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概要編集

謎の人物によって孤島に呼び出された10人の登場人物たちが、連続殺人事件に巻き込まれていくというストーリー。


童謡の「10人の黒人の子 Ten Little Niggers」に基づいた方法で消えていき、最後は歌詞の通り「そして誰もいなくなった」(And Then There Were None)。ちなみに最後の歌詞は「自殺する」と「結婚する」の二通りあり、原作では前者を基にした結末、原作者のクリスティーが手がけた戯曲版では後者を基にした結末が用意されており、原作と戯曲で結末が異なっている。

また、名作故に数度に渡り映画化されているが、そちらも後者が採用されている。


クローズドサークル」(吹雪の山荘や嵐の孤島で数人が閉じ込められた状態)モノの代表作とも言われる作品。(原題:Ten Little Niggers/And Then There Were None)


秀逸な内容や独特の響きがあるタイトルの影響からか、日本のエンターテインメント作品の多くにこの作品のオマージュが見受けられる。

また2017年3月には(舞台を現代日本に置き換えているものの)正真正銘アガサ・クリスティ原作のスペシャルドラマが製作・放送された。



登場人物編集

ローレンス・ウォーグレイブ

高名な元判事。正義感が強い一方で、一部の人間からは『首吊り判事』と呼ばれていた。


ヴェラ・クレイソン

秘書・家庭教師を職業とする娘。オーエンの妻に秘書として雇われた。


フィリップ・ロンバート

元陸軍大尉。とある人物から依頼をうけたアイザック・モリスから依頼を受け、お金欲しさとスリルを求めて引き受けた。


エミリー・ブレント

信仰のあつい老婦人。父親に行儀作法を叩き込まれ、いついかなる時も自ら模範を示すことを信条としている。


マッカーサー将軍

退役の老将軍。三十年前のことが原因で人々から避けられ、それを気にしないよう生活している。


アームストロング

医師。腕と運によって成功するも多忙で、妻には内緒で診てほしいとオーエンから依頼された。


アンソニー・マーストン

遊び好きの青年。酒に女が好きで、車の運転が非常に荒い。


ブロア

元警部。今は探偵をしていて、オーエンの招待した客を監視するために呼ばれ、正体を隠すために初めは名前や出身地を偽っていた。


ロジャース

オーエン家の召使。とはいっても、一週間前に雇われたばかりで、オーエン夫妻に会ったことはない。


ロジャース夫人

ロジャースの妻。常に何かに怯えるような様子を見せるが、料理の腕は皆から絶賛されていた。


あらすじ編集

冒頭では、U・N・オーエンに招待された人物たちがデヴォン州沖にある兵隊島に向かうまでが描かれる。


一部、別の人物から招待されたように見えますが、それらも全てオーエンからのもので、そのからくりは後述する。


各々は船に乗って兵隊島に辿り着き、オーエンの所有していると思われる近代的な邸宅に着きく。


招待された八人はロジャース夫妻によるもてなしを受けますが、オーエン夫妻はそこにはいなかった。


聞くと、ロジャース夫妻は一週間前に雇われたばかりで、オーエン夫妻に会ったことはないという。


特筆すべき点として、各部屋にある額縁に大きな羊皮紙がおさめられていて、そこには以下のような古い子守唄が書かれていた。


差別用語を回避するため「兵隊」を使用する。

  • 十人の兵隊の少年が食事に出かけた
  • 一人が咽喉をつまらせて、九人になった
  • 九人の兵隊の少年がおそくまで起きていた
  • 一人が寝すごして、八人になった
  • 八人の兵隊の少年がデヴァンを旅していた
  • 一人がそこに残って、七人になった
  • 七人の兵隊の少年が薪を割っていた
  • 一人が自分を真っ二つに割って、六人になった
  • 六人の兵隊の少年が蜂の巣をいたずらしていた
  • 蜂が一人を刺して、五人になった
  • 五人の兵隊の少年が法律に夢中になった
  • 一人が大法院に入って、四人になった
  • 四人の兵隊の少年が海に出かけた
  • 一人が燻製のにしんにのまれ、三人になった
  • 三人の兵隊の少年が海に動物園を歩いていた
  • 大熊が一人を抱きしめ、二人になった
  • 二人の兵隊の少年が日向に坐った
  • 一人が陽に焼かれて、一人になった
  • 一人の兵隊の少年が後に残された
  • 彼が首をくくり、後には誰もいなくなった

