これは、いずれ「天才」と言われる二人の「日常」
誰も知らない アトム誕生の物語
概要
2015年より『月刊ヒーローズ』連載中のカサハラテツローによる漫画。デザイン・コンセプトワークスにゆうきまさみが携わっている。正式タイトルは『アトム ザ・ビギニング』。
誰もが知る手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』のプロローグを描いた作品であり、手塚治虫の息子にして現手塚プロダクション取締役である手塚眞が監修を行っている。
つまり、手塚プロ公認の前日譚である。
特色
本作はお茶の水博士と天馬博士の学生時代の悲喜こもごもを描いた物語であり、後のアトムの原型となるA106を主人公としている。
「天馬博士の家系は代々馬鈴薯栽培を営む」などと言った、微細なネタが数多く登場しており、『アトム』に登場するキャラクターたちの青春時代や、ロボットのプロトタイプが描かれている。
作品には白黒版アトムやジェッターマルスなどのアニメ作品のオマージュも数多く見受けられる。
(例)天馬とお茶の水がお互いを信頼している証として鼻を摘まみ合うシーンは原作漫画の回想シーンにも似たような演出が登場しているため、それのオマージュと思われる。
舞台となる年代は20世紀終盤のようだが、科学技術は21世紀初頭の現代よりもはるかに進んでおり、『アトム』執筆当時の文化をモデルとしたアナクロニズム的な描写は極力オミットされている(オープンリールテープレコーダーとか真空管とか)。
なお、21世紀初頭の『アトム』の描写は殆ど描かれていないものの、第3巻では海中に没したA106が見たバグの映像と言う形で、アトムが誕生する瞬間がオーバーラップされている。
あらすじ
日本中で幾万もの人々が一夜にして命を落とした大災害から5年が経過した。
災害以降、日本では瞬く間にロボット技術が進化していった。官学民合同で機械やAI技術が進歩していく中、日本中の英知が結集する練馬大学のはずれに、二人の名も無き天才が馬力を重ねていた。
一人は、心優しきお茶の水博志。
そしてもう一人は、5年もの飛び級を重ねた天才児・天馬午太郎。
二人の奇妙な科学者の卵たちは、5つの試作機の果てに、自ら思考し進化していく究極のAI「ベウストザイン(自我)」を搭載したアンドロイドを作り出した。そのアンドロイドの名はA106。後に人類を救う英雄のベースとなるそのロボットは、天馬達を狙う謎の怪ロボットとの戦いにいやおうなしに巻き込まれていくこととなる…。
登場人物
第7研究室
大災害で両親を亡くし、ロボットを「人間を超える者」として考え、至高のAIを作ろうと躍起になっている。プライドが高く思い込みが激しいが、どこかヌケた一面も…。
5年ほど飛び級しており、年齢的には新入生と同世代。
ロボットを「友達」だと考える心優しき技術者で、天馬とは時には喧嘩しながらも
夢を育てようと悪戦苦闘している。また、身近な対象には自分なりの愛称を付ける癖がある。
御茶ノ水の妹。勝手に研究室に出入りしている。高校生だが小学生みたいな体格をしている。機械いじりが大好きで寡黙。
A10シリーズ
本作の主人公(?)。1000馬力(大型トラック2台分)と独自進化する自我・ベヴストザインを持つ。
ロボットプロレス(ロボレス)に出場した際に「心優しき科学の子」の異名が付けられた。
様々な仲間や敵との邂逅を重ね、成長を遂げていく。
余談だが、A106をA・10・6と分けると「ア(A)ト(10)ム(6)」と読むことが出来る。
なお、原作アトムでいた兄弟達は出ていない。
- A101/ハル(CV:丸山有香)
ベヴストザインの元となったコンピュータープログラム。実体はない。
現在は第7研究室の管理システムとして流用されている。
- A102/二郎
空を飛ぶ自立型ドローン。
- A103/コブくん
蛇型のドローン。
- A104/ポチ
四足走行型のドローン。
- A105/チョロギ
シックスの兄弟機。
諸事情により封印されており、午太郎や博志に黒歴史扱いされている。
- A107/ユウラン
シックスの後継機。蘭や茂斗子が開発に参加したことで女性的な要素が加わり、シックスの”妹”と設定された。スペックはシックスを大幅に上回る3000馬力だが、エネルギー消費量に難を抱えている。
第1研究室
練馬大学一の秀才。イケメンでさわやかだが、実は陰で第7研究室を「クズは伝染する」と見下している。足が不自由で、ロボチェアに乗って移動する。
茂理也の妹で美人女子大生。最初は冷やかしのために第7研究室を訪れたが、次第にA106の研究に勝手に関与していく。本作のヒロイン的存在。
- ばあや
茂斗子に仕える老メイド。若い頃の杵柄が多すぎる女傑。
- 杯戸
第1研究室の研究員で茂理也の腰巾着。短気な性格。おそらく『鉄腕アトム』のロボットランド社長と同一人物。
佐流田一族
練馬大学ロボット工学科教授。鼻つまみ者である第7研究室を唯一擁護しているらしいが…?
