「この世には、不思議なことなど何もないのだよ」
概要
第二次世界大戦後まもない日本を舞台とした推理小説。
作中に実体として登場はしないが、個々の作品のタイトルには必ず妖怪の名が冠せられており、その妖怪に関連して起こる様々な奇怪な事件を「京極堂」こと中禅寺秋彦が「憑き物落とし」として解決する様を描く。
1994年に発表されたシリーズ第1弾の『姑獲鳥の夏』は、京極夏彦のデビュー作品であり、メフィスト賞創設のきっかけとなった。講談社ノベルスから刊行されたのち、講談社文庫から通常文庫版と分冊文庫版が刊行され、順にハードカバー化もなされている。通常文庫版は1000ページ以上に及ぶことがあり、分厚いことで有名。
基本的には推理小説としてカテゴリーされている。もっとも事件の謎解きである「憑き物落とし」はいわゆる犯行トリックの解明や犯人当てよりも、事件そのものの全容と因果関係・事件関係者達の妄念の論理的な究明に注力されていることが多い。
また、作品内にはタイトルとなった妖怪に関するあらゆるキーワードが作中に散りばめられており、民俗学、論理学など広範にわたる様々な視点から、妖怪の成り立ちが分析されているのも特徴の一つ。
外伝作品として、長編に登場した事件関係者達の内面を掘り下げるサイドストーリー集「百鬼夜行」シリーズ、探偵(神)の榎木津礼二郎が事件を粉砕する「百器徒然袋」シリーズ、多々良勝五郎と沼上蓮次の妖怪馬鹿コンビによる妖怪珍道中を描く「今昔続百鬼」、雑誌記者・中禅寺敦子と『絡新婦の理』に登場した女学生・呉美由紀のバディが事件に挑む「今昔百鬼拾遺」シリーズが刊行されている。
他に『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』という、両さんと色んな小説の人気キャラクターがもしも出会ったらという短編集で「ぬらりひょんの褌」という作品がある。
京極夏彦原案作品としてはシリーズのコミカライズを手掛けた志水アキによるオリジナルストーリー漫画『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』があり、
公式アンソロジーは『妖怪変化 京極堂トリビュート』がある。
主な登場人物
中禅寺秋彦 - 古本屋「京極堂」の主。宮司で拝み屋。
関口巽 - 小説家。代表的な語り部の一人。
榎木津礼二郎 - 「薔薇十字探偵社」の私立探偵。
木場修太郎 - 刑事。
青木文蔵 - 刑事。
鳥口守彦 - 編集記者兼カメラマン。
益田龍一 - 元刑事の探偵見習い(助手)。
中禅寺敦子 - 科学雑誌記者。
安和寅吉 - 薔薇十字探偵社の探偵秘書。
今川雅澄 - 骨董屋「待古庵」の店主。
伊佐間一成 - 釣り堀「いさま屋」の親父。
中禅寺千鶴子 - 中禅寺の妻。
関口雪絵 - 関口の妻。
多々良勝五郎 - 妖怪研究家。