この時点で、これが何を暗示しているのか見当がつく読者もいると思うが、登場人物たちがそのことに気が付くのはもう少し後。


食事をとる部屋には先ほどの兵隊の少年を模した小さな陶器の人形が十体並べられていて、初めは気の利いたサービスだと皆喜んだ。


ところが食後、誰もがくつろいでいる時に謎の声が部屋に響き渡る。


その声はこの場にいる十人全員が殺人の嫌疑をうけているとして、それぞれ殺害、もしくはその原因を作った相手、そしてその日付が読み上げられる。


声が止み、全員で声の主を探すと、隣の部屋にある蓄音機から声が流れていたことが判明する。


流したのはロジャースで、彼はオーエンの指示に従っただけで、内容までは知らなかった。


レコードには『白鳥の歌』と書かれていた。


それは白鳥が死ぬ間際に歌うという歌で、その時の声が最も美しいのだと言われていて、不吉な予感が辺りを漂う。


誰もが自分は無実だと主張し、こんなことをした犯人をこらしめようと怒りを露にする。


一方で、この場にいる人間は本当に偶然居合わせただけなのかという疑問が湧き、それぞれ誰に招待されたのかを聞く。


すると、オーエン以外に、以下の人物によって招待された人がいることが判明する。


ブレア:ユリック・ノーマン・オーエン


エミリー:オグデンもしくはオリヴァー(『O』という文字から推測)


クリスチャン・ネームはUna Nancy(ユナ ナンシィ)


ここで、オーエンからの手紙もU・N・Owenで、どれも頭文字が共通している。


そして、『UNOwen』は『アンノウェン』と読むことができ、『UN KNOWN(アンノウン)』、つまり『どこのものともわからぬもの』と変換することが出来る。


つまり、誰もが知人などの名前が入っていたことで油断していましたが、得体の知れない相手によってこの島に招待され、今、罪を暴露されている。


また、先ほどの声が挙げた名前にブレラの名前があったことで、彼が偽名を使っていたことが判明する。


彼はオーエン夫人の持つ宝石を守るために、招待された客を監視する役目を受け持っていた。


もちろん、それも彼を呼ぶための口実だった。


登場人物の過去の罪編集

ウォーグレイブが中心となって調査が始まり、彼は隠すわけにはいかないと先ほどの声が言った自身の罪について語り始める。


他の人も同様に口を開き、その内容は以下の通り。


ウォーグレイブ

エドワード・シートンが婦人の殺害の嫌疑をかけられ、ウォーグレイブは判事としてその裁判にあたった。

エドワードは陪審員に好印象を与えたが、有罪を示す証拠が出てきたため、陪審員を誘導して有罪判決とし、死刑を宣告した。


ヴェラ

シリル・ハミルトンという子供の家庭教師をしていて、彼が遠くまで泳ぎたいというのでそれを許可し、結果として溺死させてしまった。

周囲からは助けにいったヴェラを慰める声が多くあったが、実はこれは故意の殺人だった。

ヴェラはシリルの叔父・ユーゴーと恋仲で、シリルが死ねばユーゴーが大金を相続できることを知り、シリルが遠くまで泳ぐよう誘導した。


ロンバート

アフリカの奥地で道に迷った時、食料を持ち逃げして助かった。

その際、同行していた東アフリカの部族民二十一人を置き去りにし、餓死させた。


エミリー

昔雇っていた使用人、ピアトリス・テイラーが身ごもった時、彼女を追い出した。

その後、彼女は川に身を投げて自殺した。


マッカーサー将軍

妻・レズリーが部下のアーサーと密会を重ね、レズリーがアーサー宛の手紙を夫宛に送ってしまったことでそのことを知る。マッカーサー将軍はあえてアーサーを死地に送り、故意に死なせた。