- 佐流田月江(CV:能登麻美子)
佐流田教授の娘。幼い頃に事故で頭の右半分を吹き飛ばされ(そのため、顔の右半分を髪で覆うことで隠している)、サイボーグとして甦った。国際犯罪調査組織「ICE」所属。実は娘(星江)もいる。
マルヒゲ運送
マルヒゲ運送社長。第7コンビのバイト先の上司。アナログなガンコオヤジで、ロボットを嫌っていたが、A106に命を救われたのがきっかけで見直すようになる。外見はモロにアレ。
ちなみに祖父は「白ヒゲ先生」の二つ名を持つ慈善事業を営んでいた町医者で、博志の祖父(お茶爺)が学生時代に世話になっていたらしい。
マルヒゲ運送の一人息子でロボットオタクの少年。蘭の事が好き。好奇心旺盛で運動神経抜群。
後に(ロボット専門とは言え)プロの殺し屋やギャング集団を徒手空拳でぶちのめしたあの先生の若かりし頃である。
何故こんなイケメンが数十年後にはあんな髭親父になろうとは…。
その他人間
マルスの開発設計者にしてオーナー。素性や目的に関しては現時点でも不明な点が多い。
第7研究室をつけ狙う悪人。
WRB(ワールドロボットバトリング)の司会者。
- 大石リンダ(CV:清水彩香)
WRBのアイドル選手。第1世代型ロボット『モヒカーン・バッソ』を操縦する。A106に一瞬で敗北して以来あまりいい感情を抱いていなかったが、彼に助けられたことで態度を改める。
ちなみに原作では下乳まで露出しているかなり過激な服装だったため、アニメ版では露出度が減っている。
- お茶爺
ヒロシの祖父。外見はモロにあの人。ヒロシ同様に優しい心の持ち主で、ロボットと共存できる社会を目指している。
- ピンク
お茶爺が過去に出会ったあるロボットのヒントを知る人物。酒好きで常に呂律が回ってないが、実は超優秀なハッカーにして越南拳法ボビナムの使い手。義姉の経営する労災病院で働いている。
幼いころの姿は完全にアレ。もちろんアレとは手塚スターシステム的な空似。
スーパーロボット
シックスと何度も相対する謎のロボット。優れたAIとゼロニウム合金製の体表、全てを斬り裂く超振動チョップを有する。
Dr.ロロが保有しているらしいが、明らかに軍事企業の援助を受けている。
モデルはジェッターマルス。
- バルト(コピーマルス)
マルスのデータを基に作られた量産型戦闘ロボット。バイクやマシンガンなど人間の武器を利用し集団で相手を追い詰める戦闘ドローン。
名前の由来はアトム2号機のコバルトだが特に設定に共通点は無い。
- ノース
北部スコットランドの科学者・アーロン・ブレムナー伯爵が作った六腕型ロボット。なお「地上最大のロボット」には「ノース2号」が登場する。
第7コンビを追い詰めるスカンク草井がロシア軍から払い下げた軍用ロボット。「イワンのばか」に登場するイワンの試作機に当たる。
後にWRBに別機体が参戦。
「デッドクロス殿下」で登場した機体…だが外見はだいぶ異なる。欧米で開発された自律戦闘兵器で、様々な武器を臨機応変に使い分け闘う。オーストラリア軍で正式に採用されており、WRBでは真っ先に紹介された。
- ディアン
