中禅寺秋彦
ちゅうぜんじあきひこ
中野で古本屋「京極堂」を営む男。
家業は「武蔵晴明神社」の宮司、副業は陰陽師の一種である「憑物落とし(つきものおとし)」の「拝み屋」。
店の屋号に因んで「京極堂」とも呼ばれる。
「この世には不思議なことなど何もない」と言うのが口癖であり、座右の銘。
下北半島出身。幼少時は恐山の祖父母の下で育った。
家族は、妻の千鶴子と、実妹の敦子。飼っている猫の名前は石榴。
個性の強いキャラクターたちのまとめ役的存在であるが、彼本人も相当の変わり者。
痩身だが甘いもの好きで、干菓子などを好んで食べている。
宗教、口碑伝承、民俗学、妖怪等に造詣が深く、知識と理を尊び、根拠のない事は語らず、無知や偏見による誤解を何よりも嫌う。
重度の書痴でもあり、本であれば難解な古文書の類から料理本、赤本漫画までなんでも読む。
さらに家屋敷から店舗に至るまで本で溢れており、店の商品の本も一度以上必ず目を通している。
興味のある本が見つかったと聞くと、大層喜んで足を運ぶのだという。
古書肆を開業する前は高校教師で、中禅寺先生物怪講義録でその頃が描かれている。
「好きなだけ本が読める」という理由から、転職を決意した。
しょっちゅう変な連中が店に屯しているため、古本屋稼業の方は開店休業中と思われがちだが、業界でも珍しい本をよく扱うことから常連や得意先が結構いるらしく、意外と儲かっている模様。
戦時中の経歴や読書家としての積み重ねもあって博覧強記かつ極めて優れた話術を持つ詭弁家であり、その気になれば言葉だけで他人を己が意のままに操ることも可能。
その弁舌と周到な根回しと時には即興も含めて事件を紐解き、犯人や悪党を追い詰めるのはもちろん、関口ら身内をもひっかけて都合よく奔走させたりするのが常套手段。
更に、法的な罪に問えないまま逃げ切ってしまう者へトラウマが残るような「呪い」を囁いたり、社会的失墜を狙ったマインドコントロールのような真似も行っており、決めの一手として用いるほどには強い自信を持っている。
その反面、悪用すれば極めて危険な技能であることも強く自覚しているため、「尊法者たらん」という自戒を以て法を犯すような行為は徹底的に避け、その使い道については明確な線引きをしようと努めている。
そんな中禅寺の執り行う「憑物落とし」とは、広範かつ膨大な知識と徹底した論理的思考によって複雑怪奇に入り乱れた事件を整理・洞察し、巧妙な弁舌を以って事件に纏わる因果と妄執を、当事者たちの納得できる「かたち」に「解体」するというもの。
しかし、事件の謎を不用意に「解体」してしまえば、謎が存在していたことでバランスが保たれていた関係や事象を崩壊させてしまいかねない。それによって新たな被害が発生することも十二分にありうるため、事件解決に暗躍する役どころながら積極的に干渉する事を好まない。
それでも動かねばならない事態になれば、黒の手甲をはめ、両胸に五芒星を染め抜いた黒の着流し、黒の足袋に鼻緒だけが赤い黒下駄を身に着けて「憑物」の潜む場に赴く。
アニメ版ではさらに髪型をオールバックにするという切り替えも見せている。
安楽椅子探偵というほどでもないが、少々の事件なら情報収集からの推理と分析だけで片付けてしまい、自身が捕り物や大立ち回りを演じることはない。
本人も「十四の時に力仕事をしないと誓った」と嘯き非力なように振舞っているが、姿勢も崩さず人込みをすり抜けるように歩くなど、体幹や運動神経そのものは良いらしい。
弁舌を補完するものか芝居っ気もあり、必要とあらばチンピラの下っ端から、権力者にさえ有無を言わさぬ恐ろしげな祈祷師まで何でも演じてしまう。
常に和装で、始終不機嫌な仏頂面なのが何度も強調される。この仏頂面は作品を重ねるごとに進化し
・親でも死んだかのような仏頂面
・親戚全部が死に絶えでもしたかのような仏頂面
・町内会の人間全部が死に絶えたかのような仏頂面
・東京が全滅したかのような仏頂面
・日本が滅んでしまったかのような仏頂面
・亜細亜が全部沈没してしまったかのような仏頂面
・三千世界が滅んでしまったかのような悪相
・艦隊を全滅させてしまった海軍指揮官の様な不機嫌な顔
・葬式を二十ばかり梯子したかのような極め付きの仏頂面
・まるでどこか病んでいるかの如き不健康そうな顔
・宇宙の終りが三回続けて訪れたような凶悪な顔
・この世の終わりが十回続けて訪れたかのような仏頂面
・余程酷いことでもなければこんなに凶相にはなるまい
…もはや何が何やら…
付き合いの長い者には感情の変化がわかるらしいが、その付き合いの長い一人である関口をして「邪悪な死神のごとき凶悪な風貌」「芥川龍之介の幽霊」と言わしめている。
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