ただし、アーサーの死後、レズリーは人が変わったようになり、数年後に肺炎で死亡してしまった。


アームストロング

かつて酔っぱらった状態で手術に臨み、ルイーザ・メリア・クリースを医療ミスで死なせてしまった。そのことは他の医療スタッフも知っていたが、誰も口外していない。


マーストン

スピードを出し過ぎた車の運転によって、ジョンとルシー・カムズという少年たちを轢き殺した。


ブロア

ランドーという銀行強盗犯について、ブロアの証言によって有罪となり、一年後に刑務所内で死亡した。

しかし、実はブロアが無実だったランドーに罪を着せたことが真実で、彼はこのことで昇進を果たしている。


ロジャース夫妻

かつてジェニファー・ブレイディーという老婦人の執事をしていたが、彼女は弱っていて、嵐の夜に容態が悪くなり、助けを呼ぶこともできずに亡くなってしまった。

ただし、彼らはそれによって遺産を受け取っていて、警察からは気付け薬をわざと飲ませなかったのではと疑いをかけられている。


殺人編集

罪の告白が終わり、島からの脱出方法を考える。残念ながら島に船はなく、毎朝島を訪れる船を待つ他ない。一同はこれに賛成しますが、マーストンだけがこれに反対。彼は法律に縛られた生活は窮屈で、犯罪を礼賛する、犯罪に乾杯だと言ってウィスキーを一気に飲み干す。ところがその直後、ウィスキーが喉に詰まったかと思うと顔色が紫になり、彼は窒息するように死んだ。調べた結果、彼の飲んだウィスキーには青酸カリが含まれていたことが判明する。


マーストンが死亡すると、いつの間にか食堂にあった十体の人形が九体に減っていた。またヴェラは額縁にある子守唄を見て、マーストンは唄になぞらえて殺されたことにいち早く気が付く。そして翌朝、ロジャース夫人が亡くなっているのが見つかる。彼女は目を覚まさず死んでいて、死因はまだ分からない。さらに食堂の人形が今度は八体に減っていて、全員がようやく人が死ぬごとに人形が減っていることに気が付き、恐怖に駆られる。頼みの綱は毎朝来る船だが、それも今日に限って来ず、自分たちは計画的に閉じ込められたのだと悟る。


島には残された人形と同じ八人しかいないはずだが、ロンバートは島にオーエンがいるはずだと主張し、アームストロング、ブロアと共に島中を捜索する。しかし、島に人が隠れられる場所などなく、いくら探してもオーエンは見つからない。一方、マッカーサー将軍は気が狂ったのかすっかり意気消沈し、過去に犯した罪を悔いていた。そして昼食の時間、将軍がいないことに気が付き、アームストロングが呼びに行くが、マッカーサー将軍は後頭部を何か凶器で殴られて死んでいた。当然、人形は七体に減っていた。


ウォーグレイブが主導権を握り、状況を整理する。いくら探しても自分たち七人しか島にいない以上、オーエンはこの中にいるとしか考えられないと。彼らはこれまでの殺人を思い出し、容疑者を絞ろうとするが、誰にでも犯行は可能であるため、全員が容疑者となる。お互いに疑心暗鬼になり、誰もが見えない犯人の影に怯える。また浴室の真紅のカーテンが紛失していることにロジャースが気が付く。さすがにカーテンで人は殺せないだろうと平然を装うが、一同に緊張が走る。


その夜、それぞれ部屋に鍵を閉め、眠りにつきます。翌朝、何もなかったかのように見えましたが、人形が今度は六体に減っていた。そこでロジャースの姿が見えないことに気が付き探すと、彼は中庭をへだてた小さな洗濯場で薪割りに使ったであろう斧で頸すじを切られて死んでいた。


召使いのロジャースまで死亡したため、皆で手分けして食事の支度などをしながら事件の推理を続ける。食事が終わると、エミリーが気分が悪いといい、一人食堂に残る。その時、彼女は部屋に人の気配を感じる。そして、蜜蜂の羽音。気が付くと、頸のわきを刺されたような感覚を覚え、彼女はそのまま帰らぬ人となった。


