概要
青山剛昌による漫画『名探偵コナン』の単行本の、カバーの裏表紙側のソデ(折り返し部分)に添えられている、一種のファンサービス・特典。
青山先生によって「名探偵」と認定されたキャラクターが、書き下ろしイラストと解説、活躍するエピソードの中で先生がオススメ(お気に入り)のものを交えて紹介されている。
ここでいう「名探偵」は職業が専業探偵のキャラというよりはいわゆる探偵役、つまりミステリーにおける事件の解決を担当するキャラを指しており、刑事や弁護士から三毛猫、果ては怪盗に猟奇殺人犯まで、多数の作品から登場している。
ちなみに、表紙側のソデには他の漫画同様に青山先生のコメントが書かれている。
特徴
青山先生自身、ミステリー作品全般に対して造詣が深く、純粋なミステリー小説のみならず刑事ドラマや映画、時代劇(前作の影響?)などの映像作品からも題材が取られる。
また、連載が長く続いたからか、巻数を重ねるごとに折木奉太郎、猫猫と言った単なる推理小説や実写作品だけではなく、メディアミックスされたライトノベルや、銭形警部、岸辺露伴と言った出版社の枠も越えた他の漫画作品のキャラまで紹介されており、その度にTwitterなどでは話題になることがある。
書き下ろされる名探偵のイラストは必ずしもはっきりと描写される訳ではなく、原作版のシャーロック・ホームズ、アルセーヌ・ルパン、金田一耕助、明智小五郎のような面子は全体的な服装と目が描かれている以外では、明確な目鼻立ちは影で隠す様にされている。
これについてはいずれも人気が高く、多くのファンを獲得した作品という共通点があることから、先生独自のイラストによるイメージをつけない為の配慮であると思われる(明言はされていない。後の名探偵達のように実写映像版の演者の似顔絵にするにも、何度も映像化されていて10人くらいいたりする者もいる)。
映像作品を紹介する場合は、事実上演じている俳優の似顔絵を描くことになる。有名なものだと『相棒』の杉下右京を演じた水谷豊や『古畑任三郎』の田村正和など。
ちなみにアイドルグループ・嵐のメンバー二宮和也司会の番組「ニノさん」でコナンが取り上げられた際、その時点で嵐のメンバー2人が既に名探偵図鑑で描かれている(大野智=77巻/防犯探偵シリーズ・榎本径役、櫻井翔=82巻/謎解きはディナーのあとで・影山役)ことが紹介され、「嵐をコンプリートしたい」という作者のコメントも出た。
その後松本潤が94巻で描かれ(99.9-刑事専門弁護士-・深山大翔役)、残りは2人である。そのうち相葉雅紀は『三毛猫ホームズ』の主演であった為、紹介されているのは当然ながら三毛猫のホームズ、という地味に不遇な目に遭っている(もっと言うと、相葉氏が片山義太郎を演じたのは当作が本コーナーで紹介された後である)が、その後『貴族探偵』で主人公の貴族探偵を演じる事となった為、今後巻末に載る可能性が浮上した。一方、番組の司会だった二宮は唯一、ミステリー連ドラの主役経験がない。映画なら『プラチナデータ』があるのだが……
また、小説の映像化作品でも『富豪刑事』の神戸大助(原作)と神戸美和子(ドラマ)のように両者の性別が異なる場合は原作が優先され、演者の似顔絵とはなっていない。
漫画作品は当然ながら、小説作品であっても『ビブリア古書堂の事件手帖』や『忘却探偵シリーズ(掟上今日子の備忘録)』のように、表紙イラストではっきりしたビジュアルイメージがある場合はそちらが優先され、実写化されていても演者の似顔絵にはなっていない。折木奉太郎は出典がラノベであるものの挿絵がないので、アニメ版のキャラデザにのっとったイラストとなっている。
各巻リスト
以下、本コーナーで紹介された『名探偵』たち。シリーズ名がある場合は、シリーズ名も併記する。
1~20
巻数 | 名前
| 作者/メインライター | 職業 | 作者のお気に入りエピソード |
---|---|---|---|---|
1 | シャーロック・ホームズ | コナン・ドイル | 顧問探偵 | 四つの署名 |
2 | 明智小五郎
| 江戸川乱歩 | 私立探偵 | 黄金仮面 |
3 | エルキュール・ポアロ
| アガサ・クリスティ | 私立探偵 | ナイル殺人事件 |
4 | アルセーヌ・ルパン
| モーリス・ルブラン | 怪盗 | 怪盗紳士 |
5 | ジュール・メグレ
| ジョルジュ・シムノン | 警察官 | メグレ罠を張る |
