演:渡瀬恒彦
概要
テレビ朝日で放送されたスペシャルドラマ『そして誰もいなくなった』に登場する人物の一人。原作におけるローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ判事に該当する。
元・東京地方裁判所裁判長であり、日本の絶海に位置する孤島の宿泊施設『自然の島ホテル』に招待されて来た。
半ば隠居を決め込んでいるためか他の宿泊客と積極的に交流はあまりしないなど寡黙で大人しい性格をしているが、実は七年前に担当裁判の被告人に私情から死刑判決を下したことがあり、その罪を暴露される。
六番目の被害者であり、ホテルの部屋に飾られていたわらべ歌に見立てられる形で「お奉行様」の格好をさせられて射殺されるという、惨たらしい最期を遂げた。
余談
演じる渡瀬氏はこの作品を持って最後の出演となった。
ネタバレ注意!
「君の推理通り、九人の被告人を裁いたのはこの私だ」
事件の真犯人であり宿泊客を集めた元凶。事件当時、六番目に発見された『遺体』は偽装工作であり、検視役となっていた医師の神波江利香を仲間にすることで生き残っていた人物の目を欺くことに成功し、自分以外の人間の命を奪った後は「自分も裁かれるべきだ」と断じてピストルによる自殺を図った。
尚、ホテルには隠しカメラが至る所に設置されており、規則的なドローンなど探偵役の刑事・相国寺竜也を含めた警察にヒントを与え、最後のカメラに残っていた映像からは真犯人=自分自身を見つけた顔も名前も知らぬ英雄を讃えていた。
歪んだ正義と芸術的犯罪
事件を解決した相国寺だが、いくつかの疑問を覚える。何故こんな見立てを行ったのか?裁判官として正義を重んじていた彼が何故殺人を犯したのか?最後の映像から何かあることを見抜き、進めていくと身体にチューブを取り付けた真犯人の告白が映っていた。
余命いくばくもない様子や自宅であろう部屋で、犯行前に録画したであろう映像の中で彼は動機を語り始める。
幼少の頃、磐村は残虐心と強い正義感という相反する思考を持っており、そんな自分の欲求を満たすべく裁判官を志した。しかし、年を取るにつれて子どものような悪戯心と残虐心が膨れ上がっていき、昔から犯罪に並々ならぬ興味を持っていたこともあり、遂には自分で犯罪を行いたいと強く願うようになる。
しかし、罪のない人間が苦しむことなど在ってはならないとも考えていた彼は、罪を犯しておきながら裁かれなかった人間を一か所に集めて今回の事件を起こしたのだ。
兵隊……合法的に罪を犯す悪人の人形を手に持った彼は、集めた罪人たちの写真を殴りつける。閉鎖された空間で不気味な歌に準えて起こる連続殺人……そして誰もいなくなった不気味な犯罪を想像し、映像の彼は恍惚とした表情で微笑んだ。
「これは芸術だ……私が作った、最高傑作の芸術だ」
真犯人の動機を知り、全ての真相を明らかにした相国寺は帰りの船で心中を呟く。
────殺人に、芸術はない────
磐村の正義は決して間違っていなかったが、その犯罪計画を理解されることもなかった。