皆が食堂に戻ると、エミリーが死んでいるのを発見する。頸の右側には注射を刺したような傷痕があり、部屋には蜂がいた。犯人はどうしても唄になぞらえて殺したいのだという狂気がうかがえる。どうやら死因はマーストンと同じく、青酸カリによる窒息死であることが判明する。注射器を持っているのはアームストロングですが、彼は犯行を否定する。しかし、彼の部屋からは注射器がなくなっていて、犯人によって盗まれたことが推測される。このままではいけないと感じ、一同は凶器となる得るものは全て一か所に集めることにする。ところが、ロンバートの保管していたピストルはすでに盗まれた後だった。一同は服を脱いで身体検査を行いますが、ピストルは出てこない。もはや誰が犯人か分からず、動物のように互いを警戒しあう。激しい雨がたたきつける中、ヴェラは気分が悪くなって部屋に戻る。すると、何かが彼女の喉に触れ、彼女は絶叫する。その声を聞きつけた男性たちが駆け付けると、部屋の天井から海藻がぶら下がっているのが見え、それが彼女の喉に触れたのだった。ヴェラは安心するが、気が付くとウォーグレイブがいなくなっていて、一同は探す。そして、ピストルで頭を撃ち抜かれているのをウォーグレイブを発見するのだった。彼は紛失した真紅のカーテンを身にまとっていた。


残るは四人。夜になると一同は一斉に部屋に閉じこもるが、ブロアは外から聞こえる足音に気が付き、廊下に出る。彼は邸宅の正面玄関から出る人影を見つけ、追いかけずに三人の寝室をノックすると、アームストロングだけが返事をしなかった。つまり、外に出たのはアームストロングということになる。ブロアはヴェラを部屋に残し、ロンバートと二人でアームストロングを探しに行く。しかし、探してもアームストロングは見つからず、代わりに人形が三体になっていた。


翌朝になってもアームストロングは見つからず、いつの間にかロンバートのピストルは抽斗に戻っていた。ヴェラは子守唄にある『燻製のにしん』に目をつける。燻製のにしんには、注意を他のことにそらすという意味があり、アームストロングは実は死んでおらず、どこかに隠れているのではと考える。


三人は邸宅の外に出て少しの安堵を覚えますが、それも束の間。ブロアは昼食のために何か食料をとってこようと邸宅に一人で戻る。しばらくして妙な音と地響きが聞こえ、二人は邸宅に戻る。そこには、大きな白い大理石で頭を潰されたブロアがいました。大理石はヴェラの部屋にあった時計で、それは熊の形をしていた。


ブロアの死を受け、ロンバートはアームストロングが犯人だと確信し、あたりを探す。すると、海に服が漂っているのを見つけ、続いて岩にあいだに挟まれ溺れ死んだアームストロングを見つける。彼も犯人でないとすると、お互い、目の前にいる人物が犯人ということになる。お互いを犯人だと確信し、対峙するロンバートとヴェラ。するとヴェラはアームストロングの死体をせめて波の届かないところまで引き上げたいと申し出て、二人は死体を引き上げる。すると、ヴェラはロンバートからピストルを奪い、彼の心臓を撃ち抜いた。


こうして、ヴェラはたった一人になった。彼女は恐怖から解放され、邸宅に戻ると、人形は一体になっていた。その人形を持って、部屋に戻った。彼女はなぜかかつての恋人・ユーゴーが部屋で待っているような気がして、ドアを開ける。彼女が目にしたもの、それは天井からぶら下がった輪が作られたヒモだった。その下には椅子が置いてあり、ユーゴーは彼女が首を吊って死ぬことを望んでいるように思えた。そしてヴェラは、唄の最後は首をくくり、後には誰もいなくなったと締めくくられることを思い出し、これまでの罪を受け入れて自殺するのだった。