6 | 金田一耕助 | 横溝正史 | 私立探偵 | 獄門島 |
7 | コロンボ警部
| リチャード・レヴィンソン、ウィリアム・リンク | 警察官 | 別れのワイン |
8 | 銭形平次 | 野村胡堂 | 岡っ引 | 銭形平次捕物控 |
9 | フィリップ・マーロウ | レイモンド・チャンドラー | 探偵 | 長いお別れ |
10 | オーギュスト・デュパン | エドガー・アラン・ポー | 探偵 | モルグ街の殺人 |
11 | エラリィ・クイーン
| エラリィ・クイーン(F・ダネイ、M・リー) | 探偵、推理作家 | エジプト十字架の謎 |
12 | V・I・ウォーショースキー | サラ・パレツキー | 探偵 | レイクサイド・ストーリー |
13 | ブラウン神父 | ギルバート・キース・チェスタトン | 探偵、司祭 | 奇妙な足音 |
14 | コーデリア・グレイ | フィリス・ドロシー・ジェイムス | 探偵 | 女には向かない職業 |
15 | 長谷川平蔵
| 池波正太郎 | 火付盗賊改方 | 狐火 |
16 | 浅見光彦 | 内田康夫 | 探偵、ルポライター | 平家伝説殺人事件 |
17 | ネロ・ウルフ
| レックス・スタウト | 私立探偵 | 料理長が多すぎる |
18 | 工藤俊作 | 小鷹信光 | 私立探偵 | サーフシティ・ブルース |
19 | ハンニバル・レクター
| トマス・ハリス | 精神科医、猟奇殺人犯 | 羊たちの沈黙 |
20 | ジェーン・マープル
| アガサ・クリスティ | 老嬢 | 予告殺人 |
※1.多くの大人向けの作品でも活躍しており、『黄金仮面』も初出時の大人向けの作品と子供向けに翻案された物が存在する。
※2.活躍は国名シリーズだけにはとどまらない。
21~40
巻数 | 名前
| 作者/メインライター | 職業 | 作者のお気に入りエピソード |
---|---|---|---|---|
21 | サム・スペード | ダシール・ハメット | 私立探偵 | マルタの鷹 |
22 | 十津川省三
| 西村京太郎 | 警察官 | 終着駅殺人事件 |
23 | 古畑任三郎 | 三谷幸喜 | 警察官 | 汚れた王将 |
24 | ペリイ・メイスン | E・S・ガードナーラオ | 弁護士 | 奇妙な花嫁 |
25 | 三毛猫ホームズ | 赤川次郎 | 飼い猫 | 三毛猫ホームズの推理 |
26 | 鮫島警部
| 大沢在昌 | 警察官 | 毒猿 |
27 | ジェームズ・ボンド
| イアン・フレミング | 諜報員 | ゴールド・フィンガー |
28 | 神津恭介 | 高木彬光 | 大学教授 | 人形はなぜ殺される |
29 | チャーリー・チャン | アール・デア・ビガーズ | 探偵、警察官 | チャーリー・チャンの活躍 |
30 | ジョン・ソーンダイク
| オースティン・フリーマン | 探偵、法医学者 | 歌う白骨 |
31 | 遠山景元
| 陣出達朗 | 町奉行 | 遠山の金さん捕物帳 |
32 | マイク・ハマー | ミッキー・スピレイン | 私立探偵 | 裁くのは俺だ |
33 | ファイロ・ヴァンス | ヴァン・ダイン | 探偵 | 僧正殺人事件 |
34 | 柊茂
| 和久峻三 | 検察官 | 疑わしきは罰せよ |
35 | ドルリー・レーン
| バーナビー・ロス(※3) | 探偵 | Yの悲劇 |
36 | キャサリン・ターナー
| 山村美紗 | 雑誌記者 | 花の棺 |
37 | ヘンリー・ジャクソン
| アイザック・アシモフ | 給仕、探偵 | 会心の笑い |
38 | 伝七
| 捕物作家クラブ | 岡っ引 | 夜叉牡丹 |
39 | リュウ・アーチャー | ロス・マクドナルド | 私立探偵 | 動く標的 |
40 | 御手洗潔 | 島田荘司 | 私立探偵、脳科学者、占星術師 | 占星術殺人事件 |
※3.エラリィ・クイーンの変名
41~60
巻数 | 名前
| 作者/メインライター | 職業 | 作者のお気に入りエピソード |
---|---|---|---|---|
41 | 隅の老人 | バロネス・オルツィ | 不明 | 隅の老人の事件簿 |
42 | ジョセフ・ルールタビーユ
| ガストン・ルルー | 新聞記者 | 黄色い部屋の謎 |
43 | 半七