ピンクがゴミ捨て場から拾ってきた警備ロボットの残骸を改造して作った遠隔操作手術ロボット(所謂テレイグジスタンス)であるが、内蔵されたNeva-18型AIにより操縦者なしでも手術を行うことができる。
Neva-18のモデルは『ブラックジャック』の「U-18は知っていた」に登場する巨大医療ロボットU-18と、彼女(?)の故郷であるネバダ州から。
テレビアニメ版
上記でも触れられている通り、2017年4月15日からNHK総合にて放送がスタート。放送は土曜の午後11時~。
スタッフ
総監督 | 本広克行 |
---|---|
監督 | 佐藤竜雄 |
シリーズ構成 | 藤咲淳一 |
キャラクターデザイン | 吉松孝博 |
メカニックデザイン | 常木志伸、石本剛啓、宮崎真一 |
音楽 | 朝倉紀行 |
アニメーション制作 | OLM、Production I.G、SIGNAL.MD |
各話リスト
話数 | サブタイトル | 放送日時 |
---|---|---|
第01話 | 鉄腕起動 | 4月15日 |
第02話 | ベヴストザイン | 4月22日 |
第03話 | それぞれの追跡 | 4月29日 |
第04話 | 練大祭へようこそ | 5月6日 |
第05話 | 激走マルヒゲ運送 | 5月13日 |
第06話 | 7研壊滅す! | 5月20日 |
第07話 | 蘭とTERU姫 | 6月3日 |
第08話 | ロボレス | 6月10日 |
第09話 | シックス戦闘不能 | 6月17日 |
第10話 | バトルロイヤル | 6月24日 |
第11話 | 対話 | 7月1日 |
第12話(終) | ビギニング | 7月8日 |
アニメ放送について
前枠作品と同様にプラチナタイムの全国同時ネット放送という好条件でのオンエアだが、総合テレビでの放送の為、速報性の高いニュースやスポーツ中継等で休止や放送時間の変更になる場合もあるので、その点はご注意願いたい。
なお、4月22日には第2話の放送を前に第1話の再放送が行われた。
5月27日は放送が予定されていなかったため、第1話の再放送が行われるはずだったが、記者会見で潰れた。
関連イラスト
関連動画
公式PV
公式OP・ED視聴動画
関連項目
表記揺れ
アトム・ザ・ビギニング アトム_ザ・ビギニング アトムザビギニング
以下、未アニメ化部分のネタバレ注意
当初から「本作はアトムの前日譚だろう」と思われていたが、話に進むにつれて時代設定は20世紀終盤ではなく作中の西暦はとっくに2003年を過ぎていた事が判明。
作中でアナクロニズム的な描写がほとんど見られないのもこれが理由であり、また『アトム』に登場しない(メタ的に言えば手塚先生の想像力の限界)近未来デバイスが当たり前のように登場するのも、『アトム』が『ビギニング』から技術退化を起こしているのではなく、そもそもスマホやパソコンは『アトム』の世界には無かったという事であった。
そして単行本書きおろしに際して本作は『アトム今昔物語』においてタイムスリップしたアトムが過去に干渉したせいで歴史が分岐した世界であることが判明した為、このまま進んでいったとしても『鉄腕アトム』や『アトム今昔物語』と同一の歴史を辿るとは限らない事が判明した。