後日談編集

スコットランドヤードの副警視総監トマス・レッグ卿は苛立っていた。

自分の今いるこの兵隊島では10の遺体が見つかった、痛ましいことだがそれはいい。

どの死体も時間が経ち過ぎていて正確な死亡時刻が判然としない、これも仕方がない。

島の対岸にあるスティクルヘイヴン村の村人は、島からの救難信号を目にしてから可能な限りの速さで島に駆けつけた。

嵐とその後の高波が治まるまでの丸一日間は船が出せなかったことを、誰も責めることができないだろう。

だが、そこにトマス卿を苛立たせている問題があった。

村人たちは救難信号を目にしてから誰かしらがずっと島を見張っており、自分たちが駆けつけるまで島からは誰も出て行かなかったと断言している。

つまり犯人は、この島で死んでいる10人のうちの1人でしかありえない。

10人のうちの1人が正義にやたらこだわる異常者であり、自ら選び出した法の及ばぬ殺人者たちを私刑にかけた後に自決したのだと考えるしかない。

だが、誰が最後に死んだのかが分からない。


彼らの幾人かは日記やメモを残しており、それで途中までの死亡順は追うことが出来た。

マーストン、エセル、マッカーサー、ロジャーズ、ブラント、ウォーグレイヴの順。

だが、そこからは“アームストロングが姿を消した”という記録を最後に何も手掛かりが無くなってしまっている。

なので、残りの4人がそれぞれ犯人だった場合を想定して行動を推理するしかないのだが……。

  1. アームストロングが犯人の場合:彼の溺死体は満潮線より高いところに引き上げられて綺麗に横たえられていた。したがって、彼の死後も生きていて死体を引き上げた人間がいたのは確実である。
  2. ブロアが犯人の場合:9人を殺した後、大理石の時計をどうにかして2階から自分の脳天に落として自殺した……いくら何でも迂遠で不確実に過ぎる。加えて、元警察官のブロアは警察側でもその素行を把握している。決してこんな抽象的な正義の執行に血道をあげる男ではなかった。
  3. ロンバートが犯人の場合:9人を殺した後、海岸のアームストロングの死体の傍に行って拳銃自殺した事になる。だが、彼のピストルは邸内のウォーグレイヴの部屋で見つかっている。つまり、やはり彼の死後も生きていて拳銃を邸内まで持って行った人間がいる事になる。
  4. ヴェラが犯人の場合:9人を殺した後、自室で首を吊って自殺したことになる。だが、彼女の靴跡が付いた椅子は他の椅子同様に部屋の壁にきれいに並べられていた。したがって、彼女の死後も生きていて椅子を片付けた人間がいた事になる。

だから、島には10人の他にもう1人以上の人間がいたはず。

10人全員が死んだ後に、その後始末をした人間が。

だが、そうだとしたら、そいつ(ら)はどうやって島に潜み、そしてどうやって島から立ち去ったというのか……?


後日、トロール漁船〈エマ・ジェイン号〉の船長より、ロンドン警視庁にこの事件の証拠文書が送付された。

それは犯人が壜に入れて海に流した手記であり、そこには犯人の正体はもちろん、犯行の動機、自分含めた10人全員を殺害した方法、といったこの事件の全てが書かれていた。




ネタバレ注意


























「私は自分の手で人を殺したくなったのだ。」

































ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ

この事件の犯人。

幼少期から、ロマンティックな性格、生き物が死ぬのを見たり、殺したりして喜ぶ嗜虐趣味、それとは正反対の、罪のない人や動物を苦しめ殺したりすることを断じて我慢できない強い正義感、といった様々な性格を併せ持っていた。

それらすべてをほぼ満足させてくれる司法職に就き、シートンの件を含め手がけた事件はすべて、感情に動かされず証拠のみに則って公正に裁いていた。

しかし近年、自分をコントロールする力が弱くなり、自分で人を殺したくなってしまう。それもただ殺すのではなく、稀有で不可能と思えるような殺人をしたいと考えるようになった。一方で、生来の正義感が罪もない人を苦しませてはならないと邪魔をした。

そんな中、たまたまロジャース夫妻の話を聞いたことで、法の裁きを受けていない犯罪者を殺そうと思い立ち、自分が2歳の頃に聞いた兵隊の歌に見立てることを思いついた。

そしてあちこちで情報を集めて法の裁きを受けなかった犯罪者達を9人見繕い、島におびき寄せる。最初の告発を聞いているときの顔を見て、判事としての経験から9人の有罪を確信。計画を実行に移した。


ただし、招待されたうちの九人が罪人で、ウォーグレイブはその執行対象に入らない。彼は十人目として、モリスという男を選んだ。まずはモリスに島を買い取らせ、ウォーグレイブの名前は隠させた。そして、麻薬の密売など多くの罪を背負ったモリスを一服盛って殺害し、いよいよ島に乗り込む。


予定通り、彼は殺人を行い、さらにアームストロングと結託して偽装工作をしていたことが判明する。


自身を信用していたアームストロングに「自分が次の犠牲者のように見せ、表向き死んだことにして犯人捜しのために自由に動けるようにする」という計画を持ちかけ、アームストロングと協力して自身の死を偽装。その後アームストロングを殺した。燻製のにしんは、このことを指していた。その後ブロアも殺した。