| 岡本綺堂 | 岡っ引 | 石灯籠 |
44 | 棟居弘一良
| 森村誠一 | 警察官 | 人間の証明 |
45 | 今西栄太郎 | 松本清張 | 警察官 | 砂の器 |
46 | ギデオン・フェル
| ジョン・ディクスン・カー | 探偵 | 三つの棺 |
47 | 合田雄一郎
| 高村薫 | 警察官 | マークスの山 |
48 | 杉下右京
| 輿水泰弘 | 警察官 | 殺意あり |
49 | スティーブ・キャレラ
| エド・マクベイン | 警察官 | 警官嫌い |
50 | 火村英生
| 有栖川有栖 | 大学准教授 | 46番目の密室 |
51 | 朝吹里矢子
| 夏樹静子 | 弁護士 | 二つの真実 |
52 | ロバート・アイアンサンド
| コーリアー・ヤング | 警察官 | 鬼警部アイアンサンド |
53 | 中禅寺秋彦
| 京極夏彦 | 古書店店主、宮司、拝み屋 | 姑獲鳥の夏 |
54 | 島田潔
| 綾辻行人 | 無職(実家の寺の手伝い)→推理作家 | 十角館の殺人 |
55 | コンチネンタル・オプ | ダシール・ハメット | 私立探偵 | 血の収穫 |
56 | 佐七
| 横溝正史 | 岡っ引 | 幽霊山伏 |
57 | ジョゼフ・フレンチ
| フリーマン・ウィルス・クロフツ | 警察官 | クロイドン発12時30分 |
58 | 高樹良文
| 北方謙三 | 警察官 | 眠りなき夜 |
59 | ブロンクスのママ
| ジェームズ・ヤッフェ | 探偵 | ママは何でも知っている |
60 | 法月綸太郎 | 法月綸太郎 | 探偵、犯罪研究家 | 都市伝説パズル |
61~80
巻数 | 名前
| 作者/メインライター | 職業 | 作者のお気に入りエピソード |
---|---|---|---|---|
61 | ココ
| リリアン・ジャクソン・ブラウン | 猫 | ネコは手がかりを読む |
62 | 湯川学 | 東野圭吾 | 物理学者 | 燃える |
63 | 神戸大助
| 筒井康隆 | 警察官 | 密室の富豪刑事 |
64 | 銭形警部 | モンキー・パンチ | 国際警察官 | せいては盗をしそんじる |
65 | ロバート・ラングドン教授 | ダン・ブラウン | 大学教授 | ダ・ヴィンチ・コード |
66 | 仙波阿古十郎
| 久生十蘭 | 風来坊 | 遠島船 |
67 | 茨木歓喜
| 山田風太郎 | 医師 | 十三角関係 |
68 | 多羅尾伴内
| 比佐芳武 | 探偵 | 七つの顔 |
69 | リチャード・カッフ | ウィルキー・コリンズ | 警察官 | 月長石 |
70 | フィリップ・トレント
| エドマント・クレリヒュー・ベントリー | 画家、新聞記者 | トレント最後の事件 |
71 | グレゴリー・ハウス
| ディヴィット・ショア | 医師 | 氷壁の果て |
72 | 倉石義男
| 横山秀夫 | 検視官 | 赤い名刺 |
73 | エイドリアン・モンク
| リー・ゴールドバーグ | 私立探偵 | 評決に意義あり |
74 | 鬼貫警部 | 鮎川哲也 | 警察官 | 黒いトランク |
75 | 春桜亭円紫
| 北村薫 | 落語家 | 空飛ぶ馬 |
76 | リンカーン・ライム | ジェフェリー・ディーバー | 鑑識官 | ボーン・コレクター |
77 | 榎本径
| 貴志祐介 | 防犯ショップ店主 | 硝子のハンマー |
78 | 白鳥圭輔
| 海堂尊 | 技官 | チーム・バチスタの栄光 |
79 | 刀城言耶 | 三津田信三 | 作家 | 首無の如き祟るもの |
80 | 篠川栞子
| 三上延 | 古書店店長 | ビブリア古書堂の事件手帖 |
81~100
巻数 | 名前
| 作者/メインライター | 職業 | 作者のお気に入りエピソード |
---|---|---|---|---|
81 | ススキノの便利屋
| 東直己 | 便利屋 | バーにかかってきた電話 |
82 | 影山
| 東川篤哉 | 執事 | 綺麗な薔薇には殺意がございます |
83 | 折木奉太郎 | 米澤穂信 | 高校生 | 氷菓 |
84 | リスベット・サランデル
| スティーグ・ラーソン | 調査員 | ドラゴン・タトゥーの女 |
85 | 福家警部補 | 大倉崇裕 | 警察官 | オッカムの剃刀 |
86 | 吉敷竹史
