写版アトムの製作を検討したという。