最後の一人であるヴェラの自殺後、イスを片付け、自分の部屋に戻ってベッドに横たわった。そして、伸び縮みするゴム紐をドアのノブに絡ませ、紐の先にはピストルを緩めに結びつけ、さらにメガネにも結びつけそのメガネを体の下に置き体重をかけた。こうした上で自分の額を撃つことで、ピストルは紐に引っ張られてドアのほうにはねかえり、ノブにぶつかって紐がはずれ、床に落ちる。こうして自殺だとわからないように自分を撃ち、不可能犯罪を完成させた。


最後に、彼は犯人を突き止める上で三つの手がかりがあったと書き残している。

  • 一つ目、島に招待された人は皆何かしらの罪を背負っていたが、ウォーグレイブの場合、シートンは有罪であったため、殺人を犯したとはいえない。つまり、その人物こそが犯人である。
  • 二つ目、アームストロングの死因に関係してくる子守唄に出てくる燻製のにしん、ここから彼は誰かに欺かれて死んだことになり、彼が一番信頼を置く人物、それはウォーグレイブである。
  • 三つ目、死んだとされていたウォーグレイブの額に残された赤い斑点、それはカインの刻印である。
    • カインの刻印とは、神がカインに与えたもので、人類最初の殺人を犯した彼に誰も復讐しないよう目印をつけた。

つまり、ウォーグレイブが殺人を犯した証拠になる。

オマージュ作品の例編集

十角館の殺人編集

  • 綾辻行人によるミステリ小説であり、同氏の代表作と言える作品。
  • ストーリーは「そして誰もいなくなった」をベースにしており、孤島に集まった若者たちが次々に連続殺人事件に巻き込まれてゆき、やはり最後には誰もいなくなる。
    • しかし、もちろんそれだけでは終わらない。
  • 終盤のある一言はミステリ小説業界では有名。
  • 奈須きのこTYPE-MOON)が強く影響を受けた作品でもある。

フランドール・スカーレット編集

  • 同人ゲーム『東方project』の登場キャラクター。
    • 彼女のテーマ曲『U.N.オーエンは彼女なのか?』のU.N.オーエンとは本作中において孤島に登場人物を招いた人物であり、「UNKNOWN」(何者ともわからぬもの)にかかっている。
    • 彼女のスペルカード秘弾「そして誰もいなくなるか?」』も、本作品のタイトルのもじりである。また、魔理沙との会話でもこの話を話題にしている。この会話から、ふたりはこの小説および童謡「10人の黒人の子」を知っている模様。

アーマード・コア編集

  • アーマード・コア4 の最終チャプター名が「And Then There Were None」
  • アーマード・コア for Answer の「ホワイト・グリント」のパイロットの名が「UNKNOWN」。正体が不明であるとともに、前作AC4の最終チャプター名から上記のU.N.オーエンとひっかけたネーミング。

探偵オペラミルキィホームズ編集

  • アニメ第2期第7話のタイトルが「そして希望なくなった」となっており、本作品のタイトルのもじりとなっている。
  • 余談だが、本作品に登場するエルキュール・バートンというキャラは本タイトルの作者であるアガサ・クリスティの別作品に登場する架空探偵エルキュール・ポアロが由来となっている。

それ以外の事例編集

2016年7月から放送されている日本テレビの同名ドラマ。こちらはアガサ・クリスティの同作とはタイトルが同じだけのオリジナル脚本。原作ありと混同に注意。

なお正式には「そして、誰もいなくなった」と途中で読点が入るので、これでタグ分けは可能である。


作品とは直接関係ないネタタグとしての使い道編集

  • 独特な響きのある邦題から、しばしば『ここは俺に任せろ!』『いやここは俺が!』『お前らばかりに任せてられないぜ!』といったタグが一通りつけられた後に、「兵どもが夢の跡」とばかりにこのタグがつけられることもある。
  • 複数人描かれているイラストにて『○○は貰った!』『では○○を頂いて行きますね』などの訓練されたタグが連続で続いた後に、このタグが付けられることもある。皆貰われて行った。
  • だが、このようなタグをつけていても特に検索に役立つこともないので実質感想タグと化している。

関連タグ編集

小説 童謡

アガサ・クリスティ

ミステリー

どうせみんないなくなる

クローズドサークル


外部リンク編集

そして誰もいなくなった - Wikipedia

そして誰もいなくなった (ソシテダレモイナクナッタとは) - ニコニコ大百科

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