| 島田荘司 | 警察官 | 奇想、天を動かす |
87 | 江神二郎
| 有栖川有栖 | 大学生 | 双頭の悪魔 |
88 | 掟上今日子
| 西尾維新 | 探偵、事務所所長 | 掟上今日子の忘備録 |
89 | 九条櫻子 | 太田紫織 | 標本士 | あなたのおうちはどこですか |
90 | 山猫
| 神永学 | 怪盗探偵 | 怪盗探偵 山猫 |
91 | 凛田莉子
| 松岡圭祐 | 鑑定士 | 万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ.Ⅱ |
92 | 華岡信一郎 | アルチャム・リトビネンコ(※5) | 捜査コンサルタント | スニッファー嗅覚捜査官 |
93 | リチャード・キャッスル
| ロバート・ダンカン | 作家 | 新コンビ誕生 |
94 | 深山大翔 | 宇田学 | 弁護士 | request.01 |
95 | 弓神適当 | 井浦秀夫 | 警察官 | 殺人鬼の呪文 |
96 | 三澄ミコト | 野木亜紀子 | 解剖医 | 名前のない毒 |
97 | 黒河内圭太 | リチャード・ウー/コウノコウジ | 警察官 | 1~6巻 |
98 | 久能整 | 田村由美 | 大学生 | つかの間のトレイン |
99 | 猫猫 | 日向夏 | 薬師 | 1巻(後宮編) |
100 | シャーロック(※6) | マーク・ゲイティス | 私立探偵 | ベルグレービアの醜聞 |
※4.本作の第3弾が文庫化した際、名探偵コナンとのクロスオーバーストーリーが掲載されている。
※5.元々はウクライナで制作された推理ドラマシリーズをNHKでリメイクしている。この巻で取り上げたのは2016年の日本版。
※6.2010年にイギリスで製作された舞台設定を現代に移したドラマ版を紹介している。そのため、シャーロック・ホームズを演じたベネディクト・カンバーバッチの似顔絵を描き下ろしている。
101~120
巻数 | 名前
| 作者/メインライター | 職業 | 作者のお気に入りエピソード |
---|---|---|---|---|
101 | 岸辺露伴(※6) | 岸辺露伴/荒木飛呂彦 | 漫画家 | 富豪村 |
102 | 藤聖子 | 泰三子 | 警察官 | 勝負は一瞬 |
103 | レイトン教授 | レベルファイブ | 大学教授、考古学者 | レイトン教授と不思議な町 |
104 | 榊マリコ | 戸田山雅司、櫻井武晴 | 法医研究員 | 科捜研の女 -劇場版- |
105 | 輪堂鴉夜 | 青崎有吾 | 怪物専門の探偵 | 吸血鬼 |
105(特装版)※7 | 工藤新一 | 青山剛昌 | 高校生探偵 | 最初の挨拶 |
106 | 成歩堂龍一 | 巧舟 | 弁護士 | 逆転裁判 |
※6.本来はジョジョシリーズの登場人物であるが、ここでは外伝作品の方の登場人物として取り上げている。また、この外伝作品は岸辺露伴原作、荒木飛呂彦作画という設定となっている。詳しくは当該項目を参照。
※7.連載30周年を記念したもの。
余談
- このコーナーで描かれたイラストが、後に探偵のイメージとして作中に登場することもある。
- 『犯人の犯沢さん』の単行本ではこのコーナーのパロディ版「かんばまゆこの名探偵図鑑」としてコナン世界の名探偵、つまり登場人物が紹介されている。
- 上記の通り、No.6で金田一耕助が紹介されているが、彼の「孫」はまだ登場した事がない。作品そのものは『名探偵コナン』より長いはずなのに……。
- 上記の通り、No.48で『相棒』の杉下右京が紹介されているが、青山剛昌は以前、同作にモブの鑑識官役でゲスト出演したことがある。また、Season22最終話では子どもと「おじさんコナンくんとお友達?」「残念ながらコナンくんとは友達じゃありません」というやり取りを交わすシーンがあった他、生成AIを使った変声機能を使って事件の真犯人を追い詰めるというコナンを彷彿とさせる展開があった(また、このことから、『相棒』の世界にはフィクションとしての『名探偵コナン』が存在していることが確定することとなった)。
- 上記の通り、連載30周年を記念した105巻は通常版と特装版で紹介探偵が異なる。コレクションしたい方は注意。それにしても、図鑑でも述べられているのだが、表舞台から消えた工藤新一はどこへ行ったのだろう?